第8話 継承者
「ライトシャインって? 何がなんだか」
優美は混乱している。
「というか、そもそもアンタ達何者なのよ。急に現れて意味不明な事言って」
空奈は強気に2人の目の前に近付く。
すると綾乃が身を乗り出した。
「前に仁美のこと攻撃しようとしたきたんだよ。それに、私と優美に甘いだのなんだの言ってきたっけな。味方かどうかも怪しいところだ」
警戒しているとウィンディ、シールドが口を開いた。
「あなた達、見て分からないのね。その方は間違いなくシャインクロスの持ち主。それが判明した今、私達は彼女にお仕えするのは当たり前の事ですわ」
「そして、覚醒したときに彼女が持っていたシャインソードはライトシャイン様がかつて使っていた物」
「待て待て。話が全く見えてこないが」
綾乃は頭を抱える。
海外の外れの里で生まれ、元々能力者だったリリ、レオンだけはウィンディ、シールドの話についていけてるようで、頷いていた。
分かりやすく2人が補足する。
「あのね、ライトシャイン様はかつての光の守護者で、天界の長だったの」
「ある時、闇の勢力が大きくなりすぎてな。闇を鎮めるためにライトシャイン様は全ての力を振り絞り闇を封印し、そのまま力尽きてしまったんだ」
「そんな壮絶なことがあったのですね」
「けれど、その何年も後に再び闇が復活してしまい、俺たち能力者は時を超え生まれた」
「そして今回、更に闇が拡大したとの連絡を受けて私とレオンが優美達の助っ人として来たのよ」
「そうだったのか。俺たちはルキの管理下で任務として動いていたから、ライトシャインとやらの話は一切知らなかった」
温人は冷静に話を聞き、頷く。
「ライトシャイン様の周りには護衛がいたの。光、火、水、雷、木、地の守護神」
「私達と同じ能力!」
空奈は驚いた。
「そう。あなた達はライトシャイン様の護衛の守護神の継承者なのですわ。そして風、美、刃の護衛はその水面下で闇と戦っていた。それが私とシールド。刃の守護神スラッシュは単独行動を好むからここにはいないけれど」
「知らなかった。もしかして、ルキが前に言ってた強い能力者が3人いるって言ってたのはウィンディ達の事だったのか」
温人は驚きつつも現状を受け入れた。
シールドが話を続ける。
「シャインクロスという壮大な力を持つクロスは、元々時空の能力者、翠が保管していたんだ」
「え?」
優美には心当たりがあった。
ルキに攻撃されて気を失った時に夢の中で現れた彼女。確か翠と言っていた。
「闇に侵略された時、ライトシャイン様の命令で翠は現世にシャインクロスを飛ばしたんだ。『時空を超えて世界を救うために』と。だが、シャインクロスは時空の歪みのせいで持ち主が分からなくなってしまった」
「だから私達はずっと探していたのですわ。シャインクロスの持ち主を。そして、その持ち主がライトシャイン様の継承者だっていうことも判明した。私達はあなたに仕えますわ」
優美だけは混乱していてあわあわしていた。
「そんなことを言われても、私は私ですし、ライトシャイン様なんて大それた者では!」
「そうよ、なに後から出てきてしゃしゃってんのよ! 優美には私達がいるんだから!」
空奈は気に入らないようで2人に突っかかった。
それを由文がなだめる。
「まあまあ空奈、落ち着いて。味方が増えるのは良い事でしょ?」
「ツッコミどころが満載すぎるな。由文が能力者ってのも驚きだし。それに、アンタは?」
仁美の横にいた竜一に温人が不思議そうに見つめる。
「そうだよ、仁美が戻ってきたのは嬉しいけど知らない人といるからびっくりしたんだよ」
更に綾乃も詰め寄った。
「うーん、なんて言えば良いのかなあ?」
仁美が竜一に尋ねる。
「まあ、分かりやすく言えばスパイだね。自己紹介が遅れてすまない、俺は伊里竜一。元々闇の血が流れているのだけど、それを利用してスパイとして潜り込んでいた」
「私のことも、竜一が救ってくれたんだよ! 由文のことも能力者だと知ってて、優美達を助けに行く前に由文を迎えに行ったの。だからほんとに竜一は私達の味方」
「そうか、なんだか突然色々ありすぎて頭が追いつかないな」
「まあ、味方が増えたってことで良いんじゃない?」
由文がポン、と温人の肩を叩く。
由文と温人は、実は親友だった。
「お前なあ。なんか俺に一言、言ってくれても良かったのに」
「空奈から身を潜めるように言われてたんだよ。ルキって奴が怪しいからってさ。ま、これから改めてよろしくな!」
「そうだ、ルキの奴。なんで裏切ったんだろう。もともとアイツは闇の味方だったってことなのか? なあ、竜一でも分からないのか?」
綾乃が腑に落ちない表情で竜一に尋ねた。
「ごめん、俺にも分からない。ただひとつ言えるのは、彼はかなり高度に身を潜めて光を欺いていたんだと思う。確か、天界の管理天使をやってたんでしょ? 闇でありながら管理だなんて難しすぎる」
「そっか。ルキの意思なのかな」
寂しそうに俯く綾乃。
「管理天使ルキ。私とシールドは彼について調べてみますわ。あなた達はライトシャイン様の護衛に務めて頂けたら」
「ああ、言われなくても」
新たに味方として加わった竜一、守護神ウィンディ、シールド。
ルキの謎。色々ありすぎたが、話はまとまりその日は解散となった。
帰り道、優美と温人は帰路が同じ方向の為、2人きりで歩く。
優美がふと口を開いた。
「私、自分が嫌いです」
「天空?」
「ルキさんに『死ねばよかったのに』って言われた時、私もそう思いました。それに、ずっと私自身もそう思って生きてきたの。でも、死ぬのも怖くて結局死ねないんですよ」
無意識にポロポロと涙がこぼれる。
「本当は生きたい、でも無力な自分が嫌い。このまま居ても、いつか誰かに要らないって言われるのが怖いです」
泣きじゃくる優美を温人は抱きしめた。
「やっと本音、聞けた」
「坂上くん?」
「ちゃんと弱音言えるようになったな」
温人が微笑みながら優美の頭を撫でる。
(一人で大丈夫なんて言わせない)
以前、優美にかけてくれた彼の言葉が脳裏によぎる。
優美はまた温人の温かさに救われ、不安はどこかへ消え、2人で笑い合いながら帰路についた。
一方その頃、闇の空間ではルイが不機嫌そうに過ごしていた。
「本当に生意気ね。竜一も光に付くなんて、バカばっかり」
「え? バカばっかりって、ギャグ? 寒〜い!」
ルキがおちゃらけながらルイをからかう。
「うるさいわね、違うわよ!」
「はーい、ごめんごめん。まあ、嫌でも思い知ることになるよ。光は無力だってことをね」
「ふん、それもそうね」
闇の空間の外れでは、何やら書類を広げ見ている2人組がいた。
「はあ、まだ終わんねえの? めんどくせえ、俺パス」
外ハネで、明るい茶髪の男が一人。
「やれやれ、仕方ないですねえ。あとは俺がやっておきますよ」
その横でため息をつきながら書類整理をしているのは、赤茶の長髪で、髪を1つ束ねた男が一人。
見た目も性格も正反対の2人が何やら話し合っていた。
「つーかさ。シャインクロスの持ち主が判明したんだからよ、そいつを狙えば良いだけじゃん。なんでまだターゲット探さなきゃなんねえんだよ」
「シャインクロスは物凄い力があるんですよ。それにしてはあの光は物足りなさすぎる。時空の歪みでシャインクロスもバラバラになり、まだ他に持ち主が居ると見てるんですよね、俺は」
「深読みしすぎじゃねえ? ま、綺羅は頭が良いからなあ」
「可能性はゼロではありませんからね。士季はこういう細かい仕事は苦手ですし実践向きですものね。そんなにめんどくさいならターゲットあげますよ。あ、やっと見つけた。はい」
綺羅が書類から写真を取り出し、士季に渡す。
それを見た士季は面白いおもちゃでも見つけたかのように笑う。
「刃霧亜衣。へえ、確か隣のクラスにいたよな」
「はい、士季はそちらを。俺は風春夏と美党真を仕留めましょう」
綺羅、士季という2人組は楽しそうに、不敵にニヤリと笑った。




