第7話 覚醒
「そろそろ終わらせよっか」
ショックで立ち上がれない優美をめがけて、ルキが攻撃を仕掛ける。
「天空、逃げろ!」
「優美! お願い、逃げて!」
温人達の声も届かぬまま、優美はルキの攻撃を諸に受け、その場に倒れ込んだ。
(――ここはどこ? 私、死んじゃったのかな)
優美は夢の中で暗闇を歩き続けている。
『死ねば良かったのに』
頭の中でルキの言葉が反復する。
そんなこと、私がよく知っている。
両親を亡くした日から分かってた。
誰からも必要とされず、誰からも哀れみの目で見られ、いっそのこと自分も死ねば良かったと思うことだって幾度もあった。
それでも。
温人達と会って変わった。
みんなに救われていた。
みんなともっと一緒に居たいと思った。
リリ、レオンと新しい仲間も増えて益々楽しくなった。
そこにはルキもいた。
それに、ルキに会えたから今の自分がいる。
なのに。
(生きたいと願うのは、罪なことなのでしょうか)
「それは違います」
そう思った瞬間、誰かの言葉が響き、目の前が眩しくなる。
ゆっくりと目を開けるとそこには空色の長髪をした美しい女性が現れた。
「誰?」
「私は翠、今はそれだけお伝えしておきましょう。いずれ私の事もわかります。あなたはあなたらしく生きるのです。あなたの中には、まだ目覚めていない力があります」
その女性は優美の胸元に手を当てると、まばゆくままに優美の身体が光輝き出す。翠はそれを見届けると、その場から去ろうとした。
「待ってください! 私はどうしたら…、教えて!!」
「あなたには全てを救う力があります。それを信じて、覚醒するのです」
そう言うと、翠と名乗ったその女性は消えてしまった。
次の瞬間、優美の視界も光でいっぱいになった。
「天空!くそ、この空間から出られねえ」
「あんた達、絶対許さないから!」
温人と空奈がルイを睨みつける。
「はいはい、好きに喚いてなさい。どうせ何も出来ないんだから」
ルイは笑って温人達を見下した。
「ねえちょっと、クソむかつくんだけどこいつ!」
「まあまあ。空奈、落ち着いて。綾乃も大丈夫?」
空奈に苦笑しながらも、リリは綾乃を慰める。
ルキの裏切りのショックで呆然としていた綾乃は、ずっと俯いていた。
「本当、やってられないよなあ。ショックだし腹立だしいし絶対絶命じゃん、こんなの。でもさ、なんでかな。負ける気がしないね」
顔を上げた綾乃はニヤリと意地悪く笑った。
「綾乃! さすが、そう来なくっちゃ!」
「バカね! こんな状況で勝てるとでも思ってるの?」
「悪いな、ルイ。俺たち光は諦めが悪いんだよ」
「そうだな、諦めなければなんとかなるものさ」
温人とレオンは頷くと、空から人が2人降ってきた。
「あれは…? 由文!?」
「仁美もいる!!」
空奈と綾乃が空を見上げると、そこには何故か由文と仁美の姿があった。
「みんな! お待たせ!!」
「仁美! 待ってた、信じてたぞ!!」
綾乃が嬉しそうに手を振る。
仁美は手を振りながらルキをめがけて攻撃した。
由文がその隙を狙い、すぐに優美に駆けつけ抱き抱えると、離れて治癒をし始めた。
「くっ、なんだ!? 僕の知らない能力者だと?」
空奈は前にルキの違和感に気付いていた。
由文がルキの姿が見えないこと、ルキの存在を知らなかったこと。
クロスもルキからもらったものではないこと。
その証拠に由文は現に変身できており能力も使えている。
「ナイス由文! 愛してる!」
「はいはい、知ってる」
治癒が始まると優美はゆっくりと目を覚ました。
「仁美ちゃんも遅れて参上! 黙ってやられるわけないでしょ、観念しなさい!」
「あんた1人で何が出来るっていうの? いくわよ、フレア、リップ!」
間髪いれずにルイ、フレア、リップは仁美に総攻撃を仕掛けた。
「お生憎さま、一人じゃないんでね!」
技が当たりそうな手前で、今度は竜一が現れ、仁美を抱きかかえながら2人で反撃する。
「竜一!? あんた、裏切り者だったのね!?」
「裏切るもなにも、勝手に信じたのはそっちだからね」
竜一はルキが先程言った言葉をそのまま返すと、ピクリとルキの眉が動き、ルキは竜一達を睨んだ。
「優美、大丈夫?」
「はい。直井さん、ありがとうございます…、助かりました。能力者だったのですね」
「うん、優美達のサポートをするからよろしくね。さあ、立てる?」
優美は頷き、力強く立ち上がった。
みんながいるから怖くない。もう何も恐れない。
その強い気持ちが共鳴するかの様に、クロスは再び輝きを取り戻した。
「ルキさん、私は何度だって諦めません。傷付いても傷付いても、前に進みます!」
優美のクロスが光ると、温人達のクロスも一斉に光出した。
それぞれ唱えると、光メンバー全員が変身に成功する。
「なんだと!」
ルキの力ではない、本物の光の力が目覚めたのだ。
優美の手には新たな武器が現れる。
――その時、木陰に隠れていた2人の姿があった。
「シールド! あれは!」
「ああ、ウィンディ、間違いない。シャインソードだ」
「シャインクロスの持ち主、ライトシャイン様の継承者だけが持てる、シャインソード」
優美は刀を振りかざすと、光輝く刀はルイ達を一斉に攻撃した。
「くっ!! 凄まじい力!」
「ルイ、このままじゃまずいよ!」
「こんなの耐えられないわ!」
それに合わせて温人達もそれぞれ攻撃を放つと、ルイ、フレア、リップ達は吹き飛ばされてしまった。
その一方ではルキと竜一が戦い合う。
「へえ、やるじゃん」
「そっちもね」
「まさかお前がスパイだったとはね。僕も気付かなかったよ」
「そっちこそ。悪いが光は負けないさ、後悔するんだな」
「お前のほうこそ」
「ルキ! 分が悪いわ、引き返すわよ。」
「はいはい。今日のところはここまでだね。シャインクロスの持ち主が分かっただけ良い収穫だ。じゃあみんな、まったね♪」
圧倒的不利になったルキ達はその場から去っていった。
「天空、大丈夫か?」
「坂上くん! みなさんのおかげで無事です!」
「良かったあ。仁美も帰ってきたし、一安心だよ。ツッコミどころはたくさんあるけど」
竜一と由文の姿を見て綾乃は呟く。
「こりゃ話が長くなりそうだね」
「何はともあれみんな無事で良かった!」
全員でホッとしているところに、木陰に隠れていたシールド、ウィンディという謎の二人組が現れる。
「お前ら!」
綾乃が警戒し優美の前に立ちはだかると、2人は敬意を示し優美の前に立ち膝をした。
「え、え?」
「よくお目覚め下さいました。」
「私たちはあなたが目覚めるのをずっと待っていたのです。ライトシャイン様の血を引く者よ」
「え…?ライトシャイン様?」
状況が理解できずに全員は呆気にとられた。




