第6話 裏切り
優美達は目の前で何が起きているのか理解が追い付かず呆然としていた。
「ルキさん、どうして…?」
「お前、闇の味方だったのか!?」
「嘘よ、そんな」
特に、ずっとルキと共に行動してきた温人と空奈は誰よりも戸惑いを隠せず目を見開いた。
形勢逆転からの、絶望。
信じ難い目の前の出来事。
「裏切り者!」
綾乃もまた、怒りと悲しみを隠せず涙を零した。
「残念でした。裏切るも何も、勝手に信じてたのは君たちでしょ?」
リリ、レオンも驚きを隠せずに立ち尽くす。
「どうして? あなた、何が目的なの?」
「俺たちを助っ人に呼んだのはルキだろ? 何を企んでる!」
「企むもなにも。僕は光なんか大っ嫌いなんだよねえ。それだけさ♪」
「今まで過ごしてきた日々は嘘だったのか?」
「嘘だよ。けっこう大変だったんだから〜、バレずに管理天使装うのさ〜」
絶望している光メンバーとは真逆に、ルキはいつもの口調で陽気に背伸びをしている。
温人はそのまま問答無用でルキに攻撃しようとした瞬間、全員の変身が解けてしまった。
「なんだ!?」
「嘘!? ファイヤークロス! クロスが光らない!」
空奈が何度か唱えても、変身できずクロスは無反応のまま。
「あはは! それさあ、クロスのダミーだよ。君たちのクロスは僕の力を入れてあったからね、変身出来なくて当然さ。危険信号が反応しなかったのもそのせいだよ」
「うふふ、ダークシールド」
ルイが静かに唱えると、優美だけ弾かれ他のメンバーは闇の空間に閉じ込められてしまった。
「みんな!」
「天空! くそ、お前ら!」
ゆっくりとルキが優美に近付く。
太刀打ちできない温人達はそれをただ黙って見るしかなかった。
「優美ちゃん? 僕はね、君みたいに真っ直ぐで考えの甘い子が大嫌いなんだ。なんでも出来るとか、信じてれば叶うとか。そういう綺麗事だけじゃ、上手くいかないんだよ?」
「ルキさん」
ルキは優美の頬に手を添えながら微笑んだ。
「あの時、死ねば良かったのに」
優美の目からポロっと涙が零れる。
過去の記憶が走馬灯のように流れる。
(可哀想にね)
(事故でお子さんだけ助かったのよ)
(人生これからだったでしょうに)
(両親がいないなんて、死んだ方がマシだったかもね)
周りの大人達がヒソヒソと話している。
子どもながらにその言葉は深く優美を傷付けた。
それでも、それでも優美は前に進んで必死で生きてきた。なのに、ルキの一言で今まで張り詰めていたものが溢れ出し、その場で座り込んでしまった。
「ルキ、お前! 天空に謝れ!」
「はいはーい。無力なくせにうるさいよ、温人くん。指くわえて見てなよ」
「ふふ、光も終わりね」
一方、仁美が闇の空間に戻ると、そこには竜一の姿があった。
何やら玉を使って人間界の様子を見ているようだ。
(バカ私! 目覚めなさいよ!!)
夜深の力に操られていたものの、仁美は自身で心の中から訴えかける。
「くっ!! 痛い!」
その度、闇の仁美は頭痛に襲われ、その場にかがんでしまった。
それに気付いた竜一が振り向く。
「あれ。仁美、大丈夫?」
「うるさい、ほっといて」
「すごいね」
「はあ? なに言ってんの?」
「光は強い」
「え?」
「操られてもなお、光の心が消えてない。仁美、いるんだろ? 俺には見えるよ」
「くっ! 頭が…!」
頭が割れそうなくらいの痛みに耐えていると、一瞬仁美は我を取り戻した。
「あ、あれ? 私…」
「光の中に闇があるというように、闇の中にも光がある。仁美を見てて確信したよ、光は強いと」
「あなたは?」
「俺は伊里竜一、闇の者だ。すまない、生まれつき盲目で何も見えないんだ。だけど、気配で分かる。君は強い」
闇の者と言う彼からは、とてもじゃないがそんなオーラは感じなかった。
「あなたは一体」
「これを見て」
竜一が覗いていた玉を見ると、そこには優美達の姿があった。
「みんな! どういうこと? なんでルキが闇側に」
「君たちのクロスはルキの力で出来ている。だからみんな変身できず戦えない状況だね」
「そんな! このままじゃやられちゃう!私、助けに行く!!」
飛び出そうとする仁美を竜一が腕を引く。
「そのままじゃやられるよ。まだ君は夜深の呪縛から解き放たれていない。また闇の君が出てくるよ」
「そんなこと言ってる場合じゃない! 助けに行かないと! というか、あなた、何者なの!?」
必死になって助けに行こうとしていた仁美だが、一度冷静になって竜一の存在に混乱する。
闇の者にしては、やはりオーラが不思議だ。
「あなた、本当に闇の人? 私にはそう見えない」
竜一は一瞬驚いたが、すぐに笑って言葉を続けた。
「俺はずっと、光に憧れていたんだ。盲目で暗闇しか見えなくて、光を見たかった。けれど、俺は生まれつき闇の血が流れているんだ。それを利用して闇に潜んでいた。いわば、スパイ役だよ」
「え? じゃあ、あなたは私達の味方なの!?」
「正解。この状況をどうしたものかと考えていたところ」
うーん、と考え込んでいる竜一に構わず仁美は彼の手を引いた。
「闇の血が流れてるって、それだけでここにいるなんて駄目だよ! 一緒に行こう! 光ならいくらでも見せてあげるから!」
「へえ、俺に光を見せてくれるの? それに、俺の言葉を鵜呑みにしていいのかい? 本当は悪い奴かもよ?」
「そんなことない! あなたからは悪いオーラを感じないもの」
「随分と強引だな。いいよ、その話に乗ろうか」
竜一が手をかざすと、仁美のクロスの中のどす黒い青のストーンが砕けた。
「これで大丈夫、もう闇の君は出てこない。ルキからもらった力も破壊したから、変身も出来るよ」
「わあ、ありがとう! 竜一ってすごい人だったんだね!」
「仁美が見つけてくれたからだよ」
「うっ! なんか照れるやい!」
「はは。面白いね、仁美は。そうだ、あと一人連れていかないといけない能力者がいるんだ。付き合ってくれる? それでも戦力は足りないけれど、あとはなんとかなると思うから」
仁美は頷き、竜一の後についていった。




