第17話 反撃
アクアが人間界へ降りると、気付かない間にユウキが後をつけていた。
「あんた、何してんの?」
「ユウキお姉様…!」
「ヒートも戻ってこないし」
「ユウキお姉様、落ち着いて聞いて欲しいの。実は…」
ルイという人物がデッドとやりとりしていた事。そして無能な者は消すという話をしていた事をユウキに打ち明けた。
「はっ…? なにそれ。バッドは知ってるの?」
「わからない…。でも、きっと利用されてるんだわ、私たち…」
「邪魔者は排除ねえ。そもそも、なんで私たちが生まれたのかも分からないのよ。利用されていてもおかしくないかもね」
2人で話していると、楽しそうな美斗の姿があった。
普通の人間となり、女子高生として歩いている彼女。
すぐさま二人はヒートだと気付き先にアクアが口を開く。
「あれは、ヒートじゃない?」
「すっかり人間の姿に戻ったみたいね」
「楽しそう…」
「アクアもヒートの様になりたいの?」
ユウキが質問を投げ掛けると、アクアは困ったような、どうして良いのか分からない表情で俯きながら言葉を続けた。
「私達、姉妹でよく揉めていたけど本当は仲良くしたいって思うわ。姉妹間で揉めて、役立たずとか言われて、責任のなすりつけ合いは嫌よ。ヒートもそうだったんだと思う」
「デッド様達のやり方が本当ならば、このまま消されるのは納得いかない。バッドに問い詰めてみるか…」
楽しそうなヒートを横目に2人で話し合っていると、今度は仁美と綾乃が歩いてきた。
「あれは水の能力者と雷の能力者…!」
「ちょうど良い、とっ捕まえてバッドをおびき出す。行くよ、アクア」
2人は気付かれないよう気配を消し、仁美と綾乃に襲いかかった。
「な、何!?」
「まずい、敵だ! 仁美、早く変身を…!」
「「遅いわよ!」」
アクアとユウキが二人で黒い霧を放つと、仁美と綾乃は眠りについてしまった。
「ん…、ここは…」
綾乃が目を覚ますと、そこは体育館裏の倉庫だった。
縄で縛られ身動きができない。
「くそっ、どうなって…」
「うーん…」
「仁美、大丈夫?」
「おはよ〜、あれ? ここどこ?」
「寝ぼけてるし…」
辺りを見回すと、少し遠くにアクアとユウキ、そこにバッドがいるのを確認出来た。
何やら3人で話している。
「仁美、気絶したまま少しやり過ごすぞ」
「ええ!? さっさと変身してこれ解こうよ!」
「いいから。ちょっと様子を見よう、何か情報が得られるかもしれない」
耳を澄ますと3人の会話が聞こえてきた。
「2人の能力者を捕まえるなんてなかなかやるじゃない」
「これで私たち2人は消されないか?」
ユウキが吹っかけるように話す。
「何を言ってるの?」
何も知らないような態度のバッドにアクアが必死に問い詰める。
「私、見たんです。デッド様とルイと名乗る人物がやりとりしていたところを! 邪魔者は排除するって。だからヒートは…」
アクアとユウキの言葉にバッドは笑いだした。
「だって、無能な者はいらないでしょ?」
「でも! 利用されてるかもしれないのですよ!?」
「デッド様は無能だった私を必要としてくれた。私たちなんて生まれた時点で必要のない存在だったのよ。利用される価値もない私たちを利用してくれるなんて幸せなことだわ」
「「え…?」」
アクアとユウキはバッドの言葉に理解が追い付かなかった。
「この世に必要じゃない存在なんていない!」
「ちょ、綾乃!」
バッドの言葉に我慢ならなかった綾乃が突然、3人に届くよう大声を出した。
「だってそうだろ!? 決めつけるなよ! お前らだって、意味があって生まれてきたんだ!」
「確かにそうだよ! 闇に呑まれちゃダメだよ!」
綾乃と仁美は、懸命に訴えかけるがそれを制止するかのようにバッドは声を荒げる。
「うるさいわね!! アクア、ユウキ。あいつらにトドメをさしてクロスを奪い取るのよ」
「綾乃、このままじゃやられちゃうよ! 早く縄を解かないと!」
「いや、大丈夫だ」
「え?」
「私はあの二人を信じてる。私たちの言葉は絶対心に届いてるはずだ」
アクアとユウキは顔を見合わせ、力を合わせるかのように両手を構え闇のエネルギーを集めた。
次の瞬間、勢いよく攻撃が放たれる。
「!?」
「ばいばい、お姉様!」
「誰がアンタの言うことを聞くか!」
攻撃が放たれた先は、バッドの方だった。
「くっ…! あんた達…」
バッドは二人の攻撃に耐えきれずその場に倒れ込む。
「アクア、ユウキ! どうしてバッドを…!」
仁美が驚きを隠せずにいたが、綾乃は納得のいく表情をしていた。
「利用されることが幸せだなんて思わないわ…」
「奇遇だね、アクア。私もよ」
「綾乃、この展開わかってたの?」
「いや、あの2人ならなんとなくそんな気がしたんだ。確信はなかったけどね」
その間に綾乃は縄を解いていたようで、2人は拘束から解放された。
ホッとしたのも束の間、間髪入れず今度はデッドが現れる。
「やあ、皆の衆。揃いも揃って騒がしかったね。アクア、ユウキ。お前達も用無しだ」
「デッド! お前、仲間達に向かってそれはないだろ!?」
「仲間? そんな生ぬるいものではない、そちらの仲間ごっことは違うのだよ」
デッドが指を鳴らすと、アクアとユウキの額の闇の紋章が割れ消えてしまった。
「さあ行こう、バッド」
「…はい、デッド様」
2人は消えてしまった。
――アクアとユウキを残して。
「…お前ら、これで良かったのか?」
綾乃が歩み寄るとアクアとユウキは頷く。
「いいの。私、本当は姉妹で仲良くしたかっただけ。ヒートもそうだったんだと思う」
アクアに続いてユウキが言葉を続ける。
「私も、ずっと違和感はあったしな。それに利用されるなんて御免だよ」
「それが2人の意思なら、正しいと思うよ」
仁美が優しそうに微笑み、2人の手を取った。
その後、綾乃と仁美は優美達に事情を説明し2人をヒート同様、人間に戻す事に成功した。
黒田 亜久亜
黒田 優輝
2人もまた、美斗と共に人間としての生活を送るようになった。
一方バッドは闇の空間に戻り、自身の怪我の治療に励みながら呟いた。
『美しい心を持ちますように、美斗。水の様に冷たく、冷静な判断ができるように、亜久亜。優しく輝けるように、優輝…』
それは、ブラック姉妹がまだ人間だった時に母親が願って付けた名前の意味だった。
「……あんた達は知らないだろうけど」
バッドは1人、闇の空間の奥で過去を見据えながら呟いた。




