第16話 不信感
「美斗っ!! 騙してたのね!?」
空奈はタイミングよく攻撃を避ける。
「私は美斗じゃない! 火の闇能力者、ヒートよ。あんたを倒してお姉様達もデッド様にも認めてもらう!」
「くっ…」
生憎、空奈のクロスはヒートが持っている為、変身が出来ずにそのままの姿で攻撃を避けるしかなかった。
(何か隙が出来れば、クロスを奪い返せるのに)
容赦なく攻撃を続けるヒートに向かって、空奈は冷静に言葉をかけた。
「あんた達姉妹は、本当の姉妹じゃないみたい。どうしてそんなに必死にならないといけないの?」
「な、何言って…」
「こんなことしなくたって、姉妹なら仲良くできるはず。闇に目が眩んでいるだけよ!」
空奈の言葉が心に重くのしかかってしまったヒートは動揺し、動きが鈍くなった。
(今だ…!)
空奈は素早くヒートの懐ふところに入り、バク転をするかのように軽くヒートの手元を蹴飛ばす。
すると、クロスがヒートの手元から離れて飛んでいった。
「しまった…!」
「やった! ファイヤークロス!」
すかさず空奈は火の能力者として変身し、すぐさまヒートに攻撃を仕掛ける。
「ファイヤーボルト!」
「きゃあっ!」
凄まじい炎がヒートを飲み込むと、ヒートはその場に倒れてしまった。
「くっ…、どうして…、こんなつもりじゃ…」
「観念しなさい!」
「まだ、まだよ…!」
「空奈さん!」
ヒートが体勢を直そうとすると、空奈の危険を察知した優美と温人が駆けつけてきた。
「大丈夫でしたか?」
「ええ、なんとかね」
優美、温人、空奈がヒートの方を見やると、ヒート側にもデッドとバッドが姿を現す。
「お姉様、デッド様!」
自身に加勢しに来てくれたと思ったヒートは、嬉しそうに二人に駆け寄る。
だが、バッドは見下すような表情で口を開いた。
「また失敗したのね、ほんとにどうしようもない妹だわ」
「待って、お姉様! 私はまだやれるわ! デッド様も見ていて下さい! もう一度チャンスを…」
デッドもまた、冷酷な笑みを浮かべヒートに冷たい言葉を投げ掛けた。
「ヒートよ、我が闇の一族に無能な者は要らないのだよ。さらばだ」
デッドはヒートに向かって指を指すと、ヒートの額にあった赤い闇の力の紋章が割れた。
「嘘…、こんなことって」
額にある赤い玉の紋章は堕天の印であり、闇の印。
これが壊されるということは、闇の空間にも行けず追放されたも同然だった。
行き場所を失ったヒートはどうすることも出来ず目の前が真っ暗になる。
バッドとデッドは構わずヒートを見捨てその場から消え去ってしまった。
ショックを受けたヒートは、その場で崩れ落ちる。
「なんだ? 仲間割れか…? まあ良い、とどめをさしてやる」
温人がその隙に攻撃をしようとすると、ヒートは暴走したかのように優美達を睨みつけた。
「あんた達さえいなければ…、こんなことにはならなかったのに!!」
「逆上か!? 観念しろ!」
ヒートの圧に怯ひるむことなく、温人が攻撃しようとした、その時。
「待って、温人! 攻撃しないで!」
空奈がすかさずヒートの前に立ちはだかった。
「空奈…! ここでやらないとまた闇の思うツボだぞ!」
「もう…、十分よ」
空奈はそっと言葉を漏らすと、振り返りヒートを抱きしめた。
「辛かったわね、ごめんね」
ヒートは空奈の行動に目を見開いて、驚く。
しかし、色々な気持ちが溢れて止まらずに、次の瞬間声を出して大泣きしながら空奈にしがみついた。
「敵といえど、色々あるみたいだな」
その様子に温人にはもう攻撃の意思は無く、二人を見守る。
「酷いです…、こんなやり方」
優美もまた、ギュッと悔しそうに拳を握る。
「闇の連中は仲間を何だと思ってるんだ…」
空奈は泣きじゃくるヒートの背中を撫でながら、1つ提案した。
「ねえ、優美の光の力でヒートを人間にできないかしら? このままじゃ、ヒートは一人ぼっち。居場所がないわ」
「それもそうですね。私、やってみます!」
「お願い」
優美は光のロッドをかざしながら想いを込め、浮かんだ言葉を唱える。
「シャインリセット!」
次の瞬間、眩しい光の玉が無数に現れヒートを包み込む。
すると、ヒートの姿は空奈と出会った時の人間の姿へと変わっていった。
「すごい! 優美、ありがとう」
「やっぱり天空の力は特別なんだな…」
その光景に温人と空奈は圧巻される。
それと同時に優美は只者ではないと改めて実感した。
「上手くいって良かったです!! それにしても、闇のやり方は許せません」
「そうだな…、直ちに闇を制圧しないといけない」
3人は頷き、改めて闇の深刻さを受け止めた。
そして、数日後。
ヒートは人間へと生まれ変わったが、優美の力で闇の記憶と能力者の記憶は一切無くなった。
黒田 美斗くろだみととして、空奈の友人として、闇ではない道を歩み出したのであった。
「空奈、おはよう!」
「おはよう、美斗!」
今までの、どこか寂しそうな表情のヒートの面影はもう無い。
笑顔で空奈達と共に学校生活を送るようになった。
一方その頃。
「無事に無能なヒートを消すことができたのね」
「ルイか。無様なものだよ。今や記憶を失い、光の能力者達と過ごしているのだからな」
「邪魔者は排除しなければ闇の勢力は強まらないわ。次のターゲットはあの子かしら? ふふ」
デッドとルイの会話を影で聞く者が1人。
アクアだった。
(ヒートが…、嘘でしょ…?)
気付かれぬ様にそっと二人の様子を伺う。
(まさか、こんなことになっているなんて。そもそも、あのルイとか言う女は誰?)
その光景に不信感でいっぱいになったアクアは、自分達は利用されているのでは無いかと疑い始める。
そして、次のターゲットは自分かもしれないと察した。
「やられてたまるものですか…」
アクアは真実を確かめに、ヒート同様、隠れて人間界へ降りる事を決めその場を後にした。




