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第15話 迷い

空奈の勢いと強引さに圧倒され、彼女の家に来てしまったヒートは困惑しつつもこの状況をどうにかモノに出来ないかを試行錯誤していた。


(この人…、火の能力者。倒すには大チャンスだよね)


「何ボーッとしてるの! 早くシャワー入りなさい、風邪引いちゃうわよ」


まさか敵を家に招き入れているとは気付かずに、空奈は雨でびしょ濡れだったヒートにシャワーを貸し、着替えまで用意してくれた。


今がチャンスなのに…、と思いつつも空奈の優しさに戸惑い、ヒートは何も出来ずにいる。


「あなた、名前は? 私は空奈」


「え!? えっと…、美斗みと! 美斗です」


ヒートは困惑しながらも咄嗟とっさに思いついた名前を言う。


「あんなところで何してたの? 風邪引くじゃない」


空奈はお湯を沸かし、温かい紅茶まで準備してくれていた。


その姿を見て、ヒートは人間の優しさに戸惑いつつも初めて触れる心の温かさが心地良く、気付けば自身の気持ちを打ち明けていた。


「お姉様達にね、あんたはいつも失敗ばかりでって怒られるの。私、悔しくて…、家出しちゃって」


「そうだったのね。 美斗はどうしたいの?」


「え? 私…?」


「うん、美斗の気持ちは? そう言われてあなたがどうしたいと思ったか。それが1番大切なんじゃないかしら」


自分の気持ちなんて考えた事が無かった。

末っ子だからと、自分は姉達の言う通りに動かねばならない存在だと思っていた。


「わ、私は…、認められたい。お姉様達に認めてほしい。頑張ってるところを認めてほしいだけなの…」


ヒートの本音が溢れる。

空奈はその姿に優しく微笑んだ。


「そっか、そしたら見返してやりましょ! 頑張ってるところ、ちゃんと行動していれば絶対分かってくれるわよ」


「そっか…、うん! 私、頑張ってみようかな。ありがとう、なんか元気出ちゃった。でも、どうして見ず知らずの私なんかに優しくしてくれるの?」


「放っておけなかったからよ」


「それだけ?」


「ごめんなさいね、強引で」


人間って不思議だ。

知らない相手にも、こんな優しく手を差し伸べてくれるんだ。


目の前に火の能力者がいるのに、チャンスなのに。

どうして自分は攻撃できないのだろう。

でも、今はそんなことをするのは違う気がした。


「見ず知らずの私に色々とありがとう。そろそろ行くね」


「こちらこそよ。風邪ひかないようにね! お姉さん達と仲直り出来るよう応援しているわ!」


いつからだろう。

いつから姉妹仲が悪くなったのだろう。

そもそも、どうして自分が闇にいるのかも知らないし、わからない。


ぐるぐると悩みつつも、ヒートは空奈の家を後にした。

テーブルの上にあったクロスを盗んでー…


次の日。

雨は上がり、天気は晴天。

優美が学校へ向かっていると後ろから肩をポンと叩かれた。


「天空、おはよう。昨日はサンキュな」


「坂上くん! おはようございます。元気になったみたいで良かったです!」


そこにはすっかり元気になった温人の姿。

そのまま2人で登校すると、玄関には綾乃と仁美がいた。


「おー、おはよ! 温人も復活かー!」


「朝からラブラブですなぁ〜」


仁美がこそっと優美にイタズラそうに笑う。


「なっ、そんなこと…!」


ついついあの日の出来事を思い出し真っ赤になってしまう。

微笑ましい朝のやり取りにまたもや聞き覚えのある声が割り込む。


「みんなグンモーニン!」


「げ、ルキまで来た」


「綾乃ちゃーん? げってどゆこと!?」


微笑ましかったやり取りもつかの間、慌ただしく今度は空奈が息を切らしながら走ってきた。


「おはようございます、空奈さん。どうしたんですか?」


「クロスを無くしちゃったのよ…」


その一言に全員が戦慄する。

いつも能天気なルキでさえ、今回ばかりは目を見開く。


「無くしたあ~? そりゃ、一大事じゃないの」


「ルキ、あんた天使なんだから探すのなんて簡単でしょ!? 協力しなさいよ!」


「僕にそんな能力ありませーん!」


「使えない天使なんだから! ということなので、みんな、クロス見かけたらよろしく! じゃ!」


空奈は息つく間もなくその場から走り去って行った。


「だ、大丈夫でしょうか…」


「「なんとかなるって」」


脳天気に仁美と綾乃がハモる。


「そんな心配しなくても大丈夫だろ、あいつなら見つける気がする」


「ですが…、私も捜索協力を全面的に!」


優美もクロスを無くした事があるからこそ分かる。

無いと気付いた瞬間、全身が凍りつくような感覚。

協力できることはしたいと思う優美だが、彼女は突っ走る節があり天然である。

だからこそ、世話焼きな彼女が心配で仕方ない温人がいた。


その気持ちが分かってか、ルキが面白そうに割り込んだ。


「『俺は天空が心配なんだー!』…って言いたいんでしょ? 温人くんは♪」


「ふっ、まったく…………、殺すぞ?」


温人は満面の笑みでルキの肩を掴む。


「あははー、あは、冗談です! 申し訳ありません! 許して下さい」


ルキは温人の殺気に耐えきれずその場から姿を消した。




一方、空奈は学校から抜け出しため息をつきながら周辺を探す。


「はあ…、どこに落としちゃったのかしら。落とした記憶もないんだけどなあ」


キョロキョロしていると、人にぶつかってしまった。


「すみませ…、って、あれ? 美斗!」


「空奈…」


「ごめん、ぶつかっちゃって。大丈夫?」


「うん、大丈夫。空奈こそ慌ててどうしたの? もしかして捜し物?」


「そうなのよ、大切なネックレスを無くしちゃって」


「探し物って、これ?」


「どうして美斗が? 拾ってくれたの?」


「盗んだんだよ」


「え?」


周りに真っ黒な霧がかかる。

勢いよく霧が美斗にかかると、一瞬でヒートの姿になった。


「嘘!? アンタだったのね…!?」


「頑張ってるところ、お姉様達は分かってくれるってあなたが言ったから。だから、私と闘って!」


ヒートはクロスを奪ったまま、手から黒い炎を生み出し空奈へと目掛けて攻撃してきた。


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