第14話 警戒心
ここ数日、闇の勢力であるブラック姉妹は突然姿を現しては優美達を襲っていた。
最初は押されていたが、優美達の絆が深まれば深まるほど光の威力は増していく。
戦いの末、あと一歩と言うところで優美達を仕留められないブラック姉妹。末っ子のヒートはいつも姉妹たちにアンタのせいだと責められていた。
「どうしていつも私ばっかり。お姉様達だって全然勝てないくせに!」
ヒートは責められる日々に嫌気が差した。
闇の空間から飛び出し、人間の姿に成り代わって息抜きに人間界を散歩することにした。
――その頃、光原高校では。
ルキがみんなを屋上に招集させたが、集まりが悪く、この場内には優美、仁美、綾乃、ルキの四人しかいない。
特に、温人の姿が見受けられない事に優美は違和感を感じる。
そういえば温人が熱を出し欠席した事を思い出した。
それに、空奈もいない。
その集合の悪さに苦笑しながらルキは口を開く。
「いや〜、今後の話をしようと思ったら温人が学校休んだみたいでね〜」
「私、きっと風邪を移してしまったんですね…」
自責の念に駆られる優美。
それを綾乃と仁美が励ます。
「大丈夫だろ! すぐ治るって」
「そうだよそうだよ! 心配なら学校終わってからお見舞いに行ってみたら?」
「そうします…」
「そういえば、空奈は?」
「なんか用事あるとかで来なかったんだよねえ。またそのうちみんなで集まろう」
メンバーが揃ってからまた話し合うことに合意し、その場で解散した。
一方その頃、用事があると顔を出さなかった空奈は由文と話していた。
実は、空奈は不可解なことが引っかかっていたからだ。
ルキから招集を受けたと由文に言ったとき、彼はルキの存在を知らなかったのだ。
本来であれば、その場で由文が能力者であることを皆に紹介しようと思っていたが、その事があまりに不可解で空奈はあえて誰にも言わない判断をとったのだ。
「ところでルキって誰?」
「天界の管理をしてる天使よ。天使ってガラじゃないふざけた奴なんだけど…」
「うーん、知らないなあ」
「自殺してから、生きるチャンスを与えられた時に管理天使がいたはずよ。覚えてない?」
由文はしばらく考え込み記憶を辿ると、ハッと思い出したかのように口を開いた。
「ルヒネって天使だ! でも、確かルヒネは自分以外の天使に関わるなって言っていた」
空奈は不思議そうに首をかしげる。
「私達は逆にそのルヒネっていう天使を知らないわ。それに、関わるなってどういうことかしら」
「俺にもさっぱり」
「そう…、下手な動きはできないわね。もう少し様子を見ましょう。由文は能力者だってことは皆には隠しておいて。わかった?」
「おっけー。空奈も何かあったらすぐに言ってくれよ、約束な」
「うん、ありがとう。頼りにしてるわ!」
温人と空奈は、自殺した後にルキからクロスをもらい能力者となった。
残りの能力者のクロスは各地に散らばったとルキが言っていたが、その持ち主が仁美と綾乃。
特殊ではあるが、ルキ曰いわく天界の手違いで死ぬ予定だったと言っていた優美も、散らばったクロスの持ち主の一人。
ルキが関与していない能力者は由文だけ。
空奈は何かが引っ掛かり、しばらくは警戒することにした。
一方その頃。
帰りのホームルームが終わると優美は一目散に学校を飛び出た。
温人へプリントを届ける名目でお見舞いに向かう。
住所を確認しながら温人の家の前に無事辿り着いた優美は、ドキドキしながらもチャイムを鳴らすとガチャリとドアが開いた。
「坂上くん、あの、突然すみません。体調は…、ってきゃあ!」
そこには上半身裸の汗だくの温人が出迎える。
「おー…、天空。わざわざ悪い」
「坂上く、あ、あの、服を!」
「ああ、汗かいたから着替えようかと思って…。おっと」
ふらついた温人は優美に寄り掛かってしまった。
「わ、わわわ坂上くん…! どうしましょう!」
目のやり場に困りながらも、この状況はとにかくまずい。
家に上がらせてもらい、なんとか温人をベッドまで誘導する。
横になってもらうと、温人はすぐに寝入ってしまった。
温人の家族の話や自殺の経緯を聞いた事がなく無知だったが、どうやら一人暮らしをしているようだ。
部屋の中は片付いておりシンプルなものしか置いていない。
何かを食べたり飲んだ形跡もない。
「坂上くん、お節介だとは思うのですが台所をお借りしても大丈夫ならお粥かゆでも作りましょうか?」
ボーッとした表情で温人は優美を見つめる。
「いいのか?」
「坂上くんさえ良ければ」
「……甘えさせてもらおうかな」
「任せて下さい!」
優美はさっそく台所を借りて調理を始めた。
両親を亡くしてからは何でも自分でやってきた。
優美は自炊も得意で手際よくこなしていく。
しばらく台所で作業していると声がし、振り返るとベッドで休んでいた温人が起き上がっていた。
「悪いな…」
「いえいえ、とんでもないです。ささ、出来ました」
優美は熱々のお粥とお味噌汁を持っていくと、温人はさっそく食べ始める。
「いただきます…」
無言で黙々と食べ進める温人。
その様子に優美はヒヤヒヤしている。
しょっぱすぎないか、味は大丈夫か…、と緊張しながら温人を見つめる。
しばらくすると、温人はやっと口を開く。
「う、うますぎ…」
「わあ、良かったです!」
「ほんとに美味い。あったかいんだな、人が作る飯って」
温かい眼差しで微笑む温人。
日に日に彼の表情が柔らかくなっていく。
当初はあんなに無愛想だった温人があまりにも色々な表情を見せてくれる。
優美は時々困ったような、嬉しいような、くすぐったい気持ちになった。
一方その頃、由文と話し合った後の帰り道で別れた空奈は足早に歩いていた。
「もう、最悪! めっちゃ雨降ってきたじゃない!」
「お姉様のバーカ!!!!」
「ん?」
どこからか大声がする。
振り向くと、びしょ濡れのまま叫んでいる女の子が立っていた。
空奈は放っておけずに彼女の元へ駆け寄り声をかけた。
「ちょっと、大丈夫? びしょ濡れじゃない!」
空奈に声をかけられた彼女は驚きを隠せずに挙動不審になる。
(やば! 人間に声かけられちゃった…、ってこいつは!)
その女の子は人間の姿に扮ふんしたヒートだった。
ヒートは空奈が火の能力者だということに気付いたが、空奈は目の前の女の子が敵であるヒートだとは全く気付かない。
「とにかく風邪引くわよ! 家においで!」
「え、ちょ、大丈夫だから!」
「いいから!」
半ば強引にヒートは空奈に連れ去られた。




