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第12話 曇りのち晴れ

よく、周りから優しいねと言われる。

でも、自分ではそんなことはないと思う。


優しくありたいとは思うけれど、自分の中にモヤモヤしているなにかが時々顔を出してくる。


「仁美、おはようっ!」


「優美! おはよっ!」


私達は本当に仲間なのだろうか?

このクロスがあったから、一緒に居るだけかもしれない。

そうやって、モヤモヤが心を隠していく。


チャイムが鳴ると二人はまたね、と手を振り自分のクラスへと戻った。


(うう…、なんか今日は体の調子が悪い)


ぐったりしていると綾乃が教室に入ってくる。


「はよーっ、あれ? なんか浮かない顔してるぞ?」


「うーん、なんか調子が悪くて」


「保健室行ってきたらどう? 一時間目は選択授業なんだし、単位なんて大したことないっしょ」


「そうする…」


中学の時から同級生の綾乃には全部お見通しだ。

綾乃の言う通り無理をせず、仁美は保健室へと向かう。

保健の先生は丁寧に対応してくれた。


「うん、熱もないし風邪気味ってわけでもないし大丈夫そうね。少し寝ていきなさい。先生はちょっと他の仕事で保健室空けるけど、寝てていいからね」


「ありがとうございます…」


自分でわかっていた。

多分、モヤモヤのせいでここ最近寝不足だったということを。


(少し寝たら次の授業から出れそう…)


仁美はベッドに横になり目を閉じた。

よほど寝不足だったのか、すぐにストンと夢の中へ誘われる。


(仁美は優しいから好き)


(仁美って何されても怒らないよね。楽だわ)


(仁美は聞き分けが良くて良い子ね)


小さい頃からそうだった。

私は誰かにとって、都合が良いから一緒にいるだけ。

両親からも「良い子」を押し付けられるのでそれを演じているだけ。


本当の友達って何だろう。私って何だろう。

全然分からなかった。


ただ、綾乃だけは違う。自分自身を見てくれる。

真正面からぶつかってきてくれるし、思ったことも言い合える。

喧嘩したとしても、仲が崩れることはない。


だけど、今回はどうだろう。

優美は本当に仲間なのか?

友達なのか?

そう考えてしまう自分がいることに対し自己嫌悪の繰り返しだった。


夢の中でさえもそんなことを頭のどこかで考えていると、慌ただしく保健室に誰かがやってきた。

思いきり開けられたドアの音で目が覚める。


「痛ってえー! 先生ー!」


どうやら綾乃の声のようだ。


目が覚めた仁美がベッドから起き上がりカーテンを開けると、そこには傷だらけの綾乃がいた。


「はあ!? 何してんの!?」


「いや〜、私の選択授業は体育だろ? 派手にやっちゃってさ〜!」


「派手にやりすぎでしょ…、先生いないよ?」


「マジ? じゃあ仁美が手当てしてよ!」


「もう、仕方ないなあ…」


椅子に座り、器用な手付きで綾乃を手当てしながら仁美は口を開いた。


「ねえ。私さ、綾乃のことは親友だって思うんだけど…、優美のことはわからないの。クロスがあったから一緒にいるだけで本当の友達なのかな?」


「浮かない顔してたのはそれかあ」


それ以上は綾乃は何も言わなかった。

すると、またもや慌ただしく保健室に誰かが入ってくる。

そこには汗をかきながらぐったりしている優美を抱えた温人がいた。


「え!? どうしたの!」


「天空、突然ぶっ倒れてさ。多分熱ある」


温人がベッドまで運ぶと、仁美はアイスノンなどを用意し苦しそうな優美から流れる汗を拭いた。


「風邪かな…、心配だね」


「まあ、色々あったし疲れも溜まってたんだろうな。詳しくは知らないが、こいつ、親いないみたいだし。1人で色々やって大変なのもあるんだろ」


「そうなんだ…」


「お前らが保健室にいるなら俺は戻る。あとは頼んでいいか?」


「おう! まかせとけ!」


「綾乃は怪我人でしょうが!」


「あ、そうだった」


先生が戻るまでの間、2人で優美の看病をする。

どうやら熱が下がってきたようで優美の呼吸も表情も安定してきた。


「あ、あれ…、私」


「目、覚めた? 大丈夫? 途中うなされてたし心配だったよ!」


「すみません…! 2人が見ててくれたのですか?」


「おう、運んだのは温人だけどな!」


「そっか…。みなさん、本当にすみません」


「なーんか、優美も浮かない顔してるな。なにかあったのか?」


しばらく俯いた後、優美はゆっくりと口を開いた。


「いつも、寂しい夢を見るんです。両親が出てくる夢。手を伸ばしたらいつも消えてしまって、私はいつもひとりぼっちなのです」


「優美…」


仁美は心がぎゅうと締め付けられる。


「両親は、私が小さい頃に交通事故で亡くなってるんです。そして、このクロスは両親からお守りにともらったもの。形見なのですが…、能力者とか色々あったから、それで疲れて滅入っていたのかもしれません」


仁美と綾乃は真剣な眼差しで優美の話を聞いていた。

優美は柔らかく優しい表情で二人を見つめ言葉を続ける。


「でも、最近皆さんが夢に現れるのです。1人じゃないよ、仲間だよって。仁美が手を取ってくれて、そこで目覚めたら2人がいるからびっくりしちゃいました」


クロスをぎゅっと握りしめる。


「こんなことがなかったら、空奈さんや仁美、綾乃…、坂上くんもルキさんも、仲間じゃなかったのかなって考えるときもあるんです。だけど」


一度間をあけ、優しい表情で言葉を続ける。


「運命が決めたわけじゃない。私が皆さんを仲間だと思ってるから。勝手なんですけど、悲しい夢の中に最近現れるみんなに救われてます」


屈託くったくのない笑顔を2人に向ける。

仁美はその瞬間、心のわだかまりが消えた。


「そっか…、そうだね! 優美、無理しちゃだめだよ。困ったらなんでも言ってね。私、大切な友達の力になりたいから」


仁美と優美が笑い合う横で、見守るように綾乃も微笑む。


(結局1人じゃないんだよ、仁美…! ちゃんと笑えてるんだから)


いつも都合が良いからと上辺だけの友達ばかりだった。

だけど今回は違う。


仁美の心のモヤモヤはもうすでにどこかへ消え、すっかり晴れ模様になった。


第13話へ続く。

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