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追放されたので廃村でのんびりしてたら、なぜか最強の街になってました  作者: 南蛇井


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第3話 初無双

森を抜ける頃には、空はすっかり明るくなっていた。


「そろそろ人の気配があってもいいんだけどな」


レインは木々の間を抜けながら、軽く周囲を見渡す。


その時――


「くっ……! 囲まれた!」


鋭い叫び声が、前方から響いた。


「……ん?」


足を止め、耳を澄ます。


複数人の気配と、荒い息遣い。

それに混じる、明らかな戦闘音。


(冒険者か?)


少しだけ迷ってから、レインはそちらへ向かった。


開けた場所に出ると、状況はすぐに理解できた。


三人の冒険者が、魔物の群れに囲まれている。


「数が多すぎる……!」


剣を振るう男。

後ろで支援を試みる魔法使い。

だが、防ぎきれていない。


相手は五体以上。

しかも、一体一体がそこそこ強い。


「このままじゃまずいな」


レインは小さく呟いた。


逃げる余裕も、立て直す時間もない。


普通なら、助けに入るのはリスクが高すぎる場面だ。


だが――


「まあ、なんとかなるか」


軽く一歩、踏み出した。


「ぐっ……!」


冒険者の一人が膝をつく。


その瞬間、魔物が一斉に襲いかかった。


「まず――」


間に合わない。


誰もがそう思った、その時。


「ちょっとだけ、調整して」


レインの声が、場に落ちた。


次の瞬間。


魔物の群れが、消えた。


音もなく。

抵抗もなく。


ただ、そこに“いなくなった”。


「……は?」


剣を振りかけていた男が、空を切る。


目の前にいたはずの魔物が、影も形もない。


「え……?」


魔法使いが呆然と呟く。


「今、何が……」


状況を理解できないまま、全員が固まっていた。


その中で、レインだけがいつも通りの調子で近づいてくる。


「大丈夫ですか?」


「……あ、ああ……」


反射的に答えながら、男はレインを見る。


そして、ようやく気づいた。


この場に、見知らぬ人物がいることに。


「お前……今、何をした?」


「え?」


レインは少し考える。


「普通に倒しただけですけど」


「普通にって……」


男の声が震える。


「いや、今の数は……上級者でも対処が――」


言いかけて、言葉が止まる。


説明がつかない。


目の前で起きたことが、常識と噛み合わない。


「……とにかく、助かった」


ようやくそれだけを絞り出した。


「ありがとうございます!」


他の二人も頭を下げる。


「いえいえ、たまたま通りかかっただけなんで」


レインは軽く手を振った。


「気をつけてくださいね。数が多いと危ないので」


「いや、その“数”を一瞬で――」


言いかけて、再び黙る。


何を言っても無駄な気がした。


理解の外にある。


そうとしか言えない。


「じゃあ、俺はこれで」


レインは特に気にした様子もなく、その場を離れようとした。


――その時。


「待ってください!」


澄んだ声が、背後から響いた。


レインが振り向く。


そこにいたのは、一人の少女だった。


長い金髪に、整った顔立ち。

簡素な旅装ではあるが、どこか気品を感じさせる。


だが、その服はところどころ破れ、息も乱れている。


明らかに、先ほどまで追われていた様子だった。


「あなたが……助けてくれたんですよね?」


真っ直ぐな視線で、レインを見る。


その瞳には、驚きと、確信が混ざっていた。


「えっと……まあ、近くにいたので」


レインは少し困ったように答える。


「そう、ですか……」


少女は一歩近づく。


「……ありがとうございます」


深く頭を下げた。


「本当に、助かりました」


その声には、はっきりとした感謝が込められていた。


レインは少しだけ戸惑いながら、


「いえ、無事ならよかったです」


と答える。


少女は顔を上げると、じっと彼を見つめた。


まるで、何かを確かめるように。


「あなた……」


小さく呟く。


「ただの冒険者、ではありませんよね?」


「え?」


レインは首を傾げた。


「いや、普通だと思いますけど」


その返答に、少女は一瞬だけ沈黙し――


ふっと、微かに笑った。


「……そういうことにしておきます」


そして改めて、名乗る。


「私はリリアといいます。しばらく、この辺りを旅していて……」


言葉を切り、続ける。


「もしよろしければ、少しだけご一緒してもいいですか?」


「え?」


予想外の提案に、レインは瞬きをした。


「一人だと、少し心細くて……」


そう言いながらも、その目はどこか強い意志を宿している。


(……なんだろう、この人)


レインは少しだけ考えてから、


「まあ、危なくない範囲ならいいですよ」


と答えた。


その瞬間、リリアの表情がわずかに明るくなる。


「ありがとうございます」


そして、心の中で確信する。


(やっぱり、この人――)


ただ者じゃない。

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