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追放されたので廃村でのんびりしてたら、なぜか最強の街になってました  作者: 南蛇井


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第15話 現実

「……足、引っ張らないで」


出発してすぐ、カレンは振り向きもせずに言った。


森へ向かう道中。

無駄のない歩幅で進みながら、その声だけが後ろへ飛ぶ。


「はい」


レインは素直に頷いた。


特に気にした様子はない。


その反応に、カレンは小さく眉をひそめる。


(本当に分かってるのかしら)


今回の依頼は、軽くない。


――上級魔物の討伐。


それも単体ではなく、周辺に複数の個体が確認されている。


油断すれば、命を落とす。


「状況が分かってるならいいわ」


カレンは短く言い捨てた。


「無理だと思ったら、すぐ下がりなさい」


「分かりました」


やはり軽い。


リリアはそのやり取りを横で聞きながら、少しだけ苦笑した。


(きっと、意味が逆になるんでしょうね)


やがて、目的地へと到着する。


木々が密集した、視界の悪いエリア。


「この辺りよ」


カレンが立ち止まる。


空気が、重い。


「……気配が濃い」


低く呟く。


普通の冒険者なら、それだけで警戒を強めるレベル。


「複数いるわね」


周囲を見渡しながら、剣に手をかける。


「まずは一体ずつ――」


その時だった。


――ズシン。


地面が揺れる。


「……!」


カレンの表情が変わる。


「この振動……一体じゃない」


直後、木々をなぎ倒すようにして現れた。


一体。


二体。


三体。


どれもが、明らかに“上級”。


「……冗談でしょ」


カレンの声が、わずかに硬くなる。


想定を超えている。


一体なら問題ない。


だが三体同時は、さすがに厳しい。


「下がって!」


反射的に叫ぶ。


「これは――」


戦術を組み立てる。


一体を引き離し、順に処理。


そのためには――


「まず――」


考え終わるより早く。


「ちょっと多いですね」


レインが、いつも通りの調子で言った。


「……え?」


カレンが振り向く。


その瞬間。


「少し減らしますね」


レインが一歩、前に出た。


あまりにも自然に。


止める間もなく。


「ちょ――」


声が出る。


だが、遅い。


魔物たちが同時に動く。


三方向からの圧。


普通なら回避すら困難な状況。


だが。


「んー……」


レインは少しだけ考えるようにして、


「これくらいでいいか」


と呟いた。


手を、軽く振る。


――次の瞬間。


三体すべてが、消えた。


同時に。


音もなく。


痕跡すら残さず。


「……は?」


カレンの思考が、完全に止まる。


視界の中から、脅威が消えている。


さっきまで確かに存在していたはずの“上級”が。


「え……?」


一歩、踏み出す。


何もない空間に。


「……今の、は……?」


理解しようとする。


だが、何も繋がらない。


攻撃動作も、魔法詠唱も、何も見えなかった。


ただ、“結果だけが存在した”。


「終わりました」


レインが、普通に言う。


「他にもいますかね?」


「……」


カレンは答えられない。


視線が、ゆっくりとレインに向く。


(何、こいつ……)


背筋が、わずかに冷える。


強い、というレベルではない。


次元が違う。


「……偶然?」


かろうじて、言葉を絞り出す。


自分でも無理があると分かっている。


だが、それしか言えない。


「どうでしょう」


レインは首を傾げる。


「たまたま、かもしれません」


その一言で、完全に折れた。


「……は?」


カレンの口から、間の抜けた声が漏れる。


否定が、成立しない。


理屈が、崩壊する。


「……ありえないでしょ」


小さく呟く。


その声には、もう強さはなかった。


リリアは、その様子を見て小さく微笑む。


(やっぱり、こうなりますよね)


これで一人。


“理解してしまった側”に来た。


「戻りましょうか」


レインが何事もなかったように言う。


「はい……」


カレンは、反射的に頷いてしまった。


まだ思考は追いついていない。


ただ一つ、確かなことだけが残る。

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