607.【後日談7】猫パ その11
・トミタ(猫)視点
班対抗ゲームが始まるまでの、15分の休憩時間中。
俺達爪とぎ班のメンバー、尻尾に鐘が付いた赤紫毛皮のネコ科魔獣、ニャ・カンパネニャが友達のところから戻ってきた。
戻って早々、体が半透明な黒猫魔獣、ゴースト・キャットと喧嘩している。
「ピゥ(あぁ? 何つったてめー!?)」
「みん(すみませんが、班対抗ゲームでは、皆さんに協力はせずに、むしろ足を引っ張らせていただきます)」
「ピァウ(ふざけてんのかぁ!?)」
「にゃー(まぁまぁ、落ち着いて)」
2猫の間に割って入る。
「にゃー(ニャ・カンパネニャ。協力しないってのは、何か理由があるのか?)」
「みんむ(いえ、特に……)」
「にゃー(そうか。これは俺の予想なのだが、さっき他の班の友達のジョバンニャと会ってたことと関係あるのか?)」
「……」
目が泳いでるな。
「にゃー(ジョバンニャの班を優勝させたいと思ってるのか?)」
「みん(……参りました。さすが肉球魔王様、噂通りの慧眼ですね。
そうです。ジョバンニャは僕の大事な親友です。
ジョバンニャの家は貧乏で、加えて母子家庭で、その母親も酷い肺炎を患っていて、毎月高額な薬代を払っています。
僕はジョバンニャに、経済的支援を何度も申し出ました。
僕の家は経済的に恵まれていて、彼の支援程度は何でもないことなのです。
でもジョバンニャは支援を断りました。
自分が働いて薬代が払えるうちは、自分で払う、と)」
多くのネコ科魔獣はそもそも家庭を持つことが無いのだが、彼らの出身地域は例外的に家庭を持つらしい。
それに多くのネコ科魔獣は人間と違い、母親が死にそうになったとしても、自分の身を削ってまで助けようなどしない。
「にゃー(この猫パで賞金が貰えるのを知り、ジョバンニャの班を優勝させようとしたのか)」
「みむ(僕の支援を受けないジョバンニャも、賞金なら受け取るだろうと思いまして)」
なるほど。それで俺の班の足を引っ張ろうとしたのか。
おそらく、ジョバンニャ以外の他の班の足も引っ張るつもりだったのだろう。
「にゃー(だけどその必要は無いと思うぞ、何故ならジョバンニャの母親は……)」
「みん(えっ、ジョバンニャの母親に何かあったのですか!?
そういえば彼も母親の話を避けていた……まさか!?)」
「にゃー(いや、この前、参加者全員の親族や友達の健康診断と治療が大規模に行われてな。
ジョバンニャの母親の肺炎も完治したぞ。
それで元気になった彼女は、働きだして、そのお金でネコ科魔獣用ホストに通い詰めている)」
「……」
ニャ・カンパネニャは、ポカーンと口を開けている。
「にゃー(まぁ、言葉を失うのも分かるが。
要するにジョバンニャはもう、母親の薬代に悩まなくて済むというわけだ)」
「みむ(そう、ですか。それは良かったです……良かったです?)」
「ピゥ(何だよぉ、てめー友達思いのいい奴じゃねぇか!)」
ゴースト・キャットが、ニャ・カンパネニャのお尻をポンポンと前足で叩く。
仲直り出来たようで何よりだ。
「にゃ!(休憩時間、終了! ここからは、班対抗ゲーム!
最初の種目は~、お宝さがし!)」
15分間の休憩時間が終わり、白い猫又ミルフィーユによるアナウンスが行われる。
ほぅ。お宝さがし、とな。
◇ ◇ ◇ ◇
・人間ら控え室にて
ネコ科魔獣達が連れてきた奴隷の人間達は、会場の隣にある控え室に集められていた。
控え室のモニターからは、猫パの様子が放送されている。
そして控え室には、数多くの料理やおやつが並べられていた。
奴隷の人間達は料理やおやつをビュッフェ形式で取り、テーブル席に着いて食べていた。
「もぐもぐ……お宝さがしだってよ。聞いたことあるか?」
「むしゃむしゃ……いや? 初耳だな……にしても、ここの料理は美味いな」
「あぁ。中でもこのギュードンおにぎりは格別だ」
連れてこられた人間は35人なのだが、ここに居る人間は40人以上。
というのも、しれっと運営側の人間も混じっているのだ。
黒髪長身の男が1人、足を組んでモニターを眺めていた。
「人工音声さん、準備は出来てるか?
……何? 最近人が変わったみたいにきちんと働くのは何で、だと?
俺が無職だと、穂が外でいじめられるかもしれないだろ!
考えすぎ? そうか? 子どもの世界は割と残酷だぞ?」
独り言をブツブツ言ってるヤバイ奴に見えるので、誰も彼の元に近づかないが。
彼こそがこの猫パの運営の1人、ダンジョンマスターの伊乃田命である。
「よし、ミルフィーユ側の準備も完了だな。
ちょちょい、っと」
伊乃田命がチケットを振ると、そのチケットが消え、猫パ会場内部が数百倍広くなった。
そして会場内に、ボロボロの洋館や空飛ぶ大きな城といった、謎の場所が10個ほど現れたのだった。




