605.【後日談7】猫パ その9
無駄に沢山ネコ科魔獣が登場しますが別に覚えなくても大丈夫です。
・トミタ(猫)視点
「にゃ!(まずは自己紹介だよ! 各班にアラーム時計があるから、1分ごとに1人で、交代で自己紹介してね!)」
ヴァン。
音とともにネコ科魔獣達の顔の横に、文字が現れる。
ARってやつだな。
文字の内容は、名前(種族名とか)、住んでる場所、好きな食べ物、得意なこと、だ。
各魔獣の大まかな特徴は、宙に浮かぶ紹介文カードを見れば分かる感じか。
まるで紹介文カードだな。
おっと。時間も無いし、始めるとしよう。
「にゃー(まずは俺から自己紹介しよう。時計回りで、順番に自己紹介するか)」
「みー(時計回りって何ですか?)」
大人のネコ科魔獣の精神年齢は、人間で言えばだいたい5歳~60歳相当と振れ幅があるが、多くは10歳相当くらい。
次に多いのは5歳相当くらい。
なので、あまり難しい言葉とか、内容とかは分からない。
3番地のピンポン猫には、時計回りは難しすぎたようだ。
「にゃー(よし分かった。俺が指さした順に自己紹介しよう)」
「ピゥ(おいおい肉球魔王様よぉ、何勝手に仕切ってんだよぉ)」
体が半透明な黒猫魔獣、ゴースト・キャットが俺の尻尾をテシテシとつついてくる。
「にゃー(じゃあお前が仕切るか?)」
「ピァ(いいぜぇ、任せ……)」
「グルルル!(弱い奴には従わないの~♪)」
リオン君のお手伝いをしている赤い豹の魔獣、ブラディパンサーが文句を言う。
「ピゥ(あん? やんのかぁてめー?)」
「グルルゥ(えーいなの♪)」
ブラディパンサーが、ゴースト・キャットを簡単に押さえつけてしまう。
勝負ありだ。
ピピピピ。1分経過。
「にゃー(俺の自己紹介時間は終わりだ。
まぁ俺の事は知ってる奴がほとんどだから自己紹介は要らんだろ。
次は焔猫、お前の番だぞ)」
「おぁん(うーん、すぴーすぴー)」
全身、青い炎のような毛をゆらゆらさせたネコ科魔獣、焔猫は昼寝中だった。
「にゃー(じゃあ飛ばして、ジョンさん家の金髪ロールマンチカン)」
「ふしゃー!(何よ!? 急に話しかけないでちょうだい!)」
……?
何で俺は怒られたんだ?
「ニォ(な、何でじっと私を見つめるのよ!?)」
「にゃー(いや自己紹介を)」
「ニァ(キャアアアアアーーー!! エッチィイイイイイイイ痴漢ーーー!!!!?)」
俺が近づいて前足で触ろうとしたら、ぴゅーっと逃げられてしまった。
誰が痴漢だ、失礼な。
「にゃー(じゃー、次、アンニャ)」
「あんなー(知らない場所で、知らない人の前で、自己紹介!)」
「にゃー(いやここは学校区画だから知ってるはずだろ、あと俺達は人じゃなくて猫な)」
「あーんなっ(知ってる場所で、知らない猫の前で、自己紹介!)」
駄目だ、ネコ科魔獣達のノリに付いていけない。
俺も、もう年なのだろうか。
ピピピピ。1分経過。
黒ブチ模様のネコ科魔獣の1体、通称アンニャは、ふああとあくびをする。
「にゃー(タイマーは気にせず、自己紹介を続けてくれ)」
「あんなー(えー、だるーい)」
「にゃー(じゃあいいや、次)」
「ピゥ(ようやく俺の番かぁ! 俺は中央都市チザン生まれチザン育ちの魔獣!
その名は、ゴースト・キャット! 好きな事は、透明になってイタズラすることぉ!
好きな食べ物は肉! 今日は楽しませてくれよぉ?)」
ゴースト・キャットが右前足でシャドーボクシングする。
本人はイキってるつもりなのだろうが、可愛いしぐさにしか見えない。
ピピピピ。1分経過。
「にゃー(次ブラディパンサー)」
「グルゥ(ブラディパンサーなの~♪)」
……。
「にゃー(そんだけ?)」
「グルルゥ(なの~)」
「にゃー(じゃあ次、3番地のピンポン猫)」
俺の肉球くらいのサイズの白いネコ科魔獣、ピンポン猫がペコリと一礼する。
「みぃ(はじめまして、ピンポン猫と申します。
魔獣都市のピンポン猫専用区画の3番地に住んでいます。
趣味は漫画、好物はマグロゼリーナ。本日はよろしくお願いします)」
「にゃー(こんなに小さい子が頑張って自己紹介してるというのに、お前らときたら……)」
「ピィア(俺はちゃんと自己紹介しただろぅ!)」
「グルルゥ(肉球魔王様はそもそも自己紹介すらしてないから、偉そうな事言えないの~♪)」
ぐうの音も出ない。
ピピピピ。1分経過。
「にゃー(次はニャ・カンパネニャ……は他の班の所に遊びに行ってるのか。
じゃあ次、魔の通り18番地の口裂け猫)」
「ナニィ(どうも口裂け猫です。商売にこういう物を作っています。ささっ、どうぞどうぞ)」
白いネコ科魔獣の口裂け猫から、三角形の肉ミンチを固めた物を渡された。
班の他の奴らにも渡している。
むくっ。青い毛をユラユラさせてるネコ科魔獣が起き上がる。
「おぁーん!(これは我が大好物の、肉おにぎりの匂いなのだ!)」
「にゃー(起きたのか焔猫)」
「おぁぁ(説明しようなのだ! 肉おにぎりとは、外側が肉ミンチ、中層に肉、一番内側に肉が詰まった食べ物なのだ!)」
「にゃー(全部肉じゃねーか)」
「にゃ!(おーい、そこ~、お食事会まで飲食は禁止だよ!)」
司会のミルフィーユに怒られた。
俺達は肉おにぎりを四次元空間に仕舞う。
ピピピピ。1分経過。
「にゃー(あと自己紹介してないのは、中央都市チザン、商業区画ベイクドポテト通り出身の猫トラくらいか)」
「な(うっす。猫トラっす)」
「にゃー(……それだけ?)」
「な(っす)」
大きな体の割に、シャイな性格をしている黒いトラ柄のネコ科魔獣、猫トラは自分の毛づくろいを始めた。
あんまり喋るのは好きじゃないらしい。
これで全員、自己紹介終わりか。
ここに居ないニャ・カンパネニャはスリーニャイン出身、それ以外は全員マタタビかチザン出身で、全員魔獣国チザン出身だな。
他の班には、他の国出身のネコ科魔獣も居るみたいだが。
自己紹介が終わってしばらくすると、翼と足を机に固定されたカラス魔獣が運ばれてきた。
「にゃ!(ではでは~、次はカラス魔獣の羽むしり! 共同作業で、班内の親睦を深めてね!)」
誰だこんな残酷な企画を考えた奴は。
「みゃー(うひょおお!)」って歓声が聞こえるが、テンションが上がってない俺の方がおかしいのだろうか。




