013 失礼で黒い
ギルド個室も三度目だなぁ。
「もしかして昨日の続き?」
「はい。今回の件で懲りました。冒険者の基本や必要なことを教えていただき…」
トントン ガチャ
返事も無しで扉が開き、銀髪で20代前半のヒョロッとした軽そうな男性が入って来た。どこかで見たことある気がする。
「初めまして。君たちがカノちゃんとノンだね。ほんとに小さいな。マジで16なの?8歳じゃないの?」
「…アレグラさん、この超絶失礼な方はどなたですか。」
ゴッ
男性がアレグラさんに殴られて椅子から転げ落ちた。
「ごめんね。こいつは私の弟のティーノ。昨日ギルド新人研修が終わってここに配属されたのよ。」
「あはは。ティーノだよ。よろしくね。」
ティーノさん立ち直り早いな。
「はぁ…。カノコと猫でクロヒョウのノンです。」
「ノクターンだ。」
二人とも銀髪美形で同じような顔なのに、しっかり者の姉とお調子者の弟というのが一目でわかる。
「さっきの話だけど、冒険者を勧めた責任があるからできるだけサポートさせてもらうわ。でもちょっと仕事が忙しくなっちゃったのよ。私の代わりにこいつになんでも聞いて。」
「よろしく~。」
手を両手で握られてブンブン握手された。
「これでもギルド採用試験トップなのよ。」
「そうだよ。だから大船に乗った気持ちでドドーンと頼っていいよ!」
うわぁ。大丈夫かギルド。
不安になる私とノンちゃんを残し、アレグラさんは退出してしまった。ティーノさんに相談してなんとかなるのかな。
「さてと…。事情は姉さんから聞いてるよ。早速だけど重要度の高いのからいこうね。」
おおっ。切り替え早っ。やる時はやるタイプ?
「まず武器だ。短剣は扱えないんだよね。」
「はい。でも使えそうなのを考えました。モノになるかは練習次第ってとこですが。」
「短剣がダメなのに他って大丈夫?」
「殺傷能力としては微妙だが、短剣を扱うよりはマシになると思う。ただ、創らざるをえないから武器屋を教えてほしい。」
「そっか。じゃあギルドを出て北に2ブロックの武器屋がいいよ。」
「この後すぐ行ってきます。」
「次は召喚師についてだね。実は召喚師自体の人数が少なくてよくわからないっていうのが現状なんだ。」
そもそも成れる基準が不明。剣士や魔導士のようにある程度の技量があれば練習次第で成れるのとは違うってことくらい。
召喚獣にする詮術も不明。対象と戦闘して勝てば対象を召喚獣にできるという場合もあるが、勝利しても必ず召喚獣になるとは限らない。負けても従う場合もあるとか。
「私、ノンちゃんと戦ってないですよ。」
「そこなんだよね!僕の推測としては対象の意思が関わってるんじゃないかと。大前提は召喚スキルのレベルだけどね。」
「レベルが高ければ遵従できる。但しそこには対象の意思も必要、か。ということは対象のレベルが下なら必ず従うという訳ではないんだな。」
「そうだと思うよ。じゃないとカノちゃんはなんでも召喚獣にできるってことになるからね。」
「そういえばレベルが下のはずのモグーとは話が通じる気がしませんでした。」
「でしょ。そもそも獣や魔獣は意思疎通ができるかもあやふやだしね。とにかく不明なことばかりなんだ。で、これ以上の情報はない。ごめんね。」
自分で探っていくしかないってことか。いつか他に召喚獣を得たら聞いてみたいな。それと召喚師に会えたら聞く機会があるかもしれない。
「次はカノちゃん自身のことだよ。」
「私?」
「一番初めの話と繋がるけど、なんで短剣使えないの?武器の基本だよ。」
だよねー。そこも大きな認識の違いだと思う。
「武器を全く使ったことが無いんです。」
「え。全く?」
「ええ。私が居た世界には魔物が存在しません。狂暴な動物や戦争も身近にはありませんでした。」
「なるほど。武器を必要としない場所なのか。だからそんなのほほんとしてるんだね。」
のほほん?!
「採取している時も一切警戒しないからいつも俺が周囲を見張っていた。」
「え、知らなかった。ありがとうノンちゃん。」
「…こりゃダメだ。」
「だろ?」
なんだろう。なんだか疎外感を感じる上に腹が立つわ。
「納得したよ。姉さんの説明不足の原因は、きちんと話をせず突っ走っちゃって武器を使えるものだと思い込んでいたことと、身近な脅威の有無だね。猪突猛進の姉さんの悪い癖が出たな。」
「いいえ。私もこの世界の常識を知ろうとしていなかったです…。」
「わからないことは知ればいいんだから、もう気にしないでね。」
「はい。ありがとうございます。」
自分の常識がこの世界の常識とは限らない、と心に刻んでおこう。
「これで終わりか?武器屋行くぞ。」
「うん、終わり。またなんかあったらなんでも聞いてね。手とり足とりいーっぱいでも教えちゃうよ!」
「…聞くことがないことを祈っててください。」
頭良くていい人ではあるみたいだけど、ものすごく胡散臭さが漂うなぁ。
早速武器屋へ行こうとドアノブに手をかけたら
「あ、そうそう。ハゲデブに爪跡つけたの、ノンなんだって?いい仕事したね。」
と言われた。
ハゲデブ?爪跡?
…!! 私を放り出した人か!
「ああ。あれしか出来なかったのが残念でならないがな。」
「ティーノさんはあの人と知り合いなんですか?」
ティーノさんはニッコリと良い笑顔を向けてきた。
「顔見知り程度だよ。でも、よーーく言い聞かせたといたからね。二度と会わないだろうから安心してね。」
「あり、がとうございます…。」
「……。」
黒っ。笑顔が黒いよ!以前見たアレグラさんの笑顔と同種だ。ノンちゃんも何も言えなくなっている。
何をしたのか聞いちゃいけない気がするので、私たちは速攻お暇して足早に武器屋へ向かった。
「よーーく言い聞かせたといたからね」の裏が閑話休題にあります。
よろしければご覧ください。




