「前世の記憶を思い出した。此処には推しが生きている!」
ガルディー歴 1280年 四の月 五日
前世の記憶を思い出した。この世界は私が前世で好きだった乙女ゲームの世界だ。ということは、推しが生きている?
なら推しの生存を確認しなければ。
ガルディー歴 1280年 四の月 八日
お兄様に推しのことを聞いた。推し、生きている。私よりも一つ年上、お兄様と同じ年だと知った。
私は推しの一つ年下。ということはもしかしてゲームの時期に学園に通える? 最高!!
ガルディー歴 1280年 四の月 十日
まずは状況を整理しよう。私について。
私はクライネア・ルーファブル。七歳。結界を維持する五つの侯爵家の内の一つ、ヒートティア侯爵家の分家筋の家だ。
私が知りうる限りは乙女ゲームの世界には出てこなかったはず。ファンブックなどを余すことなく見た私に死角はないと思いたい。
完全なるモブ。ただ私の見た目、結構目立ちそう。それに私は魔力量がとても多いものらしい。
その辺に関しても目立つ要因になりそう。
推しがこの世界で生きていると知ってからというものの、私は目標を定めた。それは折角だから推しのことを見守ろうということだ。だって推しが生きているのだもの。推しが穏やかに生きて、幸せに生きられるようにしたい。
ガルディー歴 1280年 四の月 十三日
まずは髪色を変えてみた。両親には不思議そうにされたし、お兄様には「何をやっているんだ?」と呆れられた。
お兄様はモブのはずなのに、とても綺麗な顔立ちをしている。それこそ攻略対象を張ってもおかしくないぐらい綺麗で、目の保養だ。
私がお兄様を見てニマニマしていると、「気持ち悪い顔をするな」と冷めた目で見られた。
お兄様はとても優秀である。私が魔法の腕を磨きたいって言ったら、何だかんだ面倒を見てくれている。
私はお兄様のことが大好きだ。
ガルディー歴 1280年 四の月 十四日
私はモブで、まだ幼いためノルケーシア様に会うことは叶わない。その姿を見ることも難しいのだ。
折角推しが同じ世界に生きているのに見られないとか悲しい。嘆いていたら、お兄様から理由を聞かれた。
お兄様から問い詰められて、ノルケーシア様のことを私が特別視していることを知られた。お兄様は少し不機嫌そうにしていたものの、ノルケーシア様の肖像画を入手してくれた。
私の宝物になった。
ガルディー歴 1280年 四の月 十八日
ノルケーシア様の現在の肖像画。可愛らしくて幾らでも見ていられる。今のノルケーシア様は八歳。
ということは二年後にはノルケーシア様のトラウマになる事件が起きる。辛い過去があるからこその乙女ゲームの推しが居ることは分かっている。だけれども私はノルケーシア様が辛い目に遭うのが嫌だ。
ゲームでの推しと異なることになったとしても、私は推しには幸せでいてほしい。だからそのために力をつけないと。
ガルディー歴 1280年 四の月 二十二日
新たな供給はもらえないので、私はノルケーシア様の肖像画を元にして彼の絵を描くことにした。
前世でも私は推しの絵を沢山描いていたのだ。
推しのことを少しでも美しく描くための努力は惜しまない。
ガルディー歴 1280年 四の月 二十五日
推しのことを見守りたいので、それに特化した魔法を使いたいなというのが本音だ。
私は実家にある本を読みつつ、推しを見守るためにどんな魔法を学んだ方がいいかというのを試行錯誤することにした。
お兄様は私が何をしたいか聞いた後、呆れながらもどんな魔法を覚えた方がいいか教えてくれた。
お兄様ってやっぱり凄い。転生者である私よりも頭が良い。お兄様を見ていると、私って凡人なんだなって思う。お兄様って天才って奴だもの。なんでモブの私の兄がこうなんだろう? と不思議だけど、有難いことではある。
ガルディー歴 1280年 四の月 二十七日
推しを見守るために必死になった。お兄様は結構スパルタで、私に対して容赦ない。私が魔法を一生懸命学ぼうとしていることを知ってお兄様は真面目に教えてくれているのだ。
子供である私が誰かを見守りたいからなんていう理由で魔法を学びだしたことをお兄様は馬鹿にはしなかった。私の言葉をきちんと聞いて、私のために色々教えてくれた。両親もそう。私がやりたいことをやらせてくれていて、私は家族に恵まれているなと嬉しくなった。
珍しく「お兄様、大好き!」って言ったら呆れられた。でも照れていたっぽい。私も恥ずかしいからこんなことはたまにしか言わないのだ。




