「ギルド間でのいざこざと、ギルドマスターとしての地位の確立」
ガルディー歴 1280年 五の月 三日
相変わらず先月から他ギルドとのいざこざで面倒だ。
ギルド設立は良いことばかりではなくて、こうして面倒なことも起こりうるから現実って夢がない。
楽しいことばかりを出来ないのは、当たり前のことだけれど少しうんざりする。
早く片付けたい。
ガルディー歴 1280年 五の月 五日
騎士やお兄様達との連携が進む間に私は襲ってくるギルド面々をひきつけて、とっちめている。
私の使っているのは人形の身体なので、最悪、捕まったり壊されてどうにかなりはする。とはいえ、自分の作った人形が敵対している者達の手に渡るのは嫌だなとは思う。
それにギルドマスターという立場なのに、やられてばかりもかっこ悪い。
『幻妖の魔女』なんて素敵な呼び名をされているのに、すぐにやられてしまうような強さしか持ち合わせていないなんて私は嫌。
それに周りに広めてはいなくてもお兄様の妹だもん。その私が不甲斐ないことをするわけにもいかない。
ガルディー歴 1280年 五の月 六日
『幻妖の魔女』の名はギルド外にも広まりつつあるらしい。
それは良いことだけれども、恐怖の象徴みたいに悪い風に広まるのは少し嫌かも。
可愛くないもの。私も女の子だから、そっちで有名になってもいいのにな。もっと人形を可愛くすべきだろうか。
それにまだ一体しか細かい操作が出来ていないから、もっと色々操れるようにならないと。
簡単な操作なら複数出来るけれど、まだ足りない。
ガルディー歴 1280年 五の月 九日
騎士団の方で対処を正式に進めてくれていると聞いているけれど、そのことを察した連中が過激な行動を起こしている。
ギルドメンバーの一人が攫われそうになってしまった。こちら側の者を全員再起不能に出来れば抑え込めるとでも思われているのだろうか。
そもそもそう言う力づくで抑え込むのって何れ限界がくるものだと思う。
こういう問題のあるギルドが王国内に蔓延っているのが私は許せない。だってここは推しの生きている国なのだから。
そもそも乙女ゲームの時期に起きていた問題って、王国内でああいったギルドが行動を起こしていたから起きたかもしれない。
そう思うと気合を入れて解決しようと思った。
ガルディー歴 1280年 五の月 十二日
私の人形が魔法を使われて一体、壊されてしまった。
気に入っていたものなのに。でも誰かが人質にされたりするよりはましか。
これからしばらく、戦闘のための人形作りに勤しむことにする。
ガルディー歴 1280年 五の月 十五日
人形作りで忙しい。
敵に負けないようにしたいから、一生懸命気合を入れて作っている。
想定通りの働きが出来るならばいいけれど、どうだろう? まだ完成までは遠い。
ガルディー歴 1280年 五の月 十八日
今日はテレミアから色んな報告を受けた。
向こうのギルドは一部が摘発されたりして、捕まったりもしているらしい。
だからこそ余計に焦っているようだ。お兄様も国内の騎士団の正常化のために働きかけてくれている。それも焦りの理由の一つなのだろう。
あとはギルドマスターである私が出てこないことは、人形が破壊されて身動きが取れないからとか言っているらしい。
そんな風に侮られるのは凄く不愉快。どうにかしよう。
ガルディー歴1280年 五の月 十九日
戦闘用の人形が完成した。人形経由で魔法を使いやすいような素材をふんだんに使った。
貯金を少し崩してしまった。その分、破壊されにくく作れたはず。
これが壊されたら、私は泣いちゃうかも。だってかなりの労力と貯金をつぎ込んだのだもの。
どうか、壊されませんように!
ガルディー歴 1280年 五の月 二十三日
推し活用の祭壇には毎日祈りを捧げている。
本人には恥ずかしいし、知られたくない気持ちだけど、ノルケーシア様への感情はどこかに吐き出したくなるのだ。
それに近いうちに例のギルドとやりあう予定なので願掛けも込めて祈る時間を長めにした。
ガルディー歴 1280年 五の月 二十六日
今日は問題のギルドが最後の抵抗とばかりに襲い掛かってきた。
私一人で全員身動きが取れないようにしておいた。やはり新しい人形は以前のものよりも使い勝手が良い。
思うように魔法を使えて、人形を動かせて私はとても満足した。
だって気分が良いもの! 今回の人形は等身大で、人の使う武器なども使えるようなものなの。
魔法だけじゃなくてちゃんと武器も使って倒したよ。
たった一人相手、いや、正しく一体の人形というべきだけど、それでも大勢で襲い掛かったのに勝てなかったことで戦意喪失したみたい。
恐れるぐらいならば、最初から手出しをしてこなければいいのに。
ガルディー歴 1280年 五の月 二十八日
『幻妖の魔女』の名はこの一件で私が思っているよりもずっと大きく広まっていった。
ギルドマスターとして、ギルドメンバーたちにもより一層認められたみたい。嬉しい。
あのギルドも無事に潰れたし、これまでの余罪を調べられているらしい。そのあたりは国が動くので私にとってはあずかり知らぬことだ。
『黄昏賛歌』の名も有名になっているし、結果的には良かったと言える。
ノルケーシア様の祭壇への報告も長々とした。これで推しが暮らしやすくなるはず。




