モネ……(5
感想を下さる読者様。有り難く読ませていただいてます。
ありがとうございます(*^^*)
余裕が無くてお返事出来ず、申し訳ない(T-T)
前話から大変間が開いてしまい……お待たせしました(汗)
しかも[モネ]最後って言っといて……
どうにも短く纏まらず_:(´ཀ`」 ∠):
後もう1話……続きます!
モネはティアの恋心を摘まない様に……しかし過度に囚われないように導く事を目指した。
夢見る時間を可能な限り伸ばしてあげたかった。
だから、ティアに寄せられる婚約の打診をジェイデンに断る様導く———。
「モネ」
モネが廊下を歩いていると、テオに声をかけられた。
「テオ様。何かご用ですか?」
「……いや……用がある訳じゃないんだけど……ちょっと聞きたい事があって……あのさ……ティアの婚約についてなんだけど」
テオが言葉を濁しながら質問してきた。
「父上がまた……ティアへの婚約の打診を断ったって聞いたんだけど……モネはその理由を何か知ってる?……父上に聞いても『まだ早い』の一点張りで……執事長も侍女長も『旦那様のお決めになった事ですから』って言うし……どう言う考えがあっての『まだ早い』なのか……気になって……」
疑問を隠さずモネに探りを入れてくるテオ。
モネは、見あげる程大きく成長したテオの腕にそっと触れた。モネの瞳が怪しく光る。
「《きっと旦那様は奥様そっくりのティア様をまだ大切に側に置いておきたいのですよ》」
「………………そうなのかな……」
少しぼんやりした口調になったテオに、モネはニッコリ笑って言葉を続けた。
「それに坊ちゃまだって、婚約は最近なさったじゃないですか」
その言葉に目を瞬き、テオの顔はみるみる赤くなる。
「『坊ちゃま』はもうやめてって言っただろ! 確かにそうだね! 学園に入学したら好きな人が出来るかも知れないしね! 分かったよ! この話はもうお終い!」
首まで赤くしたテオは足音を強く立てて去っていく、その背中をモネはクスクス笑いながら見送った。
◇
「淑女には社交性も大切です」
そうは言っても、女主人のいないラクリマ家は女性ならではの社交……お茶会や読書会、刺繍や音楽など趣味を交えた交流が難しかった。
それも相まって、控えめな性格のティアは交友関係を広げられずにいたのだが……。
その問題はテオの婚約者になったシャルロッテ・ビンカ子爵令嬢が解決してくれた。
焦げ茶色の髪に明るいオレンジの瞳、テオと同じ学年だが小柄なせいか年齢よりも幼く見える可愛らしい令嬢。
テオとの交流と合わせて家族ぐるみでの付き合いも親密になり。
『近い将来義妹になるのだから』と、シャルロッテの母親を介したお茶会に積極的に招いてくれる。
勿論モネはビンカ子爵家の事を徹底的に調べる様、ジェイデンを導いた。
教団との関わりが一切無い事に安心し、今後も関わりが無い様にジェイデンがビンカ子爵家を導く。
「教団と敵対したいわけじゃないんだが、面談の時の印象があまりにも良くなくてね。関わらない様距離が取れていれば安心です」
そう話せばビンカ子爵夫妻は同意してくれた。
シャルロッテの母親の交友関係は良好なものばかりだったが……。
テオが婚姻相手として人気が高かったせいで、シャルロッテ自身には同年代の令嬢から嫉妬の目が向けられた。
勿論テオはしっかりとシャルロッテを守ったが、中には度が過ぎる行為を行う令嬢もいて……テオがモネに愚痴として懸念や気掛かりを溢せば、モネは悪質な令嬢達を取り除く様に画策した。
(お互いに潰し合えばいい———)
シャルロッテに向ける悪意では同士でも、テオに向ける恋情では仇同士なのだから、お互いを攻撃する様に仕向けるのは簡単だった。
そうして使い続けたモネの能力は、少しずつ力を増していく。
◇
テオは早くジェイデンの負担を軽くしたくて、学園に通う段階から領地経営についても積極的に学んでいた。
テオとシャルロッテは学園を卒業すると早々に婚姻し、二年後にティアが学園に入学するのを見届けてからラクリマ伯爵領へ移り住む事にした。
歳の離れた妹を心配するテオを気遣ったシャルロッテからの申し出だった。
「私もすぐに両親と離れるのは寂しいし」
そう言って自分の我儘を装う様に気遣うシャルロッテにモネは目頭が熱くなる。
(サーシャ様……坊ちゃまの選んだ女性はとても素晴らしい方です)
◇
義姉になったシャルロッテとティアの仲は良好で、子爵夫人の手助けもあり、ティアの社交力は順調に培われた。
シャルロッテが次期伯爵夫人としてお茶会を主催し、ティアと同年代の令嬢を大勢招いてくれれば、その子らがティアが主役のお茶会に足を運んでくれる繋がりになった。
お茶会に来てくれる令嬢は皆んな好意的で、ティア単体で誘われる事も増える。
交流が増えるのは良い事だったが……モネは教団の影に不安を覚えた。どこかの令嬢が。
『お父様に連れられて礼拝に行ったの。その後お祭りもあって、とっても楽しかった』
そう言っていたのを聞いた。
この国の崇める神はフェイバー神のみで、町や村には必ず一つや二つ教会がある。
教会は教団の末端の更に末端……ただ普通に神を崇め、祈りを捧げ、平民に寄り添っている。
外界と隔てる様に大きな壁に囲われ、聖域があるとされる教皇領に構える教団の傘下ではあるが、必ずしも教団の意向に全幅の信頼を持って従っている訳では無かった。
末端過ぎて、教団本部とは別物と言っても良いほどに教団の意向は行き渡っていない。
ただ神を信仰する事と教団に関わる事は違うと分かったが、それが見極められない事にモネは静かに怯え……
ティアと交流する令嬢達に『教団への小さな不信感』を植え付ける事にした。フェイバー神への信仰と教団を別物と扱う様に導く事にしたのだ。
力を増したモネの能力は、物に暗示を残せる程まで強くなっていた。微力だが『小さな不信感』には事足りる暗示。
「お帰りの際に贈るギフトは茶会で出した茶葉や焼き菓子が良いのですよ」
モネのアドバイスで令嬢達にギフトを持たせ、好印象を残すと共に、ラクリマ伯爵家とビンカ子爵家を教団の脅威から退けることが出来て……。
そうやってモネは心の平穏を手に入れた。
◇
この頃、モネは一人の男性から告白をされた。
「ずっと……可愛いなと思ってて……結婚を前提に付き合って貰えないかな……」
ラクリマ家に物品を卸している商会の次男で、勉強で下働きの経験を詰んでいた青年。モネと会話したのは二度程しかなかった。
搬入を終えたあと、モネの休憩時間になるのを待っていたそうで……取った帽子を強く握りしめ、耳まで真っ赤にしての告白だった。
「あ……えっと…………」
人生で初めてされた告白。ドキドキと早い心臓にモネも顔が赤くなる。
だが、心を占めるのはラクリマ家の面々……。
『守ってあげて……』
サーシャの言葉が頭に響く。
「——————ごめんなさい」
「や……いや……いいんだ! ダメ元だったから! 俺、下働きの修行が終わって、もうここには来ないから。ダメ元で気持ちだけでも伝えようと思って……だから気にしないで!」
「すいません……」
「いいんだって……ダメ元だったから。聞いてくれてありがとう……あ〜……それじゃぁ…………さよなら」
そう言って手を振り去っていく青年に、モネは深々と頭を下げる。
モネは、一番最初に頭に浮かんだのがジェイデンだった事の意味には気付かない———。
◇
淑女教育を堅実にこなしたティアは十三歳になる年、学園の中等部に入学した。
それを見届けたテオとシャルロッテは、ラクリマ伯爵領へ移り領地の運営の殆どを任され、ジェイデンが秘書官と共に回していた仕事を引き継ぐ。
信頼出来る秘書官がそのままテオに付いて導いてくれるので、ジェイデンは安心して王都で伯爵家の行っている事業に集中する事ができる様になった。
モネは変わらずジェイデンの寝室に足を運ぶ。頻繁ではないが理由は様々……。
教団の影がチラつき恐怖を覚えた時。
ジェイデンが心労で疲れた様子の時。
ティアについて助言を伝えたい時。
夜毎、瞳にサーシャの姿を映したジェイデンに抱かれる。
モネは心の裏に潜む気持ちに気付かない———。
◇
ティアの学園生活は穏やかで、勉学も真面目に取り組むティアは大体が成績上位に居た。
まだ幼さは残るものの、柔和な顔立ちはサーシャに益々似て、性格も温和に育ち。学友はティアに似た温和な気質の令嬢ばかりで、日常には何の波風も立たない———。
男の子のテオと違い、ティアは学園での事をよくモネに話した。
「何故か分からないケド、クレア様に対して陰口を言うグループが幾つかあるのよ……」
ティアはソファに座りクッションを抱きしめ、眉間に皺を寄せてそう言った。
「公爵令嬢のクレア様に対して陰口ですか?」
モネがそう聞き返すと、ティアは不満が有り有りと滲む声で。
「そうなの……凄く遠巻きにしてるけど、聞こえるくらいの声でヒソヒソと言ってるのよ……それもウィリアム様にバレない様に。だったら言わなきゃ良いのに……あんなに素敵なクレア様に陰口だなんて……意味が分かんない」
ティアは夜会のダンスの一件から、ウィリアムに憧れと恋心を抱いているが、本当に側妃になりたいと思っている訳ではない。
初恋を捨てなくて良い理由が『側妃』だっただけ。だからクレアに対して妬みも無い。
むしろ夜会の時のクレアを見て、尊敬と憧れを抱いている。
ただ、羨ましいとは思っていた……ウィリアムとクレアの並んだ姿が余りにもお似合いで、羨ましいと———。
だから……クレアの事を尊敬はしていても、クレアを支持するグループや、敵意を抱くグループに加わらない…… 袖手傍観に徹していた。
(まぁでも……公爵令嬢は気持ちの強い方の様だから……陰口位どうって事ないのでしょうね)
モネのクレアに対する印象は、三年程前の夜会で見た『崇高な高位貴族令嬢』だった。
「学園でウィリアム様をお見かけしたの……この前お見かけした時よりも、もっと格好良くなってて……見惚れちゃった」
傍観に徹するも釈然としない気持ちをモネに吐露してスッキリしたのか、今度は学園で見たウィリアムの事を『貴重な一瞬』であるかの様にうっとりと話し出した。
そんなティアをモネは微笑ましく見る。
◇
ティアが高等部の二学年に上がって少し経った頃———。
学園から帰って来たティアは声を弾ませてモネに報告した。
「モネ! モネ聞いて! ウィリアム様に話しかけられたの!」
その言葉にモネは目を見開く。
ティアはモネに抱き付き、図書室であった事を事細かに……頬を染めて話した。
読書好きで図書室で過ごすことの多かったティアは、放課後もよく一人で本を読んでいた……そこへウィリアムが現れたのだと言う———。
(なんて……巡り合わせの強い)
モネはティアの強運に驚く。夜会の時も…… 受けてしまったのは悪手だったが、 ウィリアムから誘われてのダンスだった。
「はぁ……ウィリアム様……お声も素敵だった……本当にとても格好良かった……今でも夢だったんじゃないかって思う」
(もしかしたら『側妃』の夢を追っても悪くないかも知れない?)
ため息を吐きうっとりと話すティアを、モネは目を細めて微笑んで見た。
次!
次で[モネ]最後!
絶対!!!




