モネ……(4
ブクマ・評価・リアクションありがとうございます。
誤字報告本当にありがとうございます。助かります(>人<;)
感想を下さる読者様。余裕が無く返信できませんが(汗)
有り難く読ませていただいてます。
ありがとうございます(*^^*)
モネは、ep40・ep50にちょろっと出てます。
「誰だっけ?」と言うお言葉がチラホラ聞こえたので(^^;)
再びのご案内でしたヽ(^o^)
ティアが七歳、テオが十四歳になった頃———。
一家が夏の避暑で領地の邸宅に滞在している時。面会希望の書簡が届く……送り主はフェーヴ教団。
ジェイデンは執務室で書簡を開いて考えていた。
(フェーヴ教団か……最近は教皇領を超えて布教活動が活発だと聞いた事がある。下位貴族への支援活動にも積極的だとか———)
顎に手を当てて首を傾げる。
(……話だけでも聞いてみるか)
そうして数日後、フェーヴ教団の使者がラクリマ邸を訪れた。
◇
正面玄関前に馬車が入って来る———。
出迎えるために数名の侍従が並び立つ中にモネも居た。
(フェーヴ教団……確かこの国が崇める神は『恵みの神フェイバー』……)
モネがそんな事を考えていると、馬車の扉が開いた。
現れたのは白い神官服を纏った中年男性。二人の付き人を従えていた。
付き人も白い服を着ている……モネは付き人の服を見て足が震えた———。
(あれは…あの服は———あの時の!)
思い出すのは森の中……小屋の中から見た去って行く白い服の男達。
それと共に引き出される記憶———屋敷内の惨状……血溜まりの中の死体……マーシーの亡骸……。
『痛い……熱い……』
助けられなかったピンクの瞳の女の子———。
モネの呼吸が浅く早く刻まれる、その様子に隣に立つ同僚の侍女が心配気に小声で話しかけた。
「モネ? 顔色が悪いわよ……」
「……あ…の……私……」
「……一旦下がりましょう。侍女長には伝えておくから」
明らかに具合が悪そうな様子に、同僚はモネを支えながらそっと連れ出す。
休憩室に連れて行かれたが、暫く経っても調子が良くならず、その日は『もう休んだ方が良い』と自室へと戻る事になった。
◇
教団の使者は応接室へと通される。
「本日は会談の機会を下さり、ありがとうございます」
「いえ———。それでご用件はなんでしょう?」
「ご存知かも知れませんが、いま多くの貴族の方々が教団を後押しして下さってまして。ラクリマ伯爵様にも是非フェーブ教団を援助して頂きたく、お願いに参った次第です」
「援助……」
「ああ、援助と言っても金銭を求めるものではございません。ご存知かと思われますが、教皇領は潤沢な資金がございますから、むしろ逆に必要な方には支援も致しております」
神官はニコニコと愛想を振り撒く様な笑顔で饒舌に話す。
「ご存知と思いますが、今、教団と王家には溝がございます———。何十年か前の、王家の婚姻に際して我々教団側の過剰な介入により端を発したものですが……常々我々はこのままではいけないと、国全体の行く末を危惧しておりまして———。当時の教団は王族に他国の血が混じるのをよく思わない者が多くおりましたが、今は違います———。我々とて時代の移り変わりは仕方ないと受け止めているのです。また、そんな時代だからこそ、王家と教団が一枚岩であるべきだと思うのです———。なので歩み寄りの足掛かりとして、先ずは貴族の方々と教団が親交をより深めて行くべきと行動を起こしている次第です」
そこまで話して、ジェイデンの雰囲気から手応えが感じられない神官は別の有用性を主張する事にした。
「勿論、国の為以外にも利点もございます」
「利点ですか?」
聞き返された事を好感触と捉えた神官は饒舌に続ける。
「えぇはい———。伯爵様は奥様を亡くされて随分経つと聞き及んでおります。そろそろ新しい伴侶を迎えても良い頃ではないでしょうか———。教団と縁付く事で良いご縁に繋がることもあると思います。それに、ご子息はまだ婚約者がいらっしゃらないんですよね? 幼いお嬢様も———。お二人にも良い縁談の話が持ち上がると思うのですが、いかがでしょう———確かお嬢様はベージュ色の髪に美しい碧眼をお持ちだと聞きました。さぞ可愛らしいのでしょうね」
ジェイデンの眉がピクリと動いた。そして鼻で小さなため息ついてから口を開く。
「……………用件は理解した。熟考して後日書簡にて返答する。この後用事が立て込んでいるので、本日はお帰り願おうか」
そう言ってジェイデンが立ち上がれば、使者達も座ったままではいられず立ち上がる。
使者はジェイデンの様子に焦る。元々笑顔で出迎えられたわけでは無かったが、ジェイデンが敬語を使わなくなった事で、何か失言したのだと悟った。
「伯……」
「客人がお帰りだ。案内を」
ジェイデンは神官の言葉を遮り、侍女に指示をする。
「……それでは……これで失礼いたします———」
神官がそう挨拶を返せば、ジェイデンはその日初めての笑顔を見せた。
使者達は侍女の案内で退室し、静かに扉が閉まる。
(こんなに胡散臭い集団では無かったはずだが……すぐに断りの手紙を書くとするか)
◇
モネがベッドの上で飛び起きた。
ハァーッ…ハァーッ…ハァーッ…ハァーッ…
「……夢」
モネは嫌な夢を見た———。
かつてモネが住んでいた館がラクリマ邸に……
血溜まりの中に沈む使用人達が、同僚達に……
マーシーとピンクの瞳の女の子が、ラクリマ一家に変わって行く夢だった。
カタカタと小刻みに震えながら、ベッドの上で膝を抱えて蹲る。
(怖い……ダメ! 絶対にダメ!———。教団はダメ! ……守らなきゃ! どうしよう……どうしたら……サーシャ様に託されたのに……サーシャ様の代わりに……私が……私が!)
『守ってあげるよ』
頭に響くジェイデンの言葉……かつて言われた優しい言葉。
(旦那様……旦那様が守ってくれる———。教団と関わらない様に……)
その晩、モネはジェイデンの寝室へと向かう……
◇◇
ジェイデンの寝室———。
ジェイデンはソファに座り、当たり前の様に持ち込んだ仕事の書類を目の前のテーブルに広げていた。
真夜中を過ぎ———そろそろ寝なければと言う頃合いに、コンコンコンと扉がノックされた。
こんな時間に誰だろうとそっと扉を開けると、そこには顔色の悪いモネの姿があった。
「モネ?こんな時間にどうし———」
モネはジェイデンの腕にそっと触れた。
◇
翌朝、ジェイデンはベッドで目を覚ます。
(いつの間に……ベッドに……)
体を起こして扉を見る。
(…………昨日の夜……誰か来なかったか?)
まだハッキリしない意識で、夢で見たサーシャの言葉を思い出す。
『教団はなんだか怖いわ』
『あまり関わり合いになって欲しくないの』
『子供達にも貴方にも良い影響があるとは思えないのよ』
不安な表情で溢す言葉と共に、甦る肌の温もりがとてもリアルに感じる夢だったと
「ハァ……———」
ジェイデンは両手で顔を覆って溜め息を溢した。
(自分の思ってる事をサーシャが言葉にしたような夢だったな……)
その日のうちにジェイデンは断りの文面を綴った書簡を教団に送った。
◇
その後も思い出した様に教団からの接触があったが、その度にモネはジェイデンの寝室へと赴く———。
そうしないとモネは不安で仕方なかった。
(私が………私が守らないと……)
◇◇◇
ティアが十歳になった頃———。
この日は王城で夜会がある為、昼間は身支度に追われていた。
モネはティアのミルクティーの様な薄茶の髪を綺麗に編み込む。
レモンイエローのドレスを身に纏い、鏡の前でクルクルと回るティアは本当に愛らしくて、その様子にモネは目を細めて微笑んだ。
「素敵! お姫様みたい」
「とても良くお似合いですよ」
支度が整ったティアに付き添って階下に行くと、ジェイデンとテオが待っていた。
「お父様! お兄様!」
「これは———愛らしいお姫様の登場だ」
「可愛いね! 良く似合ってるよティア」
「お兄様もお父様も格好良いわ」
十七歳になったテオの身長はジェイデンとほぼ変わらなかった。
髪の色こそサーシャ似の薄茶色だが、瞳の色はジェイデンと同じ新緑の様な黄緑で———若い頃のジェイデンに瓜二つだと言われる容姿に育った。
◇
王城———。
モネは付き人として付いて来ている。
夫人が不在で子供を連れて行く場合、世話をするための侍女を連れての参加が許されている。
モネは休憩室に続く通路に用意された美しい装飾のベンチに座っていた。他にもどこかの貴族の使用人が何人か座っている。
通路の先の大広間では、両陛下と王太子殿下への挨拶が終わった貴族達が歓談している気配が感じ取れた。
しばらくすると、バックミュージックとして聞こえていたハープの音が止み、華やかなダンスの曲が流れ出す。
モネは、ラクリマ家の面々にいつ用事を言いつかっても大丈夫なよう気を配りながら音楽に耳を傾けていた。
最初のダンスの曲が終わり……少し経った時、強めの足音が聞こえて来る。———焦った様な表情のジェイデンがティアの手を引き、通路をこちらに向かって早歩きでやって来た。
(え?! 旦那様とお嬢様!)
モネが慌てて立ち上がると。
「モネ! 空いている休憩室に案内してくれ!」
「はい!」
『空いている休憩室の扉には札が掛けられている』と、王城の侍従から説明を受けていたモネは、一番近い空き室へ二人を誘導した。
二人が入室すると、モネはドアノブに掛かっていた札を外して入室し、扉を閉めると内側のドアノブに札を掛け、扉を背にして控える。
モネの目の前で———。ティアはソファに座るように促され、ジェイデンは一人掛けソファに座って大きな溜め息を吐いた。
(一体何があったのかしら……)
ティアは伺う様にジェイデンへ視線を向け、とうのジェイデンは———困った様にも焦った様にも見える表情で、眉間に皺を寄せている。
「……ティア…最初のダンスは私か兄とと言っておいただろう…」
ジェイデンの言葉にハッとした様子を見せるティア———と同時にモネも息を呑んだ。
モネは伯爵家の侍女に相応しくある様にと様々な知識を学んだ。ティアに助言できる様に、貴族としての基本的な常識も頭に入っている。
婚約者の居ない令嬢は最初のダンスは家族と踊る。
誘いがあった場合———成人前の年齢であれば、家族の許可を得てから踊る。
だからティアは父の承諾が無ければ誰とも踊ってはいけなかった。
「ご…ごめんなさい……」
ティアは狼狽えながら声を震わせて謝った。
「相手の令嬢はドケーシス公爵家の一人娘だ…何かしら非難されるかも知れない…」
伯爵は額に手を当てて唸る。
その言葉にモネは目を見開く———。
(ドケーシス公爵令嬢……?……その名前は……そんなまさか———)
険しい表情のジェイデン……こんな様子の父親の姿を初めて見るティアは青褪めている。
(大広間の様子を確認しなきゃ! お嬢様が非難されない様にしないと!)
二人の様子は心配だが、大広間の様子の方が優先だとモネは思った。
「旦那様———。私がホールの様子を見てまいりましょうか」
モネがそう申し出るとジェイデンは。
「そうだな……いや私も行こう。ティアはここで待ってなさい」
ジェイデンは立ち上がり、ティアにそう言い付けると部屋を出ていく。
モネも……不安な様子のティアに後ろ髪を引かれながら、ジェイデンに続いて部屋を出た。
ジェイデンの後ろについて歩きながらモネは尋ねた。
「………旦那様……お嬢様はどなたと踊られたんですか」
「———ウィリアム殿下だ」
(ああ……やっぱり……)
今夜は王太子であるウィリアムとドケーシス公爵令嬢クレアの婚約発表が有ると認識された夜会。
当然今夜の王太子のファーストダンスの相手はクレア嬢のはずだった。
◇
モネとジェイデンが広間に戻ると、引き続きダンスの音楽が流れている中———所々で、ウィリアム自身とウィリアムと踊った令嬢の事について話す人々がいた。
「今夜は確かウィリアム殿下との婚約者のご紹介があると聞いていたが……」
「お相手は確かドケーシス公爵家のクレア様だったはず……」
「ウィリアム殿下と踊ったのはどこの家の令嬢だ?」
「ファーストダンスを違う令嬢と踊ったのか……」
(いけない……お嬢様の立場が悪くなる!)
二人が大広間に戻って直ぐ、ジェイデンと知り合いらしき貴族が話しかけてきた。
「ジェイデン殿……先程ウィリアム殿下と踊られたのは———」
モネは静かに移動して、話しかけて来た人物にそっと触れた。
「いや———。どこの……どこの家のご令嬢だったんでしょうねぇ」
その言葉にジェイデンは困惑する。
「え?!………あ……」
モネの瞳が怪しく光る。
「しかし———ウィリアム殿下にも困ったものですな。音楽が流れたからって、手近に居た令嬢をダンスに誘うとは」
そう言って、相手はにこやかに会話を続けた。
ジェイデンは困惑のまま相槌を打つしか無かった———そんなジェイデンを置いてモネは静かに広間中を歩き出し……ウィリアムのファーストダンスの相手がティアだと特定しそうな会話をする貴族に触れて回った。
ティアの存在を霞ませ、ウィリアムと踊った相手に非が無い様に感情の矛先を変える。
———それが勝手な憶測を呼び、ウィリアムだけに向くはずだった非難が別の人物へ向くとは思わなかった———。
◇
一通りホールを廻り、ジェイデンの元へ戻るとその場にはテオも居た。
「あっ———。モネ……モネ!」
テオの焦った声に、どうしたのか?と不思議に思う間もなく、モネはジェイデンが胸ポケットから取り出したハンカチを鼻に押し付けられていた。
鼻から血が垂れてきていたのだった———。
「テオ、氷を一欠片もらって来てくれ」
「はい!」
テオは直ぐに、近くに居た城の侍従に声をかけに行く。
「だんなはま…ふみまへん……」
強めに押し付けられたハンカチで言葉がへんな発音になる。
直ぐに戻って来たテオは、氷だけが入ったグラスを手に持っている。
ジェイデンは手袋を外し、そこから一欠片氷を取ってモネの口に近づける。
「口を開けて———。氷を上顎に押し付けてなさい。直ぐに血が止まるからね」
モネは言われた通りに、舌で氷を口内の上顎に押し付けた。ジェイデンはハンカチで抑えるのをモネ自身に任せ、再び手袋を嵌めて話し出す。
「人混みにのぼせたんだろう。モネは控えのベンチに戻ろう。テオはティアの所に行って、大広間に連れて来てくれるかい。不安だっただろうから……こっちの様子を伝えて安心させてあげてくれ」
「はい」
テオは急足で休憩室へ向かった。
「さぁモネ、ついて行ってあげるから———血が何処にも付かなくて良かった」
ジェイデンは優しくモネの背を押して移動を促す。
その時———広間の中心……ダンスホールが見えた。
中心で踊る二人の子供……一人はゆるいクセのある金髪。
(あの方がウィリアム殿下……お相手の長い黒髪のご令嬢がドケーシス公爵令嬢)
楽しげに踊る様子はとても愛らしく……そして美しく……物語の一場面の様だった———。
「ウィリアム殿下とクレア嬢は何曲も一緒に踊ってるよ。お二人の関係は悪くならなかった様だ……大きな騒ぎにならないで良かった———」
ジェイデンの安堵した溜め息を吐く様子に、モネは胸を撫で下ろした。
◇
モネの鼻血が止まった頃、テオがティアを連れて戻って来る———ティアはまだ落ち込んだままだった。
テオが口を開く
「父上、ティアの事が騒ぎにならなかった事ですし……」
「あぁ。会わせたい人がいるんだったな———。モネ……もう大丈夫かな? ティアに着いていてくれるかい?」
「はい。旦那様」
テオは学園で気の合う女性が出来た様で、お互いに婚約者が居ない事から、テオは正式に申し込みたいとジェイデンに伝えていた。
相手の家門もこの夜会に来るので、婚約の打診をする前に紹介したいと言っていたのだった。
◇
二人と別れ、モネとティアはホールに戻る。
ウィリアムとクレアはまだ踊っていた———。
中央で楽しそうに微笑み合いながら踊る二人を目にしたティアはドレスを強く握っている———その表情には侘しさが滲んでいる。
ティアのそんな表情は初めてで……モネは困惑していた。
その後———夜会の最後にウィリアムの婚約者の紹介がされると言う事で、ジェイデンとテオと合流する。
相変わらずティアの表情は沈んだままだったが……無事に夜会が終わる事にモネが安堵した時———何処からか声が上がる。
「でも、ファーストダンスはクレア様ではなかったわよね…」
モネの肩がピクリと小さく跳ねた。
ラクリマ家の面々も動揺している様に感じたが、一家の後ろに控えているモネには見えなかった。
「ファーストダンスを断られたのかしら…」
「ウィリアム様は本意じゃないんじゃ…」
「ファーストダンスをしなかったから、その後はずっとクレア様がウィリアム様を独り占めしてたのよ…我儘なのねぇ」
「ウィリアム様は他の子とも踊りたかったんじゃ無いかしら…」
口々に囁かれるクレアを蔑む言葉にモネは焦る———。視線を上げれば、青褪めているクレアが見えた。
(どうしよう……失敗した!———公爵令嬢を貶めたかった訳じゃないのに!)
モネは罪悪感に苛まれている……だがそれは直ぐに取り払われる。
青褪めていたクレアは直ぐに表情を整え———柔らかく微笑んだ。堂々と……王族の隣りに立つに相応しく。
凛とした姿は神々しかった———。
モネは目を奪われ、息を呑む。
(これが高位貴族の令嬢の強さ……)
蔑む言葉は途絶え、十歳の子供に誰もが見惚れていた様だった。
◇
モネはティアの自室に赴き、夜会の事を嘆くティアを慰めている。
「失敗しちゃった……ぅう……なんでウィリアム様と踊っちゃったんだろう……」
「仕方ありません。素敵な雰囲気に色々忘れてしまうのはよくある事です。次は気をつけましょう」
モネはソファに突っ伏すティアの背中を優しく撫でる。
「ウィリアム様とクレア様———凄く素敵で……凄くお似合いだった……私とのダンスはきっと格好悪かったわ……」
「そんな事ありませんよ」
「絶対格好悪かったわ……クレア様はあんなに素敵で……堂々としてて……クレア様って凄い……」
(それは私も思いました……)
モネは口に出さずに黙ってティアの背中を撫でる。
「馬車の中でお父様に怒られちゃった……」
(あれは……諫めただけで……怒られた事が無いティア様には同じかしら……)
「大丈夫ですよ。旦那様はそんなに怒ってません」
「……うん……分かってる……お父様は優しいもの……」
「次は気をつけましょう」
「うん———」
そのまましばらく背中を撫ででいると、ティアが再び話し出した。
「あのね……モネ……」
「はい」
「……あのね。私、すっごく反省してるの。———反省してるんだけど……」
「はい」
ティアは勢いよく起き上がり、モネに向かって話を続ける。
「ウィリアム様って凄く凄く素敵だったの! 格好良かったの! 私……私、凄くフワフワしちゃって……だからうっかり……でも……でもね! 凄く楽しかったの! こんな事思っちゃいけないんだけど! 今までで一番素敵な時間だったの!———思い出すと……顔が熱くなっちゃうの———」
そうしてティアは真っ赤な顔で俯いた。
余りの勢いに目を丸くしていたモネは、耳まで赤くして俯くティアを見て微笑む———。
「お嬢様……それは恋ですよ」
ティアの頭をそっと撫でて言うと、ゆっくり顔を上げたティアは目を輝かせる———しかし直ぐに表情を曇らせた。
モネはティアの考えが直ぐに分かった。
(あぁ……叶わぬ恋だと分かってしまった———でも……)
モネは、悲しげな表情のティアの肩に手を添え、話し出す。
「お嬢様……希望が無い訳じゃありません———。お嬢様は正妃にはなれませんが……側妃にはなれます。ドケーシス公爵令嬢に子が出来なければ側妃を娶りますから———。それに他国には……王の寵愛を受けて側妃に召し上げられる国もあります。ウィリアム殿下に気に入られれば可能性はありますよ———。ですがそれにはウィリアム殿下に相応しくなければ……自分を磨き勉学に励みましょう」
モネはティアの恋心を摘みたくなかった。
可能性がどんなに低くても……ティアの望む幸せを———ティアの夢見る幸せな未来を……叶えてあげたい。
そう思ってしまった———。
更新が大変遅くて……申し訳ない_| ̄|○
お待たせしてます(>_<)
次で[モネ編]最後です!




