モネ……(2
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誤字報告様の活躍で文がまともに修正され感謝です(^人^)
感想ありがとうございます。有り難く読ませて頂いてます!
ですが返信に手間取ってしまうので(汗)
返信できない方向で(>人<;)
モネが拾われて三日が経ち少し体力が回復した頃、ジェイデン・ラクリマ伯爵が部屋を訪れた。
「やぁ、モネ。初めまして。私がここの当主のジェイデンだよ。少し話を聞いても大丈夫かな?」
サラサラとした明るい茶色の髪に、新緑の様な色の瞳。
温容な微笑みを浮かべてベッドの側に跪き、ラクリマ伯爵は幼いモネに目線を合わせてくれる。
若くして爵位を継いだばかりで、慣れない領地の運営に忙しいにも関わらず、突然妻が連れ帰った素性の知れない子供にも優しく接する包容力のある男性。
(———サーシャ様の旦那様)
モネの知る男性像には無い穏やかな優しさに困惑して言葉が出ないでいると、怯えていると勘違いしたジェイデンは安心させようと言い募る。
「心配しなくても大丈夫。悪い様にはしない。ただ君の今後を考え守る上で、ちゃんと君の事情を知っておきたいんだ」
「守る?……守って……くれるんですか?」
「? あぁ。守ってあげるよ」
生きてきて一度も聞かされる事の無かった言葉にモネが困惑すると、さも当たり前の様に『守ってあげる』と返され。モネは涙が溢れる。
声を抑えポロポロと涙を流すモネの背中を、ジェイデンが優しく摩ると更に涙が溢れた。
落ち着きを取り戻し涙が止まると、モネは自身の境遇と村で起こった事をポツリとポツリと話す。
話してはいけないと教えられた事以外の全てを話した。
外部に話してはいけない事は三つ。
村がこの国の崇めるのとは違う神を崇めていた事。
村の住人にはかつて特別な能力があった事。
村が作っていた薬に如何わしい物があった事。
『この三つが知られると、また国を追われてしまうかも知れない。だから決して外部に知られてはいけないんです』
そうマーシーが教えてくれたから言わなかった。
だから如何わしい薬の追及に繋がる、白い服の男達の事も話さなかった。
村を襲ったのが何者かは知らない。
モネは家族から冷遇され、森の小屋で暮らしていたから難を逃れた。と言う事になった。
「森林奥の村が野盗に襲われたと言う情報は入っているんだ———。生存者は居ないと言う事も」
幼いモネには難しい言葉が多かったが意味は分かった。
「伯爵家の名前で詳しく調べる事も出来るけど……モネが知りたいか知りたく無いかだ。どうしたい?」
モネは少し思案すると掛布を強く握り、首を横に振った。「何故」「誰が」を掘り下げて知りたい程には村に執着は無く、何よりあの日の事を思い出すのは怖かったからだ。
「そうか……分かったよ。あの村と此処は離れてるから、モネが村の生き残りと知られる事は無いと思うよ。伯爵家とは全く関わりの無い村だしね。ただの野盗の仕業だから、生き残りを探す事も無いだろうし。モネはしっかり療養して、元気になったら此処でモネに合った仕事をしたら良い」
不安が色濃く滲むモネの表情を和らげようと、ジェイデンは言葉を尽くして今後の身の振り方を話した。
その優しさに安心したからか、再び涙が溢れる。
「……あ……りがとう…ございます」
しゃくり上げながら何とか礼の言葉を発したモネの頭を、ジェイデンは優しく撫でた。
◇
ラクリマ伯爵家に拾われたモネの生活は一変した。
暖かく充分に量のある食事。柔らかいベッド。明るい部屋。
与えられたのは使用人の部屋だが、モネにとっては天国だった。
だが、その環境に置かれて初めて、モネはこれまでの自分は不遇だったのだと知る。
不幸で可哀想だった過去の自分に泣きたくなり、今の幸せな環境に感謝の涙が出た。
モネに与えられた仕事は伯爵家の長男テオの遊び相手だった。
遊び相手と言われても、子供らしい遊びをした事が無いモネは何をしたら良いか分からない。
そんなモネにテオが色々な遊びを教えてくれた。
「遊び相手なのに教えられる側で良いのでしょうか」
不安がるモネに
「知らない事は教えられないでしょ? 先ずは色々覚えて、テオと一緒に楽しめば良いのよ」
サーシャは優しく言ってくれた。
ラクリマ伯爵家の領地の邸宅に笑い声が響く。モネは初めて声を上げて笑った。
◇
テオが六つになり、遊び相手としての仕事が終わると、モネは侍女の仕事を学びながら務める事になる。
夫人専属侍女が教育係になった事で、モネは常にサーシャと共に行動する事に。
ラクリマ伯爵王都邸にも着いて行き、初めての都会に目を瞬く。
モネは侍女の仕事や、都会の平民の常識と貴族の常識をどんどん覚えて行く。
真面目な仕事ぶりのモネは伯爵夫妻やテオ、伯爵家の使用人達から信頼され可愛がられた。
目にする物は全て新鮮で、学びも仕事も何もかもが楽しかった。
穏やかで夢の様な時間が流れる。
◇
モネがラクリマ伯爵家に仕えるようになって三年が過ぎた頃、サーシャが二人目の子を身籠った。
春の終わり……穏やかな天気の日に四阿で寛ぎながら、大きなお腹を優しく愛しむように撫でてサーシャがモネに話す。
「生まれてくる子が女の子だったらティアと付けたいわ。女神って意味なの。男の子だったらディユね。神という意味よ、テオと同じ……子供は神様からの贈り物だから」
その様子にモネは目を細めて
『奥様は月と言う意味を持つルーナというお名前でした、お嬢様のモーネも月と言う意味なのですよ。私達が敬う女神様の象徴です。娘が産まれたらその名前が良いと奥様が仰っていたんです』
そう教えてくれたマーシーを思い出す。
(私の母さんも……サーシャ様みたいに楽しみにしていてくれたのかも知れない)
モネは見知らぬ母をサーシャに、お腹の子供に自分を重ねる。
サーシャがお腹を撫でながら再び口を開く。
「……モネ……もしも……もしも私に何かあったら……テオと赤ちゃんをお願いね。貴方はテオにとって姉の様な存在だから、この子のお姉さんにもなってあげて……守ってあげて」
モネは何故サーシャがそんな事を言うのか分からなかったが「勿論です」と力強く答えた。
実はサーシャは、テオの出産の時も危うかったのだと……後から侍女仲間に教えられた。
この時からサーシャは、死神が鎌を振り下ろす準備をしているのを肌で感じていたのかも知れない……
◇
ラクリマ伯爵領の邸宅に母親を求める赤子の泣き声が響く———。
サーシャはその泣き声に応える事は出来なかった。
ベッドに横になり動かなくなったサーシャの傍で、ジェイデンが膝を着いて突っ伏している。
痛々しい様子に誰も声をかけられない。
部屋に使用人達の啜り泣く声が漂う中、モネも壁際で佇み口を抑えて涙を溢している。
侍女の中で頭一つ小さいモネは、十二になって間もなかった……
震える体を叱咤し、折れそうになる膝を懸命に伸ばす。
サーシャの最後の姿を目に焼き付ける様に見開き、ボロボロと涙を流す。
命の火が消えても、サーシャは女神の様に美しかった。
一度泣き止んだ赤子が再び泣き出した。
その声にジェイデンは頭を上げ、ゆっくりと立ち上がると赤子の居る揺籠に寄る。
懸命に存在を示す様に泣く赤子を、ジェイデンはそっと抱き上げる。
「……ティア……お母様に挨拶をしよう」
産まれた赤子は女の子だった。
ティアをサーシャの枕元に添える様に置いて、ジェイデンは話しかける。
「サーシャ……ティアが泣いてるよ…………ティアが呼んでるんだ……サーシャ…」
涙を堪えながら話すジェイデンの声は震えている。
「旦那様……お嬢様は私が……乳母の所へお連れします」
侍女長が声をかけるとジェイデンは頷き。
「……頼む」
そっとティアを抱き上げ侍女長へ預ける。
「モネ、一緒にいらっしゃい」
「はい……」
侍女長に続いて部屋を出るモネは、背後に聞こえるジェイデンの声を拾う。
「心配しなくて大丈夫だ。君の分も私が二人を大切に育てる……」
◇
育児用にあつらえられた部屋で乳母に乳を貰ったティアは、ベビーベッドで静かに寝息を立てている。
乳母と侍女達が静かに慌ただしく仕事をする中、モネはティアの側に着いている事を任された。
寝息と……時折ピクピクと手が動く事に、ちゃんと生きていると安堵する。
「モネ……」
小さな声が聞こえた———。
少し扉を開けて顔を覗かせているテオだった。
「モネ、赤ちゃん見ても良い?」
「あ……えっと……」
モネは侍女長に視線を投げると、侍女長は頷きテオに声をかける。
「テオ様、どうぞお入り下さい。抱っこは出来ませんが、見るだけなら大丈夫ですよ」
テオは表情を綻ばせて部屋に入る。
モネはテオと一緒に、ティアの寝顔を覗き込んだ。
「小さいね……」
「はい」
「可愛いね……」
「はい」
「女の子だからティアだね……」
「はい」
少しすると、モネの隣から鼻を啜る音が聞こえ出す。
テオは静かに涙を流していた。赤ちゃんを起こさない様———。懸命に声を殺して……
「大丈夫……大丈夫だよ……僕が全部教えてあげるからね……母様がどれだけティアに会いたかったか……お腹の中にいたティアをどれだけ愛してたか……母様がどんな人だったか、僕がちゃんと覚えてるから……全部教えてあげるからね……」
テオの言葉にモネは涙が溢れた。
(あぁ……良かった……ぼっちゃまが兄の様な人じゃなくて……旦那様が父の様な人じゃなくて……本当に良かった……)
モネ編……短く纏めるの諦め始めている自分がいます
_:(´ཀ`」 ∠):




