モネ……(1
自分でも驚くほど筆運びが遅くなってます((((;゜Д゜)))))))
参った参った……そんな亀の更新をお待ち頂きありがとうございます(//∇//)
ブクマ・評価・リアクション励みの糧にしております。
誤字報告様の活躍で文がまともに修正され感謝です(^人^)
感想ありがとうございます。有り難く読ませて頂いてます!
ですが返信に手間取ってしまうので(汗)
返信できない方向で(>人<;)
オルトゥス国の端。
鬱蒼と広がる森の中に、ひっそりと隠れるようにその村はあった。
オルトゥス国が崇めるのとは違う神を崇める——。他国から移り住んできた歴史の浅い村は、村全体で薬作りを生業とし、治療が難しい病に効果的な物から、如何わしい物まで多種多様に作る技術があった。
崇める神は女神ニュクス。
夜の女神。
夢を支配する女神。
惑わす女神。
天界に混乱を起こした罪で追放された女神。
先祖はその女神に血肉を与えられ、魔力を授かったのだと——。
その言い伝えの通りこの村の者は不思議な力を持っている。いや、持っていた。
殆どの者が失ったその力は、僅かに首長の家の血筋の者に引き継がれるのみだった。
それも弱々しく衰えて行くばかりで……
『母親の命を奪って産まれておきながら、少しも能力の無い役立たずが』
父親にそう言われたのはモーネが六つになった時———。
母はモーネを産んだ時に死んでしまった。
父と兄が能力を発現したその年齢になってもモーネは力を発現せず、それを機に後妻が迎えられる。
後妻はモーネにだけ辛く当たった『能力の無い出来損ない』と嘲られた。
この村で能力があるのは父と兄だけなのに……モーネは村の住人と同じ普通なだけなのに……。
程なく後妻が懐妊すると、モーネは追い立てられる様に居を移される。
首長の屋敷の裏手側に広がる森の中、昔は森の管理人が使っていた小屋。
首長の屋敷が出来てからは屋敷の敷地内に新たに建てられた方を使うようになり、今では滅多に人が近寄らないそこがモーネの居場所になった。
◇
日中は屋敷で使用人の手伝いをする。
昼食をキッチンの隅で食べ、また手伝いをする。
夕方、包まれた食事を小屋に持ち帰って食べる。
近くにある湧き水から出来た小さな小川から、水を運んで布を濡らし体を清める。
翌朝、少し残しておいた夕食を食べ、丈の短くなった服に着替えて屋敷に行く。
そんな生活を繰り返して三年が過ぎていた。
殆どの使用人がモーネに興味を持たず、酷い扱いにも疑問を持たない。
唯一一人だけ気に掛けてくれる使用人が、着古した服や余分な食べ物をコッソリ寄越してくれる。
読み書きの出来るその使用人は、隙間の時間に小屋に来てモーネに勉強を教えてくれた。本を何冊も持ってきてくれて、幾つか薬の作り方も教えてくれた。
屋敷の者にも、村の者にも頼る人が居ないモーネを心配して『自力で生きる術を教えてあげたい』と言っていた。
名前はマーシーと言う。
名を教えてくれた時、モーネの名前の由来も教えてくれた。
『奥様は月と言う意味を持つルーナというお名前でした、お嬢様のモーネも月と言う意味なのですよ。私達が敬う女神様の象徴です。娘が産まれたらその名前が良いと奥様が仰っていたんです』
そう目を潤ませて言っていた。
記憶には無い母の存在。
母に纏わる記憶は、父からの蔑みと兄の罵倒の声だけだった。
『お前が母さんを殺したんだ!』
何度も何度も言われて脳裏にこびり付いた言葉。
兄はモーネの事が憎いらしい。
『何でお前なんかが母さんと同じ意味の名前を貰えるんだ』
幼い頃、憎しみの籠った瞳でそう言われた事を思い出す。
罵倒されてもモーネと同じ色の瞳の奥に血の繋がりを感じ、縋りたい気持ちが顔を出す。
小屋に移ってからは滅多に会う事が無くなり、その気持ちも消えて行く。
◇
「お腹がすいた……」
夜、硬いマットに寝そべり一言呟いたモーネは九つになったばかり。
マットは小屋の中に個室を作るように、棚で囲われている。
カーテンの無い窓から入る日差しや、滅多に無いが通りかかる人の視線を遮る為だ。
明かりの蝋燭を節約する為、必要以上に灯さず。少ない夕食を食べたら早々に就寝しようと横になっていた。
翌朝の分を取り置いた食事量では直ぐに空腹を覚え、中々寝付けずにいたモーネの耳が、外から聞こえる人の声を拾った。
「おい。こんな所に家があるぞ」
(え? 人?)
モーネは体を強張らせて息を潜める。
「家? 小屋だろ、どう見ても……こんな所に薬はないだろう。もう行こうぜ———」
「でも中を確認した方がよくないか? 誰か居るかも知れない」
「居ないだろう〜こんな夜中だぜ? 住んでるでもなきゃ、居るわけないって」
「でも一応……」
「おーい! 見つかったぞー」
「おい! あったみたいだそ! 行こう。そんな小屋確認しなくても良いって」
「……そうだな」
足音が遠ざかる。
モーネはそっと窓から伺うと、村に向かって去って行く白い服を着た二人の男が見えた。
男達が去って行く方向には館があり……村がある——。
風に乗って遠くから悲鳴が聞こえる。モーネは耳を塞いで小さく蹲った。
◇
悲鳴が聞こえなくなってしばらく経った。
(どうしよう……怖い……でも、このままここに居ても……)
モーネは思案した結果『朝行くか今行くかの違いだ』と小刻みに震える体を叱咤し、小屋を出た。
屋敷の方角は静まり返っていた。様子を伺いながら慎重に移動するが、サクサクと草を踏む自分の足音以外の気配は無い。
屋敷に行ってみると沢山の人が倒れていた———。
「ッ!」
モーネは声を出さない様に両手で口を抑える。
倒れているのは見知った使用人達だ。斬られたのか……皆んな血溜まりの中に倒れている。確認しなくても死んでいると分かった。
(どうしよう……どうしよう……どうしよう……)
青褪めて身動き出来なくなったモーネは、しばらく逡巡して
(誰か生きてる人がいるかも……)
意を決して屋敷の中に足を進める。
書斎に行くと、父と継母が倒れていた。
ちゃんと確認しなかったが、物凄い血溜まりとピクリとも動かない様子から死んでいると判断した。
廊下にも階段にも動かない使用人と血溜まり。
モーネはカタカタと震えながら、血溜まりを踏まない様に階段を上がる。
兄の部屋に着くと、開いたままの扉の先に、自分と同じピンク色の眼を開いたままの青年が血溜まりの中に倒れていた。記憶にあるより成長した兄だった。
かつて自分の部屋だった所へ行くとマーシーが小さな女の子を庇う様にして倒れていた。
モーネは駆け寄ってうつ伏せのマーシーを、力一杯覆す。
マーシーは生きていなかった……
「……っう」
モーネは初めて涙を流す。たった一人の味方だった人の死に涙が溢れた。
「痛い……熱い……」
小さな呟きにモーネはハッとする。女の子はまだ生きていた。
女の子は浅く息をしながら苦痛を訴えている。モーネはどうして良いか分からず「お水飲む?」と尋ねた。
女の子が小さく頷いたので、モーネは全速力で駆けて厨房へ行く。
厨房にも何人もの使用人が倒れていた。
その間を縫って、カップを手に取り水を汲み、急いで少女の元へ駆けつけたが———。
モーネが着いた時には少女は息をしていなかった。
マーシーが覆い被さっていた圧迫で抑えられていた出血が、退かされて一気に流れ出たのだろう。
血溜まりの中の少女。光を失った瞳はモーネと同じピンク色だった。
(助けてあげたかった……)
モーネは自分の無力さを嘆く。
遠くで遠吠えが聞こえた気がした。
(大変! 逃げなきゃ! 野犬が来る)
◇
森を彷徨い、やっと開けた場所に出ると、平地に道が走っていた。
力尽き……倒れる様に横たえたモーネの耳に、遠くから馬の嘶く声が聞こえた。
「大変! 子供が倒れてるわ!」
薄っすら開けたピンクの瞳に映ったのは、薄茶の長い髪の美しい女性。
抱えていた幼い男の子を侍女に預け、モーネの方に駆け寄って来る。
「大丈夫?! しっかりして!」
綺麗な空色の瞳が心配そうにモーネを覗き込む。
(……なんて綺麗な……女神様?)
モーネは意識を手放した。
通り掛かったのは、自領に向かうラクリマ伯爵家の馬車だった。
◇
次にモーネが目を覚ましたのは、ラクリマ伯爵邸の一室のベットだった。
(……ここは?)
「あら。目が覚めたのね」
モーネが優しい響きの声がする方に目を向けると、最後に目にした美しい女性が居た。
「大丈夫よ。何も心配しなくて大丈夫。お医者様に診てもらったら、少し脱水症状と栄養が足りないだけですって。貴方、お名前は?」
「……モ……ネ」
掠れた声しか出せず、ハッキリと発音できなかった。
「モネ。大丈夫よモネ。今はゆっくり休みなさい」
女性の優しい声音にモーネは再び眠りに落ちた。
以降、モーネは『モネ』と呼ばれる様になる。
◇
サーシャ・ラクリマ伯爵夫人がモネを拾ったのは、四つになったばかりの息子のテオを連れて、遊びに行っていた実家から、夫のジェイデン・ラクリマ伯爵が待つ伯爵領へ向かう途中だった。
道の端に倒れていた子供。焦茶色の髪に、一瞬見えた瞳の色は珍しいピンク色。
見窄らしい格好の痩せた少女。
サーシャは放って置けず、馬車に乗せて自領へと連れて行く。
休憩に寄った町で……自領への道中中程にある森の奥にある、薬作りの村の村人全員が惨殺されたと言う噂を耳にした。
『質の良い薬を売ってくれる村だったのに……今後が心配だ』
などと嘆く声をちらほら聞いた。
「奥様……もしかしてこの子……」
「……そうね……もしも、その村の子だったら……誰にも知られない様保護しなくてはね———」
その村の生き残りだったら、犯人を目撃しているかもしれない。素性を掘り下げて尋ねる事で、少女が危険に晒されるかも知れない。
全然関係無い可能性もある。だとしても、見窄らしい容姿から不遇な生活を強いられていたと予想出来た。
子供をそんな生活に戻す選択肢はサーシャにはなかった。
◇
(これも何かの縁だわ。伯爵家で保護して生活と仕事の支援を……先ずはテオの遊び相手をしてもらって……いずれ侍女の仕事を覚えて貰いましょう)
サーシャは眠るモネの頭を撫でた。
お読み頂きありがとうございました。
前回、待っていたよとコメント下さった読者様方。本当にありがとうございました。有り難くて目頭が熱くなりました。
すっかり亀更新ですが(汗)
頑張ります!
成る可く短く纏めようと思っていますが……
モネ編続きます( ̄^ ̄)ゞ




