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第38話 なつかぜ

 キーンコーンカーンコーン。  

 今日は7月25日。終業式の日だ。


「これで、ホームルームを終わる。各自体調管理と、勉強だけはしっかりとな! 夏休みだからって、決して浮かれんじゃねーぞ? じゃ、解散!」


 担任の本田先生が、ホームルームを終わらす。

 静かだった教室に話し声が響き始める。楓真はその渦に呑まれないように、さっさと教室を出た。


「さて……行きますか……!」


 楓真が、帰ろうとした瞬間、


「待ちなさい。仕事があるのよ」


 楓真の腕を柚花が掴んだ。


「……! なんだよ仕事って? 俺は今から用事があってだな……」


 楓真が柚花の手を振り払おうとした瞬間、柚花は握る力を強める。


「うっ! いてててててててて……。お前……力強すぎんだよ!」


「握力48ありますけど? なにか?」


「…………お前ほんとに女子か? 俺でも40ちょいだぞ?」


「私は、れっきとした女の子ですぅー! それと! 仕事あるからさっさとしてよ!」


 柚花は、楓真の腕をさらに引っ張る。


「痛ぇって……だから! あのな! よく聞け……俺はこのあとバイトにっ……あっヤベッ!」


「あれぇー? この学校確か、バイトは校則で禁止されてるはずじゃー?」


 柚花はニヤニヤと笑いながら、楓真のもう片方の腕も掴む。


「ちっ……違う! 間違えた! 手伝いだ! 手伝い! いとこの手伝いをだな……」


「何の手伝いをしに行くの?」


「……店」


「はーい! バイト確定演出! 生徒会室まで連行しますねー!」


 柚花が、楓真の腕を両手で持とうとした瞬間、


「よしっ!」


 楓真は柚花の手を振りほどいて、ダッシュする。


「あっ! 待てっ! 立華楓真!」


 が、しかし、柚花がすいすいと追いついてきて、楓真に飛び乗る。


 ドターン!!


 2人は、そのまま倒れ込む。


「痛って! おまっ……足速すぎるだろ!」


「50メートル走、6.1秒の私に、勝てると思ったの?」


 楓真の背中にまたがるようにして乗っている、柚花が答える。


「……男子でもなかなか見ねぇぞ……そんなタイム…………」


「楓真……何やってんの?」


 通りかかったみくが、楓真の顔を覗き込む。


「あ……みく助けてくれ……俺は今から店に……」


 『店』という言葉で、みくは察した。


「あー柚花ちゃん……逃してあげて。このあと、面白いところ連れてってあげるしさ!」


「……まぁ、みくが言うなら……しょうがない……」


 柚花はしぶしぶ、楓真の上から降りる。


「ナイスみく! じゃ!」


 楓真は走って学校を出る。



 楓真が向かった先は、いとこが夫婦で経営する小さな喫茶店『なつかぜ』。楓真と、みくが小さい頃から行きつけにしている店だ。非公式生徒会役員のなかで、この店の存在を知っているのは、楓真とみく、悠希弥、そしてバイトしていた月乃だけだ。

 夏休みが始まったからと、楓真に手伝って欲しいことがあると、呼ばれたのだ。


 ーーカランカラン……


「こんにちはー」


「おー! ふーちゃん! 遅かったじゃない!」


 出迎えてくれたのは、いとこの妻、立華 紗矢(たちばな さや)。24歳。楓真にとっては、年の離れた姉のような存在だ。


「いや~ちょっと、学校でやばいやつに捕まってて……」


「ま、事情はあとでゆっくり聞くわ。拓が待ってるし、奥に入って」


 立華 拓真(たちばな たくま)。楓真の父の兄の息子にあたる。26歳。

 この2人が結婚したのは、3年前。そのときにこの喫茶店を継いだのだ。2人は、高校時代の先輩後輩関係で、あったらしく高校生のときにはもう結婚まで話が進んでいたそう。


「拓真さん! お久しぶりです!」


 楓真は奥にある、厨房へと入る。


「お! 楓真か! 久しぶりだな!」


 拓真はスープの仕込みの手を止めて、楓真のところまで来る。


「で、今日の用事ってなんなんですか?」


「なーに新作の料理を作ったから、それをお前に宣伝してもらおうと思ってな。ほら、お前って妙に接客能力高いだろ?」


「……つまり、俺にその新作料理をアピールしろと……」


「そう! 出来るか?」


「分かりましたよ……。でも、新作料理ってなんですか?」


「それはな……これだ!」


 拓真が器を持ってくる。

 その器には、美味しそうな半熟たまご、海苔、ネギ、チャーシューが乗り、濃厚そうなスープと麺が絡む……


「……ラーメン……?」


「おう! これぞ、うちの店の新作料理! 『なつかぜラーメン』だ!」


「一口いいですか?」


 楓真はいかにも食べたそうな顔で、拓真に聞く。


「あぁ、いいぞ! ほれスプーンだ」


 楓真は、拓真から渡されたスプーンで、ラーメンをすする。


「……っ! 美味い!」


「当たり前だ。紗矢特性のスープだからな。どうだ? いけそうか?」


「こんなラーメンなら、いくらでも宣伝しますよ!」


「じゃあ頼んだぞ! 開店時間だ!」


 楓真は、接客用の服に着替え、客が入ってくるのを紗矢と喋りながら待った。


 ーーカランカラン……


「いらっしゃいませー」


 続く






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