第37話 最後の夜
ーー5分前ーー
「一応……探してみるか……」
楓真は、宿舎の正面の方へと戻り、肝試しの時に皆がいた空き地へと向かう。
(まさか……俺が間違えてたのか……?)
楓真は、空き地に着いたが、誰もいなかった。
楓真はふと、森の中の方を見る。
「…………いや……みくだからなぁ……」
楓真は、肝試しをやっていた森の中へと入っていく。
しかし、森の中にはみくどころか、人の入った痕跡さえもなかった。
「流石にいないか……」
楓真は少し苦笑して、引き返す。
(じゃあ、キャンプファイアーの広場も見に行くか……もし、そこにいなかったらもう1度電話しよう……)
楓真は、キャンプファイアーの広場の方へと急いでいく。
「…………ここにも……いないか……?」
楓真はキャンプファイアーの広場を見渡す。
すると、階段状になっている石段にみくが横たわっていた。
「……っ!? みくっ!!」
(まさか……あいつ! あれが…………っ!!)
楓真は急いでみくの元に行く。
「みくっ! おいっ! 大丈夫かっ!!」
楓真はみくの身体を揺さぶる。
「ん~~…………」
みくが少しだけ反応した。
「良かった……。寝てるだけか……。おい! みく! 起きろ!」
みくは返事をしない。
「どんだけ深い眠りなんだよ。てかよくこんな外で寝られるな…………起きろ! おい! みく! 起きろ!」
みくが反応をする。
「……ん。なにぃ……?」
みくが目を開けると、そこには楓真が立っていた。
「……楓真っ!? なんで?」
「なんで……って、お前に呼ばれたんだが……つーか! 呼ぶ場所間違えてんだよ! あのメモ絶対間違えたやつだろ!」
みくは状況がつかめず、ポカンとする。
そして、なにかに気づいたようにポケットを探る。
「……あ、ごめん。渡すメモ……間違えた……」
「はぁ……わかったよ……で、要件はなんだよ?」
「うん……あのね……………………」
みくが話始める。
「……何……してたの?」
「…………やっぱり……怒ってるか……。実は、今寺さんと……」
「怒ってなんか…………ない……よ」
「……実はな、倉庫の鍵を返しといてって柚花に頼まれてな……。事務室まで行ったんだよ……そしたら、中に入った途端ドアが閉まって……」
楓真は、ことの経緯を詳しくみくに話す。
「事務室の中に今寺さんと2人で、閉じ込められたんだよ。で、出ようとしてたんだけど……ドアが開かなくて、やっと先生に救出されて……それで……」
「だから……あのとき、あやちゃんの後ろに本田先生が……」
みくは、納得したような顔を見せる。
「本当に……ごめんな…………。ごめんで許される訳じゃないとは、分かってるけど……」
「ううん。もういいの……」
「……でも……っ!」
楓真は、キャンプファイアーのダンスの時間、1人で立ち尽くしているみくを想像して、胸が痛んだ。
「……楓真は優しいもんね…………でも、本当にいいの。キャンプファイアーは終わっちゃったから…………」
「みくっ! いい訳ないっ! 俺のせいで踊れなくなったんだから……なにか……なにかっ…………させてくれ……」
楓真の頬に、1筋の涙が流れ落ちる。
「……楓真…………なんで……」
みくは言葉が繋がらなかった。
「………………踊ろう…………?」
みくはそう小さく呟いた。
「……え?」
「……踊ろう! 今! 私たちだけで!」
「そんなんで……いいのか……?」
「……うん! 私は…………楓真と踊りたいから!」
みくの目にも、涙が光った。
「……お前……泣いてんじゃねーか……」
「……楓真こそ……。貰い泣きだよ……これは……」
みくは楓真の手を取って、広場の真ん中に行く。
「ふふっ……私たちだけのキャンプファイアーだね!」
みくが微笑む。
「……あぁ……!」
楓真も涙を吹いて、みくの手を持つ。
月明かりに照らされ、2人が踊る。音源はない。ただ、2人は、想い描くように踊った。
(俺は、この林間学校で分かったことがいくつかある……。けど、その全てを語るには、時間が無さ過ぎる。またいつか……語るときがくれば、そのときは思う存分語ろう……)
「みくっ! ありがとう!」
(みくが好きだ……。けど、この気持ちをぶつけるときは今じゃない。みくが…………あのことを知るまで……いや、みくに知らせるまで……取っておこう…………)
「うん。楓真…………楽しかったね……林間学校」
「初日でもう死んだと思ったけどな……俺は」
「女湯は私の努力を讃えてほしいよ……」
「肝試しはお前の反応が楽しめたしな……。あ、月乃が今度、日本一のお化け屋敷に連れてってくれるらしいぞ……?」
「もうやだよ……怖いのは……」
「明日でもう終わりだな…………」
「早かったね……この3日間」
「俺は、今日の夜が1番長かったけどな……」
(みく……そして、林間学校……ありがとう…………)
楓真と、みくは夜空に舞うきれいな星を見上げた。
(いつかまた……みくとこうして……星が見れる時が来ますように…………)
林間学校編 完
これにて、林間学校編が完結です。
次話から……!
新編 夏休み編 開幕!!
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