第35話 3日目の長い夜④
「「非公式生徒会を辞めたい」」
「え…………?」
「……やっぱり……」
「なんで……分かったの……?」
楓真は彩葉に聞く。
「……立華くんの顔が……物語ってたよ……」
「俺、そんなに顔に出てた?」
「うん。バッチリ出てたよ」
「はぁ……そっか。俺、ストレス溜まってんだなぁ……」
このあとも2人は、『非公式生徒会』についていろいろ議論を続けた。
しかし、時間は勿論止まっているわけではなかった。
楓真が、そのことに気が付いたのは、8時半をまわろうとしていた頃だった。
「……8時……28分……?」
時計を見た楓真は固まった。
「え? どうしたの?」
「今寺さん……確認なんだけど……キャンプファイアーって終わるの8時45分だよな?」
「そうだよ。確か、終わりの10分前からダンスが始まるんだったかな……」
「……みくっ!!」
「……なに? みくちゃんがどうしたの?」
「踊る約束をしてる。……みくと」
「え? でも! もう……」
「いやっ! まだ出られる方法があるかもしれない! 今寺さん! 急ごう!」
「無理だよ……もう……少なくとも私は諦めてた……」
「まだ……あと5分もあるんだ。絶対どこかに出られる方法はあるはずだ……だから」
「……立華くんは……なんでそんなに一生懸命なの?」
「…………みくと、踊りたいんだ……」
楓真は、彩葉の方へ身体を向き直して言う。
「それに……本当はキャンプファイアーもみくと一緒に見るつもりだったんだ……。今もみくは……俺を待ってくれてる……だから……」
「分かった……立華くんって……そういう人なんだね……。うん。私も協力する。キャンプファイアー見に行こう!」
2人は、椅子から立ち上がる。
「でも……出るって言ってもドアは開かないし、窓からも出られないのに、どうやって……?」
「大丈夫。俺に策がある」
「……え?」
楓真はドアの方へと、向かう。
そして、ドアを叩いて大声を出す。
「誰かー! 誰か近くにいませんかー!!」
「いやっめっちゃ原始的!!」
「誰かー!」
「もうちょっと……なんか……この…………はぁ……」
彩葉は、納得のいかないような顔をしながらもドアに近づく。
「誰かいませんかー! 私たち出られないんですー!! 助けて下さいー!!」
彩葉も同じように、ドアを叩いて大声を出す。
「今寺さん……」
「誰かーー!! いませんかー!!」
2人はドアを叩きつづける。
5分ほど経ったとき、外から声が聞こえた。
「誰かいるのか!? 今開けるからな!」
楓真と彩葉は、顔を見合わせて喜んだ。そして、ドアから離れる。
カチャカチャと音がして、ドアが開いた。
「大丈夫かっ!!」
ドアが開いた途端、部屋に飛び込んできたのは、楓真たちの担任、本田先生だった。
「立華と今寺! どうしてここに……」
「えっと……鍵を返しに来たんですが、風でドアが閉まってしまって……」
「そうか……立華も一緒か?」
「はい」
「閉じ込められたのはいつからだ?」
「1時間くらい前です……」
「ったく……まぁいい……とりあえずここから出るぞ……」
本田先生は楓真と、彩葉を事務室の外へ出す。
「それと……立華ぁ〜! お前は何回罪を重ねたら気が済むんだ? これで3回目だぞ?」
「今回ばかりは本当に僕悪くないですよ!! 話は後でしますから……」
楓真は本田先生にそういったあと、キャンプファイアーの広場へと走り出した。
「いや……別に今説教するつもりはないんだけどな……」
本田先生と彩葉は楓真を追いかける。
(……事務室を出るときに見た時計が8時43分。間に合ってくれ……)
楓真は全力で走った。
宿舎をでて、駐車場を横切り、肝試しの時に皆がいた空き地を抜けた。
しかし、楓真がキャンプファイアーの広場についたときには、すでにダンスの時間は終了し、実行委員中心に片付けが行われていた。
広場の時計は8時50分くらいを指している。
「え……? なんで…………」
楓真は1人で立ち尽くしているみくを見つけた。
「…………み……く……」
「……楓真……」
振り向いたみくの目には涙が光っていた。
「ど……うして……」
「…………みく……ごめん……」
楓真の目にも涙が溢れてくる。
「あやちゃんと…………なにし……てたの……?」
みくは、あとから走ってきた彩葉と本田先生を見つけて問う。
「…………みく…………」
「あとで……ここに来て……」
みくは楓真の手に、メモを置いて走り出していった。
「…………」
楓真は何も考えられずに、ただ立ち尽くしていた。
楓真に後悔の雨が降り注ぐ。
続く
この作品が少しでも面白いと思ってくださった方はブックマーク、下の評価をよろしくお願いします!




