第32話 3日目の長い夜
ガチャン
ドアが開く音がした。
「…………っ!」
ふすまを開けて、先生が部屋に入ってくる。
「……なにやってんだお前ら……?」
先生は、部屋に入った途端、そう呟いた。
「あのーこれは…………」
楓真と風凛は言葉が出なくなった。
「男女の干渉駄目なのは、知ってるだろー」
先生は怒っているというより、楽しそうだ。
「それと、立華ー。お前は何回罪を重ねるんだ……」
「いや、これは俺悪くないですよ! こいつが勝手に来たので……」
「林間学校中だから、怒らないけど、ルールには気を付けろよ。それと片谷はもう部屋に戻れ。ほら」
「はぁい……」
風凛は先生と一緒に、言われたとおり部屋を出ていく。
風凛が帰って静まり返った部屋に、楓真は1人でいた。
「ったく……あいつは結局なにが伝えたかったんだよ……」
楓真はゴロンと布団によこになる。
「……………………蒼桜……」
ーー
「……きろ……おいっ……起きろ! 立華!」
「ん…………? なんだ……悠希弥か……」
「なに寝ぼけてんだ! もう7時になるぞ! 7時15分に食堂集合だろ!」
「え?」
楓真は飛び起きる。
窓からは明るい日差しが差し込み、目の前の悠希弥の顔を照らしていた。
スマホを見ると、6時58分を指していた。
「ったく! 集まりも来ねぇし、2時くらいに戻ってきても、まだ寝てるし、挙句の果てに今まで熟睡とは…………」
悠希弥が呆れたように呟く。
「……俺……寝落ちしたのか……」
「とりあえず行くぞ! 今日はお前の楽しみにしてた平和学習だろ?」
「…………大事なことだけど……誰も楽しみにはしてないだろ……」
楓真は着替えながらそう答える。
3日目のタイムスケジュールは、1日平和記念館で、平和学習を行う。そして夜、7時半からはキャンプファイアーが待ち構えている。
「そうか? 俺は歴史を知れて、結構良いイベントと思うんだけどな?」
「社会の選択科目、歴史のやつがなんか言ってるよ……。てか俺は、今夜のキャンプファイアーのほうが楽しみなんだよ」
「で、結局一条と踊るのかよ?」
「っしゃ! 着替え完了! 悠希弥行くぞ!」
2人は階段を降りて、食堂に向かうーーーー
時刻は7時すぎ。
もうすぐ生徒たち待遇の、キャンプファイアーが始まろうとしている。
にも関わらず、楓真はまだ部屋にいた。
「……むし餃子……ざ……座右の銘……石田三成……り……り……林道!」
「林道だな……じゃえーと……りんご……ゴリラ……ラスベガス……」
楓真は、ルームメイトたちと記憶しりとりをやっていた。
「……林道……ウクライナ!」
「よし、りんご……ゴリラ……」
「なぁ? もう終わりにしよう。次でラストだ」
楓真がそう言った。
「……ウクライナ……な……難問!」
「よしっ! 終わり! キャンプファイアー行くぞお前ら!!」
悠希弥が立ち上がり、みんなは一斉に部屋を出ていく。
「行くぞー!! 1番遅いやつジュースおごりな!」
悠希弥がそう言って駆け出していく。
ルームメイトたちがそれにのって走り出していく。
「そんな急ぐ必要ないだろ……」
楓真はゆっくりと歩き出す。
階段に差し掛かったところで、階段の上から声が聞こえた。
「楓真ぁ!!」
楓真が上を向くと、蒼桜がいた。
「やっと……見つけた……」
「……どうした?」
「…………ごめんなさい!!」
「えっ?」
「わたし……知らなくて……」
このことが、キャンプファイアーのダンスのことだと、楓真は少しあとから理解した。
「……それか……俺も悪かった……今日話そうと思っていたのに、男女別行動だったからな……」
「……うん………楓真……みくちゃんを大事にね……」
「いや……だから……それ…………誤解だって……」
「一瞬でも……夢を見させてくれてありがとう! キャンプファイアー……楽しんでね……! わたしは風凛ちゃんと見るから……じゃあね!」
蒼桜は少し早口で、そう言ってから駆け出した。
「…………誤解なんだよ……俺とみくは……」
楓真はゆっくりと階段を降り始める。
「……夢見させてくれてありがとう…………最低じゃねーか……俺……」
楓真はそのまま、宿舎を出て、肝試しの時にみんながいた空き地を抜け、キャンプファイアーが行われる広場に行く。
「……あっ! 立華楓真!」
宿舎側へと走ってきた柚花は、楓真を見て呼び止める。
「……っとと! どうした? 柚花?」
柚花は、楓真に鍵を見せて説明する。
「ごめん! 私実行委員なんだけど……このあと点火の時に司会とかやんなきゃ行けないから、この倉庫の鍵、悪いけど宿舎の事務室まで届けてくれる?」
「……あ? あ、あぁ……分かった……」
楓真は鍵を受け取ると、今来た道を引き返す。
宿舎の中に入り、事務室の扉をノックする。
「……誰もいないのか……仕方ない……」
ギィ……
「失礼します……」
中には明かりがついている。
(誰か……いるのか?)
楓真はそう思いながらも鍵を返そうと、中に入ると。
バダァァン!!
ドアが勢いよく閉まった。
その瞬間、部屋の中の電気が消える。
「やべっ!」
「きゃっ!」
楓真と、もう1人声がする。
「えっ?」
薄暗い部屋の中で2人が顔を合わせる。
「立華くん!?」
「……いっ……今寺さん!?」
続く
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