第27話 蒼桜
(この景色……どこかで…………)
蒼桜の目に幼い頃の淡い記憶と、目の前の景色が重なる。
(…………あれ……?)
(……やっぱりわたし、ここ知ってる気がする……かも……)
「ん? どうした蒼桜? 行くぞ?」
「あっ……うん……」
楓真と蒼桜は小屋から離れた。
「まずこの川に沿って下りていくか……そうすりゃいつかは麓に着くだろ」
「みくちゃんたちは?」
「お前を探すために二手に分かれたんだよ! たまたま俺が見つけただけで、あいつらもこの山をさまよってるよ……多分……」
「そう……」
「元はと言えば、お前のせいだからな? ちゃんと反省してるか?」
「……うん……してるよ…………」
(ん? なんだこいつ……元気ないな……ちょっと怒りすぎたか……?)
それからも、楓真と蒼桜は川を下り続けた。
「お? なんか民家が見えてきたな。ここなら連絡できるんじゃないか?」
楓真はそう言ってスマホを取り出す。
「楓真! 待って!」
「ん、なんで?」
「もう少し……一緒に居ようよ……?」
蒼桜が楓真の顔を覗き込んで、楓真の隣に来る。
「……ッ! ……あ、うん……いいよ……」
楓真は流されるがままに、スマホを鞄にしまって歩き出した。
「どうしたの? 楓真?」
「いや、なんでもない! さっさと行くぞ」
楓真と蒼桜は、再び川の横を歩いていく。
(くそっ……なんで俺こんなにドキドキしてんだよ……)
楓真の頭にさっきの蒼桜の顔が何度も、何度も浮かんでは消えた。
「ねぇ……楓真?」
「ど……どうした?」
「3日目の……キャンプファイアーのダンスのこと……知ってる?」
「あぁ、確か男女が踊れば、結ばれるって言われてるやつか?」
「うん。楓真はそれ……信じてる?」
「どうだろうな……。でも、そんなのただの噂話だろ? キャンプファイアーで踊ったからって……結ばれるなんて決まるわけないと思うけどな」
「お前はどうなんだよ?」
楓真は蒼桜に質問で返す。
「わたしも……信じてないよ。風凛ちゃんから聞いただけだから……」
「片谷か……いかにも言いそうだ。そういやあいつ、中学校の頃に付き合ってた彼氏にめちゃくちゃ酷いフラれ方したって、みくが言ってたな……」
「そうなの? 可愛そう……」
「ま、あいつだからほとんど何も思わないけどな……。どうせ自己中心的な発言でも繰り返していたんだろ」
会話が一旦落ち着く。
「…………楓真に……お願いがあるんだけど……」
「なんだよ?」
「……3日目のキャンプファイアー……」
「一緒に踊ってくれませんか……?」
蒼桜は真剣な顔で、楓真と向き合う。
「…………え?」
「これは……えっと……結ばれるなんて噂は関係なくて……ただ……わたしは……楓真と踊りたいのっ……!」
「…………えっと……」
「楓真……お願い……します!」
(まさか、蒼桜に誘われるとは……でも、みくと踊る……けど…………)
「……蒼桜?」
「はっ……はいっ……」
「…………分かった……」
蒼桜は分かりやすく表情を変える。
「……楓真ぁ……ありがとう!」
蒼桜の笑顔が楓真の目に映る。
(…………あれ……?)
楓真の目に蒼桜と、もう1人、誰かの笑顔が重なる。
(…………もう……分かんねぇ……)
ブブッ ブブッ ブブッ
楓真のスマホが震える。
「あ……そういや着信音切ってバイブにしてたな……」
楓真はスマホを取り出し、画面を見る。
『I.MIKU』
と、スマホの画面には表示され、みくからの電話だった。
続く
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