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第26話 やまの小屋

「あっ……楓真……それっ……」


「ん?」


 楓真は画面の右上を見た瞬間固まる。


 そこには、


『圏外』


 の二文字が表示されていた。


「うそだろぉーーーー!!」


「圏外……って……確かにここは山の中だけども……」


「じゃ、自力で歩いて帰らないといけないのか……」


 楓真と蒼桜はとりあえず歩き出す。


「てか、なんで道を外れたんだよ? 迷う要素なかっただろ……あの道」


「え? ニ本道に分かれてたくない?」


「え? うそだろ? 一本道だっただろ?」


「おかしいよ! わたし、分かれ道を右に曲がったんだよ?」


「じゃ、あれか。ゲームとかでよくある子供しか見えない通路みたいなやつか?」


「わたし、子供じゃないもん!」


「ん?」


 楓真が急に立ち止まる。


「どうしたの?」


「えっ……?」


 楓真の見つめる先を見た蒼桜は、言葉を失って立ち尽くした。


 2人が見つめる先には、小さな滝があり、その下から沢が伸びていて、2人の足元を通り、さらに下まで流れていた。

 しかし、2人が注目しているのはその沢ではなく、沢のほとりに建っている丸太で作られた小屋なのだ。


「こんなとこ……来たときに見てないぞ? というより……」


「なんで……こんなところに小屋が……」


 楓真だけでなく、蒼桜も違和感を感じているようだ。


「行ってみるか?」


「行くしかないでしょ……!」


 楓真と蒼桜は小屋に向かってゆっくりと歩き始める。


「近くまで来ると意外と古そうだな……」


 その小屋は丸太を横に積み重ねて作ったよくある丸太小屋だが、屋根は半分以上崩れ落ちている。


 壁には苔がびっしりと生え、完全に自然と一体化していた。


「なんか……神秘的だな……」


「せっかくだし……なかに入る?」


「そうだな……」


 楓真はもともとドアがあったらしきところから、小屋のなかに入る。


 小屋のなかには、小さなテーブルと、それを囲むように椅子が数脚、奥には古びた木のソファー、そして、テレビ台みたいな台があった。


「思ったよりも広いな……」


 楓真は1番奥まで入り、木のソファーに腰を掛ける。

 蒼桜もなかに入ってきて、楓真の隣に座る。


「……っ! 楓真……これ……」


 蒼桜は、横にある壁を指さして楓真を呼ぶ。


 そこには、


『ふーくん こっち

なっちゃんがいる  でざーととまってる』


 と、ひらがなで壁に彫ってあった。


「なんだこれ? 汚い字だな……」


「『ふーくん』だって……。楓真だね!」


「俺、そんな呼び方で呼ばれたことねーよ……」


「てか、こんな山奥の小屋になんでこんな文字が書かれてるんだ?」


「どう見ても子供の字だよね? これ」


「それと……俺がここに入った時、最近人がいた痕跡は見なかったから、これが書かれたのは5年くらい前か……?」


「10年前ってこともあるかも……」


「ま、今はそんなことより、どうやって帰るかを考えないとな……」


「お腹すいたーー!」


「はぁ? お前まだ10時だぞ? お腹すいたって……みくじゃあるまいし……」


「お弁当食べたいーー!」


「ったく……んじゃ食べろよ」


 蒼桜は自分の鞄を開けて、弁当箱を取り出す。


「ただし! 5分以内で食べろ!」


「わかった」


 蒼桜は弁当箱を開けて食べ始める。


(とりあえずこいつが食べ終わったら、山を下りよう。んで、宿舎まで帰って……先生に連絡を……)


「食べた」


 蒼桜が食べ終わって報告する。


「いや早すぎるだろ! みくかよ!」


 楓真も思わずツッコむ。


「そんなに食べてない……」


「じゃあ山下りるぞ」


「えっ? 登るんじゃなくて?」


「もうここまできたら、一旦下山したほうが早いと思う」


「なるほどーー」


 楓真と蒼桜は小屋を出た。


「……あっ……」


 そこには、表現できないような美しい光景が広がっていた。


 綺麗に輝く滝、さらさらと流れる沢、そびえ立つ桜の大木。


「すげぇ……まるでおとぎ話のような景色だな……」


 楓真は感動していたが、蒼桜は、


(この景色……どこかで…………)


 蒼桜の目に幼い頃の淡い記憶と、目の前の景色が重なる。


(…………あれ……?)


 続く

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