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C++(カフェインプラスプラス)  作者: 雲居 残月
第三章 アンダーグラウンド

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3-7 地下

 その日の夜、まずはダークウェブにアクセス可能なウェブブラウザをインストールした。いつもとは違う検索エンジンを使い、指定されたキーワードで、まとめWikiに行く。そこにある文字の羅列の中から、言われたとおりの見出しのものを探してURLを入手した。

 目的のページを開く。読みこみが遅い。Torを利用しているため時間がかかる。すぐにはたどり着かない。何箇所か経由して、ようやく目指していた匿名掲示板にたどり着くことができた。

「さて、どうやって探索するか」

 掲示板サイトには検索欄がなかった。検索エンジンがたどり着かない場所なので、グーグルなどで探すこともできない。

 一ページずつ開いて内容を確認する必要がある。これは時間がかかりそうだ。一度見たものは保存しておこう。福原は、ページを保存しながらリンクをたどる。過去にさかのぼりながら、ひたすらネット上の情報を落としていった。

 いつの間にか深夜になっていた。時間を使いすぎたと反省する。保存したページを葉月のハンドルネームで検索する。周囲の書きこみも含めて内容を確かめる。葉月はたまに現れて仕事を請けていた。会社に入ってからも、仕事はしていないが何度か現れている。

 作業をしながら気になることがあった。こうやって過去の情報を一気に確認したからこそ気づいたことがある。葉月の書きこみからそれほど離れていない位置にURLが貼られていることが多い。古いものをクリックしてみる。リンク切れだ。新しいものを開く。ウェブサイトが表示された。おそらく先ほどの掲示板と同じで、転々とURLを変えているのだろう。

 開いたサイトの名前はリスキーボックスだった。説明を読むと、ウーバーイーツのような個人デリバリーの仲介をしているようだ。指定場所にある箱を別の場所に運ぶ。金銭の授受は仮想通貨でおこなう。何度かこなしていくとレベルアップして、高い報酬の仕事が現れると書いてある。

「ゲームみたいだな」

 実際、利用している人間はゲーム感覚なのだろう。説明ページを読む。ゲーミフィケーションを取り入れて、ユーザーの行動を上手く誘導して習慣化させる仕組みになっている。個人のあまった時間と運搬能力を共有するシェアリングエコノミーの一種だ。

「うーん、どうするか」

 どういったサービスなのか確認したい。しかし、登録にはメールアドレスが必須になっている。普段使うものは使いたくない。無料メールサービスを使って、新しいメールアドレスを作り登録する。ログインしてユーザーしか閲覧できない情報を確かめようとした。

 スマホアプリのインストールを要求された。全機能を利用するには必要なようだ。昔使っていた古い端末を押し入れから出してきてインストールする。声による認証を求められた。どうするか悩んだあと、表示された文章を読み上げた。

 認証が完了して地図が表示された。大量のアイコンがさまざまな地域に配置されている。依頼は都心に集中している。関東圏は多数あるが、その他の地域は少ない。他の機能も確認しようとする。しかし、ほとんどの場所に錠前マークが表示されており、見られない。拡大して確かめようとするとアイコンは消える。詳細は確認できないようだ。

「詳しい情報は、レベルが上がらないと見られないのか」

 まあ、そうだろうな。ダークウェブからしかたどり着けないアプリだ。犯罪者たち御用達のツールなのだろう。運ぶ物も、違法な商品が中心のはずだ。

 おそらく登録直後のレベル1の状態では、犯罪の証拠となる情報や品物はなにも出ないのだろう。何度か依頼をこなして共犯者になった者だけが、詳細な内容にアクセスできる。警察の捜査を逃れるための仕掛けというところか。

 なぜ匿名掲示板に、サイトのURLが貼ってあったのか考える。葉月が作ったサイトなのか。しかし証拠はどこにもない。葉月に尋ねたとしても真実を話すとは思えない。どうしたものかと考えていると窓から朝日が漏れこんできた。どうやら徹夜で調べていたようだ。もう寝よう。福原はパソコンの電源を切り、寝床に向かった。


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