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慰安旅行四日目そのいち

帰宅途中にも様々巡ったが、その際に聞かされたことで、どうやら私がトモミたちと一緒に心中を考えたのだろうと思ったとのこと、やはりトモミの心の闇は深そうだと再認識できたが、私の行動が常に光に向かって引き上げるためにあるのだと、私は理解したとのことだった。


その後も誰かが落下して怪我することもなく、無事に旅館に戻ることができ、居残り組含めた全員で集まり、そしてそれぞれが新年の挨拶を済ませた後、すぐにみんなで寝ることにした。


理由は当然、翌朝の初日の出を拝むためだ。


ワンダーエッグとドリームエッグを休眠状態の卵に戻し、明日までには体力を全回復させるためにそれぞれを回復ポッドの中に入れ、すぐ電気を消して寝に入る、その際にスマホに目覚まし時計をかけることも忘れなかったため、翌一月一日の朝、けたたましい音と共に目が覚めた。


「トモミ、トモミ、朝だよ。」


トモミの布団がかかった状態の胸を叩きながら起こす、現時刻は六時、辺りはまだ真っ暗だ。


「んい~、ねむい……。」


一応意識はあるらしいが、目が開いていない状態で眠そうな声を出すトモミ。


「初日の出見るんだろ?起きろ。」


強めにゆすり起こすと、トモミがむっくりと起き上がった。


「まだねむぃ……、ねたいぃ~……。」


トモミがぐずるが、それを聞いてしまっては良い思い出というものは作れない。


「初日の出まで時間はあるけれども、早めに用意した方がいいからな。


ほら、起きろ。」


トモミはゆっくりと寝たり起きたりを繰り返し、そのたびに揺り起こして、十分後にやっと起きた。


「はらさんおはよ~。」


「おはよう、卵たちを起こしてから外に出て、軽い登山をするよ。


準備しな。」


「はーい……。」


眠そうな声を出しつつも、トモミは寝る前に来ていた浴衣から、もそもそといつもの服に着替える、その間に私は卵たちを起こして、即座に私自身も着替えを済ませる。


「それで、山頂はどっちでしたっけ?」


トモミが未だ覚醒しきっていないような口調で聞いてくるから、笑い混じりに答える。


「登山とはいっても屋根の上から見るから、ある意味山頂は関係ないかな。」


「そうなんですねぇ……屋根の上に登るんだ。」


ウトウトとした感じのトモミが何やらもにょもにょと口を動かして、数十秒ほどで全てを理解したとでも言いたげに、突然カッと目を見開く。


「いや、なぜ屋根の上に!」


「何がだ?一番朝日が見えるだろう。」


突然全てを理解した上で私の発言自体が意味不明だと言いたげではあるが、それに対して逆に疑問を抱いてしまう。


「それはそうですけど……。危なくないんですか?」


トモミの疑問はもっともだが、建物の所有者に伺いも立てずに登ってはいけないだろうと思わない辺り、やはり子供である。


クックックと笑い混じりになってしまうが、それでもトモミのことを安心させるために笑顔で告げる。


「そこは細心の注意を払うから、大丈夫だ、問題ない。」


私が若い頃のネットミームを使いながら答えるが、当然のごとく分からないらしいトモミが不安そうな顔を向けてくる。


「本当かなぁ。」


確かに許可などは取っていないが、事前に登れるかどうかは調べてあるのをに、私が大丈夫だと言っているのに何がダメなのだろうか。


「だったら、登山するか?」


ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべると、トモミは綺麗に手のひらを返した。


「屋根の上、登ります。」


真剣な顔をするトモミから窓に目線を移すと、いつの間にやら空がうっすらと明るくなってきたため、私は用意が終わっているフィーアとフュンフを変身させてから、屋根の上と部屋を行き来する、そして全てを屋根の上に連れてきたところで、すでに夜明けは近いらしく、空は暗いが真っ暗から考えればかなり明るくなっていた。


「もうすぐだな。」


言いつつ腕時計を見てみる、そこには日の出時刻5分前となっていた。


「ハラさん、みんなも、今年もよろしくお願いしますね?」


トモミが全員に向かって新年の挨拶をすると、シャドーそれぞれがが鳴き声を上げ、答える。


そして、徐々に姿を現す初日の出を、トモミやアリス、スター含めたうちの子達全員と共に拝んだのだが、屋根の上から見たご来光は眩しく、昨夜の曇った空を、すっかりと忘れさせてくれるような、雲一つ無い曙(あけぼの)が印象的な年明けであった。




@@@


しばし朝焼けを楽しみながら初日の出含めて撮影をし、完全に日が昇りきってから部屋に戻ったが、その際に誰かに見られたかもしれないという考えもよぎったのだが、どうせ組織の施設なので関係ないかと時間を見る。


どうやら朝食を食べられる時間となったみたいなので、これで最後となる松の間へと移動する。


「それで、ハラさん、今日はどうするんですか?」


全員が一緒に大広間へとやってきたので、入り口のカウンターで番号を見せ、席に座る。


ここで最後の食事を終わらせたら、荷物をまとめて金を払いチェックアウトだ。


トモミの問いの最中に料理が運ばれてきたので、お礼を言いながらいただきますをして、みんなして食べ始める。


この宿最後の主食は天ぷらの盛り合わせで、なかなかにヘビーではあるが食べてみると油が重くなく、備え付けの大根おろしと天つゆでおいしくいただける代物だ。


「そうだなぁ、あるとすればどこかの神社でお参りだな、行きたい神社はある?」


一口かじってからトモミに問いかけると、既に行きたいところをピックアップしていたらしく、提案はすんなりとなされた。


「なら昨日も話しましたけれども、大きな一之宮の神社に行きたいです。」


「いちのみや?なにそれ。」


トモミの口から出た『いちのみや』という単語を知らなかったので問いかければ、トモミが大げさな反応を示してくる。


「知らないんですか!?」


トモミから神社の格付けについての説明を受けながら食事を摂っていると、隣の机に例の一団が座った。


「あ、お通夜……。」


思わず口に出てしまう程度には静かな面々だが、もしかしたら初日の出を見た可能性があることは、サメジマがスマホをいじり、画像を変化させているのが見えたことでわかったことだ。


登録解除から一日がたった今でも、未だに沈んでいるエンドウに何か声をかけた方がいいだろうかと心配していると、突然ドライが食事を止めて突っ込んでいった。


「あっドライ!まちな!食事中だぞ!」


ドライが突っ込んでいったせいでトラブルになることを恐れた私は席を立ち、回収するために隣の席に歩き出す。


「ドライちゃん……、また来たんだね。」


ドライが意気消沈したような声を出すアズキのそばを横切ってエンドウのところへたどり着き、鼻でエンドウの左手を押し上げようとしてから、持ち上がらなかった手を前足でカシカシとひっかき、自分のことを持ち上げるように要求しているのが見えるが、それを持ち上げて遠ざけることで止めさせる。


「すみません、最終日にまでお邪魔してしまって。」


言いながら自分たちの席へと戻ろうとすると、エンドウがハラハラと涙を流す。


「いいんです、ただ、つらいだけなので。」


ドライのことを目にすると涙を更に流し、なにが影響しているのかはわからないが、きっとこれは動物に対するPTSDが出た可能性があるかもしれないと考え、どうするか考えるが、トラウマに対するなんらかの処置などは私の専門ではない。


動物に関して恐怖している可能性もあるが、そもそもそれ自体が怖くなっている可能性もあるので、正直困ってしまった。


「そうだなぁ、うちの子たちの怖くない子はいるかい?」


無い頭をひねった結果の問いかけではあるが、そのことについてトモスミが問いかけてくる。


「というと?」


「君たちみんなワンダーエッグ持ちだってことだから、食事の間だけでも一緒にいていいかなって思ったんだけど……どうかな?


ついこの間のこともあるし、動物怖くなっちゃっていたら、ちょっと問題だし、変身させなきゃ大きくもならないし、私の子達も君たちの使役している子達も、きっと怖くないからさ?」


考えていることとすれば、素人療法なのでそれで恐怖が拭えるかとかはないだろうけれども、動物がこれ以上怖くならないように早めに手を打った方が良いと思ったので、うちの子達を犠牲にすることに。


エターナルジュブナイルの面々に選ばせるようにうちの子たちを指さすと、トモスミだけがここぞとばかりにドラゴン型を指定して、食事中にも関わらずに二号を抱き上げてエンドウの近くにまでもっていく。


「ほら、ドラゴンだよ、怖くないよ~」


トモスミが二号を差し出しながら進めるのにびくびくしながらエンドウが触っているのを見て、アズキもいつの間にかにドライのことを膝に乗せながら、頭からお尻まで毛並みを堪能するかのようにしっかり撫でている、その内食事を終えたシンとイルルがジュブナイルメンバーたちの元へ近づいていった。


近づいていった二人は少し種類は違うが、どちらも身長は小さく美人でイケメンだ、ちなみにシンは金髪で目が青くかわいい系のイケメン、イルルは髪が白くて目が緑のたれ目で神秘系のイケメン。


だが、両者に言えることは、どちらもクソガキであるということだろう、シンはアグレッシブタイプ、イルルはダウナータイプのクソガキで、二人が揃うとどちらもアグレッシブとなり、暴れまわるから始末に負えない。


今回においては二人とも、相手に対して少しは思うところがあるのだろう、二人がエンドウの頭を撫で、エンドウがそれによって慰められているという、大人が子供に世話になっている図を横目に、私は問題が起こらない限り大丈夫だろうと、彼らに全て任せた状態で食事に戻る。


暫くしてエンドウの泣き声が静かになり、どうなったか気になって隣を見てみると、涙が止まったエンドウがシンとイルルに絡まれながら食事しているのが見えた。


厚かましくも膝に乗っているシンが指で料理を指さしながら、まるで『これおいしいから、食べなきゃ損だぞ』とでも言いたげにエンドウを見ている上に、イルルも『ホラ食え、食わなきゃだめだぞ』とでもいうように、背中から腕を回してエンドウの頭に自分の顎を乗せている。


それを焦りながらエンドウたちを見ていたが、全員がそれを受け入れている上に、エンドウがそれによってご飯を食べている風景を見たことで一応安心したので、私は食事を終えてから話しかけに行く。


「落ち着いたかな?」


いつの間にかに食べ終えたうちの子たちが隣へ移動していたり、まだ食事途中だったものが席に戻っていたりと、うちの子たちに個性があるのを再度確認できた。


「うん、ありがとう。」


エンドウがお礼してくるが、エンドウ以外もしっかりと堪能したらしく、それぞれがキャスト状態になっている私の卵で元気になっていた。


「そういえば、君たちはワンダーエッグの世話をしっかりやっているか、簡単な点検をしていいかな。」


ふと思い立ち、データ確認のためにも聞いてみると、メンバーは顔を見合わせた後に、首を横に振った。


「いや、こっちにはこっちでしっかりと管理されていると思うから、そっちに見せるよ。」


やっぱり駄目かとため息が出そうになるのを抑えながら、実際そうだとされることを、含みを込めた声色で伝えることで、見せてもらえるよう交渉を持ちかけることにする。


「一応言っておくけど、この分野では割と最先端なんだけどな、私。


別にいいならそれでもいいけど。」


事実をそっけなく伝えれば、私のことを吟味するように見てきたトマツリが、今日も来ている旅館の浴衣の中から卵を出す。


「おいシオン、卵取られるぞ。」


アズキが警戒した目で言うが、トマツリはこちらを信頼しているような目で渡してきたので、受け取ってから簡単に状態をチェックするために、卵全てが同じになっているはずのメンテナンスモードを起動する、マスターキーワードを言ってから管理者権限のところを開いて確認したところ、しっかりとお世話をされているらしく、体調良好、ストレス値もほどほどを推移しており、それ以外の基礎数値に問題はなく、ざっくりとしか調べていないため、どのような性質でどのような成長曲線の卵かまではわからないが、基本的なところは問題ないらしい。


他にもストレス値などの今後の暴走に関わるような項目も軒並み問題はなく、大体五分で確認を終わらせて、相手に返却した。


「何の問題もないね、君がどれくらいの期間育てているのかは知らないが、これなら暴走や問題もなく変身させることができるんじゃないかな、多分既に成長期体になっていて、しっかりと動物型に変身させることができるようになっているようだね。」


見た感じだけでそう言うと、トマツリだけではなくそれ以外も驚いた顔をしてこちらを見てきたので、安心させるために声をかける。


「大丈夫、どんな性質のやつだとか、どんな姿になるかまではわからないし、合言葉もわからないから、君のワンダーエッグを変身させることはないよ。」


トマツリは「そうか、それはよかった。」と言うが、私がほかのものの卵を取るのではという目線をアズキがしているため、私も疑いを晴らすために宣言をしておく。


「もしかしたら私が君たちの卵を盗むかもしれないと思っているかもしれないが、卵は基本的に使役者以外には付き従わないし、盗んだところで暴走するだけな問題のある代物だ。


それに君たちの依頼者に殺されたくないし、そもそも組織から回収してくるように言われたのは一つだけだったから、君たちの卵には興味もないよ。


嘘だと思うならば渡さなくてもいいが、これでも育てることに関しては一流の研究者のつもりだよ?私が調べている風景を後ろから見ていてもいいから、調べてほしいなら渡してくれないか?」


そういえば、トマツリも私に見せるように促す、そして、それぞれが自分のペースで卵を見せてきて、今持っている人の卵を全てみた結果、一人以外は問題がなかった、問題の一人というのがトモスミで、なんとも面白い結果が出ていたのが気になった。


「トモスミさん、君はドラゴンだからって、ひたすらに肉ばっかりあげてる上に、偏食を許しているね?」


前に集まりの方から仕入れた情報の中にあった、とある情報を思い出しながら問いかければ、彼女は不思議そうにうなずいた。


「それがどうかしたの?」


数値的に見てどこにどう問題があるのかがわかってしまい、思わず面白くなってしまう、簡単に言えば栄養が偏りすぎていて、能力までもが偏っているのだ。


「肉ばかりというか、肉しかあげていなくてこの子、属性で言えば土属性レベルで土に潜るのが得意になってるけれども……。」


集まりから仕入れた情報もそうだが、本当にお目にかかれるとは思っていなかったので、こうやって育てる様にと指示されたのだろうかと思いながら私が言えば、なにやら納得したような顔をしてトモスミが答える。


「そうなんだ、道理でよく埋まるなって思ってたんだよね。」


以前に集まりの方で仕入れた情報なのだが、肉ばかりあげているとなぜか簡単な道具、特に近接戦専用になりがちだとされている上に、自身が土に埋まりたがるのか、地面を掘りがちな個体になるそうだ。


「変身させることができたとしても肉に偏ってるから、簡単なものにしかならないでしょ。」


私が思い出しながら言えば、相手は思い当たるらしく手を叩いている。


「確かに、ギターとかにならせようとしてもどうしてもスコップになるわ、その理由ってもしかして!」


そこまで言ってようやく気が付いたらしい。


「肉のあげすぎ、もっと食にレパートリーを持たせるように、特に生肉じゃなくて野菜や魚なんかも焼いたりしてからあげた方がいいかな。」


そんな感じに食に対して忠告と、道具型になるためにはどうしたらいいのかの指導をした後に、トモスミの卵をかえして、全ての卵がエンドウ以外の全員に返されたのだった。


「そういえば、どうして私のやつがドラゴンだってわかったの?


ひとこともそれっぽいこと言ってないのに、もしかして変身した姿はわからないっていうのは嘘なの?」


疑わし気な目をしたトモスミの言葉に、アズキも疑うような目線を向けてきたが、こんなに簡単な問題もないだろう。


「いや君、ドラゴン好きが他人にもわかるくらいにはバレバレな上に、ドラゴンのボディーシールを卵に貼ってるだろう。


卵はその持ち主の好みがそのまま反映されるっている性質があるから、それにそって体は変わるはずだ。


その上で言うが、数値に現れているんだよね、ドラゴンの特徴となる数値が。


ドラゴンの特徴であるとある数値が脳内のものと一致したから、そうかなって意味で言ったわけ。


さらに言えばお肉上げすぎて空飛べないから、これはいわゆる地龍って種類のドラゴンになっているね。


もし空を飛ばせたいのならば、積極的に野菜を取らせたうえで自分の理想を卵に教え込むようこれからがんばれ。」


私の説明に流石回収屋とか言われたが、私は科学者だ、本業回収業者じゃねぇ。


「それじゃ、今度ライブがあるときにまた顔を出したりするかもしれないから、その時はよろしく。


SNSフォローしといたからね。」


実際には現時点ではできないことを言ったはずだが、友達登録については既にSNS自体アドレスがCDに書かれていたため、把握済みだ。


私のSNSフォローという言葉が恐怖だったのか、全員が先生にSNSがばれたみたいな顔をしていた。


そんなに嫌ならば登録拒否すればいいものを、それを彼らはやらないのだろうか?




@@@




「名残惜しいですね、この宿も。」


チェックアウトを終えてトモミと共にお土産屋さんを見ているが、売店という名のお土産屋さんの土産物の種類は、偏狭なはずなのに随分と豊富である。


人形、お菓子、おもちゃ、酒、タオル、ワッペン、旅館ならではのシャンプーリンスから、木刀や土産物屋でよくある子供がねだるキーホルダー、地元産を大々的に出している食べ物、工芸品、それ以外にも種類が豊富である。


「この旅館でも色々とあったしなぁ~、確かに名残惜しくもあるか。」


トモミが言っていることもよくわかるため、適当にお土産を見て回りながらふと思いついたことを提案してみる。


「そうだ!思い出になにか買ってやろうか。」


ひとつ手をうってから提案したのだが、トモミは少し遠慮がちだ。


「それは悪いですから、気にしないでください。」


そんなことをいうトモミだが、私の中ではこの場でお土産を買うことは決定事項である。


「そうか?何かあったら言うんだぞ?」


そういって私とトモミは別れたが、正直土産物として良いものはいったい何なのかはよくわからない。


人のことをもてなすための酒、人に渡す菓子、シャンプーリンス………、色々と見て回って決めたのは、入浴剤とこの辺り名産のお菓子であった。


見たことのない菓子だったのだが、試食してみた結果おいしかったので、それを数箱、入浴剤はこの旅館の泉質と同じ成分の入浴剤を3袋ほど、それ以外にも人に振舞うための酒もピックアップしたところで、トモミのことを探し始める。


ちなみに、卵は全て休止状態にしてあるため、トモミ以外探す必要はないのだ。


売店内を歩き回っていると、トモミを見つけた場所はぬいぐるみコーナー、そこで手に取っていたのはクマとトラのぬいぐるみで、その二つを真剣に見ていた。


「トモミ、欲しいものは決まったかい?」


「ハラさん?!」


トモミの近くへと行けば、ぬいぐるみを元の場所に戻すので、それを手で静止させる。


「それが欲しいものかい?………ふぅ~ん、旅館限定ふじちゃんとなんどくんかぁ。」


トモミが手に取っていたぬいぐるみを手にして、タグを見るとかわいらしい複数匹のキャラクターが書かれており、タグを開けば名前まで書かれていた。


「クマがなんどくん、トラがよぞらくんって名前なのか。」


「あ………ですね。」


私が口に出せばトモミは恥ずかしそうに声を潜めながらうなずく。


「随分とかわいらしいが、ふじちゃんはどれに当たるんだ?」


問いかければ、すぐに答えが返ってくる。


「この黄色いきつねがふじちゃんで、うさぎがせんちゃんです。」


「せん………あぁ、おん『せん』のせんか。」


私が納得したように頷けば、少し嬉しそうにするトモミ。


「で?どうしてぬいぐるみを見ていたんだ?気になることでもあったのか?」


欲しいのかの意思表示に問えば、しばらくもぞもぞとした後に、理由を答えてくれる。


「あの、今回例の子を連れ帰るじゃないですか。」


例の子と言われ、何を言われているのかがよくわからなくて一瞬思考を巡らせる。


「例の子?………あぁ、スターのことか。」


あの小さなトラのキーホルダーのような個体のことかと合点がいくと、トモミはうなずいた。


「はい、そうです。


あの子はここで、元所有者から引き離され、私たちの元へと来ることになったじゃないですか。」


その発言だけで、私はトモミが何を気にしているのかがうっすらとわかった気になるが、口を出さずに話を聞き続ける。


「あの子は、きっと私と同じような子だと、おもうので………。


最後の思い出にせめて、ここのぬいぐるみでも、と………。」


トモミはどうやらスターに対して感傷的になっているようなので、私は言葉をどうかければいいのかわからないままに、話始める。


「そう思うのならば、買わない方がいいと思うぞ。」


私の言葉にトモミは驚いた顔をするが、そのまま続けることにする。


「私は元所有者に向かって『ここに今までの嫌だったことは置いていくべきだ』と話したんだ、それはあいつにとっても同じ。


もし同情で人形を買うのならば、それはやめておいたほうがいいだろうな。」


トモミはそれに口答えしようとして、うまく言葉が紡げないようであった。


「それ以外の理由で欲しいのならば、買ってやってもいいが、もう少し店内をめぐってみるか?」


私の問いかけにトモミはうなずき、そのまま再度店内をめぐり始めたが、十五分後にはトラのぬいぐるみをもって、私の元へと戻ってきたのだった。


「トモミ、それを持ってきたということは、別の理由があるんだね?」


私の問いかけに対して、トモミはうなずく。


「それはなんだい?」


答えを促せば、トモミは照れたように答えてくれる。


「あの、ハラさんと旅行で来た記念に欲しいなって思って………。」


トモミの言葉はもっともだが、私はそれ以上に聞かねばならないことがある。


「本当にそのぬいぐるみが欲しくて、それを今後もちゃんと、大切にできるな?」


トモミと目線を合わせて問いかければ、迷いなくうなずくトモミ、ほかにも複数の質問をした上で、トモミが持ってきたこの温泉をイメージした白い虎の人形含めて、私はこの温泉の泉質である硫黄温泉の入浴剤と沢山のお菓子、地酒を買って自宅に配送するように手配した。


人形まで配送にした理由は、これ以上荷物を増やしたくなかったからというのが大いにあるからだ。


その後、トモミから言われた一之宮だという大きな神社に行くことにして、乗ってきた車で町にまで行くのに二時間はかかった、町は温泉宿があるということでそこそこに栄えており、色々なお店があるが、今日中に家に帰ることを考えたらその全てを見てまわるのは不可能に思えた。


車を運転してしばらく行ったところに小さな神社がちらほらと見えたが、全て違うと却下され、途中から田んぼを突っ切り、川を渡って山をまた一つ越えたところに町が見えてきた、ここからはナビが動くので、ご指名の神社にまでナビをセットしてから向かうことにしたのだが、その途中にあった道の駅で、食事休憩をはさむことにしたのだった。



@@@


道の駅に車を止めた後に、卵の中から人型のものだけを動けるようにして、休息がてらコーヒーやら乞われたものやらを、自分や欲しいといったやつらに買ってやり、イートインスペースのテーブルに座りながらみんなして食べる。


「ハラさん、こんなにお金使って大丈夫なんですか?」


金銭感覚がしっかりしているのだろうか、怒りと困惑、不安交じりにこちらを見てくるので、肩をすくめながら弁明をする。


「トモミの言い分はもっともだが、人型のやつらがソフトクリームをねだったから買ってやっただけだ、そこまで気にすることはない。」


トモミが問題視しているのだろうソフトクリームを食べている子たちを見ながら、缶コーヒーを一口飲む。


今この場にいるのは人型のワンダーエッグとドリームエッグだけで、動物型のやつらは車の中で卵の状態で待機中だ。


「みんなに買っていくほどはないから、内緒な。」


シーッと、秘密にするようにイルルとシンに言い聞かせるが、目をキラキラとさせながらソフトクリームを頬張っているのを見て複雑な気分になる、絶対にこいつら後から言うだろうなということが、わかってしまったからだ。


「ところで、どんなお守りを買うつもりか決まっているのか?」


気分を変えるために今後の予定を聞くがてら、元旦で神社と言えばお守りだろうと問いかければ、トモミは少し考えてから「必勝祈願……とか?」という、なんともふわっとした感じに答えが返ってきた。


「必勝祈願なんて、なんでだ?」


どの祈願がどんなご利益がどうのとかは疎いが、必勝というのだからなんかの勝負とか勝ち負けとかに関してのことだろうかと、不思議に思いつつ問うと、その理由がなんとなくでよくわかる返答が返ってきた。


「学力は今のところ問題ないですけど、勝負事には色々と負けてきたので、それで必勝祈願。」


正直そのあたりに関してはよくわからないので、「ふーん」としか言えずに頷いて見せる。


「ハラさんは?」


聞けばこちらに跳ね返ってくるのがもちろんなので、私も数秒考えてから答える。


「なんか破魔矢とか護符っぽいの、意味は特にない。」


正直破魔矢がどんな力持っているとか、護符がどんな力を持っているとかよくわからないが、ご利益があるならそれがいいかとそんな会話をしていたら、テラがそれらについて聞いてきたため知ってる範囲で簡単に説明する、するとテラも欲しいと示してきたから頭を抱えた。


「ワンダーエッグが神頼みって、ありなのか?」


正直人の形はすれども人ならざるもの、ある意味では妖怪やあやかしの類としても認定されそうなこいつらは、そういったご利益がもらえるのか?


そんな精神論に頭をひねっていると、トモミから一つ質問があった。


「ところで、ハラさんはどんなことを願うつもりなんですか?」


「わたし?」


意識の外からの質問で声が思わず上ずったが、正直何を願うかなんて全く考えもしていなかった、だが先ほどの考え方の延長線として、ワンダーエッグやドリームエッグというひとならざるなにかに明確な意志があると私の中ではされているし、もしかしたら目に見えない神様と呼ばれるものにも意思がある、とかはないだろうが、それらを擬人化して考えるとすると………と、思った結果。


「普通に日頃見守ってくれてありがとう、とかかな。」


思いついた答えを述べると、トモミに驚かれた。


「ハラさん、お願い事しないの?」


トモミの言葉ももっともだが、それ以上に自分の中では一つ芯のある理由があったりする。


「あぁ。正直願ったところでなるようにしかならないし、どんな結果になったところで、神頼みなんてある種ダサいだろ。


それに相手のことをもし擬人化して良いとすれば、神というものは日ごろからとんでもなく忙しいだろうし、そんなやつに願ったところで、願いなんて叶いっこないだろ。


だったら、日ごろの感謝述べてさっさと離れたほうが、相手のためってもんだろ?」


そんな脳裏ではじき出した適当なことを述べてみたら、なぜかトモミから尊敬された。


「ハラさん、すごいです!何がすごいかはわかんないけど、なんかすごい!」


トモミの尊敬がどのベクトルのものなのかはわからないが、それでもテンションが高いことだけはわかる。


「あ?あぁ………あー、ありがとう?」


ありがとうと口では言いつつ、頭の上にはてながいっぱいだ。


「私はいじめっ子たちに制裁をと、そんなことを考えていましたけれども、私が知る神社の中には縁切りの神社もあるそうですし………うん!そっちに行くのもいいかもしれませんね!」


昨夜除夜の鐘をきいていなかったからか、どす黒い憎悪が新年早々見え隠れしているトモミに対して、わたしは軽く「ほどほどにな~?」としか、言う事が出来なかった。


トモミの勢いはこの三が日の間に、自宅から近場の神社全てを制覇しそうな力強さがあったので、そんなことを思いながら胸ポケットの中にいる五号のことを撫でたのだった。

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