慰安旅行三日目
次の日、少し遅めの八時に目を覚ましたから、隣で寝ているトモミを起こしてやる。
トモミがむにゃむにゃと何やら言いながら目を覚ましたので、それにおはようを言えば、再度寝そうになったので、何とかたたき起こし、髪の毛を梳かしてやる。
そのあとに自分の髪の毛を梳かしながら卵の様子を見てみたが、ワンダーエッグはもう少し回復ポッドの中にいた方がいいだろうという個体が結構いたのと、イルルとフィーア、フュンフ、ドライも回復させるためには、暫くつけておいた方がいいことを確認して、無事であろうドリームエッグと、昨日ほとんど何もしていない五号を連れて食事に行く。
松の大広間にやってきて、食事の席に座ったのだが、隣を見ても未だ誰もいない上に、座卓の上には食事を終えた皿さえもなかった。
「エタノールの皆さん、何かあったんでしょうか。」
どうやらトモミはエターナルジュブナイルというバンド名をうろ覚えで覚えているらしい、永遠の若者が消毒液や酒類になってしまった。
少年期のような若者の意でつけられたそれを、成人後に飲む最大級のものに間違われるのは、あまりに面白い間違いだが、それよりもエターナルジュブナイルの面々が来ないことについては、私は内心でそりゃそうだと思う。
虎に蹴られたり色々として、特にエンドウの心的外傷が酷いんだろう、今はそのフォローにでも回っているんじゃないのか?
そう思いつつも口に出さないままに、私が松の間のスタッフに出した番号目掛けて料理が運ばれてくる。
心配しているトモミをよそに、今日も座卓には人数分の食事が運ばれてきたから、今日一日今来ていないものたちは部屋で食べることを伝えたら了解してもらえたので、それらはあとで部屋に運んでもらえることになった。
朝食は五穀ご飯、お吸い物、納豆、魚の煮つけ、おしんこに加えて、デザートにプリンが出た。
「今日のご飯も、すこしシンプルですけどおいしそうですね!」
シンプルにこれが映ることに驚愕しつつも、トモミは持ってきたスマホのカメラで撮っているのを見ながら、誰もいない隣の座卓を見ていたら、写真を撮り終えたところでようやくエターナルジュブナイルのメンバー御一行がやってきた。
「おはよう、よく眠れたかな。」
私が明るく優しくなるよう努めて隣に声をかけると、話しかけられて警戒したのか、全員がビクリとしたあとに、トマツリが返してきた。
「あ………あぁ、おかげさまで。
シホはまだ部屋で寝てるらしいけど、しばらくしたら姿を現すんじゃないかな。」
多少緊張した面持ちで私のことを見た後に、こちらを確認するように見てきて、不思議そうな顔をする。
「昨日よりも人数が少ないように見えるけれど、どうかしたのか?」
トマツリの顔にはありありと『なぜ?』が浮かんでいたので、昨日のことを忘れたのだろうかと、内心で思いつつ、心配を顔ににじませながら答える。
「あぁ、みんな消耗したから休ませているんだよ。
みんなボロボロだったから、現在は治療中だね。」
私が軽く肩を竦めると、トマツリは思い出したかのように理解した顔となり、すぐ苦笑いをした。
それでてっきりトマツリが何か話しかけてくるものだと思っていたのだが、その予想が大いに外れて、アズキの方から話しかけられたので、驚きすぎて目が見開いた気がする。
「昨日はすまなかった。
一晩立ってからちゃんと考えたけれど、おれらを守ろうとしてくれたんだよな、あんたは。
ありがとうな。」
昨日の様子とは打って変わってお礼を言うアズキに、ほかの者たちもそれにならってなのか、お礼を伝えてきた。
全員分のお礼をもらい、私としても困ってしまうので、手で制しながらこちらとしての考えというか立場を示す。
「別にいいよ、お金は取らないし、渡さないって言ってあるしね。
それが組織の決まりだし、私としても怒鳴られはすれども、感謝されるとは思っていなかったから。」
昨日の剣幕から、今日はトラブルになるかと予想していたのだが、予想に反してそれがなかったので、きっと基本的な人格はしっかりしているもので構成されているのだろうな。
「そうか。
シホにケガはなかったし、それが一番良かったところだ。
うちのボーカルが世話になったな。」
まるで最後に。とつけるかのようにトマツリがそう言ってから、エターナルジュブナイルの面々たちは自分の座席に座る。
その様子から、これ以上は話しかけてくるなとでも言いたげな雰囲気であった。
「お礼だけだけど、わかってくれてよかったですね!」
能天気にも既に食事を始めていたトモミは、もっちゃもっちゃと口を動かしながら言っていたので、そうだなと頷いてから、食事を開始し、食べ終えるころにようやっとエンドウが姿を現した。
「おはよう……ございます。」
自分のために用意された座卓に座るため、こちらに近づいてきたエンドウは、ボソボソという感じにこちらに挨拶をしてくるが、昨日とは一変した雰囲気自体強烈にかけ離れていて、元の高圧的な態度からは180度裏返って、しおらしくなっていた。
「おはよう、よく眠れたかな。」
私は優しく日常会話ほどの質問をしたのだが、相手は元の性格なのかもわからない、おどおどとした雰囲気でこちらに答えてくる。
「あ、まぁ、ほどほどに。」
歯切れの悪いそれで、多分昨晩はそんなに眠れていないのであろうことは、すぐにわかった。
「こんな言い方悪いとは思うけれど。」
どうしようかと人の心理に疎い頭で考えるが、うまいこといい言葉が思いつかずに、言葉をかけるだけになってしまうこと覚悟で話しかける。
「なに?なにかあるの?」
明らかに恐怖や怯えによってビクつくエンドウに向かって、苦笑しながら語り掛ける。
「今年の汚れは今年のうちに………ってね。
今日は大晦日だから、一日ゆっくりとできればいいね。」
そこまで話して、ふと思いついたことを問いかける。
「舞台は昨日だけなんだろう?」
端的にそれだけを問えば、素直にうなずくエンドウ。
「今日は少し足を伸ばして、街中でも散策してくるといいのではないだろうか。
この辺りにはあんまり栄えていない村しかないみたいだが、バスを使えば少しはましなところに行けるはずだから、さ。」
相手はそれを理解していないようなので、言いながら水を取りに容器を手に持ち立ち上がる。
「怖いものは全てこの旅館の中に置き去り、そのままでいいんだ。
君が心配することはなにもない、もう、あれは終わったことなんだから、さ。」
私が考えながら伝えたのちに肩に手を置いたら、エンドウは泣き崩れるが、それがなぜなのかなんとなくわかってしまい、放っておいて水を取りに行って、もう大丈夫になったであろうあたりで戻ってくると、泣きながらご飯を食べていた。
「さて、水を飲んだら行くか。
どこか見て回りたいところはあるか?」
今日一緒に来た面々に向かって質問してみるが、昨日のことが体に効いているらしい、トモミからすこし疲れたから、旅館の中を散策したいとの声があり、ほかからもあったため、今日も一日旅館で過ごすことにした。
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松の間の入り口にあるカウンターで、自分の部屋名を伝えた上で料理を運んでもらうよう伝えてから部屋へ戻り、しばらくしたらちゃんと料理が運ばれてきたので、お礼を言ってから卵たちを起こしてやり、食事をとらせる。
その中には昨日確保した卵、ワンダーエッグのスターも含まれていた。
「合言葉をちゃんと知っていたから変身させることができたんだけれども、予想外にこんなかわいい子だったんだねぇ。」
ガタガタと体を震わせるマスコットは、見た目まんまるな虎の頭部マスコットで、実にかわいらしい。
もちもちとしたお口に加えて、柔らかそうな毛並みをたたえるその体には、特に目元が痛々しい無数の生々しい傷があるが、現状どこどう見てもそういうマスコットキャラのようにしか見えない。
その傷が全て切り傷なことから、昨日ついた傷かとも思われそうだが、これは卵についていた傷ほぼそのままの配置な上、昨日のことで傷がついたわけでもないものだとこいつで確認したデータにはあったはずなので、きっと元の所有者から受けた傷なのだろうことはすぐに理解できた。
それに、こちらに襲い掛かってこないことから、警戒は最大限にしつつも一応攻撃対象とはされていないことは、その目からわかった。
「スター、今日はトモミに面倒を見てもらうといい。
ゆっくりと過ごしてくれ。」
私はガタガタと震えるスターにそれだけを言うと、トモミにスターのことを渡す。
トモミが驚いた反応を見せたそのあとに料理を差し出して、トモミがそれを手にとり食べさせようとする。
最初は警戒していたスターだが、トモミが口に押し当てたのがよかったのだろう、一口食べるとお腹が減っていたのを自覚したのか、いきなりがっついて食べ始めた。
「あーあーほらほら!むせるから、ゆっくり食べて?ね!」
順調に食べ進めるスターにニコニコ顔のトモミには悪いが、隣でいら立った顔をしたアリスが嫉妬心丸出しでそれを見ていた。
「おいおいアリス、新入りに嫉妬するな。
トモミの一番はお前なんだから、さ。」
私が諭すように言えば、アリスは嫉妬から羨望の目に変えてそれを見始める、結局トモミ手ずからご飯を食べさせてほしいんだろうな。
「トモミ、アリスのこともしっかり構うんだよ。」
アリスの気持ちを考えてやりながら伝えれば、トモミは顔に面倒だというのを貼り付けている。
「わかってますよハラさん!」
面倒くさそうな顔をしつつも楽しそうなそれに、アリスは無視するのを許さないんだろうなと微笑で笑いかけた後に、アリスから意識をそらして旅館からもらった館内案内図を広げ、今日遊ぶところの候補を考える。
まずは娯楽コーナー、次に温泉、いやお土産屋に行くのもいいなぁ、この辺りは名物の味をしたお菓子の工場があるためか、確かお土産屋にもお菓子がたくさんあったはず………あとは、温泉の素とかがいいかな、いやそれ以外にも他に行く場所で何があったか……。
なんてことを考えていたら、クイクイッと袖を引っ張られたのでそちらを見ると、そこにはイルルがいて、ご飯を食べさせてほしいと箸を渡してきて、口を開きねだってきた。
「おまえねぇ~、まったく、仕方ない子だ。」
箸を持っている方の手とは反対の手で優しくイルルの頭を撫でてやり、昨日頑張ってくれたご褒美に、指定されたものをあーんして食べさせてあげると、にわかにほかの子たちがざわめきはじめ、今現在自分で食べている子ら皆が皆、子供返りを起こしたかのようにあーんをせがんできた。
それに牽制を加えるイルルに対して更に数回あーんをした後に、順番にほかの子たちにも食べさせてやる。
最後まで残っていたドライがもちゃもちゃと食べ終えるうちに、いつの間にかに十時になっていたらしい、食事だけで随分と時間がかかったが、案外早い食事終了だったのかもしれない。
「さて、食事も終わったことだし、そろそろめぐるか!」
私が全体に対して宣言すると、その場にいたみんなが行きたがったが、行きたがらない消耗した子もいる上に、元気よく行きたがっている一部のものはそもそも昨日のことで随分と消耗ををしているため、回復に専念せねばならないやつら全員をおとなしく回復ポッドの中につけさせてもらう。
そして、残った数名とトモミを連れて、旅館内を巡りはじめるのだった。
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どこにいくかを話し合いながら部屋を出た私たちは、やはり最初はこの階以外の別の階に行こうということになり、エレベーターホールへと足を向けた。
「あ!スタンプラリーやってる!」
エレベーターホールに入る場所の前にテーブルがあり、上になにかあるようだが、それに興味で近づいたらしいトモミがそうやって、私のことを呼びながら手招きをする。
私も近づいてみると、その台は用紙を配っているらしい机で、用紙とスタンプ台の上には、実施についての詳細が書かれていた。
「ふーん………、一月七日までやってて、全てのスタンプを押した人に、粗品、ぷれぜんと………か。」
口に出しながら読んだそれはどうやら、館内の全六か所にスタンプ台が設置してあり、それらスタンプを全て押した人には粗品プレゼント、みたいな感じらしい。
「ハラさん!これやりたいです!」
キラキラした目で見られたし、ほかのやつらも興味あるようだし、スタンプラリー自体が私も好きだし、館内探検は既にやっているからきっと楽勝だろうと考えたため、みんなしてやることに決めた。
「よし!みんなでスタンプ探して、粗品でも貰うか!」
私が宣言すると、その場にいた全員が首を縦にうなずかせ、声を出す。
「はい!」
トモミからも当然の了解をもらい、みんなしてキャッキャと楽しみながら、今年最後のイベント、スタンプラリーが始まろうとした、その時。
「あ、こんなところにいたんですねハラさん。
取材のご協力、今日もお願いしますよ。」
私を探していたらしいトウヤに、見つかったのだった。
このまま見つからないよう動こうかという、仕事放棄が脳内にちらついていたが、どうやらそれは叶わないらしい、トウヤという名の組織のものから逃れることは、きっとできないのだろう。
残念に思いながらため息を飲み込み、トモミたちに対して諦めと共に声をかける。
「トモミ、みんなをつれていってきてくれ。」
今後どれほどの間調査されるのかは知らないが、それでも終わるまでこれは解放されないだろう。
それが理解できているので、せっかく始めようとしている面々に向かって待っていてくれというのも苦だということで、先に行っていてくれと、頼む。
「そんな、ハラさんだってやりたいはずなんじゃ、」
トモミがショックを受けたような顔をするが、子供たちだけで動いた方が率直に言って楽しいだろうに、なぜ大人である私のことを心配するのだろうか?まったくわからん。
「わたしには、こたえなきゃいけないことがあるんだよ。」
仕事だからとは言わず、取材だからとでも言いたげな言葉と共に、項垂れる私にむかって、トモミが声を潜めながら聞いてくる。
「だって、ただの記者なんでしょ?振り払ったら?」
トモミのこういう約束よりも自分の方を気にしろと言いたげなこれは、ある種束縛でもあるが、子供などそういうものだろう、大人に対して向けるものではないようなそれだが、トモミにとっては私も同じくらいに感じているのだろうか?
だが私としてもこれは受けなきゃなので、それを考えながら否定する。
「そうもいかないでしょ、もう約束を取り付けたんだから。
私は今年最後のイベントを片付けるから、トモミはみんなと一緒に楽しんでおいで。」
そうやって突き放せば、トモミは少し不貞腐れたような顔をするが、やはりスタンプラリーの欲には勝てないらしい、すぐに興味が移ったように見えた。
「はーい。」
そのままおとなしく引き下がったトモミは、他の子たちと一緒にスタンプラリーの用紙を手に取り、チラチラと振り返りつつもエレベーターに乗って、どこかへと去っていった。
「はい、それじゃ部屋に行こうか。」
トウヤがそれに手を振っていたのを下ろし、見えなくなったと同時にこちらに対して顔を向けてくる。
「そうだね。
………はぁーあ!どうせあれだろ?あの質問だろ?」
自分の中でも既に理解しているのだが、相手はそのことを追及するみたいだ。
「そういうこと。
昨日のこと、報告してくれるよね。」
トウヤの目がかすかに開くのが怪しい雰囲気を漂わせているが、それに悪寒が走りつつも懐に残った五号のことを録音機に変化させ、同じ階にあるトウヤが押さえていたらしい応接室へと入り、ふすまを閉める。
「それで………昨日はどんなことをしたのか、教えてくれるかな。」
トウヤの声は明らかに尋問のそれであり、これだから組織からの聴取は嫌いなんだ、とは口が裂けても言えないので、昨日あったことを一つ一つ、丁寧にトウヤに報告していく。
その際に資料の提出を求められたが、現在そのようなものは持っていないので、のちの提出となったり、その途中途中にある状況確認のための質問では、料理の事や温泉の質、泊まった感じ、卵用ポッドの使い心地など、様々な話に脇道がそれつつ、報告を進めていく。
「ということは、暴走は免れたって感じかな。」
トウヤがメモ帳型端末で記録していたのを止めて、唇の下にペンを押し当てる形で問いかけてくる。
「そういうこと。
今その卵は私の泊まっている部屋にある回復ポッドで、軽い治療中だよ。」
本当のことを説明すると、トウヤは少し考えた後に一言告げて、部屋の隅へと移動し、何やらエッグを使って通信をはじめたようで、ぶつぶつと小声で報告等をしたのだろう、しばらくしたら戻ってきた。
「組織曰はく、その個体は暫く君の管轄に置いておくように!だとさ。」
「その心は?」
相手の言葉が理解できつつも、その理由を聞かないことには話にならない。
そのため問えば、相手は使っていたペンを回しながら答えてきた
「組織の中で一番研究が進んでいる、ある種の先駆者的な立ち位置にいる君が持っているのが一番適切だと判断されたから。
その上で、暴走直前個体の親解除のちに回復事例を研究するならば、ハラの手元に置いておくことが、一番安全だし回復も早いだろうってことが示唆された、だとさ。」
くるくると回り続けるペンが止まり、おどけるように告げてくるトウヤに向かって、私は上の判断がそうならばと肩を落とす。
「うちのことをなんだとおもっているのだろうか。」
卵を増やすことで増える負担から、思わず出たうめきに、まぁまぁと言いつつも面白そうにニヤニヤと笑いかけてくるトウヤ、殴ってやろうか、まじで。
「まぁまぁ、相手も君のことを高く買ってるんだし、気にしないのが吉だよ。」
トウヤの雑な慰めに、もはやどうすることもできないだろううと、スターを誰かに使役させることを考え始めた私だ。
自分で使役してもいいのだが、いかんせんうちの子たちは、嫉妬心が強い傾向だと判断しているので、もしスターを使役した場合に特に近しい存在になるだろう五号は、スターとけんかする可能性が非常に高いのだ。
スターを誰かに押し付けられなければ、自分で使役することも視野に入れた状態で、トウヤは再度手帳型端末を開き、こちらにペンを差し向けてくる。
「それじゃあ、最後になるけど………。
今年一年の総決算、何か言いたいことは?」
一番最後の質問はそれなのかと、思いつつもそれに、少し思いめぐらせ考えてから答える。
「今年は子供たちと沢山戯れた上に、何かとトラブルがあったように記憶しているから………来年はもっと、穏やかな日常を送りたいかな。」
思い出しながら言うと、トウヤが数舜考えたのちに噴き出す。
「保母さ「黙っとけ。」」
保母さん、そう、完璧に保母さん。
子供たちと一緒に色々と活動をしている人は、組織にもいないことはないのだが、それはそれで特殊案件を提出している者たちであり、私も今年からその一員になっただけのことではある。
実際に稚児を相手にするわけではないが、しょせんお子様だと考えながら向き合うのではなく、同等の存在だとある程度認識させれば、相手も近寄りやすいだろう。
が、結局は子供たちを食い物にしているので、保母さんとはかけ離れた存在であるのも確かである。見た目保母さんだが。
思考を巡らせながら相手を観察していたが、暫く震えていたトウヤが持ち直し、私に向かって目を向けたときの色は、真実を言わせようとする尋問や、組織のものという脅迫や脅しの色は全てなくなっており、旅行雑誌を手掛ける執筆者であろう人の目に、つまり人好きだということが伝わるような、優しい目にがらりと変わっていた。
「はい、これで以上です。
インタビューに答えていただき、ありがとうございました。」
優し気な顔でにっこりと相手が言うから、こちらも笑顔で答える。
「こちらこそ、報告業務ありがとうね。」
私からも事務的なお礼を伝えれば、相手は手帳をしまいつつこちらに会釈してくる。
「いえいえ。
それじゃ、俺はこれで行くから。後はトラブルがない限り自由に散策とかもしていいらしいから、よろしくね。
それと、何かあったら俺も助太刀するから、その時はよろしく。」
トウヤが再度会釈すると立ち上がり、歩いてふすまの戸をあける。
「それじゃ、よいお年を。」
振り向いたトウヤに向かって、今年一年の面倒を吐き捨てるように挨拶を投げかける。
「言っとけ、よいお年を!」
それでも笑みを見せるトウヤは、また会釈をしてから部屋を出て、戸を閉めずそのまま廊下へと消えていった。
「ふぃー、終わった終わったー。」
思いっきり伸びをしてから首をゴキゴキと回したら、五号が心配そうに顔に触れてきたので、いつの間に人型に変化したのだろうかと思いつつも、その頭をなでる。
「ありがとうね五号、ほら、机の上に乗りな。」
五号が録音機でない状態になっているのを確認してから手の上にのせ、机の上に移動させる、するとこちらを心配そうに見てくるから、顔を机にくっつけてから五号を弄って遊ぶ。
「あー、今年の業務がここまで引っ張るとは思わなかったよー。五号が心配してくれるのうれしいなー………。
………五号は、私にずっとくっついて育ったから、ほかのみんなよりも早く人型の状態になってたんだもんねー……。
ふぁー………ねむ。」
完璧に思考停止しつつ五号の頬を親指と人差し指でぷにぷにとはさみながら見つめると、いやいやとしつつも、甘んじて受け入れてくれる五号に、かわいらしさを感じる。
「みんなあなたに嫉妬してるの知ってるー?当然知ってるよねー、一番一緒にいるからねー。
あ゛ー、疲れた。」
うわ言を言いながら背もたれにもたれかかり、伸びをしながら腕時計を見てみると、いつの間にかに十二時半、そろそろご飯に行かなければ。
「さて、ご飯に行った後は温泉入って寝よう。今年は頑張った、お疲れさまでした自分。」
伸びをした後に肩をほぐすようにぐるぐるしてから五号を懐の中に入れ、応接室を出る。
泊まっている部屋にはいかず松の間へダイレクトに行くあいだにトモミ達と合流できたので、それぞれがどれくらいスタンプを集めたのかを見ながら席に着いた。
座席に着くと今回も向かいの席に座ったトモミが、私のことを心配してなのか、こちらの目をじいっと見つめてきたので、少し居心地が悪い。
だが、それを丸々20秒行なった後に、謎にうなずいたトモミは、こちらに話しかけてくる。
「それにしても、取材お疲れさま!どんなこと話したか聞いていい?」
相手のことをいぶかしんでいたので当然ともいえる質問だが、それに対して適当に答える。
「この旅館の泊まり心地とか聞かれたね、他にも温泉の心地よさとか。」
私の言葉を疑いつつも、一応は納得してくれたのか、言葉を少し選んでうなずいてくる。
「へぇー、なんか、あんまり面白くないね。」
たぶんトモミは既に相手が組織のものだと気づいているだろうし、私としても明言されないのはありがたいので、そのまま話を続ける。
「面白くないって、そりゃそうだろうね。」
私が腕組をして一つうなずき、そのまま話を続けていると、給仕の人がやってきて目の前に一人用の鍋が置かれた、どうやら今日の昼食は鍋がメインらしい。
「わぁ!写真撮ろ!」
下に固形燃料が置かれた台の上に乗っている鍋は、今も加熱を続けており、既にいい香りがその鍋からは立ち上っている。
興奮気味に鍋自体趣があるそれに、スマホを取り出すトモミ、傍らにはスマホにつながれたチャージャーがあって、それをいつ持ってきたのかが思い出せなかった。
「もう電源が切れたのか?」
チャージャーがどこにあったのかよりも、スマホの電源がなくなったことが気になった私が問いかけると、トモミは鍋が湯気を出しているさまを収めようと、あらゆる角度からの写真を狙っている。
「うん、昨日の夜に充電し忘れていたらしくって、それで。」
角度が決まったらしいそれでバシャバシャと写真を撮るトモミの事を見てから、渡されたアラームが鳴り、鍋の蓋を取る。
中には白菜、肉、しいたけ、豆腐、長ネギなど、それ以外にも入っている鍋は、一口手を付けたことですきやきだと判明する。
あまり食べたことのない味だが、とてもおいしく、甘いとしょっぱいでいい塩梅のそれは、とてもご飯が進む代物だった。
「さて、食事をした後に風呂に入ろうと思うけど、一緒に行く人。」
味もわかったことで、私が全体に声をかけると、テリクスは手を挙げたのだが、それ以外誰も手を挙げるものはいなかった。
「そっか、それじゃトモミはどうする?」
トモミに対して問いかければ、トモミはスタンプラリーの続きが気になるようで、チラチラと用紙を見ている。
「私もみんなと一緒に行くことにしますよ、温泉つまらないですし。」
話しながら電波が繋がらないスマホをしまうトモミ、どうやら写真はもういいらしい、いただきますもせず鍋に手を付け始める。
「それじゃあまた別行動だね、何かあったらお風呂に来ればいいから。」
私が告げると全員が不思議そうな顔をして、テリクスのみが『私を独占できる』という笑みを浮かべている。
「ハラさんはスタンプラリーしなくていいの?」
それに少し考えるそぶりを見せてから、体調のことも考えて答える。
「昨日暴れたからさ、疲れちゃって。トモミだけで行っておいで。」
「はーい。」
それだけの会話の後、みんなして黙って食事をはじめたのだが、食事の間中、なんとなく隣の席が気になっていたので、意識を向けていた。
しかし、どうやら今回は隣の席は町で食事を取るらしい、エターナルジュブナイルのメンバーは。
だれも隣の机に来ることはなかった。
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全部の鍋の中身、白米、その他小鉢類諸々に加え、水も何杯か飲み干し全て食べ終えたのちに、ようやっとおなかが落ち着いたので、ほかの食べ終わっていたものたちと手を合わせる。
「「ごちそうさまでした。」」
全てきれいに食べ終えて、挨拶を終えると、昨日の疲れで少しだけ体が重だるくなる。
「それじゃ、スタンプラリー楽しんできてね。」
私が立ち上がって部屋に戻ろうかとすると、トモミが普段は見せない駄々こねを見せた。
「えっと………ハラさんも一緒に行きませんか?
ほかの子たちもこうやって一緒に行きたいようですし。」
トモミが視線を他の子たちのほうへ向け、私も向けてみると、全員がぎりぎりと一緒に行きたいと如実に意思表示してる目をしてこちらを見てくる、加えてトモミからも明らかな圧を受け、それらの眼力にあらがえないくらいに心がのけぞる。
「あー、これは……。」
私が使役者なので、これらのものを言う事聞かせるためにねじ伏せることは容易にできる。
だが、それをやったところでこいつらが納得するかは別問題だし、今年最後の思い出作りという側面もある、なによりトモミにもいい思い出を作ってやろうと計画したこの旅行、こんなことで否定していたら駄目だと、自分を奮い立たせる。
「それじゃあ………私も行こうかな。」
全体の圧力に負けて疲れている体に鞭打って応じると、全体のテンションが明らかに上がる。
「その前に、他の子たちにご飯を食べさせなきゃいけないから、そのあとでいいかな。」
未だ食事をしていないやつらが部屋にいることを考えて、提案を飲まねばこのことはなしだということを顔で示せば、皆が不服そうな顔をしつつもうなずいたので、私もうなずきみんなして部屋に戻る。
旅館には昨日のうちに特定のご飯は部屋に運ぶようお願いしてあったため、大広間に入る際にお願いした、私たちが大広間を出たと同時に部屋に運んでくれるようという願い通り、部屋に戻ると人数分のご飯が運ばれてくる。
昼食は鍋以外で温かいものはご飯くらいだったので、鍋に火が入れられる前に合言葉を言ってみんなを変化させる。
それぞれの位置を決めてご飯の前に座らせると、一部のものがよだれを垂れ流し始める、いい香りでお腹がすくとは、こいつらが生物だと証明しているような本能を感じさせてくる。
係の者が全て去り、アラームが鳴ると同時に蓋を開けさせると、全員がおいしそうだというのを前面に出した顔をして、こちらを向いたので、食べていいという前にいただきますをさせれば、全員が挨拶をして、そのままがっつきはじめる。
動物型も人型も皆ががっついているが、テラと一号、二号とイルルが特に雄々しく食している。
フュンフはご飯をついばみつつ鍋の中身にくちばしを突っ込もうとしているので、それをカゲリが補助しているが、その際にチラチラとこちらを見てくる目が明らかに『自分のごはん食べつつちゃんと周りをお世話できてますよ?偉いでしょ?』という、厚かましさというのか幼さというのかを感じはしたが、それ自体は偉いので褒めてやると、笑顔でこちらを見てくる。
リオンやドライ、三号は比較的おとなしく食べてはいるが、フィーアも案外がっついていて、鼻っ面をそれぞれの容器に入れているので、熱くないか少し心配になっていたが、どうやら熱くはなく、動物型特有のごはんのようであった。
四号や三号にも食事をさせて、全員が食べ終わったのを見計らってから、この場にいる卵全体の状態を診ることにする。
昨日の疲労感などはもう無くなっているらしく、流石組織保有の温泉旅館というところか、回復値の伸びから、いっそのこと自然回復を促すのではなく、回復ポッドに入れるのが正しい気もしてくる。
「さて、これからスタンプラリー行くけれども、一緒に行く人はいるか?」
私が問いかければ、ほかの者たちよりも成長している人型のやつらは行くらしいが、他の動物型たちの一定数は、まだポッドの中で休みたいとのことで、今回休みたいと言っていた昨日戦闘に出ていたやつらはポッドの中に入れて、私たちは出ることに。
結果として、一緒に行くのはテラ、カゲリ、テリクス、リオン、イルル、シン、アインス、ツヴァイ、ゼクス、五号、トモミ、アリス、私となった。
人間、ドリームエッグ、ワンダーエッグは順不同である、とはいうが、案外多い人数ではある。
一体何体いるんだ?一、二、さん、し………人間含めて13体か。
部屋から出る前に、トモミたちがとってきたというスタンプを見ると、大体一階部分と二階部分を制覇したらしく六つ中四つは既に埋まっている、後は三階部分と四階部分にあるスタンプがまだ見つかっていないらしい、三階部分は温泉の上部分になる南棟と宿泊場がある西棟、東棟、エレベーターホールのある渡り廊下、後は入り口が見えるバルコニーがある。
「南棟は行ってないのか?」
不思議に思って問いかければ、トモミはフンスフンスっと鼻息荒く答えてくる。
「あとでハラさんとまわろうと思って。」
どうやら本当に私と回りたかったらしい、『わざわざ残しておいたんだぞっ』とでも言いたげな顔でこちらを見てくるので、こちらとしては少し疲れているのだがとは思うのだが、まだ元気に動けるだけの体力はあるので、純粋に楽しめるだけ楽しむことにする。
「そうか。」
言葉ではそっけなくなったが、実際には楽しそうであることを願う。
地図を見る限りでは南棟には宿泊場のほかに、談話室や応接室のような、複数の人と集まり会議できる場所に加えて、自販機コーナーがあるはず、多分スタンプがあるなら自販機コーナーあたりにあるだろうか。
四階部分はイベントなどを行うのを主としており、一部宿泊場だが、基本が展望台を兼ねた設計となっているのか、屋根付きの屋外イベント会場という感じが強い。
ほかにも遊技場という言葉があるが、これは子供向けのフィールドという印象を受ける場所であるので、多分ここにもあるだろう。
スタンプは大体埋まっているため、後はこれらの部分をまわる感じになりそうだ。
「それじゃまずは一番近い、三階部分をまわるか。」
という一言が合図となり、今回の参加者全員でスタンプラリーに出発するのであった。
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シンとイルル主導の元、三階部分の様々な場所をめぐったことで、談話室の前にあるスタンプ台を見つけた。
トモミが人型の個体全員分と私の分も持っていたため、それぞれにひとつスタンプを押すことができた私たちは、次に自販機コーナーへと足を向けていた。
自販機コーナーにたどり着くと、そこには複数の人がいたが、その人数は少なく、10人前後しかいなかったのだが、私たちが来ると同時にグループの人が出ていき、おばさんたちのみとなった。
「あら、昨日の朝の。」
私たちがコーナーに入ると、おばさまたちがこちらに目を向けてきて、その中の一人が声をかけてきた、この三人のおばさんは温泉に浸かっていた時に話しかけてきた人たちだとすぐにわかったので、軽く世間話をすることに。
「こんにちは。」
私が会釈をしながら挨拶をすると、ほかの子たちも習って、一人一人個性はあふれるが、大まかには似たような挨拶した。
「あらあら元気ねぇ~、はい、こんにちは。」
おばさんたちが使役しているものたちに向かってお辞儀をし、大勢いる私たち集団を見回す。
「すごい面々ねぇ、特にこの龍、どうなっているの?」
しげしげと見て来るおばさんの一人に対して、詳細を漏らすわけにもいかずよく使う嘘を述べる。
「今開発中のロボットで、みんなして今回慰安旅行で来ているんです。」
私の言葉が不服だったらしく、大きさを変えたゼクスは不満そうな声を出して抗議するが、当然無視だ。
「ほかにも狐と猫って、随分と不思議な組み合わせねぇ。
なにぃ?ペットロボットという事なの?」
勘違いされてよかったとは思いつつも、実際を知られるわけにいかないので冷や汗が流れるが、それに対しても事前にこのような状態になった際の常とう句である適当なことを流す、そして三人にスタンプラリーをやっているのかを尋ねたら、そうだと言われた。
「泊まっているところの廊下のところに、スタンプラリーの台紙が置いてあってねぇ?
今年最後の思い出ってことでっ!みっちゃんとよっちゃんと一緒に、みんなでまわることにしたのよぉ~!」
明るいおばさま集団の頂点に君臨していそうなこの人たちは、たぶんママ友とかではなく、かつてからの友人とか、同僚とか、なんかの縁でつながった仲の良いグループなのだろう。
「そうなんですか。」
私の問いかけにも素直にうなずき、聞いてもいないような詳細情報を教えてくれる仲良し三人組で来たというところだろう、その三人の手にはそれぞれ台紙があり、見た感じトモミが手に入れたスタンプとは違うスタンプが押されていた。
「実は私たちもスタンプラリーを楽しんでおりまして、良ければ台紙に押されているスタンプってどこで押したのか、聞いてもいいですか?」
おばさんたちの話から、それぞれさっちゃん、みっちゃん、よっちゃんと呼び合っているらしい三人は、さっちゃんが楽しそうに用紙を見せてくれながら、みっちゃんが教えてくれる。
「これはね、四階のイベントスペースと娯楽室に置いてあったわよ?」
その後も世間話が絶えなかったため、テリクスとテラから暇を持て余したシンやリオンが、いつの間にか荷物から持ち出していた財布の中身で、自販機のものを買おうとしているという報告を受けたことで、この場を切り抜ける口実ができた。
詳細な場所まで教えてもらった後に、私が自販機で何を買おうとしているのかを問いかけるために二三言言葉をかけて離れ、トモミは場所を教えてもらったお礼として、まだ押されていないスタンプの場所を伝える。
「ありがとうねトモミちゃん、それじゃ、がんばってねお母さん。」
「はい、そちらも頑張ってください。」
三人とはそれで別れたが、なんとなくいろんな面で気になり過ぎ、三人が去るその背から声を聞き取ると、私はどうやら子供の髪を染めるタイプのギャル母だと思われたらしい。
まぁ、子供に見える個体の髪の毛や目の色が特殊なため仕方ないが、なんとなく釈然としなかったし、前提問題として私は母親ではないし、こいつらは使役獣の成長個体であって、この髪は地毛であり、元の個体の色を反映しているゆえの色なのだ。
非常識な人だというレッテルを貼られるのは、不本意でしかない。
そんなモヤモヤが晴れぬままに、とりあえず三階にある最後のスタンプを押した後に、四階へと足を運ぶ。
エレベーターに乗って上がった先にはやはりというか。綺麗な風景が広がっていた。
その風景を一望できる展望デッキだが、形としては天守の最上階にいるような、そんな雄大な見え方をするタイプの美しさである。
みんなして展望デッキのような外周を歩き回り、限りなく広がる風景を堪能してから、私一人気を取り直して全員を呼び寄せる。
「さて、スタンプは……。」
そう呟いてわちゃわちゃしている奴らを引き連れて、おばさんたちから教えられた場所へと歩を進めると、展望台から内側に入って室内にある遊技場にて本当にスタンプ台があり、子供たちが楽しそうにあらゆる遊具で遊びまわっているそこでもスタンプを押し、終えてから一階の売店へと行こうとする。
一階がスタンプの台紙を引き換える場所なのだが、見ていた遊具があまりにも楽しそうだったのだろう、トモミ含めた複数の者たちが駄々をこね始める。
わかるぞ、ふわふわドームの中で跳ね回って遊び、ボールプールでボールを吹き飛ばして遊び、ブロック積み上げてめっちゃ楽しみたいという、その気持ちは。
私だって幼き日にそれで遊びたかったのだが、身長制限とかお金がないとか入っても楽しくないとか、そういう理由で全て親に拒否されていたからな………やらせるか。
係の人からそれらの利用料金やらなんやらを聞いたうえで、対象となる個体とトモミを投入する。
無料で遊べるとのことで、どうも親がほかの場所にいる間にこの場所で子供たちを遊ばせるためのゾーンなのだそうだ、親は別の場所で待機することもできるし、子供らと一緒に遊ぶこともできるということで、私もふわふわバルーンに入ることができるのかを問うたら、大人の利用は不可とのこと。
対象年齢が6歳ほどということなので、うちのやつらは皆できるだろうが、小さい子供がいるということで、ふわふわドームはなしにした。理由は子供たちが危ないからだ。
それ以外のアスレチックでは自由に遊んでいいという話になったので、そこで1時間ほど遊ばせる。
動物たちは近くのベンチで一緒に休んでいたのだが、子供たちがわらわらと集まってきて触りだしたので、愛想よくするよう命令をした上で1時間が経過するのを時計で確認しながら、楽しんでいる人型やトモミのことを見たのだった。
トモミたちが戻ってくるまで、不本意自主開催的ふれあい動物園が繰り広げられていたが、戻ってきたらすぐ移動となり、スタンプラリーの景品をもらいに行くことになった。
トモミに何枚分のシートがあるのかを問いかけると、全員分のスタンプを押していたらしく、現状八枚の台紙がある。
売店には、スタンプラリー引き換え場所と書かれたのぼり旗があるブースがあり、そこには既に結構な列ができていた。
どうやらこの三日間で集まった旅行客がかなりいるらしく、今日の大晦日はここで年を越す人が多いのだろう、ここは売店という名の土産物屋なのもあるからか、買い物ついでにラリーを終えた人たちの行列ができたのだろう。
「すごい人ですねー。」
トモミが背伸びしながら言うのに、「仕方ないよ、大晦日だからな。」と言ってからその列に並ぶ。
トモミとイルル、リオンが話していたり、暇そうに私の腕を掴んだうえで足の甲の上に乗ってくるシンとカゲリがいたり、そんな私の横に控えているアインス、テラ、テリクス、私の肩の上に乗っているツヴァイ、トモミの上に乗っている小さくなったゼクスといった面々で列を待ち、大体30分以上は待っただろう、ようやっと自分たちの番になった。
「それでは台紙を見せてください。」
この旅館ならではな和服姿の係員が提示を要求してきたので、私含めた全員が、スタンプの押してある台紙を見せると、確認できたらしく景品が用意される。
「スタンプ制覇、おめでとうございます。」
そういって台紙分の紙袋が手渡されたことで、本当に一家族一枚じゃなくて、一人につき一枚なのだとわかり、それはおいといてありがたくいただくことにする。
「ありがとうございます!」
トモミが率先して受け取るのに習って、ほかの者たちも受け取っていくのをなんとなく写真に収める。
受け取る瞬間が撮れたのでほくほくしていたのだが、横に写真ブースというものが設けられていたので、係の人の勧めでそちらに移動してみんなして記念撮影をすることになり、トモミがピースを作ったと思ったら、ほかの子たちもピースをしたため、私も何かポーズをとろうとしたが、恥ずかしくてできず、最終的にはワンダーエッグがやっているようなポージングとなった。
内訳で言えば、トモミやドリームエッグはギャルや陽キャがやりそうなポーズ、私やワンダーエッグは手を後ろに組んだ仁王立ち状態のポーズ、動物たちはその前で座ったり伏せたり、一部トモミや私の肩の上に乗っていたりする写真が一枚。
もう一枚はトモミに指定されたポーズを全員でやり、トモミたちは満面の笑顔、私は恥ずかしさから耳が赤くなり、笑顔がへたくそな写真が撮れた。
係の人からスマホを返されたうえでそこから離れ、どんな景品なのかを見ると、中身はこの宿のタオルと扇子、温泉饅頭一つだった。
「おいしそうです、これはおいしいですよ。」
トモミがこちらをチラチラ見ながら言ってくるので、私がうなずくと、トモミにリオン、イルル、シンは早々に包装紙を解いて食べ、おいしかったのと自分でスタンプを押した上でもらえたからか、感動したような表情を浮かべて食べ進めていき、シンは既に口の中に全て納めたようであった。
テリクスとテラ、カゲリはこちらをチラチラと伺いながら、食べていいかを問うてきたので、GOサインを出して食べることを許可すれば、大きく口を開けてほおばっていた。
動物型のやつらには、もらった人たちから許可を得たうえで、受け取ったタオルを巻いてやれば、おしゃれできたと嬉しそうにはしゃぎはじめる。
私も一口まんじゅうを食べてみたが、こしあんでおいしく、ベンチに座った私たちみんながキラキラとしていたことだろう。
にしても、この量の扇子どうしようか。
団扇じゃないから多くの場所を取らないが、正直こんなに必要ないし、むしろいらない、広告が付いてるし、処理に困る。
扇子についてウンウン考えていると、シンが服の裾を引いたので、そちらに意識を向けると、どうやら扇子を欲しそうにしていたので、私はそのままあげることにしたのだった。
嬉しそうな顔をしたシンに対して、やれやれと少し思いつつも、その様子に笑みが出る。
シン以外の者たちも、扇子に興味津々らしく、トモミとリオンがやり方をやって見せているのに習って、みんなが開け閉めを始めた。
バタバタ、パチパチと開け閉めを続ける面々を連れ、そのまま部屋に戻る。
部屋においてある壁掛け時計を見ると、夕飯から4時間も前の16時ということで、ご飯の前に風呂に入ることにしたのだが、トモミもそれに同行するとのことだったので、全てのエッグには休んでもらうために、卵状態にしてそのままおいていくことにした。
治療が必要ないものは普通に布団の中に入れたのだが、自分が連れていかれないと知った五号の顔は悲壮極まりなかったが、それを気にせずほかの卵と共に放置して出て行く、お前も私のことを忘れて少しは休め。
トモミと共に温泉セットを持って普通に風呂に入りに行った訳だが、そこは人がごった返していたので、初日とは違い子連れの親が多数見受けられた。
老人も沢山見受けられたりしてロッカーが足りない勢いだったので、例え卵だったとしてもあいつらを連れてこなくて正解だった、これではどんなトラブルになるかとか、わかったもんじゃない。
服を全て脱ぎ、髪留めを腕に付けた上で洗い場へと一緒に来たトモミと、元日にはどこの神社に行こうかなどと話し合いながら体を洗い、しっかりと流してから腰まである髪をまとめ、外風呂である温泉へと浸かりにいった。
「ふぃ~、あっったまるぅうぅ~~。」
湯船につかると同時にため息ついでに感想も出たが、それを婆くさいとトモミは言うことなく、目を閉じて浸かっている。
「今年も色々とありましたね。」
唐突にトモミがそんなことをいうので、私もトモミと出会ったときからのことを思いだす
「そうだねぇ、トモミと初めて会ったのがもう随分と昔の事の用だもんなぁ。」
この半年間で、様々なことがあったなと感慨深くなる。
それに、あのときのトモミはなんというか、本気で世界に絶望しかけていたというか、既に私に対して希望を見いだしていたのだろう、その点で言えば絶望したあとというのかも分からないが、私の元に来たあとは、比較的落ち着いているように思える。
「まだ三か月なんですけどね。」
トモミのぐっと伸ばした手足に目が行き、私も伸ばす。
話の途中なのに今日や昨日といったここ数日の疲れと、温泉のほどよい温かさでウトウトとし始めたところ、突然顔にお湯を掛けられた。
「ぶっ!な、何をするんだ!」
突然顔に当てられたお湯のでところは、どうやらトモミの手らしく、祈るように組まれた指の間、特に親指のところから発射されたらしい、鼻にお湯が入ったことでツーンと痛みが生まれている。
「ふへへ、寝たら死にますよ。」
トモミが楽しそうに私に水鉄砲を食らわせて来るから、ほかの人から死角になっているのと邪魔にならないのを見てから私も、手で作るタイプの水鉄砲で応戦する。
「ほかの人に迷惑だろうが!」
そういって、他の人が岩の裏にいるのでこちらがどんなに騒いでも問題ないと分かった瞬間、私も相手に向かって水鉄砲をくらわせようとする。
「わっ!ハラさんだってやってるじゃないですか!」
トモミと一緒に暫く手で作る水鉄砲で遊んだ後に、いつの間にかにいなくなっていた風呂の中、さんざ楽しんでからそろそろサウナに入るかと言って、移動する。
二人して黙ってサウナに入っていたが、トモミには暑かったらしく数分で出るのと同時に私も出て、一人水風呂に入り、一緒に外で涼む。
「あー、頭に血がめぐるー。」
頭がすっきりするこの感覚がたまらないが、トモミは水風呂に入るのを拒否したため今も暑そうだ。
「サウナの何がいいんです?熱いだけではありませんか。」
この子の完全には相手に合わないで、結構我の強いところが好ましいところだと思っているし、サウナののちの水風呂に入らないという、食わず嫌いも仕方ないことだろう、明らかに寒そうだし、今が冬であることも関係しているだろうからな。
「そのあと水風呂に入れば、頭に血がめぐってすっきりするところー。」
トモミに対して私なりのアンサーを答えながら、ベンチに横になるのを抑えて空を仰ぐ、空は曇っていて今にも降り出しそうだが、降ったら多分雪になるだろう。
既に暗くなった周りを見渡して、なんとなく疑問に思ったことをトモミに聞く。
「今年、ご両親と離れることになったけれども、さみしくない?」
口調では気にしていないようにしたが、私の心の中ではずいぶんと気にしていることだ。
少女の顔は少し表情が曇った後に、すぐに明るい顔になった。
「毎日楽しいよ!お義父さんに叩かれることはないし、お母さんから無視されるようなこともないし、何より助けてくれた人の隣にいるんだもん!みんなのお世話だってできるし、毎日、楽しいよ!」
普段通りにしようとしているのだろうが、どこどう見ても強がっているそれ、私と会話するときと口調が違う上に、無理して話しているのだろうか、なんとなく心の痛みのことを悟られないようにしようという、ごまかしが聞き取れたように感じた。
私はそれに苦しく感じるしかないが、それもお門違いなのだろう、私はトモミの身内でもあり、ある種の部外者だ、どこまで踏み込んで良いものかもわからんし、私が心に踏み込むことを、相手は許してくれるだろうか。
この子の家庭環境も周りの環境も複雑だ、親は再婚、クラスではいじめも受けていて、本当は拠り所となるはずの家の役割を果たすべき相手は、トモミのことを家族ではない用済みである他人として見ていて、家庭というものはある種では機能してはいるだろうが、トモミにとっての拠り所という、帰る場所という意味では機能していないらしかった。
そんな子の親代わりを買って出たのだ、戸籍や親子関係などは今まで通りで変わっていないが、今までの生活で既に実質私の子供のようなものだ、実態は助手だし、私としては同居人という感覚の方が強いが。
「何かあったら、すぐに言えよ、助けてやるから。」
トモミのつらさをどうしようもないと分かりつつも、私としては今後も最大限に力を尽くすつもりだが、やはりトモミからの心の壁を感じる。
「大丈夫だよハラさん、だって、いつでも家に帰っていいわけだしさ!」
笑顔には曇りが見られるが、それでもトモミのご両親とは初めにトモミが会いたくなったら、絶対にいつでも会うようにという約束を取り付けてあるはずなのだが、既にトモミは何回か門前払いをくらっている。
憶測でしかないし、これは邪推なので真実ではないかもしれないが、既にこの子の実家ではトモミは他人の子であり、自分らの子ではないという扱いなのかもしれない。
「トモミ、いつもありがとう。」
それは確かに悲劇ではあるが、私はそれを十分に利用しているところがある、確かに人型のものはいるが、それで孤独が癒えるということではなかったので、トモミがいてくれるから会話が生まれて嬉しいという面も、少なからずあるのだ。
私はきっと、悪い人なのだろう。
「どうしたのハラさん、いつもとは違うね。」
いつもはもっと飄々とした態度だろう私だが、結果的には他人の子を奪っているというよりは、譲渡されているのだ、相手から合意があったとしても、警察に届け出ていたとしても、それでも受け取ってしまったという、悪いことをしているという気持ちはある。
「年末だからね、お礼くらい言わせてくれ。」
いろいろと意味を隠しながら笑顔を作れば、トモミは純粋に笑顔を向けてきてしまう。
「そっか、ハラさんもありがとうございます。
私なんかを、助けたりしてくれて。」
トモミの自己評価の低さに、涙ぐみそうになったから立ち上がり、そのまま温泉に浸かる、体も冷えてきたからという言い訳込みで、だ。
「ハラさん、どんな気持ちになったの?」
トモミはこういうところがある、私のことを見て、その様子を観察して楽しむようなところが。
「知るか!気にするな!あっちいけ!」
トモミからのその目が、私のことを信頼しているからなのだと理解しているし、私としても日常的に物理的に助けられている。
トモミが自立するまで面倒を見る可能性もあるが、いつかは親元へと帰す可能性が高いのだ、いつか親元に戻るまでは、私が居場所になるぞという、実際には柔軟に適応しようとする気持ちが強いのだ。
「そういって、うれしかったんでしょ。」
少女はグイグイと体を近づけてくるが、きっとパーソナルスペースが近いのかもしれない、近づくにつれて体を離せば更に近づいてくる。
「うるさいわ、ちーかーづーくーなー!」
私が避ければ更に寄ってくる、最終的には腕がくっついた状態で温泉に浸かってから、温泉から出たのだった。
そのときに思ったのだが、トモミって実は発育が良い方なのだろうか?私の方がとあるところが小さかった気がして……気にするのは止めよう。
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夕飯となり、今年最後ということで年越しそばが出されたのは、全員部屋で食べると温泉を出たあとに事前にカウンターで告げた、私たちが宿泊している客室の中であった。
「今年ももうあと少しだねー。」
食べ終わった容器を重ねて御盆にのせて指定である部屋の隅に置きながら、私はトモミに話しかける。
現在全ての卵を動けるようしていて部屋の中が狭く感じる、つい先ほどおいてった五号は不貞腐れた上で頭の上にいる、髪の毛で遊んでいるためまた回復ポッドの中に入れてやろうかと、既に何度か脳裏によぎってはいるのだ。
「そうですねー……、ワンダーエッグやドリームエッグに囲まれての年末年始なんて、私たちくらいなんじゃないんですか?」
トモミが自分の現状が特別なものだと感じるらしく、それを嬉々として話してくるので、私としてもそうであってほしいなという願望込みで頷く。
「そうだねー、私たちくらいだねー。」
正直を言えば、この卵たちは反社会的勢力から奪ってきたものだから、今でも持っている奴はいるだろうし、研究している人たちだって沢山いる。
まぁ、その反社は壊滅状態で、現在はどこで何をしているかも知らないし、ワンダードリーム共に使役しているのは、私くらいな可能性も十分にあるけれども。
「年越し、どうしますか?」
トモミが畳で転がっていたのを起きて、問われたから考えて、考えの中でこれは面白いと思ったものを提案する。
「地球にいないをやってみる?」
私の考えが当たったら逆にすごいが、試しに問いかけてみる。
「日付が変わるのと同時にジャンプするあれですか?」
「そうだけど、そうじゃないんだよねー。」
トモミの答えは至極当然であり、通常ならばそれが大正解であるが、今回ばかりは不正解である。
私は荷物から複数の防寒具を取り出し、トモミに向かって笑顔を向ける。
「飛ぼうか。」
「はい?」
「空、飛ぼうか。」
私の答えは、そういうことなのだ。
今回の私の提案は、フュンフやフィーアを使って一緒に飛ぼうということ。
普段は一人でしか飛ばないのだが、せっかくの大晦日なのだ、トモミがしがみついてくれればもう一人くらい余裕で飛べるだろうし、以前に既に実行済みであるので、どのようにすれば安全かも理解している。
「いいんですか!?」
トモミの喜びようから、かつてベランダなどから落とされそうになったり、複数階から下へと落下しろとか飛び降りろ等と命じられたことがないのだろうと、ある種ホッとする。
もしそのようなことがあれば、この場合にはひどくおびえ、殺されるのではないかと勘ぐるくらいのことをするからだ。
「あぁ、年越しだからね、普段はやらないことをやろうか。」
私は順調に支度を進め、トモミには防寒具を色々と取り出して身に着けさせる、ドリームエッグに防寒機能はないからの措置だが、これも見方を変えれば死ぬ前の装備だと勘違いされかねないのを、私は理解してはいるのだ。
「何時くらいから飛びます?」
トモミの笑顔には曇りがなく、とてもきれいすぎるくらいなので、私としてもトモミと一緒に空を飛ぶのが楽しみになってしまう。
「大体年越し二十分前くらいから飛ぶから、それまでは用意をしつつゆっくりしよう。」
現時刻午後九時半、紅白もやっている時間帯だ。
外は雨は降っていないが、曇りで晴れてはいない、それでもばれずに空を飛ぶにはいい条件だ。
「テレビがあるけど、何か見るかい?」
今までそんなに使っていなかったテレビを指さして言えば、トモミは少し考えてからリモコンを手に取る。
「うーん、なんかお笑いバラエティ見たいな。」
トモミがテレビのリモコンでつけると、いつも見ているものとは違う番組ばかりがやっている、それら全てが大晦日特番で、その特番を見つつ寒くないようにホッカイロを開けたり、フィーアとフュンフの事を変身できるか確認したり、ほかに一緒に行くものは居るかを聞いたり、拘束具として使えるやつを吟味なんかをしていたら、いつの間にかに十一時になっていた。
「トモミ、空を飛ぶ時の服装はもう整えたか?」
聞くが、テレビに夢中になっているため、もう一度聞いたら決まっていないと言っていた。
「私はシンにお願いして普通の無難な洋服で空を飛ぶつもりだけど。」
トモミが驚きを顔に宿していたが、どうしたのかを問いかける前に、笑顔で答えてくる。
「なら、私はハラさんにお願いする!」
シンはユニクロにあるようなシンプルな洋服に服装を変化させるドリームエッグで、変身後はチワワぐらいの大きさになり二頭身のたれ耳をした犬の人形風の姿に変化するが、トモミがなぜ私にお願いしたのかは、なんとなく分かるので、見た目の意味合いではドライにおねがいすることにした。
ドライはロリータやパンクロック、サブカルといった特殊なスタイルに姿を変化させるドリームエッグで、ドライ自体は黒いうさぎの姿がそのまま小さなガチャポンの中に入りそうな大きさに変わるのだ。
ちなみに、フィーアは空や海の中を進むのに適する姿に変化して頭を守ったり体を守ったりする姿に変わり、タヌキの姿はデフォルメ化され手のひらサイズになり、頭に空気をためるための空間が確保された丸い宇宙服みたいなヘッドセットがなされる。
フュンフは空を飛ぶための装備になり、フュンフの姿は色合いそのままな小鳥になるのだ。
「アリスは連れて行くのかい?」
アリスもドリームエッグだが、まだ変身することができず、未熟なため連れているだけになっているが、それでも衣服について卵が学んでいることには学んでいるため、良しとする。
「当然!」
トモミが少し泣きそうな顔になっているから、不安なのだろうかと思いつつも、ほかの奴らに向かって行くやつらを決定する。
そして、連れていく子に関してだが、ワンダーエッグはテラと二号、四号をサブに同行させることにした、これらの子は全個体が空を飛べるから邪魔にならないということが理由である、それと五号は希望してきたので連れていくことにする、自身も小さいから連れていくことにメリットがあるし、会話も録音録画できるから、のちの記録に良いという主張が、あまりにも正しかったからだ。
そしてカゲリも連れていくことにしたのだが、これは私からお願いしたからで、トモミが落ちないためのハーネスとして、連れて行くことにしたのだ。
私たちを守る以外のドリームエッグだと、テリクス、ゼクスがあげられる、これらも一応空を飛ぶことができるので、連れていけるのだ。
そろそろ空を飛ぶ用意をするために、外に行くように促す、ベランダはないが窓はあるためそこから飛ぼうかとも思ったが、最初に外に出てから飛ぶことにする、既に用意が終わっているワンダーエッグ、ドリームエッグはいいが、トモミはまだテレビを見ている。
「そろそろ行くよ。」
「はーい。」
トモミが名残惜しそうに浴衣から着替えた姿で、後をついてくるみんな、部屋に残る組はお笑い番組を継続して見ていることにしたらしい、そのテレビをずっと不思議そうな顔をしながら見ている子と、笑っている子がいたが、その違いはまだ研究段階に過ぎないのだ。
外へ出て寒空の下、五号のことを変化させて光をつけて森の方へと行き、空を飛ぶための装備を整える。
「用意はできた?」
皆を見渡すと、それぞれ空を飛ぶ準備を整えたらしい、頷いてきた。
「それじゃ行くから、トモミ、しっかりとしがみついていてね。」
この期に及んでトモミはひどく不思議そうな顔をしていて、視点が合わずになぜここにいるのかわからない、みたいな顔をしている。
「トモミ?落ちないようしがみついてくれないか?」
私の言葉に我に返ったのだろう、こちらを見てくる視点が合い、ようやっと私の方を見てくれた。
「ともみ?」
私が再度問いかけたときに、ようやっと理解したらしく、涙ぐみながら私の方を見てきた。
「……っ!わかりました!」
トモミが背中からしがみつくのを確認してから、カゲリを変化させて体に密着させる、しっかりと密着しているのを確認した上での見た目の感じとしては、トモミが背中に乗っかっての飛行になるなと理解しながら、そのまま空間という海の中を泳ぐかのように浮き上がる、どうやって浮いているのかは依然よくわからないが、空の飛び方としては翼で飛んでいるのではなくて、水中の中を泳いでいるように、宙をかいて浮き上がって飛ぶのだ。
私たちは水底から水面にまで一気に上昇するかのように、空中をドルフィンキックで泳ぐやり方であっという間に天高くまで舞い上がる、急激な高度上昇に備えるようにフィーアで呼吸を事前に確保していたから、私たち二人とも気圧変化でおかしくなることはないだろう。
姿勢をうつ伏せに変えて下を見てみると、そこには綺麗な景色が眼下には広がっていて、山々の間に自分たちが泊まっている旅館やそこから一番近い集約、山を越えた外側にある周辺の村々までもが、本当によく見える。
空が曇っているため月明かりがなく、森が広がっている山の方は真っ暗だ、なのにそれだからか、村の光が列となり、遠くの村はまるで銀河に散る星の群れのようにも見え、近いところや遠いところが祭り特有の様々な光によって、年末特有かもしれない幻想的な世界を作り出している。
ずっと旅館内にいたことによって行けなかったのが、今になってこんなにも悔やまれる。
「トモミ、見てみな、きれいだよ。」
ぎゅっと首が絞まっているのを理解しているが、それが恐怖からだろう事は既にわかっていること、首に回っている腕を叩きながら言えば、トモミの顔が横から出てきて、下を覗き込む。
「わぁ……!……すごい!こんな光景、みたことないです!」
トモミの目線の先には今泊まっている旅館が、そして今現在も移動中のここからは、近くの村から見て、森をはさんだ遠くには町が見える。
「まるでVRだ!」
トモミの恐怖を和らげるように叫びながら、フュンフに命じて飛ぶ速度を更に上げ、ついにはフュンフの能力に頼りきる私に対して、トモミが楽しそうな嬌声を上げる。
それについてく西洋のドラゴンや東洋の龍、鳥、無機物な飛翔体といった、種々雑多にも思えるようなものが、私の周りを取り囲むように飛んでいる。
まさに、ゲームから現実に出てきたかのような、非現実的な真実の光景である。
「あとどれくらいで年越しになるかわかるか?トモミ。」
フィーアのおかげで口が大変なことにならないので、普通に話しかけると、トモミが時計代わりにスマホを取り出し、画面を付けたらしく、後ろがほのかに明るくなる。
「あと三分です!」
トモミの声と共になくなった光源、そして身じろぎによってスマホが仕舞われただろうことがわかった。
「そうか!行きたいところはあるか!?」
フィーアによって呼吸は共有されているが、ほかに声が反射しない静かな宙の中を、空を切るビュウビュウという音が身を切っていく、ドリームエッグは防寒がないためある程度は寒いが、それでも今、私たちは皆が皆、風になって飛んでいるのだ。
「このまま町のほうまで飛んでいきましょう!行けますか!」
「あぁ、町の上空まで行ってみよう!」
トモミからの要望にドルフィンキックで空中を進んでいく、そしてどんどんとスピードが上がっていきゴウゴウという音に変わる、車でも時間のかかる隣町の上空に到着したときには年を越していたらしく、既に十分が過ぎていたらしい。
「ハッピーニューイヤー、トモミ。」
飛ぶのを止めて、宙に浮かびながら新年を祝えば、トモミは一瞬息を詰まらせるような音を出した後に、頭の後ろにおでこを埋めてから返してくれる。
「はい!ハッピーニューイヤー!ハラさん!」
目の前に広がるつい先ほどの村よりも、はるかに明るい都会的な祭りの光あふれる星の群れの上で、ドリームエッグやワンダーエッグも咆哮を挙げて新年をお祝いした、その光景はネット上に未確認飛行物体として見られることになるのだが、それはのちに組織によって消されてしまう、また別の話だ。




