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慰安旅行二日目そのに

エターナルジュブナイルの演奏を聴き、その物販を荒らしたハラは一団からファンの人だという認識になった。


そんな一団に自分が組織から卵の回収を命じられていることを伝えエンドウがサインした紙の誓約書を読んだ面々は顔を青くして喧嘩を始めた。


ということで、誓約書に一文を足すことで喧嘩を止めて、自分たちはお風呂に入ることに、その時にワンダーエッグとドリームエッグも連れていき、全体的に洗ってやるのだった。


そして、温泉に浸かったらそこにはエンドウたちがいて……。


@@@


トモミと合流し、心配そうなトモミと一緒にバブルバスやジェットバス、原泉かけ流し温泉と書かれた白湯に浸かったりして、トモミのアリスと一緒に十分楽しんでから、一緒に風呂を出る。


「お風呂あがりのコーヒー牛乳って、やっぱやめられないわぁ~!」


脱衣所で服を着てから買った、コーヒー牛乳を飲み終え、息を吸ってから発した言葉がそれだった。


飲み終えた牛乳瓶を自販機横の瓶置きにおいてから、髪の毛を乾かしに行こうかと、トモミの方を見る。


トモミにも自販機で買ってやった牛乳を、自分一人で全部飲み干したようで、瓶をしかる場所に戻してからこちらに近づいてきたその時、後ろからガラガラと扉が開く音がする。


振り向くと、そこには泣いているエンドウと、心配するサメジマ、それとは対照的に嬉しそうにドラゴンに囲まれた、トモスミがいた。


私の子たちはその周りに群れていて、楽しそうにわちゃわちゃしている、トモミはそれを見て驚いている。


「ハラ゛ざん゛、わ゛だじ、わ゛だじ!この子たちになるようなごに、なんてごどを……!」


ダウナー系だったつい先ほどとは一変しているその感じに、大号泣に泣き続けるエンドウが、ようやっとこの子たちのような良さがあることも知ってもらえたかと思い、それについて、正直今更だよなと、諦めともつくようなことも考えた。


「罪悪感が芽生えたようで何より。


それで?この卵はもう契約で私にゆだねられることになるけど、何か言い残したことは?」


ため息交じりに言えば、相手は私が手にしている卵に向かって謝罪の姿勢を見せ始める。


「わだじがわるがっだ!」


思いのほか大号泣だが、喉元過ぎれば熱さを忘れる質(たち)だろうし、深くは信じないこととする。


「夜遅いけど、今から外行くからよろしくね。」


今日もとても寒く、今まで温かい風呂に入っていたため、湯冷めの可能性もあるが、それさえも無視して相手に言い放ち、髪の毛を乾かしてから私は、一度自分が泊まっている部屋まで戻る。


事前に全ての動ける状態の卵を元の状態に戻し、乾かし切ってから、今日のために頼んでおいた親登録抹消のための機材一式をもって、トモミと一緒に、指定した場所である旅館の玄関でエターナルジュブナイルの面々と合流し、外へ出るのだった。




@@@




「さて、これでよしと。」


そう言ってセットし終えた機材を眺める、ちなみに、お風呂から出た私は、かなり多めに防寒具を着てから外へ出た。


外は氷点下なのだろう、露天の時点で随分と寒く、半身浴の時点で肌を刺すような感じがあったのが印象的だった。


事前に調べていた、お風呂がある方でも村がある方でもない、それとは反対方向で人に迷惑をかけないような場所へと歩き、その過程で山道が続くところをほどほどに歩き、ある程度開(ひら)けたところで機材を広げた。


周りには確かに木が生えているが、この場所はくり抜かれたかのように木が生えておらず大体直径五十メートルはあるだろうか、辺りには少しだけ草が茂っており、かなりの面積で土の地面が見えている、もしも戦闘をするならば、この場所が良さそうだと、考えてのことだ。


現状としては地面に機材をセットしてあり、親登録を抹消するための透明なポッドの中に、必要な粉を入れて、特定の専用液体の中に撹拌させてある。


そして、かすかに発光しているポッドの中におたまで卵を入れて、準備はOKだ。


あとは親である所有者の血を入れて、スイッチを入れるだけだ。


「さて、エンドウさん。


少し痛いかもしれないけれど、そこはあきらめてね。」


私はすぐ後ろにいる、エンドウに向かって声をかける。


この場にいるのはエターナルジュブナイルの全員と、うちの子たち、そしてトモミだ。


事前にバンドによってうっ血状態にした腕を差し出しているエンドウから、太めの注射針で血を抜く。


その際に痛いと騒いだが、そこは悪いと思うが、何せ医者じゃないんでね。


確かに訓練を受けたことがあるが、血管を探るのが下手なせいで痛いのだろう、そもそも私は解剖はすることがあったり、実験動物を取り扱うことはあったが、それでも注射針を刺すのは下手なのだ。


「よし、この絆創膏を貼るから血が止まるまで押さえてて、後の事はわかる?」


使うための血液を十分抜いてから、針をアルコール脱脂綿で押さえながらはずし、すぐに傷口を拭いてから絆創膏を貼って聞くと、緊張した面持ちのエンドウが、予め言っておいた説明を、反復するように答える。


「暴走したら合言葉を言って落ち着かせるのと、対話をする。」


色々と恐怖と不安で抜け落ちているのか、私が言ったことを総括して答えてきたが、内容としては十分に及第点の答えだ。


「それを覚えていたら大丈夫だ。


それじゃ、はじめるから少し離れていて、ドライ、エンドウさんのこと、逃げないようにしっかりと拘束しておいてな。」


私がそれぞれに目を配った後に合言葉を呟くと、動物体の状態であるドライから、帯のようなものが出てきて、エンドウがその場から動けないように、ドライから出てきた帯が変化して、まるで拘束具のような洋服に変わり、エンドウのことを拘束する、その時にはドライ自身ちいさくなり、ガチャポンの中に入りそうな大きさのマスコット型となった。


「な、なにこれ!?」


いきなり動けなくなったことによって、動揺を見せるエンドウだが、私としても考えがあってのことだ。


「逃げられないように、だよ。


親登録解除をする際に、恐怖によって逃げられでもしたら困るからね、特にあなたが。」


もし親登録解除の儀で解除予定の所有者が下手に逃げでもしたら、私含んだ周りを巻き込んで全滅しかねないが、それ以上に対象は、恨みをもっている相手に対して一直線に襲い掛かる。


そのため、逃げた人中心にその場一体がどうなるか、わかったものじゃないので、拘束することが必要となるのだ。


「ほどいてよ!」


説明したような気もするのだが、相手はそんなの知らぬとばかりにじたばた暴れるが、それでは緩まないようにがっちりと締め付けられていて、動けなくなっている。


ドリームエッグは使用する対象の、服装についての見た目も変わるが、命じれば拘束具にもなるから良い。


自分も、イルル、フィーア、フュンフを変身させ、空を飛べる上に防御力や攻撃力も底上げして、リオン、テラ、四号のことも変身させる。


リオンは槍、テラと四号は適当な飛び道具に変身させた。


ほかのものは何かあったときの、サポート要員としての役割を命じた。


「それじゃ、始めるよ。」


何が起こるかわからないため、深呼吸をして気合いと集中をしてから始まりを告げ、注射を所定の場所に刺し、血液をポッドの中に注入してから、電源を入れる。


すると、はじめは液体に漂うのみだった赤のよどみが、撹拌と共に全体がオレンジ色に変化して、順調に起動した機械のファンが音を立て、冬特有の静けさを押しのけるように辺りに響き渡る。


大体三分ほどたった辺りで卵が震えだし、蓋の隙間から液体があふれ出す。


「やっぱり一言モノ言いたいらしいな、準備はいいか!」


叫ぶようにエンドウや周りの者たちに言うと、みんながそれぞれの表情でうなずいた。


「各自自衛を図るように、来(く)るぞ!」


ブルブルと卵が震え、全てを拒否するように暴れ出し、液体にそれが伝わったことによって蓋が押しのけられ、口が開かれたままのポッドからそれが飛び出し、形を変える。


変化を終えたその形は、大型の虎の形をしていた。


エンドウのものであったワンダーエッグが叫び声をあげて、元所有者という名の獲物へと特攻を仕掛ける。


即座にその間に入り、攻撃をリオンで受け止める。


「はやく、合言葉を!」


大声で指示したが、視線だけ向けると、昔を思い出したのか怯えるようにガタガタと震えているエンドウは、なんの言葉も発さない。


「くっそ!ヘタレが!」


悪態を叫びながら、イルルの力も使い、今現在槍であるリオンで攻撃を無理矢理押し返し、こちらに牙をむいたままの虎に、四号が変化した矢が突き刺さり、テラの光線が敵の目にヒットする。


叫び声をあげる相手が一瞬力を緩めたから、思いっきり蹴り後ろへと下がり、そのまま距離を測る、その時にトマツリがエンドウの肩を揺さぶり、声をかけたようだ。


「おい、エンドウ!大丈夫か!」


今も焦点が合っていないであろうエンドウのことを想像しながら、対峙している敵と目を合わせ、相手がどのように襲ってくるかを見極めようとする。


突然虎のしっぽが複数に分かれ、こちらに襲い掛かってきたので、それらを全て払い落とそうとすると、槍が絡めとられ遠くに放り投げられる。


即座に合言葉を言い、槍を変身させ人型に戻しつつ、着地をするよう指示、次は二号を変身させ、熱を帯びた剣の形をとらせてから、伸びてくる尻尾を薙ぎ払う。


後ろからなにやらぶつぶつと聞こえるが、それを説得するようにトマツリが声をかけているのだろう、そこにほかのものが加わったのか、声が複数になるのがわかる。


「早く!スターを落ち着かせないと、あいつが大変なことになるぞ!」


アズキの声が聞こえてくるが、ぶつぶつと呟くのを止めないエンドウ、そちらの方に気を取られるわけにはいかないと、そぞろになる意識を攻撃してくる虎に向かって集中する。


「カゲリ、拘束を。一号、援護して!」


簡潔に指示を出すと、カゲリは無機物型が鞭な事を生かし、虎の手足を強く拘束、一号は大型のオオカミへと変化し、相手の首元を噛み牽制をすると、虎が叫び声を上げた。


それと同時に尻尾の攻撃が緩み、こちらが有利になる。


「響き渡れ、夢の名のもとに!」


いきなりだが、エンドウが叫び声を上げると、虎は動きを止めエンドウの方を見る、その虎の眼には、明らかな憎悪が宿っていた。


【お前はボロボロにした挙句に、俺を捨てるのか。】


頭の中に直接声が響き渡る、この感覚はワンダーエッグが行なう最後の対話の時と同じだ。


他の人たちは頭の中に直接声を掛けられ慌てているが、それを制するように声をかける。


「エンドウ、これはスターの声だ!ちゃんと口で声出して対話しろ!」


私が鋭く指示すると、エンドウは声をどもらせながらも言葉を紡ぐ。


「私はあんたに、愛情を、掛けられなかった。


それは、これからも同じ。だから……っ手放すことに……、したんだよ。」


【さんざこき使ってきて……叩かれ、蹴られ、その上ご飯も一切なし。


挙句、使えなくなったらポイッ、か……。


本当、良いご身分だなぁ?くそアマがよぉ。】


相手のワンダーエッグの口があまりにも悪いから、今回戦闘に参加していないうちの子たちが一部おろおろとしている。


そして人間型のものたちは、みんな毅然とした態度をとっているのを、なんともいえない気分で見渡す。


うちの子たち、まさかこんなに口悪くないよな?内心心配になるのは仕方ない。


「こんなに反抗的になるとは思わなかったんだよ!


何せ、心のない道具だって言われてきたからね、なにか感じる心なんて、全然まったくないと、本当に思っていたんだよ!」


懺悔のような言葉を紡いでいるが、それに心がこもっているのかは微妙なところだし、言い訳じみたそれは、現に虎には伝わっていない。


【たとえ心があったとしても、絶対お前は俺に対してと同じ態度、行動をとるだろうな。


俺含めた全て、そして、これから先においても、お前は何かを世話をする資格なんて、どこにもない。】


苛立ちに任せ、今にも飛び掛かりそうな敵のを見て、私は武器を構えながら他のワンダーエッグに向かって、周りを包囲するよう声をかける。


【お前ら、邪魔をするな。


これはこいつと俺との問題だ。】


ギリギリと目線だけで殺そうとしてくる虎に向かって、ニヤリと笑いながら答える。


「それはできない相談だね、私は君の回収を命じられている。


これからうちの子たちと一時的にかもしれないが、一緒に生活するんだ。


だから、今ここで元所有者を襲おうとするのを、力尽くでも止めさせてもらう。」


ジリジリと近づいてくる虎相手に、二号を構えて警戒の体勢をとる。


それにほっとしたかのようにエンドウがため息をついて、相手を馬鹿にするように不要な言葉を出す。


「結局、お前は道具で、私は人間。


守られるのは、私なんだよ。」


こいつ、どこまでも屑だな。


「そういうなら言わせてもらうけれども。


動物をかわいがらない、可愛がれない、思いやることもない、挙げ句自身に都合良く考えて行動して。


それどころか、気軽に暴行を加えるお前のほうが、目の前のトラよりも遙かにゴミ屑で、本当は守られる価値もないのを、自分で理解しているのか。」


相手の方を振り向きながら、苛立ちに任せた低い声で脅すように言うと、相手は明らかにびくついた様子を見せる。


「それでも、あんたは私のファン……だろ?


私たちのファンならば、私のことを、当然守ってしかるべきだ。」


どんな態度を取ったとしても、自分は当然守られるのだろうという、そんな高慢な態度で来られて、思わず馬鹿にするような笑いが出る。


「ファン?研究対象の間違いでは?


あんたらの歌が研究材料として使えることに気が付いたから、グッズを買ったまで。


それ以外の価値なんて、お前らにはないし、グッズ自体にも意味など無い。」


「「な、何を!」」


エンドウ、トモスミが大声で反論しようとするの含め、アズキが大声で疑問を発する。


「ということは……、俺らの曲を、全て買っていってくれたのは。」


震え声でそんなことを言われたため、思わずクスクスと笑いが出てしまうが、それでも言ってやる。


「そう、利用するため。


お前が見捨てたこの子にやったのと同じ。ほら、何か言いたいことはあるか?」


私が馬鹿にしたように言うのに対し、アズキが胸倉を掴もうとこちらにやってきそうになるのを、サメジマが前に出て止める。


「どけっ!このババァに分からせてやんねぇと!」


アズキの様子から自分たちの音楽に大層な自信と思い入れがありそうだが、それをサメジマが止める。


「それでもいいじゃない!これから太客が付くわけなんだし!私たちの音楽は必要とされているんだからさ!」


サメジマの言い分に、少しは納得したようだが、アズキは依然苛立ちを隠さずにこちらを見てくる。


「それでも、それでもなんか癪に障るんだよ!


トモスミが作った曲で感動したとか、元気が出たとか、そういうのならいいが、なんか違う気がするんだよな!てめぇが言うとさぁ!」


そういいながらサメジマが止めるのを無視して、アズキが私に近づこうとするのを、トラの攻撃がカゲリと一号の攻撃を振り払い、そちらへと向かって襲いかかる。


それを押さえるためにも、敵に向かって走り寄り、思いっきり剣で切り払うが、僅かに照準がずれ、相手からの一撃を貰ってしまう。


「グッ!」


衝撃で転がるが、痛みはほどほどにある程度で、空中で飛べるようにしていたため、木に叩きつけられることはなかったことが幸いだった。


地面から浮き上がった宙で体勢を立て直し、攻撃をする、四号が今度は思いっきり脇腹を叩き、敵の体勢が崩れる。


【お前は一体どっちの味方なんだ!】


虎は動揺したのか、苛立ちの声色と共に問われたそれに、私は答える。


「今は敵だが、親登録を抹消した後は私のものだ。


のちに組織にわたるかもしれないが、もしかしたら別の新しい飼い主が見つかるかもしれんぞ。」


剣を構えなおしながら言うが、虎はこちらを睨みつけてくる。


【もう誰に従う気もない。


俺は、俺がこんなに傷つくことになるのなら、今ここで暴走してやる!】


そう叫ぶ虎に対して、私は大声で語り掛ける。


「暴走はするな!うちの子になれ!今までの仕打ちで受けた傷を癒そう!」


【(だまれ。)】


言う虎が変化を始める、まずい、暴走が始まるかもしれない。


「おいエンドウ!何か言うことはないか!」


そう言うが、エンドウはガタガタと震えてこちらを見てくる。


「エンドウ!お前のワンダーエッグだろう!親の責任を果たせ!」


そこまで言って、ようやっとエンドウは口を開く。


「ごめん、ごめんなさいスター……、そこまで怒るなんて、思わなかった。」


エンドウの方を見ると、ドライに拘束されたまま泣いていた。


「シホ……。」


驚いた顔をしたトモスミが、エンドウのことを見る。


「だって、感情があるなんて思わなかった、どんなことをしても道具だから許されると思ってた、こんなことになるなんて思わなかった。」


ぽつぽつと話すエンドウを見た虎は動きを止める。


【(あるじ……。)】


そういう敵に、エンドウは更に声をかける。


「償おうとしてももう遅いのはわかっている、だから、暴走するのはやめて?ね?」


エンドウが言うと、虎は暫く考えたのちにつぶやく。


【(そういって、また俺のことを傷つけるつもりだろう。)】


言い終わったと同時にしっぽでの攻撃が再開され、私は宙に浮かんでたせいで思いっ切り吹っ飛ばされた。


「グアッ!」


何m飛ばされたか分からないが、今度は木に叩きつけられる、あらかじめイルルに変身してもらい防具になってもらっていたため軽傷ではあるが、ただ、イルルが小さく悲鳴を上げた。


「イルル大丈夫!?ほかの二匹は。」


聞くと、大丈夫と言いたげに小さくなったフィーアがもぞもぞと動き、フュンフは急いで私たちの元まで飛んできた。


「よかった、まだやるから、嫌になったら言うんだよ。」


そう言うと三匹は鳴いて意思表示をしてくれた。


「スターは、どうなった。」


言いながら地面から起き上がり敵の方を見る、そしたらドライによって拘束されたエンドウの前に、トラが唸り声を上げながらすぐ近くにいるのが見えて、ほかのものの安全を確認するために見渡せば、エンドウの近くにいた人たち含めエンドウの周りにおらず、全員が複数に分かれた尻尾によって拘束されていた。


「すたー……わたしになにする気?」


歯の根が合わない感じな舌ったらずなその言い方に、スターは一言告げる。


【(お前に今まで受けた仇を、報復する。)】


苛立ちを押さえたような、うなりと共に声を上げるとおもいっきり前足でエンドウのことを殴り倒した。


「「「「シホ!!!」」」」


立ったままだったエンドウが吹き飛ばされ、バンドメンバーが焦ったような大声でエンドウを心配するが、衝撃で倒れ込むエンドウに対し、スターは追撃を繰り返す。


追撃は熾烈と言うよりは、エンドウはまるでたちの悪い猫が猫じゃらしにじゃれるかのようになぶられ、噛まれ、抱え込まれ、蹴られ、どんどんとドライが作った衣装に傷がたまっていく。


「ドライ!」


今まで見ていただけのトモミもドライのことを心配して叫ぶが、まぁ、ドライは無事だろう。


けど、ドライはエンドウのことを助ける気が無いようで、いつもよりも防御が薄く、簡単に傷ができている辺り、装甲は当社比紙レベルなのだろう。


現に、ドライは確かに傷ついているが、依然叫び声などのダメージを負ったような様子は見えないし、どちらかといえば検査中の方がダメージがあるくらいな気がする、程度の守りのようだ。


ある程度のところで助けないとエンドウが死んでしまうし、消えない傷がまたできてしまうので助けることにする。


「全員、スターに一斉攻撃、用意。」


私が使役している獣達に向かって指示すると、今まで攻撃をしなかった全てのワンダーエッグが攻撃態勢に変わる、そして、人型のリオンは武器にするのだろう、三号のことを手に取っていた。


合言葉を言うと、リオンとカゲリ以外全てが武器に変わり、矛先が虎であるスターに向けられる、そして私は手を上に振り上げ、指示を出す。


「各自連携を取り、指示待ちせず攻撃を。」


指示を終え、全てのものがそれぞれの対象を認識し、連携攻撃準備が整ったところで、攻撃対象であるスターの方に向かって、思いっきり振り下ろした。


「一斉攻撃、開始!」


叫ぶと、一斉に行動が始まる。


全てのワンダーエッグがスターに向かって攻撃を仕掛ける、スターがワンダーエッグからの攻撃を避けようとエンドウを咥えてジャンプすると、そのあとに三号が変化した柄の長いハンマーが、リオンの振りと共に突き刺さる、他のやつはそれを無視してスターに追従して走る。


敵は何とか全ての攻撃を弾こうと尻尾を振り回すが、その間をかき分けるかのように体勢を立て直したリオンが素早く敵に近づき、テラによって目を光で撃ち抜かれたスターの脳天に一撃を加える。


その衝撃で咥えられていたエンドウ下に落ち、それをすぐさまリオンが救出、俵担ぎの状態でその場を離脱する。


スターがそのあとを尻尾で追撃しようとするのを、剣に変わった一号のことを手に持ったカゲリが持っているものを振り回して、上手く切り落とそうとするが、カゲリはどうもどんくさいらしい。


スターが尻尾を器用に動かして剣を躱し、カゲリをなぎ倒そうとするのを、必死に切りつけるくらいしかできていない。


尻尾を動かすときに胴体が固定されるのか、その隙をつき、四号が弓矢となりスターの腰に一撃を加えると、痛かったのかスターは叫び声を上げる。


相手が動揺したのを見計らって、私は即座に交渉を持ちかける。



「いい加減黙って親登録抹消をしろ!


おまえはただ、みんなと遊びたいだけなんだろう?!


くだらない前の主人のことなど、受けた傷含め自分の中から抹消することができれば、いたぶって殺す価値もないだろうが!


おまえの憎悪、全て私たちが引き受けてやるから!


今までのつらさを全て捨てて、一緒に楽しく日々をすごしたいのならば!いい加減静かにしろ!


全て、おまえのためなんだから!だまってしたがえぇ!」


私が喉が切れる程の大声で叫べば、スターは考えるように一つ吠え、そのまま静かになった。


「エンドウ!合言葉を言え!今すぐにだ!」


私が咳き込みを抑えつつ叫べば、エンドウは倒れたまま合言葉を叫ぶ。


「ひびきわたれ、ゆめの名のもとにぃ!」


合い言葉なのだろう、エンドウが叫ぶ声を聞いたスターは、悲しげな声を発した後に白い光を放ち、そのまま卵の状態に戻った。


「うわぁ!」「きゃぁ!」


どうやら尻尾に捕まっていたのが解放されたらしい、そんな声と共にドサドサと人が下に落ちる音がする。


「いたたた……。


みんなー、だいじょうぶかー?」


トマツリが声を出し、みんなに問いかけている間にも作業を進めることにする。


変化の終わったワンダーエッグをすぐに回収、親登録抹消のためのポッドに卵を入れたのをしっかりと確認してから再起動をさせる。


説得が上手くいったようで、今回はなにも問題がなさそうにみえるが、しっかりと気を付けてその状態を見守る。


そんな中、私の懐の中で隠れていたワンダーエッグである五号が顔を出して、一緒にその光景を眺めはじめた。


「五号。


あんたは戦闘用じゃないし、今回指示もしていないから別にいいけど、あとでほかの子たちのことを見てあげてね。」


頭を人差し指でなでてやったら、五号はうなずいたので、ほかのものが集合してくるまで二人だけで卵の状態を見張り、使役している皆が集合したあとも、最後まで一緒に見届けた。


@@@


卵を登録抹消のための液体に漬け込み約25分ほどだろうか、全ての処理を終え、完全にポッドが動作停止したのを見届けてから、私は被害者?加害者達の方に目を向ける。


「よし、親登録抹消終了。


みんなー、大丈夫だったー?」


処理をおえたポッド中の液体が終了を示す水色へと変化したことで、動作中の光が消え、月明かり以外のこの場所における光は全て失われた。


今日は月明かりがきれいだから周りはよく見えるが、それでも影があったりして危ない事には変わらない。


五号にライトになってもらい辺りを照らしてみると、結構暴れたあとが残っているようで、周辺が思いのほか荒れてことに気がついた。


「はらさーん、こんな年末年始いやだー。」


自身もスターに拘束されていたのだろう、泥だらけで近寄ってきたトモミが泣き言をいうのに、「ゴメンゴメン」と無責任なことを言いつつも、謝罪代わりに頭をなでる。


「仕事に巻き込んでごめんね、寒かったでしょ、部屋に戻って寝ていいからね。」


実際申し訳なさと、本当におまえはこの先もやっていけるのかを暗に問いかけながら、頭をなで続けていると、トモミはその手をつかんでこちらに視線を合わせてくる。


「いえ!助手なので!最後までここにいます!」


その目には意思がしっかりと感じられ、本気であることを証明するような炎が、瞳の中に見えた気がした。


「肝が据わっていてよろしい!」


ふんふんと鼻息荒く、眼力強く宣言するトモミに向かって頷きながらも、無理はするなの意を込めて、頭を軽くポンポンと叩く。


トモミの決意を感じた後にエンドウのことを見ると、ドライのおかげで、あまりボロボロではなかったのが見て取れた。


「どうだった?最後の対話は。」


相手が怪我していないのを既に理解した状態で問いかけるが、エンドウは先ほどのことが怖かったのだろうか、放心状態で何事かをぶつぶつとつぶやき続けるその人物に、やれやれとため息が出てしまう。


「たぶんだけど怖かったよね。


だけどね、これがこのワンダーエッグが受けた、仕打ちの辛さだったんだよ。」


私が静かにそういったのに、アズキはそれを聞いていなかったかのように胸倉を掴んでくる。


「シホがこんな目に遭ったのに、なんで平然としていられんだよ!お前に心はないのか!」


本気の低い声な上にドスがよく利いた脅しを向けられるが、正直ワンダーエッグの性質を知っているため、そんなのお前らのせいだろ?というため息がまたでる。


「あのねぇ……、知らないかもだから言うけれども、ワンダーエッグは持ち主の写し鏡。今まで受けてきたことを最後に行動で返すのが習性なの。


だからどんな扱いを受けてきたかなんて、卵の行動を見れば一目瞭然。酷いことをたった十か月以内でたくさんしてきたからこうなったんでしょ?自業自得。


組織はめったなことじゃ回収を依頼してこない、危険だと判断したときに命じられるんだから。


それに今までどんな扱いをしてきたかなんて、本人が一番わかっているはずでしょ?


今回のことをされたうえでそれでもわからないなら、それは本人の問題でしょ。」


私がバッサリと切り捨てると、胸倉をつかまれたままおもいっきり殴られた。


「ハラさん!」


トモミが叫び声をあげるが、私としては相手の仲間を思う気持ちとやらに、反吐が出る気分だ。


痛みで顔をゆがめると、アズキの両腕にシンとテリクスがしがみつき、やめるようアズキに声をかける。


「ッチ、あーあ!


こんなことになるなら、もうワンダーエッグを飼うのやめようかな。」


私が言ったことを理解しているのかは知らないが、アズキが苛立ちを隠さずに言うと、サメジマは別の感情をもってうなずいた。


「わたしも、たまご手放そうかな……。


こんなに危ないなんて、聞いてなかったし……、こんなことが起こるなら、ワンダーエッグは危険だよ!」


今まで自分がやってきたことを思い出したのか、組織の規定に対して手のひらを返したかのような発言に、再度ため息が出る。


「あのさぁ……。


あんたらさぁ、他人が飼っている飼い犬が、それを飼っている本人に対して嚙みついたからっていう理由で、危ないから自分ちの犬も処分しようとするのは、流石におかしいんじゃないの?」


あまりに無責任な発言にイライラしながら言うと、トモスミとトマツリが頷く。


「確かに無責任だし、私たちのバンドが売れ出したのはエッグを題材とした曲を作ったり、他にも今まで育ててきたものとの触れ合いを、書いてきたのもあるじゃない!


確かにそれ以外の曲も売れているから、あれを飼わなくなっても問題ない、路線変更すればいいとか、そういう意見もあるかもしれないけどさぁ?それをただ危険だからっていう理由だけで放り出す気?


この人が言っているのも当たってる、ずっとシホはエッグに対してひどいことをしてきたわけだし、今回はシホが問題を起こしたからこうなったのであって、エッグ自体が悪いんじゃないよ!」


トモスミが擁護するのに対して、トマツリも援護射撃をする。


「俺もそう思う。


ワンダーエッグを虐待したから、こうなったんだ。


こうなった責任は、シホにあると思うし、俺らもそれを止めなかった責任はある。」


真摯な顔でそういいつつも、私の方を見て嫌味を一言。


「だけど、シホがこんなにボロボロになるなんて、まったく聞いていなかった。


うちのメンバーになんてことしてくれんだよ。」


確かにそれは一理あるとは思いつつも、相手から睨みつけられたから、冤罪を解くためにドライの拘束を解くことにしたのだが、解いた中から無事なエンドウが出てきたのをバンドメンバーはまったく信じられないのか、すぐ近くにまで近づいたうえで、腕や足、腹部といった部位の衣類をめくったりして、大丈夫なのかをすみずみまで調べていくのが見られた。


「傷がない……!?」


十分に大丈夫だということを理解したらしいサメジマの、その声が響くのに頷く。


「だって、そうなるのを見越してドライに守らせていたからね。


大丈夫でしょ?怪我は一切していないし、衝撃もほどほどにしかなっていないはず、あえて言うなら……布団でぐるぐる巻きにされた上から、たくさん殴られた……って感覚かな?」


衝撃吸収については嘘をついたかもしれないが、ドライの拘束は全身全体に及び、頭は確かに出ていたが、ほかは動けないようにぐるぐる巻きになっていたのだ。


そのまま出ているように見えるだろう頭も、実は見えない膜で守られるようにガードされていたので、見た目は確かに拘束具のような格好な上薄手にしか見えない代物だったので、見た目では酷いダメージをくらいそうだが、本当の防御力はかなりあるほうなのだ。


多分、車で引かれたり剣でぶっ刺されたり、その他銃で撃たれたり動物に噛まれたり、その他鋭利なもので切り裂かれたりなんかしても、十分に大丈夫な感じには防御力が高い。


そんなドリームエッグで防御をしていたんだ、大丈夫に決まっている。


だが、本人のやる気次第で強度が劣る可能性はあるのだが、今回は私の剣幕から守りはしたのだろう。


見た目上ボロボロだったけれども、中身はしっかりと守ったようだ。


「こわかった……。」


泣いているエンドウには悪いが、パニックホラーを見た感じで諦めてほしい、虎にねこじゃらし的に扱われた挙句に猫キックホールドされたらそら怖いし、その様子から衝撃自体はくらっていたのだろう。


嬲られた上で抱きつかれ、そのまま噛まれ蹴られされたうえで、怪我はせずとも衝撃自体があったならば、そりゃ怖いわな。


「少し精神の傷自体は深いかもしれないけれども、それでも怪我はしていないんだし、大丈夫大丈夫。


しばらくすれば治るよ。」


無責任なことを適当に言っといて、起動が終了したポッド内から卵を穴の開いたお玉で回収して、事前に持ってきていたタオルでよーく拭いておく、ひび割れが酷いため優しく水分を拭うが、それでも水分をなるべくふき取っておいたのは、その後に響く可能性があるからだ。


それにこの状態はよろしくないので、早く回復ポッドに入れなければ。


「それじゃ私は行くけれども、契約書の中に書いてある通り、慰謝料などは支払わないから、そのつもりで。


口頭での文句は聞くから、体調に不調が出たらおしえてねー。」


ちゃんと契約書の中にある、重要な部分をピックアップして伝えてから、機材と回収した子をしっかりとバッグの中に入れて手に持ち、体調確認を終えているうちの子たちとトモミと一緒に、その場を後にする。


旅館に戻り、フロント?時計を見たら、既に夜中の二時を回っていた。


「よし!今年の業務は全て終了とさせてもらう!誰が何と言おうと業務終了だ!


明日報告をしたら、そのあとの三が日は!神社巡りだー!」


自分の気持ちを変えるために空元気を使って元気よく言うが、今回戦闘に参加した子たちは結構疲れが目立っていた。


せっかくなので、部屋に戻ったら回復ポッドの中に入れようと思う。


「ハラさん、ねむいー。」


トモミがようやっと疲れを認識できたらしく、私に触れた手は温かくなり、人が眠気によって温かくなるそれが出ていた。


「そうかそうか、部屋に戻って寝ような。」


トモミが寝る前に急いでみんなで一緒に部屋に戻り、全員が部屋に戻ったと同時に卵に戻す。


「みんなお疲れ様。


ゆっくりと休んで、明日はたくさん食べようね。」


それぞれをなでてやってから、一つ一つ丁寧に回復ポッドの中に入れていく、そして一番最後に今日の回収品であるワンダーエッグを、個別ポッドの中にやさしく入れてやってから、電源を入れる。


「今までよく頑張ったね、ゆっくりお休み。」


やさしく言葉をかけてから立ち上がり、新しい浴衣に着替える、トモミは既に着替えており布団に潜り込んでいた。


「ハラさん、寒い。」


温かくして出て言ったつもりだったが、どうやら完璧に湯冷めしたらしい、暖房が入っている部屋でも寒いそうだから、私の分の毛布も渡す。


「ほら、これ掛けな。」


隣にいるトモミに毛布を掛けてやり、電気を消して私も布団にもぐる、卵とは別の部屋なため、起動している間の光はこちらにこない。


「それじゃ、お休み。」


「おやすみなさい。」


トモミはおやすみなさいを、かろうじて言うか言わないかで無言になり、数秒で寝息が聞こえてくる。


私は寝る前に湿度計を見ようとしたのだが、どうしても眠気の方が強くて、見ようと考えている間に意識がブラックアウトしてしまい、そのままに眠るのであった。

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