慰安旅行一日目
この回から複数回は旅行の詳細を書いた小説となります、気になる方はご覧ください。
はらカオリとさくらトモミは自分が使役しているワンダーエッグ、ドリームエッグと共に組織の息がかかっている旅館へと今年最後の旅行へと出かけた、そして、旅館につき自由となった一同は好きなように動くことにしたのだった。
大晦日二日前、旅館はほどほどに混んでいるが電波が悪いため携帯機器が全てアウト、そんな中で一同は自由に過ごすのだった。
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大晦日2日前から予定がないということを事前に聞いており、今年最後に旅行でもということで、トモミのことをつれて、今回はワンダーエッグやドリームエッグと共に温泉旅館にやってきた。
トモミの両親からトモミを半ば無理やり託されて、今日が初めての大晦日だ。
最近ではいつもトモミと一緒に卵たちの世話をやっているのも加わって、新しい家族との初めての家族旅行のように感じた。
今回年末年始に泊まることにしたこの宿は、周りが山に囲まれた森の中の宿で、電波がとにかく悪く、事前に予約した際に組織のコネで決めた、滞在中の数日間は依頼などもないはずの慰安旅行用の宿なんで、様々な煩わしい連絡をたってゆっくりとしようというのが、今回の主目的だ。
トモミも温泉宿ということで、目新しい空間を探検する気満々だし、ほかの卵たちも心なしかソワソワウキウキしている。
「トモミ、卵たちと一緒に近くを回ってきていいよ。」
チェックインを終え、部屋にやってきた私がトモミに許可を出せば、トモミは目を輝かせる。
「いいの!?いこ!みんな!」
トモミが全体に対してそう呼びかけ、それに乗ったモノたちはトモミと共にどこかしらへと出ていく。
近くに残ったのはカゲリとテラ、テリクス、五号だけで、この場を去っていったやつらは本当にみんな、トモミと共にいるのが好きなんだなと、しみじみと思う。
既にチェックインを済ませて荷物を全て部屋に運び入れているため、どこへ行こうと自由だが、全ての卵を連れての湯治なので、大所帯な客であることは請け合いだ。
おまけに、ここの旅館はワンダーエッグやドリームエッグを連れてきても気にしない、組織の息がかかった旅館だから何かある可能性はない、おまけに休養ということにしてあるので、組織も声をかけてこないから良い休暇というわけだ。
部屋は複数人で泊まると手続してあるうえに、複数の卵を連れていると伝えてあるため、かなり広めの部屋だ。
布団は二組しかないが、部屋としては基本的なところがふすまで二つに分かれていて、片方は寝室、もう片方はこたつやらがある主室で分かれている。
そのほかにも主室にはものが飾られた床の間があったり、窓際には小さめのテーブルとに客の椅子があるような謎の場所(広縁と呼ばれるもの)もあり、トイレも室内にあった、ただし部屋に風呂はない、大浴場を使えと言われている気がしたが、悪い気はしない。
ちなみに荷物は寝室になっている場所に、全て持ってきてある、こたつがある主室には持ってきたものをおかないことにしたためだ。
広めの部屋である主室に持ってきたものを置かないことにしたのは、部屋の動線を考えた結果、邪魔だと判断したからだ。
「さて、私は温泉に入ってくるから、ほかのみんなも自由にしていいよ。」
私はお風呂セットを手にもって三人に対して言ったが、三人は動かない。
私が立ち上がり廊下に行くと、そのままついてくる。
もう一度部屋の中に入ると、そのまま部屋の中に入ってくる。
……これは……。
「もしかして、一緒にいたいのか?」
私が少し予想外と言いたげに問いかけると、三人は深く頷いた。ちなみに五号は懐の中で頷いている。
「そっか。
それじゃ、女性の形にならないと一緒には入れないから、変身しようか。」
現在三人は普段通りの男性体であるが、私が三体にそう促すと、それぞれがうなずいた後に変身し、変化が終わった後は比較的女性らしい体つきではあるが、基本的な顔立ちや体つきなどは中性的な形で落ち着いた。
「んー……まぁいいか、それじゃ行こう。」
そうして私たちはみんなして入浴セットを持って、温泉へと向かう、複数ある温泉のうちのひとつである二階の女風呂には誰もおらず、脱衣所で服を脱いで、卵たちを裸に変身させてから浴室に入った。
「おぉ、広いな。」
思わずそう言葉にしてしまう程度には広い、室内にあるお風呂が三つと露天風呂が見た感じ合って、水風呂と書かれた湯船の近くには『サウナ』と書かれた扉があるから、どんな形であれサウナもあるのであろう。
連れてきた子たちに体を洗うように指示してから私も体を洗う、五号の体を洗い始めたらテリクスとテラの二人が背後に立ったから、何事かと後ろを向いたら手にタオルを持っていた。
「洗ってほしいのか?」
そう卵たちに問いかけると、隣に座りこちらを見ていたカゲリ含めた全員が頷いたため、ため息を吐いてから私が目を向けているカゲリを呼ぶと、何やら三人が騒ぎ始める。
どうやら自分たちを差し置いてカゲリを最初に洗われるのが、五号含めた他三名にとっては不服らしく、自分たち含めた誰が最初に洗ってもらえるかを、この場で決めるとのことだった。
カゲリ含めた全員が議論めいた感じに話初めたが、子供の大きさだからか、その光景がほほえましく感じる、が、実態は戦闘用の武器だ。
その点においては全くかわいくない、何やら話が物騒になってきたので簡単に順序を決めてやる。
騒ぐ中でその場所に移動したもの含めた真ん中、右、左の順で洗うとそれぞれを指し示したら、主人がそう言うならと言いたげな顔で黙り始める。
まずは手ごろな場所にいたカゲリのことを洗う、髪の毛が長いから頭を洗ってやった後、髪をまとめてアップにする、その際に後ろから羨ましいゆえだろう圧が掛かったが、無視だ。
頭だけでなく体も洗ってやり、一通り洗い終え全て流したあとは、次にテラのことを洗ってやる。
テラは髪が短いため簡単だ、全身を丸洗いしてからバサッとお湯をかけると、手で大雑把に顔をぬぐうのが見られた、その所作や動作は実に男らしいが、変身した体は未熟な少女のそれで、現在においての見た目上は、非常にガサツな女の子になっているのが面白い。
最後にテリクスだ、テリクスの髪の毛はつやつやとしていて、天使の輪が見えるタイプのショートカット、それだけでなくきめ細やかな肌に整った顔立ち、線の細い身体である上に未熟な少女の体型という、全身から醸し出される繊細さが、元は男性体ではあるのだが、本当にドリームエッグといった感じだ。
ドリームエッグは防具としての性能を有しているため、簡単に肌に傷がつくようなものじゃないのは理解しているのだが、美術関係に精通していることが多いドリームエッグという性質のせいで、繊細な何かを感じ取ってしまったため、ほか二人よりもやさしく洗ってやることにする。
そして全身を洗ってやり流してやると、テリクスがこちらをジィッと見てきたから声をかける。そしたらお礼に、体を洗いたいと言ってきた。
テリクスがキラキラとした目で提案してきたそれを、苦笑いをしながらやんわりと断るが、ほか二人も全力でダダをこねたため、せっかくだということで背中と頭を洗ってもらう。
その時に五号の小さな体を優しく洗い、ちょろちょろとお湯をかけてやって洗い終える。
三名が一緒になって私のことを洗ってくれたことにお礼を言い、そろそろ流していいかを問いかけたら、流すのもやりたいと三名全員が自我を見せたのでやらせてみた。
テラがシャワーを手に持ち、私の全身に適温のお湯をかけてくれて、ほか二名が泡まみれの体にかかるお湯を使って、洗い流すように擦ってくれた上に、各自が桶にお湯を溜めてかけてくれたことで全身的につるつるピカピカになったが、まだコンディショナーをしていないため、髪の毛がバサバサだ。
つけるために三人は先にお風呂に行けと命令したのだが、そのコンディショナーもつけてあげたいと三人が本気を出して言ってきたため、五号を冷えないよう桶に張ったお湯につけてから三人にコンディショナーを渡してやらせてやり、コンディショナーを流してから体を洗った後の場所を水で洗い流し、お風呂に向かって五号を手に持ちみんなして歩いて行った。
この旅館の風呂はいろいろな種類のお風呂があるらしく、外には露天風呂が複数種あるらしい。
適当に源泉かけ流しに浸かった後に、露天風呂に行く、その際に卵たちが騒ぐかと思ったが、思いのほか静かだった。
露天風呂も貸し切りで、家族と共に外のお風呂に入る、これほどの贅沢があるのだろうかと感じながら、ぼんやりと周りの風景を眺める。
山の斜面にある旅館といった感じなためか、空が広く眺めがいい、木々のざわめきが聞こえてきたり、屋根はあるがその上を飛ぶトンビの声がピーヒョロロロ……と聞こえてきてなんとも風流だ、木でできた風呂釜は当然ながら木の匂いがして、種類は疎いためわからないが、湯船自体はとても広く、大の字になれるくらいには気持ちがいい。
実際にはそんなことはせず、頭をヘリに乗せたまま体育座りをし、風呂につかりながら時折五号の桶の中のお湯を変えたりしていると、テラとカゲリが手でつくる水鉄砲で遊び始めた。
最初に飛び道具が得意なテラが仕掛けたらしい、狙われたカゲリがそれを顔面にもろにくらい、カゲリは防戦に徹しながらもなんとか反撃をしようと、お湯を相手にバシャバシャかけている、しかし、それを軽い身のこなしでことごとくよけたテラが的確にカゲリの顔面に水鉄砲を食らわせ続けたことで、カゲリがいい加減切れそうだ。
二人がそのように騒いでいるのは迷惑行為ではあるが、周りには人が自分たち以外存在していない、その上力が弱いらしい人型なため、ワンダーエッグ特有の威力は弱まっているし、お互いが本気ではないから楽しそうにしている。
テリクスはというと、私の隣でタオルをお湯につけた後、何度も空気を閉じ込めて膨らませるクラゲを作って遊んでいた。
そんなやつらを見ながら、ふとこの辺りの観光のことを考える。
事前に調べた地図や、旅館においてあった地図などを見たとしても、山間の村が最寄りということもあり、ほぼ何もない寒村しかないかと思えば、古くからこの地にはお忍びで湯治にやってくる客が多いらしく、それなりに栄えているらしい。
その上ここは組織の息がかかっているということもあってか、基本的に電波が一切通じずカーナビでさえ狂うためそんなにやってこられる人はいないが、それでもごくまれに、道に迷った組織以外の人も泊っていくらしい。
この場所に訪れることができた奇縁な客人は、この場所を一体全体どう思うのやら。
おおかたのこの場所に訪れることができる客人は、ほぼ全員が何らかの理由で組織や集まりに関係するものだけで構成されており、各自それぞれの身内になんらかの研究をしている研究者がいるのが確定しているため、ここにいるものの身内には、どんなことを研究している人がいるのかが気になりはするが、ここにいる間に話すこともないだろう。
トモミもほかの卵たちも、皆がしがらみなしで楽しんでいるし、自分も仕事を忘れて楽しませてもらおう。
そんなことを考えていたら、タオルでできたクラゲで遊ぶのに飽きたのか、テリクスがこちらをじっと見てきたので、そんなテリクスの頭をなでてやると気持ちよさそうに笑みを浮かべる。
すると五号が桶から体を乗り出し、私の髪の毛を引っ張ってきた。気になる強さで引っ張られるのでそちらのほうを見ると、真っ赤な体でのぼせているらしい五号がいたので桶から出してやる、すると、その場で大の字になって涼み始めた、どうやら桶のお湯が熱かったらしい。
全長8cm程度の人形大の大きさのそれに、そんななんとも人間らしい姿を見て、何とも言えないニヤニヤが込み上げてきたから、それを隠すように顔を湯船で二回洗ってから、この温泉にあるらしいサウナに入るために、風呂から上がる。
その際に他の三人も上がろうとしたので、一人五号につくようにと命じたら、また喧嘩が始まりそうな険悪なムードになったため、五号も連れてサウナの前へと行くことにした。
サウナに入る前に、中を確認しようと近くを見渡すと、扉と壁に窓があったから中が見えたのだが、その中にも誰もおらず、三段の段々になった階段に座る形式のサウナだった。
私が体をふき中に入ろうとしたら、ほかの四人も後ろをついて入ろうとしてきたが、のぼせているだろう五号を水風呂近くの棚に残してサウナに入ろうとしたのだが、やはり五号が本気で嫌がり、自分も入ると駄々をこねてきたので、こっそりと桶に水をため、その中に五号が入れるようにしてからサウナに入った。
サウナの中というものは、ご存じの通り灼熱地獄だ。全員で我慢大会をしたのだが、誰も出入りしていなかったサウナというものはとんでもない暑さで、一番初めにギブアップしたのはやはり五号だ。
持ってきた桶の中に飛び込んで熱いと涼しいを堪能していたのが羨ましく映り、そして次にギブアップしたのは私で、大体十分が限界だった。
五号が入った桶を回収してからサウナ室から出て、掛け湯で汗を流したあとに、サウナ近くにあった水風呂に浸かる、火照った体が急速に冷やされるのを感じた後に、外にある椅子に急いだ。
五号と共に外で涼んでいるときに、次にギブアップしてやってきたのはカゲリだ。
ちゃんと汗を流して水風呂に浸かったかを聞いたら、カゲリがうなずいていたので、確認のために肌を触ってみると、まったくべたついていない上に、水に入ったように少し冷えていた。
ともに外の椅子で涼んでいたが、一向にあと二人がやってこない、それから大体十五分ほどしてから心配になり見に行ったら、二人が競い合うようにギラギラとした目でお互いを見ていた。
「あんたらなぁ~、さっさと出てこい!熱でいかれるぞ!」
窓から確認できたそれに中に入って二体に向かっていったが、ギラギラとした目でテリクスもテラもこちらを見てきて、自分が上だと示すためにも意地でも出たくないらしい、どうやら二人の闘争心に火がついてしまい、両者ともに引き返せなくなったらしかった。
仕方ないから私もまたサウナに入り、しばらくしてから出て水風呂に入るタイミングで二人の腕を掴んで連れ出す。
二人はまだいられると言っていたが、確実にオーバーヒートを起こしていて、掴んだところには明らかに熱がこもっていたし、言動にもいささか怪しいところが見られた。
掛け湯を二人にたたきつける様にぶっかけて、水風呂にゆっくりと突っ込む、その際に私も一緒に入ったからか、それとも冷たさゆえか、二人はお互いを見あって笑いあっていた。
そんな二人を外の椅子へと連行し、先に休んでいた五号とカゲリと合流する、二人は私たちがサウナに入っている間に寒くなったのか、露天風呂にまた浸かっていた。
サウナに入っていた二人は椅子に座った後、そのまますぐ眠そうな顔になり、その状態で寝てしまうのでは?と心配になるほど頭がぐらぐらし始めたが、私も二人の間にある椅子に寝転がり、両側を見て意識は大丈夫そうかを確認後、今年のことを色々思い出す形で考えこんだ。
みんなしてリラックスしているうちにかなり時間がたっていたらしい、いつの間にやら数時間立っていた入浴時間により頭がすっきりしたことだし、全員の体を拭いてから脱衣所にて、私は旅館で用意されている浴衣を着てから髪の毛を乾かそうとする。
用意されたものを使用する際に、三人にはこの旅館で指定されている浴衣姿に着ているものを変更してもらい、五号には人形用のもこもこ猫耳パーカーと、その下に人形用のこの旅館専用浴衣を着てもらった。
全員和服を着てから脱衣所を見渡して、ドライヤーコーナーを探したところ、脱衣所とは地続きではあるがブースは分かれているらしく、ドライヤーコーナーと書かれたところには、部屋の壁一面に鏡がぐるりとあり、入り口のところは鏡ではなく壁になっているのでその部分は別だが、ほぼ360度から自分の姿が見られるよう周りをとり囲んでいる上に、入り口から部屋にあるものを簡単にみてみると、椅子と水道、壁から生えている机にはドライヤーがあるコンセント、たぶん化粧水や乳液といったものなどが確認された。
髪を乾かそうとドライヤーを手に取ったら、ほかにもドライヤーはあるにもかかわらず、三人の列ができていたので、三体のうち自分でタオルドライをおわらせた順で乾かしていくことにする。
三人がタオルドライをしているときにどうやら、別の旅館の客が来たらしい、脱衣所の方の扉ががらりと鳴る。
特に気にすることもないかとそちらを見ないでいたら、現在乾かし中のテラが袖を引っ張り見るように促してきたので、入ってきた人を鏡越しに見てみたら、見知らぬ人ではあったが、なんとなく気になる人ではあった。
耳にピアスを複数空けた、全体を見ると確かにおしゃれだが、随分と近寄りがたい人で、顔からおおよそでわかる年齢は大体20代から30代の間ほど、それもかなり派手なメイクをコテコテにしているせいで、年齢がよくわからなくなっている。
そして、服装は今どきの若者が着ていそうな服ではある、系統はサブカルとでもいうのだろうか、髪の毛を白と水色を混ぜたような色に染めているため、何人だかもわからない。
「あの人がどうかしたの?」
そうテラに問うてみたら、どうも奇妙な気配を感じ取ったらしい、雰囲気から厄介ごとに巻き込んできそうだと目線で説明されたが、私たちは今、更衣室の近くにあるとはいえドライヤールームにいるため、そちらを気にしなければ巻き込まれないだろう。
そんなことを考えつつも、鏡で更衣室のほうを確認しながらテラの髪を乾かし終えると、その女性はこちらが見ているのを一切気にせず全ての服を脱ぎ、浴室へと消えていった。
ふと見えた右肩から腰の左側までの大きな背中のきり傷が、明らかに堅気じゃないことを物語っており、トモミのこともあるので、この旅館では警戒をしたほうがいいという結論に至った。
隣を確認しつつほか二人のことも乾かし終え、部屋へと戻ろうと廊下を進んでいると、道の向こうからトモミが歩いてくるのが見え、近づいてくるとリオン、アインス、フィーアなんかも連れているようだ。
しかし、一緒に部屋を出て行ったはずの三号や二号、シンやイルル以外にも、複数のものがいなくなっており、別れた時よりも三分の一に減ったそれを見て、なんとなく索敵系の奴らが自由行動をしているんだなと察したから、何も言わないでトモミに向かって手をひらひらと振った。
「トモミ、お帰り。どうだった?」
「ハラさん!聞いて聞いて!色々とすごいものがたくさんあって感動したんですよ!」
興奮気味なトモミをリオンがニコニコと見ている、トモミの懐にいたアリスも心なしか目が輝いて興奮しているように見えた。
リオンも私に何があったかを報告してきたが、あまりにも抽象的過ぎてよくわからない。
とりあえずわかったことは、旅館を外見からわかっていたことだが、この旅館は縦よりも横に広く、大体四階建てであり、私たちの部屋は三階にある。
それ以外の四階、二階、一階には様々な部屋があるらしい、四階には展望台とかくつろぎスペースが、二階には一階から突き抜ける吹き抜けがあり、一階の中央には水が流れているところやその中を飛び石や橋になっていて、中央の島に渡れるようになっている、らしい。
それ以外のところはよくわからなかった。
実際に見て回らないことにはわからないため、それらは後で見ることにして、トモミたちに対して温泉に行くよう促すと、トモミはそれに頷き、お風呂セットを取りにリオンらと共に部屋へ戻ることにした。
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「それでね?アインスが階段を駆け上ったそこには展望台があってね!」
「なるほどな、あとで一緒に行ってみようか。」
「はい!」
興奮によってなのか、普段の敬語がなくなっているトモミとそんな会話をしつつ、部屋に戻ると、そこにはイルルとフュンフ、ゼクスに二号がいた。
「お前ら帰っていたのか、おかえり、何か面白いものはあったかい?」
こたつに入った一人と三匹は嬉しそうにこの辺りのことを報告してきた、どうやらいい感じの土産物屋があったらしいが、二号とゼクスはドラゴン型のため、この宿にいる男の子からモテモテにモテたらしい、ある子からは商品だと勘違いされたため、イルルが守ったそうだ。
その光景が如実にイメージできたことに苦笑いが出てから、明日は一緒に辺りを散策する約束をしたのだった。
室内にある時計を見れば、ご飯を食べる時間まであと一時間、そろそろ食事をする場所に向かうために、ラミネートされた冊子の中に書かれた、タイムテーブルの書いてあるところや地図にある、一階の松の間へと向かう。
そのときに歩き回っていた、ほかの卵達と合流できたので、大所帯で松の間へと向かった。
松の間と書かれた引き戸は閉まっており、開けて中に入るとどうやら、この空間はずいぶんな大広間らしく、室内にはずらっと座卓と座布団が並べられている場所と、各団体に対して三角錐の名札立てがある場所がある。
番号札をチェックインの際にフロントで渡されたことから、私たちの席が決まっていることがわかり、団体客用の座席やずらっと座布団と座卓があるところにも、番号札を持ったもの達がその番号に沿って座りに行っているのが見える。
その人の光景を見ていたことから察せられたことだが、たぶんずらっと並べられている場所は個人客とか、少人数のもののための相席なのだろうということがわかる。
団体客の座卓には代表者の名前が書かれており、団体客として認められる人数の最小単位は、多分4人からなのだろうことがわかった。
あるいは、事前に多めにお金を払ったものが団体客用の席に通されるのだろうか、団体客用に見える場所に一人という席もあるため、今の状態では把握は難しそうだ。
辺りを見渡しながら、私が受け取っていた番号を頼りに決められた席を探していると、テリクスが番号の書かれた場所を見つけたので、その場所まで行くと、事前に卵の個数を伝えてあったからなのか、入口とは正反対に位置する一番奥の壁際にその座席はあり、番号が座卓の隅に書かれていて、座卓の中央に立てられた名札立てには、『ハラ様』とパソコンで使える行書体で書かれていた。
「ハラさん!ここですね!」
「そうみたいだね。」
トモミが手を振り回しそうになるのを見ながら、私は取り囲むように座れる座卓のはしで、後ろに壁がある場所、ほかの人がいる手前から二番目の座布団に座る、向かいにはトモミが座り、両脇はカゲリとテリクスが、手元には五号が座る、トモミの両脇にはリオンとテラが、そして手元にはトモミのドリームエッグのアリスが陣取り、上座であるお誕生日席にシン、下座である反対側にイルルが座った。
ほかの卵達は机の上に乗っていたり、座布団の上に座っているが、基本的に卵は下にいさせている。
鳥やドラゴンは座卓の上、オオカミや猫、ウサギといったものは座卓の下、その上大きさによってそれは変わっており、泊まった宿の食事が椅子に座って食べる形式でなくてよかったと、なんとなく思った。
この宿には研究者の身内や協力者といった、なんらかの関係者であれば泊まれるという法則があるため、私たちのほかにも家族連れが来ているらしく、大広間にはぽつぽつと団体様が固まって座っているのが見える。
徐々に人やその他のものが増えてきている辺りを見渡していると、つい先ほど脱衣所で見た女性が入口から入ってくるのが見え、ほかにも四人の人を連れているのが見えた。
髪の色からその人だとわかったその顔は、メイクを落としたあとだとその女性だと気づかないくらいには変容しており、元の顔は眉が薄く、たれ目で、全体的には比較的味が薄い顔立ちなのだが、バッチバチにピアスがあるせいで少し柄の悪そうな女性らしいことに気がついた。
その女性が連れているほかの四人もどことなく柄が悪く、近づかないほうがよさそうな雰囲気だったが、その女性がこちらを見た後になにやら後ろにいた人たちに声をかけ、全員を連れてこちらに来た。
「は、はらさん……こっちにきましたよ……?」
そういわれても、なぜこちらに来たのかがわからない。
そう思いながらふとそのもの達が来ようとしているだろう隣を見てみると、そこにはエンドウさまと書かれた名札立てがあり、五人分の座布団が敷かれた座卓があった。
座卓にある座布団の数と、五人でこちらに来ていることから察するに、この柄の悪い集団がお隣さんだということに気がつく。
「あぁ、多分お隣さんだね。」
五人組から目線をそらしつつ答えると、いつの間にかに近くまで来ていた五人組の一人、お隣に座るであろうその女性がこちらに向かって話しかけてきた。
「お隣失礼しまーす。」
風呂場で見たその人がそれだけを言うと、さっさと座布団に座り、座ろうとしているほかの四人と話始める。
「お気になさらずー。」
そちらに一応目を向けながらそれだけを言い、すぐにこちらも目線をそらす。
しかし私の使役個体としてはそうはいかないらしく、明らかに警戒した様子で団体のほうを見ていた。
「あん?うちらが気になるのかい?」
暫くしてそう言ってきたのはその女性が連れてきた中の一人で、こちらもすっぴんなのか眉が細い、だがチラチラ見える爪の先に、緑を下地に白の十字架のような、そこに更にサイバー系を落とし込んだような、不思議なネイルをしているのが見える。
髪の色も紫と白のメッシュが入っているのがわかるので、なんらかのパンクロックファッションに普段は身を包んでいるんだろうな、という風貌の女性だった。
髪の毛はウルフヘヤーとでもいうのだろうか、そんな髪型で紫下地に白メッシュ、目は二重のような一重、鼻は小さく、口は大きくもないような、そんな風貌だ。
「そのようだね。すまないね、うちのものが粗相を働いて。」
使役個体が警戒をしているその様を、苦笑いを浮かべながら謝罪すると、その女性は少し考えた後に一言。
「いいよ、うちらもあんたらのような人の隣に座れたのうれしいし。」
というような、なんとでも考えられるような事を言われた。
「な、なぜゆえ?」
私が動揺を返すと、その女性は二号のことを指さす。
「ほら、そこにいるドラゴンの人形、うち好みなんだよ。
ほかにもいる動物たちみんなが、うちらの好みにすごい合いそうな子達だから、少し触らせてくれたら何の問題もないし。」
まるで研究対象の確認をしたがる人、みたいな様子を見せるその人に、私は警戒を強める。
確かにこの宿には、組織の関係者以外のものはいないとは思うが、この言葉の裏がなにかあるのではないだろうか、そう感じてしまい、チラリとうちの子たちを見ると、二号と四号、ゼクスが明らかに警戒していた。
「これらは大切なものなので、触らせるわけにはいかないかな。
一品ものだしね。」
相手が諦めるよう、きっぱりとそういうが、ほかの四人の人たちもこちらを見てくる。
「いいじゃない。
旅は道連れ世は情け、この世は全て一期一会、この場で会ったのも何かの縁、少しくらい触らせてくれたってさ。」
リズミカルな調子でそんなことをいう相手に対し、私は断固とした態度を取る。
「そうはいかないね、なにせ商売道具なもので。」
毅然として言うと、相手は諦めたかのようにため息を吐き、こちらに興味を無くしたかのように向こうのほうを向いて話し始める、それにほっとしてみんなに向き直ると、気がつきゃ一体居ない。
驚いて首を回して辺りを見るが、どこにもいないのでまたお隣さんのほうを見ると、ドライが元気よく機嫌良くお隣さんに近づいていた。
黒兎の見た目をしているドライは、基本的なところをパンクファッションでかなり沢山記憶させ、様々な形態を覚えこませているため、五人が持つ柄の悪さになにか波長が合ったのだろう、ぴょんぴょんと足取り軽く近くに寄って行くのが見えた。
「こら!ドライ!」
自分の席を立って、ドライが既にお隣さんの近くまで来ているところを捕まえようとするが、トゥルトゥルの毛並みのせいでうまく捕まえられない。
そんな中お隣さんはドライに気が付き、十分近くまで来たそのウサギの毛並みをなで始める。
「うっわ!チュルチュルツヤツヤやんこの子!おまけふわっふわ!人懐っこいし、かっわいいなぁ~!」
お隣さんの中の一人がドライのことを、そんなことを甘い声で言いながら数回なでている。
眼鏡の形はアンダーリムのフォックス型で、リムが銀色なのをかけていて、ピアスが耳にそれぞれ三つずつ付いているように見えるが、それはイヤーカフのようで、実際には両耳たぶに一つずつついているだけのようだ。
髪の色は青で、両サイドの毛が白くなっており、耳がわかるようになのか、後ろの毛はショートカットである。
男性が、膝の上にとても優しくドライを乗せ、小動物をなでる強さを心得ている手つきでなで続けている。
「すみません、うちのウサギがそちらのほうに行ってしまって……。」
相手にペコペコ謝りながら回収しようとするが、相手はこちらに愛想の良い笑顔を向けてくる。
「いいんですよ!ウサギ好きですし!」
相手の笑顔は思いのほか子供のようで、ほかにも一緒にいた人たちがドライのことをなでるために机を回り込んでくるのに対し、内心焦る、この子は一見するとウサギだが、真の姿はドリームエッグなのだ。
危険性はないだろうが、この状況でいじめられると、暴走する可能性がある。
まぁ、本人はどんな思いで行ったのかは知らないが、ワンダーエッグにもドリームエッグにも心が宿るということがわかってから、情操教育には力を入れていたため、少しのことでは暴走しないとは思うが。
そんな心配をよそに、五人に取り囲まれてモテモテになるドライ、他人の膝の上で歯ぎしりなんかして、かなりくつろいでいる。
「人懐っこいなぁ~、かわいいなぁ~。この子、名前は?」
愛でていたと思ったら、突然こちらを向いて聞いてきたので、驚きつつも思わず答える。
「ドライです。」
私が答えると、男性は頷きながらそれを聞き取ったようだ、手を動かしたまま顔が溶けている。
「ドライちゃんかぁ~、いいなぁ~。」
男性の顔がドライに向き、明らかにウサギが大好きだとでも言いたげなその様子に、悪い人ではないのだろうかと、少し思ってしまう。
そんななか、見ていただけのほかの人たちもドライのリラックス用を見て、自分が触っても大丈夫だろうと感じたのだろう、触れ合いたいと手を伸ばした。
「うちにもなでさせて!」「あっずるーい!私も私も!」
そんな感じな言葉と共に、ドライは柄の悪い人たちにもみくちゃにされ始めた。
「まったく、みんな子供なんだから。」
「すみません、俺らの教育が行き届いていなくて。」
三人が触っているのを、ほかにいた二人が呆れたように見たあとに謝ってきたから、私もため息を押し殺して対応する。
「いえ、一応は大丈夫ですが……あんまり構いすぎると怒る可能性があるので、ほどほどのところで切り上げたほうがいいかなぁ~とは、思いますね。」
私の困った様子に二人はあはは……と、乾いた笑いをあげた後に、頭を軽く下げてきた。
「すまないね、うちの馬鹿どもが。
こんなことになってしまったし、一応自己紹介をしようか。俺の名前は戸祭シオン、こっちにいるのが鮫島ワカ。」
トマツリが会釈をして、サメジマが深々とお辞儀をするが、かなり名乗り慣れしていそうな声色で述べられた自己紹介は、相手の見た目と共に強く印象に残りそうだなと感じた。
トマツリはカラーコンタクトで右が白、左が赤の服装は暫定サブカル風なものを着ているのであろうという男性、顔はどちらかと言えば濃いが、ほかのものと違って完全に奇抜というわけでもなく、髪色は赤みがかった黒、筋肉質なくせほっそりとしているのが印象的だ。
サメジマはセミロングの女性で、他の人たちよりもかなり素朴な印象を受ける。
一番美人だし、髪の毛も染めているようには見えない、この五人組の中では一番の常識人のように見えた。
「よろしくね。」
サメジマが顔を上げてそう言ってくるから、仕方なしにこちらも自己紹介をする。
「私の名前は原カオリ、うちのものが団らんのじゃまをして、すみませんでした。」
私も相手に向かって会釈程度の頭を下げるのに、相手は困った顔をした。
「実は俺たちバンドを組んでまして……普段から一般人に敬遠されていたりすんので、こういうのがうれしいんです。」
トマツリが照れたように頬を掻くのに対し、サメジマも苦笑いをあげる。
「そうなのですか。」
相手の様子はそうでも、まだ警戒しているであろううちの子たちは今頃、どんな顔をしているのだろうかと思い、後ろを振り返ろうとしたら、放送でそろそろご飯が運ばれてくることがわかった。
その放送で我に返り、まわりを見渡したらいつの間にやら、この大広間にあるほぼ全ての違う席、全てに人が座っているのが見えた。
自分が立っていたことで注目されているのではと思い、すぐにその場で姿勢を低くしたが、立って辺りを見回した際に見えた範囲内には、子連れであろう親の姿や、複数の動物連れのものがちらほら見受けられたので、たしかに私たちは大所帯ではあるが、大きさ的には気にならない感じだろう。
そして見えた範囲内においては、この会場には顔見知りはいない感じなのもわかった。
交流しているものもちらほらいるが、ここに来た研究者は基本的に顔を合わせないようにしているのか、研究者的な雰囲気を醸し出している人は、この場においてほかの人との関わりを持っていなさそうに見える。
もしかしたら交流している人が研究者なのか、それともただの身内や関係者なのか、はたまたみんな隠しているだけで、様々に交流しているだけなのか……、それは全くわからない。
放送で聞こえてきた限りご飯が運ばれてくるということで、イヤーカフ眼鏡の人からドライのことを回収する、それに多少不満の声が上がったが、トマツリがおさえてくれたようで、すんなりと回収できた。
常識人そうな二人と共に、お互いに向かって軽く会釈をしてから席に戻ると、トモミが声を潜めて私に話しかけてくる。
「彼ら、どんな団体だったんですか?」
トモミは明らかに警戒心を高めており、相手を見る目が完全に、大人になった反社会的な人物を見る目であり、こちらを多分に心配している目をしていた。
「あぁ、彼らはバンドマンらしいよ。
あんまり突っ込んだことは聞かなかったんだけれども、謝ってきた男性は戸祭シオン、女性は鮫島ワカというらしい。」
「とまつりシオン、さめじまワカ……聞いたことないですね。」
私のバンドマン発言に、記憶を辿ろうとしているのか目が泳いだトモミだが、顎の下に手を添えて考え込む形になる。
「わたしもだ。
こう言ってはなんだが、あまりメジャーじゃないグループなのかもな。」
腕組みをして返したあとは、私たちの意識も切り替わり、どのようなご飯にありつけるかというような内容のそんな会話をしていると、旅館のスタッフが複数人で夕食を運んできてくれた。
座卓の上に乗せられたお盆には、小鉢も大皿もたくさんあり、メインとなるものはかなり豪華だ。
「すごい!カメラ、スマホ!」
興奮したトモミがスマホを持ち出す、パシャパシャと写真を撮っているのを見ながらしばし待ての姿勢をとる、その間ワンダーエッグとドリームエッグは同じように、一応ではあるがお行儀よく待っていた。
トモミがほくほくした顔で写真を撮っている間にちらりと目だけで横を見ると、目の前と同じような風景が広がっていた。
隣の人たちも全員で写真を撮ってから、電波を探すような動きをしばらくしてした後、諦めたかのようにスマホを机の上に置き、料理をつつき始める。
「ハラさん!写真撮り終わりました!」
トモミの声で意識が戻り、目線を前に向けるとトモミが笑顔で料理を凝視していた。
「わかった、それじゃ食べようか。」
「はい!」
料理からこちらに顔を向けてニコニコと笑うトモに、ワンダーエッグやドリームエッグと共に手を合わせる、動物型のものたちは概念で手をあわせていた。
「「いただきます。」」
トモミと共にいただきますを言葉に出すと、使役しているものがそれにならって同じ動作をし、共に料理に対して手を付け始める。
山菜の天ぷらや川魚だと思われる煮つけ、汁物に何やら豪勢な料理たち、組織の力とはいえ、組織はこの宿に一体何円をこの宿に払ったんだかつぎこんだのかは知らないし、それとも組織のものしか客がいないとかのご優待価格なのだろうか。
事前にこちらからもお金は払ったが、二人とワンダーエッグドリームエッグ合わせて二万円だった。
こんないい宿でご飯も豪勢、それで全部合わせて二万円は破格すぎるだろう、おまけにこの大所帯だ、一言で言っても裏があるとしか思えない。
たぶん、なんらかの監視付きなのだろうというのは、分かるのだがなぁ。
今もなにかの実験を施されているのだろうな、それについては少し嫌な気分だが、事前情報も無いし、気にしなければただの温泉旅行だ。
気にせずに数日間を楽しもうじゃないか。
「ハラさん!この煮つけおいしいです!」
「天ぷらもいけるねぇ。」
私とトモミがテンション高く言うのに対して、人型の子たちはみなお箸の使い方に苦労しているようだ。
普段とは違う子供用箸じゃないせいでで、持ち方がいびつだし、なんだったら突き刺して使っている。
「ほら、大人用のお箸はこうやって、使うんだよ?」
トモミが手近なところで隣に座っているリオンに対して、お箸の使い方を教えているその光景を見ながら、手元にいる五号が食べやすいよう小さく箸で切った煮つけを小皿にのっけてあげると、五号はこちらを見てきたあとに手掴みで食べ始めた。
隣にいるカゲリがその光景をうらやましそうな顔で見てくるが、五号は手のひらサイズの人型だ。お箸がそもそもないのだ、仕方がない。
そんな感じで食べ進めている中、動物型の子たちが器に盛られたご飯にがっついている、見た感じ犬猫用のかわいく盛り付けられたご飯みたいな、普通の人間が食べてもおかしくないような感じのご飯が、ワンプレートで盛られている。
そんなご飯をそれぞれがおいしそうにがっついて食べていた。
「おぉ……!そのドラゴン、食事するんだな。」
いきなり後ろから声がかかり、なんとなく振り向くと、つい先ほど話しかけてきたウルフヘヤーの女性が、こちらを見ながら水のコップを持っている。
「まぁ、そうですね。」
口の中にあるものを飲み下してから答えると、相手は世間話をするくらいの気軽さで話しかけてくる。
「自己紹介、ほかの二人はしたよね。
私は友清サヤ、泊っている間だけだけど、よろしくね。」
言葉は棒読みだが、相手の反応は二号にむけられており、興味津々だ。
ほかにも四号や、現状小さく中型犬程にまでなっているゼクスにも、好奇心からか熱のような目線を向けているので、その反応から三体と友好的に接したいのだろうかと判断できるため、こちらからも軽く会釈を返してやるが、正直なぜいきなり自己紹介してきたのかはわからない。
「はぁ、よろしく。」
私がそれだけを言うと、トモスミは満足したのか、水をもらいにどこかへと去って行く、どうやら水がなくなったから、貰いに行くために立ったらしい。
私が食事に体の向きを戻すと、正面に座っているトモミが緊張した面持ちでこちらを見ていた。
「隣の人たち、今後も私たちに絡んでくると思いますか?」
相手のことを危険人物だと言いたげな顔をして、声を潜めて聞いてくるのに向かって、私は安心させるように笑顔を向ける。
「怖かったら反応しなくていいからね、私が対応するから。」
私は笑顔に大いに説得の色をにじませると、それを感じ取ったらしいトモミが緊張した顔を軽くし、不安ではあるが私のことを信じることにはしたようだ。
「は、はい……。」
トモミの顔には『この人危ないことするから、私が見張っておかないと。』と言いたげな色をしているので、自分の普段の行いを思い出し困った笑いが出るが、彼ら彼女らはたぶん悪い人ではないだろう。
だが、見た目が見た目だ、子供にはかなり刺激が強いのだろう、相手の見た目がアニメに出てくるヴィランそのもの過ぎるからな。そう失礼なことを思いながら、がやがやと騒がしい大広間で出されたご飯を、全て平らげたのだった。
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「たくさん食べましたね!おいしかったです!」
「それはよかった、ほかのワンダーエッグとドリームエッグも満足したようだね。」
トモミの明るい顔に対してそう言いながら、自分たちが食べきったあとの空いたうつわをを首を回して眺める。
本当に色々と目も楽しませてくれるし、味覚も楽しませてくれるし、なにより音も良くて非常においしかった、かつ、量も結構あったので、普段はあまり食べない子達も元気よく食事を平らげたことで、すでに眠そうにしており、ふせの状態になって休んでいるくらいだ。
「ちょっといいかな。」
私たちが食後の休息をしていると、また後ろからいきなり声がかかったので振り返ると、そこにはカメラマン風の見知らぬ男性が立っていた。
「はい?」
私が思わず疑問を持ちながら返すと、相手はこちらの様子を肯定的に取ったらしく、その後も続けてくる。
「ここの旅館を取材している者なんだけれど、話を聞かせてもらってもいいかな?」
デジカメを持った状態で聞いてくる、何とも怪しいその男性は、ほかの人たちの同じような浴衣姿ではあるものの、傍らに取材用と思われるバッグを持っている、いかにもなんらかの取材班という出で立ちの男である。
いかにも『相手は怪しいものだろう』ということを考えていたのが、顔に出ていたのだろうか、男は名刺を取り出し差し出してきた。
「私ワンダーパラダイス出版、旅行部門の東谷コウジといいます、私の所属している出版社が出している、私もコラムを掲載している雑誌があるのですが、その雑誌が『日々の旅行と未知の生活への意識的充実、充足を』を基本理念として掲げておりまして。
偶然お見かけした大所帯で宿泊しているであろうあなた様が、どうしても気になってしまいまして、お声をかけさせていただきました。」
それに一言「はぁ……。」とだけ答えてから名刺を受け取り、試しにしっかりと見てみると、社名や役職名、社章、名前、連絡先などが表面には書かれていて、裏面には会社のモットーのようなものが印刷されているのが見受けられた。
「ありがとうございます、今手元に名刺がないのでお返しできないのが申し訳ないですね。」
よくわからないながらも、そうやって本当のことを交えつつ、思ってもいないことを伝えれば、相手は気持ちの良い反応で返してくる。
「いえ、気にしないでください。」
相手はとても人懐っこい印象と、裏表がありそうな印象の両方を兼ね備えた相手なので、私としても緊張してしまうが、相手はすぐにどのような取材をしたいのかを、簡単に聞かされる。
ざっくりというと、どうやらこの男は組織の人らしいことがわかった。
そして、それらが全て暗号によって交わされた秘密の会話で、内容としては、組織のものからの命令で、うちの子たちの情報を取ってくるようにと言われていることも、記号によって伝えられた。
秘匿情報は明かさなくていいけれども、なるだけどのような飼育をしているのかを教えてくれたら、今回の宿代から更に豪華な感じにさせてくれるらしい。
だが、これらは全て組織内の中でも、特定の人にしかわからない言葉で話し合ったことなので、実際には全く違う内容で聞こえただろう。
たぶん、トモミには好きなゲームのキャラクターや、それについての聖地巡礼について、それ以外にもこの土地の伝承を知っているか、今日見た夢の話など、一貫性があるようで無い話を事細かく聞かれたように見えているだろう事は、なんとなくでもわかることだ。
いろいろな質問の果て、相手が組織の人だということが確定したことで、取材されることを了承する。
明日の午前中にまた取材の申し込みをさせてもらうということで、今のところは解散となった。
なんとなく居づらくなったので、みんなして部屋に戻り、戻ってからトモミに対して、まだいつもの洋服ということもあるし、温泉にもまだ入っていないだろうというと、わかりつつも聞くと、トモミが確かにそうだと頷いたので、ほかのまだ入っていないやつらと一緒に、この宿にある風呂に入るよう、促す。
すると意気揚々と温泉に行く用意をしてから、私に向かって自分と一緒に行く予定の子達のことを変身させるよう、お願いしてきた。
確かに見た目男の子である個体が、変身もせずに女湯になんか入ったら、それこそ形式上大問題だ。
ということで私は、まだお風呂に入っていない人型のやつらを呼び寄せ、女性体に変身させてから、温泉に入った後はここの旅館指定の浴衣になるように命令をして、トモミ含めて送り出した。
トモミがリオン、シン、イルルを連れて温泉に行ったのを見送った後に、残ったもの達と共に部屋で暫くゆっくりとすることにした。
持ってきたスマホで部屋の中全体を写真に収めてから、夜になり暗い世界を晒している窓の外をボーッとしながらも、目の中に入る光に向かって意識を向ける、この場所は空気がきれいなうえに、遠くに町灯りがほのかに光っているその風景は、とてもクリアに光景が見える上、年末を伝えるような風情があり、月明かりの下に見える山々や、近くに見える川なんかも照らしていて、非常にきれいだ。
部屋でゆっくりと過ごすため、持ってきていた推理小説を鞄から取り出し、窓辺の謎空間と通称呼ばれる広縁に置かれた椅子に座って、初めのページから順に読み始める。
こんなにゆっくりとしたのは久々だと、心の中でふと感じるが、いつもは完全に一日中忙しい、在宅ワークの主婦をやっているので、こうやって本をゆっくりと読むのは、一体いつ以来だろうか。
確かに通常時の普段から、トモミにはかなり手伝ってもらっていたり、今までのこと全てにおいて、忙しいという判断において『当社比』という言葉がつくのだが、わたしは元から器用な方ではないので、そこは意識しないことにしよう。
今わたしが読んでいる本は、たまたま書店に行ったときに目についた推理小説なのだが、しばらく読み進めた限りでは、話はまだ途中のところだが、問題が起こった場所の設定としては、ここまで来るときに使った道の駅のような場所が舞台で、時間制限があるタイプの密室ミステリーだ。
道の駅で密室とは?となるかもしれないが、その道の駅へつながる道全てが封鎖され、現在主人公達は、それぞれが道の駅内にある様々なブースへと散らばり、犯人と思われるものから定期的に送られてくる、『ミッション』と呼ばれるゲームに強制参加させられている。
という内容のストーリーなのだ。
犯人を予想するのは苦手だが、『多分こいつが犯人なんだろうな』『これらのミッションに意味はあるのか?』なんてことを思いながら読み進めていたら、膝の上に三号が、肩の上にはフュンフが乗ってきた。
三号は見た目成猫で白猫の猫又、フュンフは黄色とピンクのパステルカラーで、大きさがカラスくらいの鳥だ。
それぞれがわたしの上で思い思いにくつろいでおり、三号は膝の上で丸くなり、フュンフは首をすぼめたまま外を眺めている。
本から顔を上げてほかの子達を見てみると、それぞれがそれぞれの行動をしており、すでに敷かれた布団に潜ったりするもの、隣の部屋に展開されているこたつの中に入っていたりするもの、ほかにも変な形でくつろいでいるものと、本当に思い思いのことをしている。
そのなかで、こたつの上にあったお菓子がすべて無くなっていることがふと気になり、それに加えて隣の部屋もなんとなく気になったので、本を閉じて見に行ってみると、隣の部屋にもあっただろうお菓子が、全て消えていた。その代わりに畳の上に散乱したお菓子の空き袋、この場にいる誰かが食べたらしいことはわかるが、簡単には誰がやったのかがかわからなくて、思わず吹き出してしまう。
あぁ、平和だなぁ。
そんなことを感じ、また考える。
この一年は色々なことがあったと思う、特に後期の方。ほかの組織と争ったり、様々な子供に卵を渡し、そのワンダーエッグとドリームエッグの様子を確かめるために、事前に情報を集めるのに奔走したり、渡したあとも色々とあって……思い出すと本当に、色々とあった。
おまけに、というのは失礼だろうが、トモミのことを家に引き入れたのも今年のことだ。
いじめを受けていた上に家から追い出される形となったトモミのことを、私の家に迎え入れることとなったのは、ある種の予定調和ではあったが、あのときのいきなりさは青天の霹靂というより、ほかはなかったなぁ……と、しみじみ思い出す。
意識が浮遊しつつもお菓子を全て食べた子を特定しようと、部屋の中を見渡すと、なぜかすぐには見当たらない子らがいた。
一号とツヴァイ、フィーアがそれにあたり、一号はオオカミ、ツヴァイが三毛猫の猫又、フィーアがタヌキの見た目をしていて、それらはいかにもいたずらっ子なうえに、皆が皆食い意地が張っている。
一号に至っては、食に対するえり好みが激しいため、口に合ったお菓子がうれしかったのだろうな。
私が三体のことを探しているのを察したらしいカゲリが、ワタワタしているところを見る限り、カゲリが開けてあげたのであろうということは、一目見てすぐにわかった。
カゲリのことを呼びつけて、三匹がどこにいるのかを問えば、こたつの中にいるということをすぐ白状したので、三匹のことを引きずり出す。
三匹に対して、旅館備え付けのお菓子を全て食べたことについて少し叱ったうえで、美味しかったかを質問したら、三匹は鳴き声を上げとても美味しかったと意思表示してきた。
申し訳なさそうだが、それに怒ったとしてももう食べてしまったものは仕方ないということで、明日からは菓子類が補充されてもあまり食べないようにと、釘を刺した後に備え付けの急須でお茶を入れる。
茶を飲みたがる個体にも入れてやり、そうしてから窓辺にあるテーブルに持っていき、置いてから読みかけの本を手に取り、読みながらトモミを待つ。
そんな感じにゆっくりとしていると、トモミが帰ってきた、その手にはお菓子が入っているだろう袋をぶら下げている。
「トモミお帰り、そのお菓子は?」
「ただいまハラさん!これ、みんなで食べようと思って買ってきた!一緒に食べよ!」
本を閉じてトモミが買ってきたお菓子を受け取るために、お茶を持ってこたつへ向かう。
そしてトモミから受け取ったお菓子を机に広げて、トモミがお風呂セットを荷物置き場に置きに行っている間に全員分のお茶を入れる。
急須のお茶が一度じゃ全てに行き渡らないから、四回注水することで入れることができた、袋の中身は温泉饅頭の詰め合わせで、まんじゅうが一つの袋にたくさん入っていたので、何個入っているのか数えることができなかったため、わからなかった。
「ほぼお徳用のお菓子だが、こんなに買って、高くなかったのかい?」
結構ずっしりとするお菓子の袋だが、それが二袋あったので、きっと値段もしただろうと問いかけると、トモミはあっけらかんと答える。
「ハラさんからもらってたお小遣いから出しましたし、みんなで分けるんだったら沢山あったほうがいいかなって思いまして。
ほら、みんな食べたがるだろうし。」
トモミが言い終えて周りを見渡すのに習って、私も周囲を見渡すと、自分らの近くには少ししょげた顔をした三匹と一人がいた。
「あの、すこし質問なのですが……。
一号……と、フィーア、ツヴァイ、それとカゲリは……どうしたんですか?元気ないようですけど。」
目線の先にいるうえに、私たちの近場にいるそいつらが起こしたことである、つい先ほどあったことを言うと、トモミが少し笑った後にその四人?を許したのだった。
四体は無事に許しを得たので、嬉々としてトモミから配られたまんじゅうをそれぞれが口に咥えたりして手に取る。
その上で茶を渡す際に、人型の個体には湯呑で、動物型の個体にはお皿の上に出してあげた、ちなみに湯呑やお皿はプラスチック製の割れないもので、自宅から持ってきたものである。
私たちは旅館の湯呑を使い飲むが、つい先ほど新しく入れたものだから、熱くはあるが一番温度が高いピークを過ぎており、多少ぬるくなっていたため、それが温泉饅頭がちょうど良かったため、おいしくいただくことができた。
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そんなこんなで寝る時間、夜も更けていい感じになり、トモミは中学生とはいえさっさと寝たほうがいい時間となった。
「ハラさん、もう少し起きていたい。」
まだ元気そうなトモミがだだをこねるが、夜更かしをさせたことによって体内サイクルが壊れ、学校再開の時に億劫になるのを避けるため、何が何でも寝かせにかかる。
「だめだ。
明日の朝も動くんだろう?さっさと寝ろ。」
強めに言葉がけをするが、やはり中学生、すごい勢いで嫌がりを見せつけてくる。
「もう少し遊びたいです!勉強もしますから!」
そういってダダをこねるトモミのことを布団に押し込み、ワンダーエッグとドリームエッグを卵状態にして休止モードに強制的にさせる。
全ての卵を寝かせた後にも、こたつに座るトモミが仕方ないので、私もトモミが持ってきた宿題を手伝ってやることにする、遊ぶと言ってきかないトモミを早々に黙らせるためだ。
大体三十分くらいだろうか、やはり今日一日疲れていたのだろう、徐々に船をこぎ始めるトモミを確認できた。
眠気で脱力し、軽く触れた体が温かくなっているトモミのことを布団に押し込み、電気を消す。
トモミが勉強中に日誌は書いておいたので、問題は無いはずだ、しばらくはぼんやりとしていたが、睡魔が襲ってきたからさっさと寝ることにする。
寝る前に最後に見た現時刻は十二時、明日はまだ大晦日ではない、この辺りを散策して思い出でも作るか。




