DAY86(日)12月24日
DAY86(日)12月24日
朝、トモミが起きる前の時間に設定された目覚まし時計が鳴り、それによって目が覚めた私たちは一緒に寝床に血が付いていないのを確認した後、寝室を出た。
私が料理をしていたら、洗面所から水の音が聞こえてきたため、なんとなく覗いたら、血を落としているトモミがいた、どうやら下着を貫通していたみたいだった。
朝食を作った私は、卵を全て獣型にして食事をさせようとする、その際にペレットをあげてみたら、全員が嫌そうな顔をした。
そんなに変なものが入っているのだろうかと思い、卵たちが食べてもいないペレットを口に入れる。
そのペレットの味は何もなく、パサパサした無味の飲み込みにくいものだった、無味無臭の何かに食欲がわかないのは仕方のない事なのかもしれないと、心の底から思った。
ただ、今まであまり味付けをしていない物を食べさせてきた気もしていたから、なんとなくいつも食べさせている卵専用のご飯を茶碗によそる、その時にトモミも洗濯を終わらせてやってきた。
その時の会話が五号に入っていたから書き記す。
「ハラさん、今日はほかの子たちと同じご飯なんですね。」
トモミにまだご飯をよそっていない状態のまま、私の皿に卵用のご飯が乗っている状態を驚いた顔で見てきた。
「いや、ちょっと気になることがあってね、トモミは私が作ったご飯があるからそれを食べると良い。」
そういって、いただきますを言う前に味見をしようとしたら、トモミも卵用のご飯をよそってきた。
「ハラさんに私も合わせます。」
トモミがそう言って、こちらを見て来る目には、疑問が浮かんでいた。
「ただ、普段と違って、どうして卵のご飯を食べようと思ったんですか?
確かに味は今まで気にしたことなかったのはそうなんですが。」
それに、ため息を吐きながら一つ卵用のペレットを差し出す。
「ついこの間買った卵用ペレットが届いたんだが、卵たちが食事する前からこのペレットを嫌がってな、そんなにおいしくないのかと思って、食べてみたんだよ。」
私の手からペレットを受け取ったトモミが、なんとも言えない顔でこちらを見て来る。
「うーん………見た目上犬の餌というか、猫の餌というか、人の食べ物ではない……。
一番近いのはシリアルかなぁ……、で?これとご飯と何か関係があるんですか?」
トモミが何か問題でも?とでも言いたげに問うてくるから、苦笑いしながら続ける。
「まぁ食べてみてよ、体に毒なものは入っていない筈だから。」
そういうと、トモミが逡巡した後、意を決してペレットをかみ砕いた、そして、眉間にしわを寄せた。
「た、食べにくいし………味はないし、飲み込みづらい……。
なんというか、喉に引っかかるだけ引っかかって………栄養素以外にメリットがなさそうな食感してる……。」
かなり不快そうな顔をしていたため、水を持ってきてやる、それをトモミが飲み下す。
「やっぱりまずいよな?」
「これは……食べる気も失せますね。」
そんな同意を得た後に私がやろうとしていたことを告げる。
「でだ、元々卵は料理について頓着しないように設計されているはずなんだよ。
多分本当の基本生態としては、どんなものも飲み込んでしまうという性質なもののはずなんだ。」
もう一口食べることを内心拒否しながら目の前の、普段卵たちに与えているいつも通りに皿に盛られた食事を軽く掲げる。
「それにこれには味付け等基本的にしていないはずだから、無味に近い存在のはずなのに、こいつらみんながここまでの拒否反応を起こしたんだ、それはなぜかを体感しようと思って。
これは私の探求心ゆえの行動だから、わざわざそれにトモミが付き合う必要はないからな?」
なぜみんながこんなにも嫌がるのかを確認するための行動で、別に強制したわけでもないのだが、言葉が悪かったのだろうか?トモミはキラキラした目でこちらを見てくる。
「つまり、ハラさんはワンダーエッグとドリームエッグの生活水準の向上をしようとしているんですね?」
トモミはどのような考えをしたのかがよくわからず、飛躍した理解に多少疑問を持つが、基本的にトモミは使役している動物に自身のことを投影しがちだ。
きっとそれを踏まえた上で、私が突然動物用にしか見えないペレットを食したという奇行をについて、とても肯定的な目線で見ているのだろう。
「せいかつすいじゅん……?あー、うん、そうともいうね。」
私が理解できるその部分をピックアップしつつそれを適当に流す。
「さて、料理も冷めてしまうし、食べてみるか、トモミは途中で食べるのをやめていつものご飯を食べていいから。」
「はい!」
トモミがこちらを見てくる目線がとても輝いていたので、そんなに尊敬できることだろうかと疑問に感じながらも、朝ごはんがそうしたいただきますの後に始まった。
卵たちは絶対に食べたくないと断固とした態度をとっているので、仕方ないのでいつものご飯を与えてやり、今日は私たちも普段卵に与えているご飯を食べてみる。
「これ、意外といけるなぁ……。」
自分が食べたその味に思わずぼそりと呟くと、トモミは同じような驚愕の顔をして、私に同意してきた。
「ちゃんとした野菜スープにお肉のおいしさが溶けだしていて、これは……ちょっと塩持ってきます。」
トモミが急いで席を立ち、トモミが自分の更に塩を振ってからこちらにも渡してくれて、私も塩をスープに足して飲んでみたら、驚愕とともに新たな知見が生まれた。
「これ、かなりおいしいな。」
思いのほか本気でおいしいそのスープは、塩を入れる前は肉と野菜の味がしっかりと染み出した、優しい味をベースに濃厚さを誇る、なんともベースの時点でおいしかったのだが、塩を足してみたら更に味が加わり、なんともおいしい代物へと変化した。
「コンソメとか、ブイヨンとか入れたら更に深みが出そうですね。
あ、和風だしを入れてもおいしいかも。」
トモミの方が料理についていろいろと知っていそうなので、その言葉を今後尊重していくことにして、そんな感じに卵たちが食べているご飯について、スープ以外にも作ってあるものを食してみたが、見た目が悪いそれらご飯はとても美味なるものということが分かってしまった。
「確かに、これを食べなれている卵たちが無味無臭乾ききった飲み込みにくい何かであるペレットを、食べずに拒否する理由がわかるな。」
思わず自身が作ったそれらを完食すると、トモミがペレットを思い出しながらなのか、それとも今食べている食事についてなのか、眉間にしわを寄せる。
「見た目かなり悪いですけどね。
時折見た目の印象が、ぐちゃぐちゃに混ぜた後の残飯ですからね。」
「それは言うな……。」
私の不器用さによって引き起こされる料理の盛り付け問題のことを引き合いに出されても、料理が基本なぜか苦手な私にとって、そのことが頭を悩ませ非常に困る話題であることは、事実間違いではなかった。
食事の後、食器類を全て食洗器に入れ洗いながら、トモミに今日の講習会に出るかを聞く。
痛み止めを飲んだあとのトモミは、比較的元気そうだ。
サプリメントの鉄剤を渡した後に、出るなら和室で休んだりして、動かなくても良い事を告げ、残っている食材を使ってクリスマス料理に取り掛かる。
ロールケーキはそのまま残っているものを出すことにして、なんかクリスマスっぽい料理に精を出す、まぁ、面倒になったらピザでも頼むか、オードブルもいいなぁ。
料理終了間際に本日初めてのドリームエッグ所有者がやってきたから、テリクスに言って出てもらう。
シオリとトウカが親を引き連れてきたことをみんなから聞いた後に、紙コップに飲み物を入れるようにそれぞれに指示を出し、お盆の上に飲み物と紙コップを乗せて、それを持って行ってもらう。
料理が終わり、お皿に料理を出して綺麗に並べていく、その時に三組目が来た。
組、というよりは一人だったが、とにかく形式上組にしておく。
次に来たのはヨウカで、サユカは勉強のため休むそうだ。
そりゃ受験生、この時期はとにかく必死だろう、勉強に励んでいることはよいことだ。
開始時間ギリギリに来たのはユメカのお母さんで、ユメカの姿が見えないので問いかけたら、子供の方は休みらしい。
試しにドリームエッグを持ってきたかを尋ねてみると、おもちゃは持ってきていないとのこと。
そのあとは時間になっても、未だ3グループ来ていないため始めようか悩んだのだが、時間が立っても来る気配もその連絡でさえも来ないことを確認してから、結局講習会を始めた。
ワンダーエッグ同様、教えるところは基本的に教えていたため、変身に役立つ情報と、親に対してGPSのチャームの使い方をレクチャーする。
子供たちには昨日同様、首輪の色を変えたいならば言ってほしいといった後、講習会における全ての伝達事項を伝えたのちにクリスマスパーティーを開くことにした。
クリスマスパーティー参加証として最初に全員から卵を貸してもらい、全ての情報読み取りを研究室で行なってしまう、その間に参加者にはご飯や私の家の卵たちとめいいっぱい戯れてもらう。
解析が終わり、全員に卵を返してやってからパーティーの進行を進めるにあたって、色々と企画していたイベントを適当に開催する、昨日同様千本引きだ。
他にもクリスマスプレゼントと称して、お菓子詰め合わせセットを渡したり、他にも色々と楽しませる。
なお、トウカには今度の講習会の時に卵を渡すと言えば、素直に頷いてはいた。
それにしても、ドリームエッグにおいてのこの集まりの率の低さが結構気になる、確かに解析に回すための詳細なデータ読み取りのために集めているのが裏の目的ではあるが、ここまで集まりが悪いととにかく気になってしまう。
おまけに遠隔で計測した結果、アカリとサユカの卵のストレス具合が気になる値である為、本音を言えば少々不安だ。
なお、ユメカのお母さんはどうやら教育ママというものらしく、おもちゃを与えることが絶対数少なかったらしい、このドリームエッグもおもちゃということでさっさと私に返品したいとのこと。
おもちゃを与えることへの子供への悪影響をつらつらと並べ立てる親は、正直自身の理想を押し付けていそうな眼の色をしているのだが、内心で『ならばなぜ卵を持ってこなかったのか』を不思議に思いつつも、今すぐには無理だと言えば、何かと難癖をつけて面倒くさそうなことになりそうなことが察せる。
しかし、実際に無理なものは無理だと断固とした態度で伝えると、今日のところはと仕方なさそうに身を引いてくれた。
ユメカ母が家にいる我が子のことを思ってなのか、靴を履いてそのまま去っていく後姿を多少のムカムカ感と共に見送ったあとは、最後までパーティを進めることができ、なんだかんだパーティーもつつがなく終わらせることができたので、試供品扱いで卵用ペレットを小分けにした袋を持たせてから、皆が帰った後夕日がきれいな16時に、アマチャンはやってきた。
インターフォンが鳴った後に玄関に出て、アマチャンに遅かったなと聞けば、講習会に出たかったが族の予定が終わらなかったとのことらしく、それに族の頭ならば仕方ないのだろうとため息を吐いた後、すぐに後ろに控えていたトモミに向かって一緒に行くかを一言聞いた後、トモミから一緒に行く旨を聞いた私は、卵は五号のみを手に持ったうえでコートを羽織る。
アマチャンが乗ってきたというバイクは家の敷地内に止めさせたうえで、道案内を頼むためにアマチャンのことを助手席に乗せ、トモミのことは後部座席に乗せた私は、アマチャンの誘導に沿って車を走らせる。
その結果やってきたこの場所はとある住宅街、区画全てがイルミネーションを競い合った結果なのかはわからないのだが、各家々が企業が設えたイルミネーションにも負けず劣らずの神々しさで飾られたそれら光景は、なかなかに壮観な風景だった。
一軒一軒が本気を出しすぎたそれらは、総合すればもはや異世界のような光の濁流に、アマチャンが楽しそうな嬉しそうな顔をする、その理由となる話を聞けば、なんでも昔からこの場所を知っていた兄が、ここを教えてくれて、今の時期に連れてきてくれたのが全ての始まりらしい。
毎年イルミネーションが光り輝き、クリスマスを祝福するようなこの光景を同じ族のものたちとも共有したく思ったこともあったそうなのだが、それは色々とあって諦めたとのこと。
ヒントは警察の巡回ということで、あとはお察しである。
ほかの車も多くいる中、ゆっくりと車で回っていたら、アマチャンから穴場である近くの公園に駐車場があると教えられたので、その場所にまで車を鈍行でたどり着き、本当にあった駐車場に車を止めた。
無料駐車場らしいその場所に車を置いた後、3人してイルミネーションを回っていたのだが、トモミがアマチャンの事を睨みつけている事にはずっと気が付いていた。
トモミにはそれをそれとなくやめるように言ったのだが、あまり効果はない模様、アマチャンがいつもの調子で私に話しかけて来るから、トモミも何か思うところがあるのだろう。
とりあえず、トモミが私の手を痛いほど握りしめてきたり、腕に抱きついてきたり、こちらを意味ありげな目で見つめてきたことから、それほどまでに嫌なのだろうとトモミの気持ちを察したことにより、なぁなぁなところでイルミネーションを見るのをやめて、家に帰る。
既に21時も回ったあたりという時間、少し遅くなってしまったが、検査のためにアマチャンの卵を預からせてもらうのに加え、今日講習会にて伝えた事を教えるために家に上げて、少しだけ今日の講習会で教えたことについて、扉の向こうからトモミに監視された状態で伝えてやる。
その後、卵のデータを読み込んだのちに卵をアマチャンに返してやってからすぐに帰ってもらう、それまでトモミはずっと苛立った様子だった。
トモミに苛立っていた理由を聞けば、どうやらトモミは不良が嫌いらしい。
まぁ確かに、トモミのことをいじめていた奴らは皆軽薄そうな、チャラい感じの見た目の奴らだったように思う。
あえていうならば、一軍から二軍の間を行き来していそうな人物たちの集団に見えたそれらだが、それだけではない人たちがトモミの事をいじめていたのだ、そりゃあ不良が嫌いになるわけだ。
話を聞き納得してから、今日の残り含めてトモミや卵たちと共に夕食を食べる、トモミに今日は早く寝るようにいうと、私の言葉に不思議そうな顔をしてこちらを見てきたから、それを美容のために的なことを言って食事を早めに終わらせる。
私が風呂に入った後にトモミの様子を見てみると、卵たちと戯れたり、冬休みの宿題をやっていたため、私は今日の片づけを軽くやってしまうことにする。
片づけとはいってもゴミをまとめるだけなのだが、明日以降から既定の日にちまでに大掃除が終わるか不安が胸をよぎっていた、クリスマスパーティーでものがあふれた一回の部屋部屋で、この複数日のうちに一体どれほど片付くかなんて、私にもわからなかった。
宿題もそこそこにさせてトモミの事を風呂に入れた後、中学生の女の子であるトモミから、クリスマスプレゼントがあるのかを控えめに問われたため、そんなの気にせずにさっさと寝ろと冷たく言い放てば、トモミは残念そうな顔をうっすらとしたまま寝室に行った。
後片付けをなんだかんだ積極的に手伝いたがる卵たちにも手伝ってもらいつつ、時刻が深夜2時になろうかというところで、車のトランクからトモミのためのクリスマスプレゼントを家の中に静かに入れる。
五号と笑顔でその作業をともにしたいと立候補したリオン、私の普段の取り巻き連中以外全てを卵に戻した私は、物音を立てないよう本気で気を張りながら、トモミの部屋の扉を静かに開ける。
トモミの部屋には鍵をかける的なものは基本ないため、私はいとも簡単に侵入することができた。
大きなクマの人形の足元に包装されたそれを置いて、全員に沈黙を指示したうえで退散する。
今回のことに付き合ってくれたそいつらのことを元に戻してから、私はベッドに入る。
深夜まで片づけをしていたため、明日は遅くに起きることになりそうだ、疲れで今現在朦朧としつつも、これをなんとか記録できている時点で偉い。
明日は掃除だ、そして、特価されているケーキでも買ってこよう。




