運動会 その4
トモミたちと一緒にそれを見送り、なんだか大団円に終わったことに嬉しく思うが、トモミ自身がどこか遠く、それも二年生女子の一部を見て、何かを考えているようであったので、何も言わずに次の競技を見たのだが、これはこれで問題がある。
次が大玉転がしで、どうやら女子たちの競技のようであったのだ。
リレー式に大玉を次の人につなげていくものらしいが、しょっちゅう大玉が観客席へと突っ込み、事故が多発、途中ほぼ暴動のようなことになったため、中止となり、唯一ゴールした6組が一人勝ちという結果であった。
そのため、ずっと一位を独走中だった六組がいよいよほかのものを引きはがしにかかってきたので、ここまでで既にどこが2位になるかが怪しくなってきたところだが、相当暑くなっている気温、汗がだくだくと流れ出すのを、タオルで拭いながら応援していたが、ようやっと昼食の時間になったため、みんな一時休戦という形で、各自保護者の元へと歩いていく。
トモミが真っ先に私の元へと走り寄ってきたわけだが、その後ろには当然のようにモガミが付き従っていて、その手にはおにぎりであろうラップにくるまれた黒いものが見える。
「ハラさんハラさん!お食事にしましょう!」
笑顔でそんなことを言ってくるので、私としてもうなずき、みんなしてブルーシートが敷かれているパラソルの下まで移動する。
「ごはん、たべる?」
パラソルの下で体育座りをしていた話せるようになったばかりのカゲリが拙い発音でそんなことを聞いてくるので、それにうなずいて答えてやる。
「あぁ、みんなで一緒にご飯にしよう。」
「ごはん、たべる!」
カゲリが笑顔になったところで、懐の中にいた五号が顔を出し、いきなり話始める。
「あるじさま、色々と尋ねたいことはありますが、今回共に食事する者たちは呼び寄せたほうがよろしいですか?
わたくしとしては、いつものメンバーで食べたほうがいざこざなどが起こらず、いろいろと楽かとは思うのですが。」
五号の話はそうかもしれないが、今日は運動会ということで、五号にお願いすることにする。
「えっとだな、できれば、みんなと一緒に昼食を食べたくはあるな。
呼び寄せられるならば、できれば全員を呼びたい、お前はワンダーエッグだから、ドリームエッグを呼び寄せることはできないとわかっているので、そのあたりはツヴァイ経由でどうにか話をつけたく思うが、どうだ?」
私が五号にそう提案すれば、五号は満面の笑みでこちらを見た後に、不敵な笑みを浮かべる。
「あるじさま、わたくしはですねぇ、ドリームエッグ持ちだったとしても、呼ぶことができる個体へと進化したのです。
試してみましょうか?」
そんな適当なことを言ってと、かなり見くびりながら、「なら、頼もうかな。」そういえば、五号は通信を始めたらしく、言葉を発し始めた。
「こちら、ハラのワンダーエッグ五号です、ハラが昼食をともにしたいと願い出ました、そちら、至急ブルーシートが引かれたパラソルの元に集合を。
繰り返します、至急、ブルーシートが引かれたパラソルの元へ集合を。
以上。」
そう告げた五号が通信を切り、こちらに向き直る。
「相手に情報を投げました、きっと相手に伝わるかと思います。」
どことなく、そうじゃないと言いたくなるような指示を出していたなと思い、その部分を修正してしまう。
「あのな?私は別に至急集合などという命令は出していない、あえていうなら可能ならば、だ。
至急と可能ならばの違いは分かるか?」
私が問いかけると、五号は不服そうな顔をする。
「それでは、人は集まりません、人というものは可能ならばを行かずとも良い、挙句は行かなくていいものとしてその発言をとります。
なので、この場合ともに食事をしたいという宣言をするならば、至急集合と告げたほうが、確実に全員と食事できると、そのようにかんがえた上での指示でした。
直す必要などは特にないかとおもいますが、なにか問題でしたか?」
うーんこの、本当に私のことを考えてくれたのはわかるのだが、それがこんな弊害をもたらす思想野郎に育ってしまったことが、本気で私の教育の敗北を感じる。
なに?教育には自主性を持たせたら正論野郎がが育つっているいい典型例?適当に子供を放っておいたらいつの間にかに強火主人推しの従者や、従者が主人に盲目的に色々と施すことによって、主人に逆に不利になる系の性癖になるタイプのそんな育成方法をやっていたのか?いや、別にそれは大丈夫な性格なのか?私もよくわかんなくなってきた。
「えっとだな?私が言いたかったことは、ほかの人が私の指示ではなく自分の意志でこの場に訪れるよう仕向けたかったんだ。
その場合、至急という言葉は強すぎる、急いで来いなんて私は一言も言っていないし、別に作戦会議するわけでもない。
だから、な?可能ならば、だ、可能ならば。
わかったか?」
「ですが、その場合あるじさまの発言権が著しく損なわれてしまいます、その場合、あるじさまが損をする可能性があり……」
「あー、もー、話が通じなさ過ぎて元の方が数段ましだわ、ご飯食べさせてあげるから、少し問題発言は控えてほしいな。」
私の悪い癖である、全てがどうでもよくなって放り出すが発動し、五号にそれだけを言いブルーシートに重箱を広げる。
五段の重箱を三つ作ってきた位なので、ある程度は大丈夫かなとは思いつつ、そこにおにぎりも付け加えたので、正直重いのなんのという感じだった。
「さて、なんかお花見レベルで作ってきたわけだが、人はどれくらい集まると思う?」
なんとなく既にいる者たちに話しかえれば、テラとテリクスが黙った後答えてくれる。
「ワンダー、みんな、くる。」
「ドリーム、きます、みんな。」
テラとテリクスはそれぞれワンダーエッグとドリームエッグなので、それで教えてくれたのだろう、それに笑顔でうなずく。
「わかった、教えてくれてありがとうな。」
言いながら頭を撫でてやれば、二人は気恥ずかしそうにそれを享受する。
「あ、イルルとシン、そして……新しく人型に変化した子たちもやってきましたね。」
トモミが教えてくれたのでそちらを見ると、どうやらシンとイルルがみんなのことを見つけて連れてきてくれたようだ。
その中にはワタベや不良の皆々様といった人たちも紛れていたので、複雑な気持ちになる。
「お呼ばれしてきたぞ、姉御。」
ユシタンたち三馬鹿が一番最初にレジャーシートへとやってきたので出迎えてやれば、ブルーシートの上にフジキとトモシゲが靴を脱いで上がってくる。
「おじゃましまーす。」「よっしゃ姉御のめしだぁ-!女王様とどんな食事しているのか、気になってたんだよなぁ~。」
二人が嬉々として広げられた重箱の近くへと寄るのに対し、トモミがトモシゲの近くへと静かにより、近くに座りながら威圧するのが確認できる。
「ねぇねぇ、そこのカス、なに私のことを女王様とか言ってるの?そんなことを言われる筋合いないんだけど?」
トモミが静かな声ではあるが、相手に殺気を与えながらいえば、トモシゲが嬉々として対応する。
「いやいや、そこの姉御のことを従えているのは女王様で差し支えないって。
おまけに、アマダレさんともバッチバチにやり合って勝ったんだろ?
それこそ女王様で合ってるって!」
そのトモシゲの発言に、私は内心あーあ、という言葉が反芻される、なぜかといえば、トモミにはそれが地雷だからだ。
「ふぅん?それだけのために、私のことを女王様っていうの、やめてくれない?
普通に不愉快、嫌なことをやるのは好ましくないことなんだよ?」
トモミがハチマキをとったので、先のことを察してトモミに急いで近寄ると、トモシゲが更に発言をする。
「そうはいってもですねぇ、姉御のことをちゃんとお世話しているのは、ひじょーに好ましい事態だと、わたし自身思っているんですよ。
なにせ、自分好みに姿を変えられる年上の加虐心がそそられる女性のことを、自分好みに出来るだなんて、かぁー!羨ましい!
おまけにそれが、自分よりも年下の女子!そんな女子が禁断の恋を一つ屋根の下で育んでいる……っ!
これを、尊いと言わずになんという!園に頭を突っ込めば死すべき重罪だというにもかかわらず、そのような扱いを受けている姉御は、自身のことを理解せずに笑顔で女王様の嫉妬心を煽る、これは、逆に試し行為をしているともとられる状態!
つまり、これに顔を突っ込まねば、自体は発展しない、つまり合法的に百合の園に頭を突っ込むことができるということだぁ!」
最後の方は(迫真)とつきそうな気迫で、私としてはドン引きである。
「なるほど、一理ある。」
トモミが納得したように頷いているので、近づくのをやめて一歩引き、少し離れたところから呟かせてもらう。
「なぁに言ってんだこいつら。」
私が言うか言わないかのところで、後ろから二つの手を両肩に置かれたので振り向けば、リオンとモガミが笑顔でそこにはいた。
「私が既に片足を突っ込んでいたこの人を、沼に引きずりこみました。」
モガミがあまりにも笑顔なので、きっとリオンは関係ないだろうが、私が言えることはこれだけだ。
「ろくでもねぇな、お前ら。」
そんなことを言えば、ユシタンが近づいてくれて、教えてくれた。
「すまない、姉御。
学校の帰りとかにサクラとその友達と会う機会があったんだが、その際にそこの女子に作品を布教されてな、それからトモシゲがますますおかしくなってしまったんだ。
以前から様子がおかしかったといえばおかしかったんだが、もうその域が天元突破しちまってるもんで、普通に絡みにくいとは思うけど、何を言ったとしてもあいつはもう、戻ってこられない位の最果てへと行ってしまった、悲しき魂だ。
もう、以前のアイツに戻れる可能性は、少ないと思う。」
深刻そうなのか、諦めなのか、私への慰めなのか、わからない微笑を浮かべたユシタンがそんなことを言うが、私としてはエイプリルフールの時点で戻ってこられなさそうな性癖を持っていたように感じるので、逆にツッコミを入れる。
「いや、以前から割とああじゃなかったか?」
ユシタンはそれに、首を横に振る。
「いや、今のアイツはマイルドとはいえ百合豚だ、もうアイツは、異性愛だけじゃ満足できねぇと宣言していたからな、もう駄目なんだと思う。」
「清濁併せのんだ結果、やべぇものまでおいしくいただけるようになってしまったという事か。
ご愁傷様。」
二人してどこぞの医者と看護師の重症患者を診て首を横に振る光景を再現すると、そこに再度手が肩に置かれる。
「この場合、本当にかわいそうなのは、姉御です。
本当に、ご愁傷さまです、頑張ってね、周り敵だらけだけどね、俺含めて。」
その声に驚いて振り向けば、フジキが可哀そうなものを見つつも、それでも愛おしいような眼をしていたので、悪寒が走る。
「それは、つまり。」
「俺も、その、はい。」
恥ずかしそうにフジキが言葉を濁すので、私は思わずテラとカゲリとテリクス、そしてユシタンを盾にして、悲劇のヒロインばりに絶望を顔に出す。
「もう、この世には頭が腐ってるやつしか存在しなくなってしまったのか……?」
そんな私に、ユシタンが振り向いて言葉をかけてくる。
「大丈夫です、俺はそういったの読んだこともないし、この場で姉御を守れるのは俺しかいないって、理解してるんで。」
「ユシタン……!」
そんな茶番をしていれば、遠くから声が聞こえてくる。
「……らぁ~!ご飯お呼ばれに来たよ~!」
その声が確実なアマチャンのものだったので、私としては心からの歓迎をしてしまう。
「おーぅ!こっちだこっちー!」
アマチャンのことを呼べば、その後ろにはハジメとヨリカ、そしてその親、更には不良たちも嬉々としてやってきていて、またほかの方からはヨウカが遠巻きにこちらを見ているのが見え、十分に近づいてきたそいつらに向かって、思ったことを言う。
「あのな、流石の私もこの人数分の食事は用意していないんだ。
各自、ご飯があるなら、えーっと、ビニールシートある人はまた別に引いてそこに座ってくれ。
特に、私とはあまり関係ない人は、別のシートにしておいたほうがいいだろうな。」
そんな宣言により、総長が隊員に指示を出し、各自好きな場所で食べるよう言ってくれたおかげで、アマチャン一人が残り、治安の悪さはある程度良くなったのだった。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、あの不良の集団はどのようなご関係で?」
私のブルーシートの横に陣取っていたハジメの親が尋ねてきたので、答えてしまう。
「なぜかなつかれてしまって、害はないので問題はないかと。」
「ですが、明らかに周りを威嚇していますが……」
アマチャンのことを警戒しているようなので、アマチャンにお願いし、警戒するのをやめてもらう。
「すみません、ちゃんと言い聞かせるので、今日はみんなで親睦会という形で料理を食べてもらえばなと思ったのですが。」
「いえ、大丈夫です……それでは。」
そういってハジメの両親は去っていったが、ハジメ自体は置いていったので、完璧に駄目というわけではなさそうだ。
「ねぇねぇハラぁ、オムライスない?」
アマチャンが甘えたかのように聞いてくるので、少し悩んでしまう。
「すまない、揚げ物は作ってきたんだが、オムライスはないなぁ。」
「えー!」
「だが、その代わりに色々と頑張って作ってみたんだ!試しに味見を、あと、おむすびなんかも作ってきたからな、食べてくれ。」
「中身何?」
「シーチキンマヨネーズに梅干し、そして昆布だ。」
「シーチキンマヨ!あたし好き!」
「そりゃよかった、重箱に全員分はないかもしれないが、どんどん食べてくれ。」
「やったー!」
そんなアマチャンとのやり取りに、面々が複雑そうな顔をするので、私はそちらにむけても笑顔を向ける。
「皆も食べてみてくれ、特にトモミには、私頑張ったんだからな?」
そんな言葉に、トモミは拗ねたような様子を見せる。
「当然ですよ、だって、ずっと練習していたの見ていましたから。」
トモミがぶつぶつ言いたげなので、隣に移動し三つある重箱の一つを展開してしまう、その中には腕によりをかけて作った、トモミからの要望+トモミの好きなものを詰め込んだお弁当が出てきた。
「う……わぁ!すごぉ!」
「だろぉ?これ全部、昨日からトモミのためを思って頑張って作ったんだよ。
トモミも、みんなと一緒に食べたほうが美味しいだろうかなって思ったし、友人たちに囲まれて食べるの、いいかなって。
ほかにも!モガミ以外にも友人を呼んだっていいんだぞ?一緒に食べようじゃないか!」
トモミからリクエストされた魚の包み焼やらハンバーグやら茹で野菜のサラダやらなんやらに加えて、トモミが好きな和え物、ほかにもトモミが気になっていた鶏肉の甘辛和えのほか、各種トモミの暫定好物などなど、本当に色々なものを作ってあげたので、トモミとしても不機嫌が飛んだようだ、おにぎりに手を伸ばし、食べ始める。
「あ!これ梅干しだ!しかも好きなやつ!」
「だろぉ?わざわざ好きなのを調達して作ったんだ、美味しいか?」
「うん!ありがとうハラさん!」
トモミが食べているのを見て、ほかの人たちも手を付け始めたようだ、広げられたお重は全部で15箱、なかなかに色々なものが詰まっているが、この人数で足りるだろうか?
「すみませんハラさん、うちの子が料理をいただいてしまって。」
そんなことをここにいる親が言ってくるので、私としても首を横に振る。
「いえいえ!そんな、気にしないでください!
みんなで食べたほうが美味しいですし、なによりみんなでご飯をシェアすると、楽しいじゃないですか。
そちらでも作ってきた料理があるなら、一緒に食べていいですか?
そうすれば、子供たちの仲も深まると思うので。」
私がそう言えば、潔癖な親じゃないらしい親類達はそれぞれにご飯を出し始める。
「かあさん、すっげー張り切ってたからさ、今日海苔巻きとかいなり寿司とか、なんかそういったやつ作ってきたんだぜ!」
「いいなぁ~、俺のところはおにぎり一択だった。」
「それ言ったらなぁ、おれのところはパンだぜパン、おまけに焼きそばパン、美味しいからいいけどさぁ、ちょっとしょぼくね?」
「あーね?」
そんな会話をフジキトモシゲユシタンが話しており、ヨリカとハジメはトモミに絡んでいる。
「ねぇねぇ~トモミちゃんはさぁ、どのおかずが一番すきぃ~?」
「えっとですね、この、マヨネーズで魚を包み焼いたやつですね。
これ、ハラさんが何度も挑戦して、それで完成させてくれたと思うと、うれしくて。」
「ふむ。
そなたらの信頼関係というものは如何様にも美しさを放っておるが、少々過激になるのはいかがなものかと、我は思考するがなぁ。」
なんだかんだ学生同士の会話が中心となっている昼食時間だが、やはり親は自身の子供との時間を保ちたいと見た、フジキやユシタン、トモシゲは親のことをうるさそうにしているが、それでも、親同士の仲は悪くなさそうだ。
ヨリカとハジメの親もお互いがなにやら軋轢がありそうな感じもあるが、それがなんとなく「うちの子供を渡すものか」の風を感じ取り、ほほえましくなる。
ワタベは友人と食べているらしく、少し離れたところで食べており、ヨウカは多分あれは演劇部の先輩後輩で集まっている可能性がありそうだ。
そういえば、不良たちの姿を見ていないなと思い、あたりを見渡すと、アマチャンが教えてくれた。
「あいつらは学区が違うから、別の中学に通ってんの。
だから、気にしなくていーの!
ね、だからさ、あたしに食べさせてくんない?」
アマチャンがそうやって甘えてきたので、トモミが見ていないかを即座に確認すると、どうやらこちらを見ていないようである、どうしようか考えていたらフォークを渡されて、おかずを指定される。
「ねぇねぇ、唐揚げ食べたいなぁ?だめ?」
アマチャンがウルウルとした顔で聞いてくるので、少しだけ抵抗を見せておく。
「とは言われても、ま、まぁ、別にいいが。
このあとのことを考えるとだなぁ。」
それを言えば、アマチャンは納得はするが、話は聞かない顔をした。
「まぁ確かにね、あんの異常者は気にしなくっていーの!ほら、食べさせて?」
「え、えぇ~?」
仕方なく、アマチャンのご指名のおかずをフォークで指し、それを口元にもっていってやると、アマチャンはそれを嬉しそうに食べ、咀嚼したと思ったら私の頭を掴まれ、お互いの鼻同士をくっつけさせられる。
「あ、アマチャン?」
すごい至近距離にあるアマチャンの顔を見て戸惑いが隠せなかったが、それを見たらしいトモミが叫ぶのが聞こえてきた。
「こんっのあばずれすけこまし寝取り女!私のハラさんにキスするなんて!ぜってぇぶっ殺してやる!」
トモミがブチギレながらもハイハイでこちらに全力を出してやってくるのを、モガミの声援がその後ろから送られてくるのが見える。
「ハンッ!あんたなんかにハラは渡さねぇって言ってるだろ?
ね、あいつとあたし、どっちの方がまともか言える?」
その返答については、正直本当に答えるか迷う。
「いや、確かにまともさで言えばさ、アマチャンに軍配は上がるがなぁ……」
私がぼそぼそと呟けば、アマチャンは明らかに相手を煽り始める。
「ほーら、あんたと一緒にいるよりか、あたしと一緒に居たほうがハラのためだって!」
そんなアマチャンに食って掛かろうとするトモミ、そんな二人に対して私は本音を言ってしまう。
「そういわれるが、正直トモミと暮らしているから、いくら何を言われようと私はトモミが好きだと言えるのだが……」
トモミはそれを聞くと同時に、鬼の首を取ったように高笑いをする。
「ほーら!ハラさんは私の方が好きだってさ!だからあんたみたいな腐れNTR女と一緒にされたくないわけですよ!
勝手に思い人に忍び寄るあんたが、まともだって?ハンッ笑わせる!」
「ふーん?そんなこと言うけど、いつぞやは妙にイカレポンチでしたねぇ?何より、ペットごっこの飼い主は楽しかったですかぁ~?
倫理的にアウトなことをしてんのは、あんたのほうじゃないの~?」
二人は言い合っているが、現在進行形で私が作った料理を食べている、その状態で喧嘩するのもなかなかな度胸である。
「というか、NTRって言葉があるんだな、なんかニュートラルシンキングランとか?そんなやつ?
なんか電波回線とかにありそうな名前だな。」
私がよくわからないでそんなことを言えば、一瞬だけ周りの空気が固まる。
「え?ハラさん、NTR知らないの?」
トモミにそう聞かれれば、私はうなずくしかない。
「あぁ、正直そういった言葉は知らないが、語感的になにか回線とか、そういったRANのような気がするが。
というか、話から何かの例えだと思ったのだが、違うのか?
NTR、えっと、どういった意味の言葉か、教えてくれないか?」
私の言葉に、良い笑顔な男性陣や生暖かい目をしている女性陣、そして嘘だろという顔をしているユシタンや、逆に面白いものを見つけたとでも言いたげなヨリカなど、なかなかな面々である。
私の仲間はどうやら、ハジメ少年のみのようだ、ハジメだけは私と同じ顔をしているのが見える。
「おい、お前ら私のことを馬鹿にしてるな?」
私が何も理解していないことを馬鹿にされているということはわかるので、それにちょっぴり怒りながらいえば、それにフジキとトモシゲがいい笑顔でこちらによって来る。
「いやはや、姉御がこんなに面白い属性持ちだとは、これをどう思うよフジキ君。」
「いやいや、姉御がまさかの無知属性だったとは。
これはたぎりますねぇ、トモシゲ君。」
二人が鼻の穴を大きくしているのがキモすぎて、思わず一歩引いてしまう。
「お?おめぇらからワンダーエッグはく奪してやってもいいんだぞ?やらないけど。」
とはいえども、なんとなく親御さんの前ということで正座を頑張っていたので、痺れており動けない。
痺れたから足を出せば、きっとこいつらの餌食になるということで、テラにテリクス、カゲリに命じる。
「テラ、カゲリ、テリクス、二人を私から離れさせろ。
優しくお願いな、特に、食べ物を蹴散らさない程度の方法で、だ。」
私がそう言えば、三人は動き出し、二人のことを抑えにかかる。
「フジキ、トモシゲ、はなれる。」
「ごしゅじん、こまってる。」
「ふたり、しゅじんはなれる。」
カゲリ、テリクス、テラの順で二人の前に立ちはだかり、二人に対してそういえば、まだこの場で知っているもの自体が少なかったのだろう、途端に顔が変わる。
「なぁなぁ!こいつらって話さなかったんじゃないのか?」
「おまえら、ついに話せるようになったんだな!」
「ふむ、我としても祝杯を挙げることとしようではないか。」
「へぇ~、ワンダーエッグとかドリームエッグとか、そのうち話せるようになるんだ?」
そんなことをそれぞれが話しているため、三体は迷惑そうな顔をして一言ずつ。
「はなれる。」「おまえらはなれろ。」「ごしゅじんこまる。」
そんな具合にテリクス、テラ、カゲリが話したことで、私への視線がなくなり、意識は三体へと移動したようであった。
「ハラさん、ハラさんは純粋なままでいいんです。
バカになんてしていませんよ、いらない知識は、持たなくていいですからね。」
いつのまにやら近づいていたトモミとモガミだが、トモミが優しい声色でそんなことを言うので、逆に問う。
「なぁ、大人が子供よりも知識がないのはそれはそれで危険なことだ。
なにより、大人が情報の監督をある程度して、本当の無知に教えねばならない。
だから、私は帰ってからNTRを調べることにするよ。」
いいながら、スマホを取り出して記録をしようとすると、トモミがスマホを奪ってくる。
「おい!なにするんだ!」
返してもらおうとしたところで、電話が鳴り、トモミに無理にでも返してもらい出てみると、そこにはシンリュウの文字があった。




