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『聞いてる? 鈴木くん。』  作者: ともり。


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第四話 少しだけ、特別

## 第四話 少しだけ、特別


 翌朝。


 雨上がりの空は、少しだけ夏の匂いがした。


 教室には、扇風機のゆるい風が回っている。


 鈴木は席に座ったまま、ぼんやりスマホを見ていた。


 結局、昨夜。


 佐々木さんから返信が来たのは、寝る直前だった。


『ありがとう! 助かった!』


 たったそれだけ。


 でも鈴木は、その短い文を三回くらい読み返していた。


「……鈴木くん。」


「うわっ。」


 突然、机に顔が近づいてきて、鈴木は肩を跳ねさせる。


「びっくりした……」


「それ、最近多くない?」


 花本は呆れたように笑った。


 朝の光が窓から差し込んで、花本の髪を少しだけ明るく見せている。


「おはよ。」


「……おはよう。」


「なんか眠そう。」


「ちょっと寝不足。」


「ふーん。」


 花本はそう言いながら、鈴木の机にコンビニのパンを置いた。


「これ、新作らしいよ。」


「え、なんで。」


「なんでって?」


「いや、俺の分まで。」


「……なんとなく。」


 花本は視線を逸らす。


 鈴木は少し困ったように笑った。


「ありがとう。」


 その瞬間。


 花本の表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。


「どういたしまして。」


 短いやり取り。


 でも、それだけで少し嬉しかった。


 花本自身、なんで嬉しいのか、ちゃんと説明できなかったけれど。


「……あ。」


 不意に、教室の入り口がざわつく。


 鈴木がそちらを見る。


 隣のクラスの佐々木さんが、先生に呼ばれて教室へ来ていた。


 その瞬間。


 鈴木の視線が自然とそっちへ向く。


「……はいはい。」


 花本が小さく呟く。


「え?」


「なんでもありませんー。」


 わざとらしく言いながら、花本は自分の席へ戻ろうとする。


 でも、その途中で。


「花本さん。」


「ん?」


「パン、美味しそう。」


「……そこ?」


 思わず吹き出す。


「もうちょっと他にあるでしょ。」


「?」


「はあ……。」


 花本は笑いながら、自分の席へ戻っていった。


 窓の外では、雲の隙間から青空が見え始めていた。


 六月の風が、静かにカーテンを揺らしている。


 鈴木はそんな景色を見ながら、ふとさっきのパンを手に取る。


 袋には、小さく期間限定と書かれていた。


 ――なんで、俺の分まで買ってきたんだろ。


 そんなことを考えて。


 でも答えはわからないまま、鈴木はパンの袋を開けた。


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