表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『聞いてる? 鈴木くん。』  作者: ともり。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/30

第二十八話 会いたい理由

## 第二十八話 会いたい理由


 八月の終わり。


 夏休みも、残りわずかになっていた。


---


 鈴木はスマホを見つめていた。


---


 トーク画面の相手は花本。


---


 文字を打つ。


---


 消す。


---


 また打つ。


---


 消す。


---


 十分くらい、それを繰り返していた。


---


「……。」


---


 こんなに緊張するものだっただろうか。


---


 前までは普通に送れていた。


---


 なのに。


---


 今は一言が難しい。


---


 好きだと気づいてしまったから。


---


 だからこそ。


---


 簡単に送れなくなった。


---


 それでも。


---


 鈴木は意を決して文字を打つ。


---


『今度、二人でどこか行かない?』


---


 送信。


---


 その瞬間。


---


 心臓が大きく鳴った。


---


## 数分後


---


 返信が来る。


---


『珍しいね』


---


 その一文に。


---


 鈴木は苦笑した。


---


 確かに珍しい。


---


 今までは。


---


 花本が誘ってくれていた。


---


 自分から誘うことなんて、ほとんどなかった。


---


『たまには』


---


 そう返す。


---


 少しして。


---


『いいよ』


---


 その文字が届いた。


---


 胸の奥が少しだけ温かくなる。


---


 それだけで嬉しかった。


---


## 当日


---


 待ち合わせ場所は駅前だった。


---


 夏休み最後の日曜日。


---


 空は高く、少しだけ秋の気配が混じっている。


---


 鈴木は約束の十五分前に着いていた。


---


 落ち着かない。


---


 何度も時間を確認する。


---


 その時。


---


「お待たせ。」


---


 聞き慣れた声。


---


 振り返る。


---


 花本だった。


---


 私服姿。


---


 制服じゃない。


---


 それだけなのに。


---


 なぜか少し緊張した。


---


「待った?」


---


「いや。」


---


 嘘だった。


---


 でも花本は笑った。


---


「絶対待ってたでしょ。」


---


 見抜かれていた。


---


## 昼


---


 二人でショッピングモールを歩く。


---


 雑貨を見たり。


---


 アイスを食べたり。


---


 くだらない話をしたり。


---


 特別なことは何もない。


---


 でも。


---


 鈴木は楽しかった。


---


 今までで一番。


---


 自然に笑えている気がした。


---


## 夕方


---


 帰り道。


---


 駅へ向かう途中。


---


 空が少し赤くなっていた。


---


「今日はありがと。」


---


 花本が言う。


---


「こちらこそ。」


---


 少し沈黙が流れる。


---


 そして。


---


 鈴木は立ち止まった。


---


 言わなければ。


---


 今しかない。


---


 そう思った。


---


 けれど。


---


 言葉が出てこない。


---


 好き。


---


 たったそれだけなのに。


---


 難しかった。


---


「鈴木くん?」


---


 花本が不思議そうに見る。


---


 鈴木は深く息を吸った。


---


 そして。


---


「夏休み終わったら。」


---


「うん。」


---


「話したいことがある。」


---


 花本の目が少しだけ揺れる。


---


 何かを察したように。


---


 でも。


---


 何も聞かなかった。


---


「わかった。」


---


 ただ。


---


 優しく笑った。


---


 その笑顔を見ながら。


---


 鈴木は思う。


---


 今度こそ。


---


 ちゃんと伝えよう、と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ