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『聞いてる? 鈴木くん。』  作者: ともり。


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第二十七話 聞こえなかったもの

## 第二十七話 聞こえなかったもの


 花火大会の翌日。


 鈴木は朝から落ち着かなかった。


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 花本が好き。


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 もう疑いようがない。


 昨日の花火の下で、それを認めた。


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 でも。


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 認めたからといって、何かが解決するわけじゃない。


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 むしろ逆だった。


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 今まで以上に考えてしまう。


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 花本はどう思っているんだろう。


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 まだ待っていてくれているんだろうか。


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 それとも。


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 もう遅いんだろうか。


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## 午後


 スマホが震える。


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 田辺だった。


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『暇?』


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『暇』


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『じゃあ付き合え』


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 数十分後。


 ファストフード店の席に二人は座っていた。


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「で?」


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 ポテトを食べながら田辺が言う。


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「どうすんの。」


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「何が。」


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「花本。」


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 鈴木は黙る。


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 田辺はため息をついた。


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「好きなんだろ。」


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「……うん。」


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 ようやく認める。


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「じゃあ言えよ。」


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 それができれば苦労しない。


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 鈴木はストローを弄る。


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「遅かった気がする。」


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「何が。」


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「気づくの。」


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 田辺は少し考えた。


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 それから。


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「じゃあさ。」


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「?」


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「お前、花本が最初に話しかけてきた時覚えてる?」


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 鈴木は目を瞬かせる。


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 覚えている。


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 昼休み。


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 ジュース。


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 聞いてない鈴木くん。


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 あの日。


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「覚えてる。」


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「じゃあ。」


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 田辺は笑う。


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「花本はもっと前から覚えてるだろ。」


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 鈴木は言葉を失った。


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## 帰宅後


 部屋の窓から夕焼けが見える。


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 鈴木はベッドに寝転びながら考えていた。


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 確かにそうだ。


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 花本はずっと話しかけてくれた。


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 何度も。


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 何度も。


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 自分が気づかない時も。


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 聞いていない時も。


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 呆れながら。


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 笑いながら。


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 それでも。


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 ずっと隣にいてくれた。


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 そして。


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 ふと思い出す。


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『聞いてる?』


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 あの言葉。


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 花本は何度も言っていた。


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 最初は本当に。


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 ただ声が届いていなかった。


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 でも。


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 今思えば。


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 違う意味もあったのかもしれない。


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 私を見てる?


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 私の気持ち、聞こえてる?


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 そんな意味が。


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 あったのかもしれない。


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 胸が少し痛くなる。


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 自分は本当に。


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 何も聞けていなかった。


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 何も見えていなかった。


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 窓の外では、夏の終わりを感じさせる風が吹いていた。


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 そして鈴木は決める。


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 もう逃げるのはやめよう、と。


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