第二十三話 もしも
## 第二十三話 もしも
体育祭が終わって数日。
学校はいつもの日常へ戻っていた。
授業。
小テスト。
昼休み。
放課後。
変わらない毎日。
でも。
鈴木の中だけは少しずつ変わっていた。
---
昼休み。
花本はいつものように前の席へ座っている。
ストローをくわえながら、友達との会話を聞いていた。
「そういえばさ。」
隣の女子が言った。
「花本って彼氏作らないの?」
---
一瞬。
鈴木の手が止まる。
---
「なんで?」
花本が笑う。
---
「だって普通にモテるじゃん。」
「そうそう。」
「中村とか絶対好きだと思う。」
---
その名前が出た瞬間。
鈴木の胸がざわついた。
---
「ないない。」
花本は即答した。
---
でも。
周りは納得していない。
---
「えー。」
「絶対仲良いじゃん。」
「付き合えばいいのに。」
---
花本は苦笑する。
---
「そういうのじゃないから。」
---
その言葉を聞いて。
鈴木は少しだけ安心している自分に気づいた。
---
そして。
---
そのことに驚いた。
---
なんで安心した?
---
頭の中で問いかける。
---
答えは出ない。
---
出ないはずなのに。
---
心のどこかは知っている気がした。
---
放課後。
花本は委員会で遅くなるらしい。
---
鈴木は一人で帰る準備をしていた。
---
すると。
---
「鈴木くん。」
---
佐々木だった。
---
「今帰り?」
「うん。」
---
少しだけ沈黙が流れる。
---
そして。
佐々木は鈴木を見つめた。
---
「ねえ。」
「ん?」
---
「もしさ。」
---
窓から夕日が差し込む。
---
「私が誰かと付き合ったらどう思う?」
---
突然の質問だった。
---
鈴木は考える。
---
少しだけ。
---
本当に少しだけ。
---
考えて。
---
「幸せなら、いいと思う。」
---
そう答えた。
---
佐々木は何も言わなかった。
---
ただ。
---
少しだけ寂しそうに笑った。
---
「そっか。」
---
その笑顔を見て。
鈴木の胸は痛まなかった。
---
昔なら違った気がする。
---
好きだったはずなのに。
---
憧れていたはずなのに。
---
今は。
---
ただ大切な友達を見ているような気持ちだった。
---
佐々木が教室を出ていく。
---
鈴木はその背中を見送る。
---
そして。
---
ふと思った。
---
もし。
---
花本が誰かと付き合ったら。
---
もし。
---
花本が他の誰かを好きになったら。
---
もし。
---
花本が自分の前からいなくなったら。
---
その瞬間。
---
胸の奥が苦しくなった。
---
理由なんて。
---
もう十分すぎるほど分かっていた。




