第二十二話 優しさの違い
## 第二十二話 優しさの違い
体育祭の翌日。
学校全体が少しだけ静かだった。
昨日までの熱気が嘘みたいに消えている。
みんな疲れているのだろう。
教室にも、どこか気の抜けた空気が流れていた。
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鈴木は窓際の席でぼんやりしていた。
昨日のことを思い出している。
花本の笑顔。
手を振る姿。
そして。
佐々木の存在を一瞬忘れていた自分。
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「おはよ。」
花本が隣に立つ。
少し焼けた顔。
少し掠れた声。
昨日の頑張りが残っていた。
「おはよう。」
「筋肉痛やばい。」
「リレー走ってたもんね。」
「もう二度と走りたくない。」
そう言いながら笑う。
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鈴木も笑った。
そして。
その笑顔を見ていると、自然と気持ちが軽くなることに気づく。
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昼休み。
鈴木は購買へ向かう途中だった。
廊下を歩いていると。
向こうから佐々木がやってくる。
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「鈴木くん。」
「あ。」
「昨日お疲れ。」
「お疲れ。」
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佐々木は立ち止まった。
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「そういえばさ。」
「ん?」
「最近、花本さんと仲良いよね。」
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昨日も聞いた言葉だった。
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「そうかな。」
「うん。」
佐々木は笑う。
「なんか見ててわかる。」
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鈴木は返事ができなかった。
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その時。
遠くから花本の声が聞こえた。
友達と笑っている。
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反射的にそちらを見る。
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そして。
自分でも気づいてしまう。
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佐々木と話している最中なのに。
花本の声が聞こえた瞬間。
そっちを見てしまったことに。
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「……。」
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佐々木は何も言わない。
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でも。
少しだけ寂しそうに笑った。
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「鈴木くん。」
「え?」
「優しい人ってさ。」
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一度言葉を切る。
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「みんなに優しいんだよ。」
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鈴木は意味がわからなかった。
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佐々木は小さく笑う。
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「じゃあね。」
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そう言って去っていく。
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鈴木はその背中を見送った。
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そして。
なぜか昨日の花本の言葉を思い出す。
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**『優しい人って、一番ずるいよね。』**
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あの時は意味がわからなかった。
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でも今なら。
少しだけわかる気がした。
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佐々木は優しい。
本当に優しい。
誰にでも。
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でも。
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花本は違う。
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鈴木のために怒る。
呆れる。
笑う。
心配する。
振り回される。
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それは優しさというより。
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もっと特別な何かだった。
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夏の空は高かった。
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そして鈴木は、
ようやく気づき始めていた。
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自分が今、
誰のことを目で追っているのかを。




