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『聞いてる? 鈴木くん。』  作者: ともり。


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第二十話 体育祭の朝

## 第二十話 体育祭の朝


 体育祭当日。


 朝から空はよく晴れていた。


 校庭には白いテントが並び、スピーカーからは元気な音楽が流れている。


 生徒たちの声で学校全体がいつもより賑やかだった。


 けれど。


 鈴木の頭の中には、昨日の花本の言葉が残っていた。


---


 **「普通は、好きな人にする質問じゃないんだよ。」**


---


 その意味がわからない。


 わからないはずなのに。


 なぜか何度も思い出してしまう。


「おーい。」


 田辺に肩を叩かれる。


「聞いてる?」


「あ。」


 鈴木が顔を上げる。


「また聞いてなかった。」


「重症だな。」


 友人たちが笑った。


---


 開会式が始まる。


 全校生徒がグラウンドへ整列する。


 鈴木は自分のクラスの列に並びながら、無意識に周囲を見ていた。


 そして。


 少し離れた場所に花本を見つける。


 実行委員の腕章をつけている。


 走り回っていた。


「大変そうだな。」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 花本がこちらを見た。


 一瞬だけ目が合う。


 すると。


 花本は小さく手を振った。


 鈴木も反射的に振り返す。


 それだけ。


 それだけなのに。


 なんだか少し嬉しかった。


---


 午前中。


 競技は順調に進んでいた。


 綱引き。


 玉入れ。


 障害物競走。


 気づけば昼休みになる。


---


 鈴木はテントの下で弁当を食べていた。


 その時。


 校庭の向こうから歓声が聞こえる。


 見ると。


 花本がリレーの予選を走っていた。


「花本さんだ。」


 思わず立ち上がる。


 周囲の友達が不思議そうな顔をした。


---


 スタート。


 花本が走り出す。


 真剣な表情。


 いつもの笑顔はない。


 風を切るように走る。


 バトンを受け取る。


 全力で前を見る。


---


 鈴木は知らなかった。


 花本がこんな顔をすることを。


 こんなに必死になることを。


 こんなにかっこいいことを。


---


 ゴール。


 歓声が上がる。


 花本は息を切らしながら笑った。


 仲間たちとハイタッチをしている。


---


 その姿を見ながら。


 鈴木の胸が少し熱くなる。


 そして。


 ふと思う。


---


 俺。


 花本さんのこと。


 どれくらい知ってるんだろう。


---


 佐々木のことはずっと見てきた。


 好きだった。


 今も好きなはずだ。


 なのに。


 最近は花本のことばかり考えている。


---


 夏の日差しは強かった。


 蝉の声が校庭に響いている。


 その中で鈴木は初めて、


 自分の気持ちに小さな疑問を抱き始めていた。


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