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『聞いてる? 鈴木くん。』  作者: ともり。


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第十四話 映画の約束

## 第十四話 映画の約束


 土曜日。


 朝から空はよく晴れていた。


 駅前には休日らしい賑わいが広がっている。


 鈴木は待ち合わせの十分前に着いていた。


 落ち着かない。


 スマホを見ても、時間はほとんど進んでいない。


 何度目かわからない確認をした時だった。


「お待たせ。」


 顔を上げる。


 佐々木だった。


 制服ではない私服姿。


 白いブラウスに淡い色のスカート。


 いつもと雰囲気が違って見えた。


「ご、ごめん。」


「なんで鈴木くんが謝るの?」


 佐々木は楽しそうに笑う。


 鈴木は少しだけ照れた。


---


 映画館へ向かう途中。


 二人は他愛もない話をした。


 好きな映画。


 好きな音楽。


 苦手な教科。


 学校では話さないようなことまで話した。


 楽しかった。


 確かに楽しかった。


 でも。


 ふとした瞬間に。


 鈴木の頭の中へ別の顔が浮かぶ。


 花本だった。


 病み上がりなのに元気そうだったこと。


 昼休みに笑っていたこと。


 くだらないやり取り。


 そんなものが、不意に思い出される。


「鈴木くん?」


「え?」


「聞いてる?」


 佐々木が笑う。


 その言葉に、鈴木は少しだけ慌てた。


「あ、ごめん。」


「珍しい。」


「考え事してた。」


「なに?」


「いや……。」


 説明できない。


 自分でもわからないから。


---


 映画が終わったのは昼過ぎだった。


 面白かった。


 感想を話しながら駅前を歩く。


 けれど。


 鈴木はどこか上の空だった。


 そんな様子に気づいたのか。


 佐々木がふと立ち止まる。


「鈴木くん。」


「ん?」


「最近さ。」


 少しだけ真剣な声。


「何か悩んでる?」


「え?」


「なんか前より考え込んでる気がする。」


 鈴木は返事に困る。


 悩んでいるのかもしれない。


 でも何に悩んでいるのかはわからない。


「……わかんない。」


 正直にそう答えた。


 佐々木は少しだけ笑う。


「そっか。」


---


 帰宅した夕方。


 鈴木は自室でスマホを開く。


 その時。


 SNSに写真が投稿されていた。


 クラスメイト数人でボウリングへ行ったらしい。


 写真の中には。


 笑顔の花本がいた。


 その隣には、同じクラスの男子が立っている。


 肩が触れそうなくらい近い距離で。


「……。」


 鈴木はなぜか、その写真を見続けていた。


 胸の奥が少しだけざわつく。


 理由はわからない。


 でも。


 映画を観ていた時よりもずっと強く、その光景が頭に残った。


 窓の外では、夕暮れの風が静かに吹いていた。


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