3-21 vs巨岩の男
彼がトリガーを引く直前、シロは銃を真下から蹴り上げて銃口は空へ向いた。
そのまま弾丸は空へと舞い、そこからは2人の近接戦へとなだれ込んだ。
「はぁーー!!」
シロは次々と拳や脚で攻撃を仕掛けるのに対し、相手は銃でガードをしたり避けて機を狙い続けている。
銃の弾をリロードするために男は少し距離が欲しいのだがシロはそんなことをさせる隙を与えない。
「ーー解放…。」
彼がそう呟いた途端、突然動きが俊敏になった。
【攻撃の勢いが追いつかない…このままだと、】
シロが危惧した通り、彼はシロの攻撃の間にカウンターを仕込みながら自身の余裕を作りはじめた。
そして何度かの攻防の後、彼はカウンターでシロを吹き飛ばした。
「ぐぅ、」
地面に転がることになったシロはすぐに立ち上がって近くの気の影に隠れる。なぜなら1秒でも隙を見せれば弾は装填され、こちらに標準を合わせてくるからだ、初動の時とは違うスピード、それくらいはやってのけてもおかしくはない。
パァン!
シロはギリギリで弾丸を木で受け止めるもすぐに男は移動して彼女に標準を合わせる。
パァン!
今度は木の上へ飛ぶことで回避したが彼が引き金を止めることはない、完全に攻守は逆転した。
【わかってはいたけどやっぱり厄介…。】
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そしてもう一方。スキンヘッドの強面な男とラウルーレンスは遠くから鳴り響く銃声を気にするラウルに男が怒りを込み上げる。
「俺が目の前にいるのにあっちが気になるかぁ?」
「そりゃあそうだろ。あんなモノなりふり構わずぶっ放す奴を相手させてるんだから。」
「まずは自分の身の安全を考えた方がいいぜ?」
「一般人だろうが関係ねぇ24番捕獲の邪魔をするならキチンと処理するしかねぇな?」
"岩腕"
自らの拳から肩にかけて男は岩の装甲を張り巡らせた。硬い盾は一種の攻撃にもなる。その考えはラウルーレンスも持ち合わせていた。
「俺と似たようなことするんだな。便利だよなそれ。」
"鋼の籠手"
鋼の鎧を腕に纏い、握りしめて感覚を確認する。
「鋼と岩、どっちが硬いのか決めようか!」
そしてお互いの拳がぶつかり合う。
鋼と岩、どちらが硬いのか、ぶつかり合った瞬間、岩の腕にヒビが入った。
「よっし!」
しかしこう着状態になった途端、鋼の鎧がゆっくりと変形しはじめた、岩が鋼の形を変え始めたのだ。
大きな力がかかった時、最初にヒビが入った岩、それは岩は脆性が鋼よりも弱いからである。
それに対して継続的に力がかかった時、変形を始めた鋼、こうなってしまったのは粘性が岩よりも弱いからである。
【このままだと指が潰れる…!】
危険を察したラウルは拳を受け流して男の脇を取った。
しかし男はラウルの動きを捉えていた。男は近寄ってきたラウルーレンスに腕を振り回して薙ぎ払った。
ラウルーレンスはすんでのところでかわして地面に着いた手を支点に男の顔面へ蹴りを入れる。
"鋼の鉄靴"
鋼の靴は必死に顔を覆った岩を砕き、勢いは衰えたが確かに男の顔面を蹴り抜いた。
「グウゥ…!」
頭蓋骨に少しヒビが入ったと思う、それほどの強力な攻撃の手応えが確かにあった。
それでも男は怯むことなくうめき声を上げながらふたまわりは大きくなった腕を振りまわして木々を薙ぎ倒しながらラウルーレンスに迫った。
【ここであの力を使うわけにはいかない。万が一のためにも極力体力は温存して戦いたいのに…】
目の前の男は一筋縄ではいかない、一度拮抗した状態になれば押されるのはこちらだ、かといって連続打撃を出来るほどの連続攻撃は肉体を魔力強化をお互い出来ることを踏まえるとリスクが出てくる。
【岩の装甲を剥がしてそこに決定打を与える。】
【これしかない、!】
装甲を剥がすことは出来る、ならばその決定打は?殺さない程度で尚且つ気絶する程度の丁度いい威力を出せる魔術。
俺のナイフでは肉の壁に阻まれるか、急所を抉って仕舞えば致命傷になってしまうのでナイフはNGだ。
ひとつ案が浮かんだ。あの男の巨体にそれほどのダメージを与えるには内側まで攻撃を到達させることの出来る雷系の魔術を使うしかない。
だが俺はそこまで雷系の魔術は扱いに長けていない上に相手はシロの話から察するに戦場を生き抜いてきた猛者なのだろう。だからまず相手を水で濡らしてから感電させるしかない。
つまり岩の装甲を剥がして水で濡らし、その上で感電させる。
言うは易し、ラウルは多方向から攻めて装甲を剥がしていくが、すぐに相手が振り払って修復を始めるので水で濡らすことすらままならない、せめて雨でも降ってくれれば話は別なのだが…。
【て、そんなありもしないこと考えても無駄だ。それよりも早くコイツをどうにかしてシロの増援に行かないと…。】
「オラオラ!足りねぇなぁ!もっとガツガツ来いよ!つまらねぇだろ!!」
相手は自らの武装の先にある本体に俺の攻撃が届くことはないと完全に油断して煽りを入れてくる。
「お望み通り行ってやるよ!」
挑発に乗ったわけではないがこれ以上コイツに時間を使うわけにはいかない…。
ならば強引な手段を取らざるを得ない。
ラウルは迫り来る岩の拳を受け流してその腕にしがみついて振り払おうとする動きを利用して男の頭上に飛び上がった。
"鋼の鉄靴"
踵落としを頭を覆う岩を砕き、流れるように両手に控えた水の弾を彼のスキンヘッドにぶち込んだ。
"水球"
「なんだよ冷てぇな!」
男は宙にいるラウルをノールックで岩の両手で掴みかかる、胴体を掴まれたラウルはピンチに見えたがその手は彼の濡れた頭に既に触れていた。
「これで終いだ、落ちろ!!!」
"電圧指"
全身の筋肉が収縮が激しくなり男は耐えられないほどの衝撃に苦しみながら叫ぶことしかできなかった。
「はぁはぁ…ふぅ。」
装甲が剥がれるとラウルは触れていた手を離した、そして崩れ落ちるように地面に倒れ込んだ男を見て呼吸を整えた。
「勝った…とりあえずこの様子だと目を覚ましはしないだろうけど一応拘束はしとかないとな…」
"拘束"
縄で両手両足を縛りつけて木に縛りつけたところでまた森の奥からは銃声が何発も鳴っていた。
「これだけ騒いでてもまだ来ないのかよ、ラフィは…!」
ここへ来る直前に石塔の扉を叩いた理由。それは石塔の錬金術師に最悪の事態になってもどうにか大丈夫なように俺たちの現状を知らせたかったからだった。
石塔の錬金術師は街中に目を持っている。それはこの学園も例外ではない。ならばここで起きている戦闘にも気づいているはずなのだ…。
おそらくこれほど大きな銃声。いくら森の中だとは言ってもアイツなら探知してくれるはずだ。
なのに…
「どうして誰も来ない…。何か間違ってるか…?だってアイツは…。」
いや…。もうこうなれば助けに期待するのはやめた方がいい。だったら俺が速くシロフキンシエの所へ行かなくては…。




