3-20 森に鳴り響く銃声
魔術の講義が行われる教室に着くと既に前回座っていた席に多くの人は座っていた。
席は自由のはずだったのだがある意味固定化したらしい。
「お、シロにラウル!」
以前俺たちが座っていた席に目をやると前回と同じ席に座っているジルグとルキナと目が合った。
「一緒にきたんですか?珍しい組み合わせですね。」
前回と同じ席に座るとルキナは興味津々そうにそう聞いてきた。
「珍しいって…まだそんなにお前も交流の機会ないだろ。」
「そんなことないですよ!既にシロとは一度一緒にお買い物しに行ったんですから。」
「それで言うと私とシロさんは同じ錬金術の講義を受けてますね。」
「もしかして俺が1番シロと縁がなかったのか…?」
「まぁそうだね。ジルグもルキナも何度か面識はあったけどラウルとは雑貨店の時と前回の講義の時と昨日のやつだけだったね。」
自分のいないところでも世界は動いているんだと改めて気付かされたような気がした。
「まぁそういうことですよ。ラウル♪」
ルキナは頬杖をつきながらマウントを取るようにそう言った。
「お前はそれよりも明後日のことを心配した方がいいんじゃないか?どうやらfirst grade fightは分野を選べるらしいからどれを選ぶのも勝手だけど恥かかないようにしろよな。」
「ふん、!そんなことわかってますよ!」
タイムリーな話題を出して仕返し的な気持ちもあったが想像通りうまくいき、彼女はそっぽを向いて拗ねてしまった。
こうなると後々のケアが面倒くさいと思うのだが、そこは何か食べさせるだけで大抵のことはどうにでもなるので彼女の体質に感謝している。
「あ、そういえば。」
何か思い出したようにジルグは自らのカバンを漁り始めて赤い宝石のような正八面体の小さな石を取り出した。
「ジルグ。なんですかその赤い石?」
「これはゴーレムの設計図みたいなものだよ。これをゴーレムの肉体となる岩や鉱石と組み合わせるとこの石はゴーレムの核となり組み合わせた物質で肉体を作るんです。」
「なんでそんなものを?」
ルキナが興味津々そうに見つめている石は確かに赤い宝石のようで綺麗だった。それでとなぜここでそのようなものを取り出したのか気になった。
「実はこれシロさんにこの前頼まれてたんですよ。first grade fightの練習のために出来るだけ硬いゴーレムが欲しいからそのためのゴーレム生成石を作って欲しいって。」
「ゴーレムの硬さは設計図3割素材7割なのでそこは自分で用意して下さいね。」
「わかった。ありがとう。」
シロは差し出された石を受け取ってポケットに入れた。
その時、扉が開かれて講師であるラッセル・ロックマイアーが入ってきた。
「席につけ。講義を始める。」
「今日は権利と魔法陣について教える。」
「まず権利とはこの世界にある万物、概念の集合体とでも思えばいい。そして権利は人や物に宿ることがある。例えば水の権利があるとしよう。もしそれを人間が享受したとしたらその者は権者と呼ばれ、水に関するものの事象を扱うことができる。簡単にいうなら水系統の魔術を素人でも扱えるということだな。そしてその場合……」
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「それでは今日の講義を終了する。次回の講義はfirst grade fightが終わってからだ。皆にとっては初めてのイベントだろう。だが生半可な気持ちで臨めば痛い目を見る。それだけは教えておこう。」
そう告げると彼はそそくさと教室から出て行った。
「権利ですかぁ。私も欲しいですね…。だって楽してその道を極められるってことじゃないですか?」
「そうだろうがそう良いことばかりじゃないと思うぞ…。」
「実際に権利を収集する組織も存在するって噂ですしそんな大層なものを自衛能力がない人が授かってしまえば危険な目に逢うかもしれませんからね。」
「まぁまぁ、話もそのくらいにしてどう?この後星の食卓でご飯でも食べに行かない?」
「ご飯ですか!?」
シロの誘いに真っ先に目を輝かせたのは言わずもがなルキナだった。机から身を乗り出すほどの食への欲求は凄まじいものだと思った。
「ハハ、そんなにお腹空いてたんだ?」
「2人はどうする?」
「折角なのでご一緒しましょうかね。」
「俺も行こうかな。次の講義まで暇だし。」
確かに暇なのは事実だ、だが、本命はシロの安全を守ること。それを理解していたのか彼女は誘う時に目線で着いてきてと言っていた。
「おお!それじゃあみんなで食べに行きましょー!」
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「何食べます?お肉?お魚?私は食べたいものが多すぎて迷ってます!」
「ルキナさんはそう言ってても結局全部選ぶんでしょう?」
「わかってるじゃないですかジルグ!私は食事に関しては強欲ですよぉ〜!」
食堂へ向かう道すがら談笑する2人をよそ目にシロは自分に向かう視線を感じ取っていた。
「ラウルーレンス。」
小声で囁きながら彼女は服の裾を軽く引っ張った、低い声のトーンでなんとなく察しがついた。おそらく奴らに見られているのだろう。
「ごめん!2人とも!私とラウル教室に忘れ物しちゃったから取りに行ってくる!先に食べてていいからー!」
彼女は俺の手を掴み、引っ張っていきながらルキナとジルグに走りながらそう告げて2人から離れた。
「あの2人まで巻き込むわけにはいかないからね、2人には悪いけど行くよラウル!」
「で?敵はどこにいるんだ?」
「こんな人のいるところじゃ出てこない。」
「襲ってくるまで待とうかと思ってたけどやっぱりこっちから誘おうか。」
「だったらちょっと寄り道していいか?なに、すぐに終わるから!」
その問いに彼女はコクリと会釈してラウルが先導する形に変わった、彼が向かった先は石塔だった、2人が石塔の前を通りがかる瞬間、ラウルはドアをたまたま拳が当たったかのように軽く叩いて走り去った。
「よし、多分これで大丈夫。後は任せる!」
「石塔?まぁ詳しいことを今聞いてる場合じゃないよね。着いてきて!森へ行くよ!」
昨日の森へ入って行くと後ろから茂みをかき分ける音が聞こえた。
「来たみたい。私のこと助けてくれるんでしょ?」
「私は平穏で楽しい日常を早く過ごしたいの。だから今ここで決着をつけるよ!」
「昨日の今日でか…」
「だからこそでしょ?こういうのは意表をつかないと。」
「後ろからついてくる音は3つ。昨日と変わらないみたい。もう少ししたら数的不利をなんとかするために私は潜伏して1人を倒すから囮は任せたよ。」
相槌を打つと彼女は軽い身のこなしで木の上へと登っていき木の上から後をついてきた。
しばらく進んで行くと俺は巨岩の壁にぶち当たった。
「ここだな…。」
ラウルは立ち止まって後ろを振り向いた。茂みがガサゴソと揺れるとすぐに3人の男たちが出てきた。
「昨日のガキ1人か?」
「お前に用はないんだよ。さっさとあの女を出せ!」
そう叫ぶ男の後ろからひとつの影がゆっくりと姿を現した。
「お前の後ろだよっ!」
シロは彼の後ろに音もなく現れて勢いよく彼の背中を蹴り飛ばした。吹き飛ばされた男の体はラウルの後ろの巨岩の突き刺さり、彼と一緒に赤く光る石も彼女は投げ飛ばしていた。
「ぐふぅ、!」
「なんだ、?」
赤い石は岩にめり込んでいき、岩の体を形成していった。
「ソイツを拘束しろ!」
完全に身体を得た男の二倍の背丈を持つゴーレムはシロの言葉の通りに壁に突き刺さった男を大きな腕で抱きつきながら拘束した。
「24番!」
茫然とその様子を見ていた2人は状況を判断するとすぐにジャケットに隠していたナイフを手に取ってシロに突き刺そうとした。
「させるか!」
"鋼の籠手"
ラウルの腕に纏われた鋼の鎧でナイフを弾いてそのまま回し蹴りを放つ。突然の横槍に反応が遅れた相手は避けることはできないと判断したのかすぐに両腕で受ける体勢に入っていたため胴を蹴り抜くことは出来なかった。
そして状況は自然に一対一が2つ出来るという形になった。しかしシロフキンシエにとってはいい状況とはいえなかったからだ。本当ならラウルーレンスにこっちの相手をしてほしいくらいに…。
「24番。久しぶりだな…。」
青髪の毒々しい雰囲気を纏った中年初め頃の男は懐からダブルバレルのショットガンを背中から取り出した。
「そんなものをジャケットの下に隠すなんて…。」
男は後ろに飛びながら中折れ式のショットガンに弾薬を詰め込んでそのままシロに標準を合わせようとした、そのまま撃たせまいとシロも男に瞬時に詰め寄る。
「裏切り者、脱走兵には悲惨な結末を迎えてもらう…。」
バァン!と空気を揺らして心臓の奥にまで届くような銃声が森の中に鳴り響いた。




