第149話 解決の糸口
(▼固定)
――――free chat 211――――
172 名無し(e38384e383_a0e382ae)
☆間宵紬
・異迷ツムリの前世
・アイドルグループ『スターライト』に所属(1年前に解散)
〜〜続きを読む〜〜
――――free chat 213――――
251 名無し(e382a6e383_a9e3838e)
歌って戻るまでに投票、結果だけ異迷ツムリも見る感じね
配信の流れわかりやすくて助かるわ
252 名無し(e38397e383_abe38388)
投票結果確認のタイミングならほぼ確実にコメント欄見そうだなこれ
253 名無し(e382b0e383_ace382a4)
投下するならそのタイミングかな?
254 名無し(e382a2e383_abe3839e)
さてさてどんな反応見せてくれるか
255 名無し(e382a6e383_a9e3838e)
モデレーター仕事早すぎwwさすが大手事務所ww
256 名無し(e38397e383_abe38388)
でもこの反応ほぼ黒じゃね?
あれ以降異迷ツムリ喋らなくなったしな
257 名無し(e382a6e383_a9e3838e)
カチュアの偽物出てきたのは助けたってこと?
別人格とか言ってたの虚言じゃないん?w
258 名無し(e382a2e383_abe3839e)
知らんw
でも情報の信憑性ちょっと上がったし、このまま揺さぶってボロ出させようぜ
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「ほんっっ……と終わってんナ。コイツラ」
「事前に見ていたおかげですぐにブロックできましたが……マズイですわね。まさか配信中まで手を出してくるとは」
同じサイトを見ながら話し合う。
会員制掲示板サイト『ワンダーランド』。
面白半分で異迷ツムリを付け狙う下衆共の話し合いを。
「結局リーク元とやらは例のアイドル事務所なのデスか?」
「間違いないね。調査依頼したら情報の発信元も事務所のパソコンだったみたい」
「アイドル事務所って言うと……ツムリの実兄の?」
「うん……身内でも容疑者の一人になっちゃうよね」
ルナは浮かんだ疑問に答え、話題に上がった男の関係者について触れる。
「ということで、その間宵解斗さんと最近コソコソ会ってたらしい人物に話を聞くことにしました♪ 通話参加できますかー?」
呼びかけると既に通話中だったのか、ルナの端末からミュートの解除音が聞こえた。
「聞こえてるよ。久しいね皆。灰羽だ」
「ああ、貴女でしたか。それで? 今度は何を企んでいるんですの?」
「企むだなんて……いや、疑われても仕方ないことをした自覚はある。無条件で信じてくれとは言えないが、アタシは何も企んでいないとだけ」
ロカの冗談交じりの質問に苦笑する灰羽。
続いて彼女の言葉尻にセンカが食いついた。
「アタシはってことは、間宵解斗はどうなんダ?」
「……完全に否定はできない。しかし聞いた話によると……」
灰羽は本人から聞いた話をこの場で伝える。
自分が頼まれたこと、間宵解斗の企みについて。
「そういうことだから、この件とは無関係の企みだよ」
「あー……なら様子見でもいいのかな。紛らわしいことしてくれるなぁ」
「それに、彼は妹の幸せを心から願っている。見ず知らずの人間に情報をばら撒くような男じゃないよ」
容疑をかけられた男を庇う。
もちろん灰羽がグルの可能性も考えられた。
「じゃあさ、お兄さんにも協力お願いできる? 犯人探し」
「それはもちろん。彼自身不本意だろうからね。自分の事務所にそんな人間が居るなんて」
快諾する灰羽を見て、ホッと胸をなで下ろす。
「事務所側はそれでいいとして、炎上を玩具にしようとしてる不届き者たちはこっちでなんとかしないとね」
「なんとか……できるものなんデスか?」
「そこは私におまかせあれ♪ 残りは個人のヤンチャ小僧共っぽいからね。ウチに喧嘩売るとどうなるか、キッチリわからせてやりますよって」
「既に策もありそうな顔ですわね。そちらら任せましたわ」
自信満々に答えるルナ。
その様子はかつて導化師と呼ばれていた頃のことを思い出させる。
「ワタクシ達は残りの問題……異迷ツムリと向き合いましょうか」
「ダナー。今回はかなり進歩あったみたいダシ」
「うん。さっきカチュたんにも聞いた通り、カチュア/レプリカが出てくることはもう無さそうだね」
ここでようやく渦中の人間について触れる。
前回の配信について、先程本人達から聴取した内容を元に話し始めた。
「これでほぼ確定。あの子のレプリカは……自分に代役が務まらないと自覚した瞬間に、『成れ』なくなる」
異迷ツムリの別人格、レプリカ。
その弱点について考察する。
「具体的には何するんダ? 真似できないことすれば良いってことカ?」
「うーん……それじゃちょっと足りないかも。ダークくんの大食いは真似できなくても気にしなかったみたいだし。もっと根幹の、それを真似ないとその人とは呼べないような部分……」
誰の言うことにも耳を貸さない、半暴走状態の異迷ツムリ。
彼女を止めるための糸口、ようやく見つけた綻び。
「その人一番の魅力で差をつければ――――あの子のレプリカを止められるはず」
◇
「と、アルマ氏は言っていましたが……中々に難題ですな」
真繰ネプは振り返るように呟く。
先日の配信について、アルマこと四条ルナへの報告のために集まったメンバー。
そこでルナが言及した、異迷ツムリの対抗策について。
「魅力って言うてもどの方向目指せばええんやろ? 好みなんて人それぞれ違うやろし」
「ふむ……ツムリ氏はアイドルに憧れてブイアクトに入ったそうで。ならアイドルらしさも一つの指標に入るのかもしれませんな」
「アイドルらしさなぁ。それアンタが一番似合わなさそうやない?」
「自覚しておりますとも……。これでもVになる前はダンサー志望でアイドルまがいのこともしていたのですが」
「今聞いても想像つかんなぁ。アイドル時代のアンタ」
「とはいえ考えなくてはなりませんな。折角見つけた解決の糸口ですので」
雑談混じりに、今自分が後輩のためにできることを模索する。
「ウチらはいくらでもやりようあるけど……プルトはどうするん? 活動しとらんと魅力見せる場もないやん」
「……私のことはお気になさらず。引退した身ですから」
「いやウチが気にするんやて。……その感じ、ツムリちゃんに許可したってホントなん?」
マネージャーかつ元タレントとして話し合いに参加していた山文プルト。
彼女もまた、異迷ツムリの中にレプリカがいる以上無関係ではない。
しかし彼女自身の意見は……。
「そもそも山文プルトは事務所の知的財産です。私だってプルトを名乗るには許可が必要、事務所が黙認しているのなら私が止めるのは筋違いでしょう」
「うわぁ絶対言うと思った……。けどそういうことやないやん。権利とかお堅いことより先に、アンタの気持ちはどうなん?」
論理的に判断を下したプルト。
しかしウラノの追及に思うところはあるらしい。
「……さすがに、良い気分とは言えませんね」
「なら最初からそう言えばええやん」
「昔から変わりませんなぁ。周りのことばかり優先して我慢する性格は」
彼女をよく知る元同期はその反応に呆れる。
「そうでもありませんよ。一つだけ、ワガママを言わせてもらいました」
それでも、昔のままではないと言いたげに付け加えた。
「『山文プルトを名乗るのは構いません。けど皆さんとの関係値は0から始めるように』と。……私の交友関係はプルトではなく私のものですから。友達も……恋人も」
「「おおー……」」
「意味ありげに感嘆しないでください……顔が熱い」
臭いセリフに恥ずかしがる女性。
それでも、2人はその答え聞いて嬉しそうに微笑んだ。
「うん……決めた。これからは配信でもアンタの話するわ」
明るい顔つきになったウラノが宣言する。
「ファンが思い出せる場所作ればツムリちゃんが真似する理由もなくなるんやろ? ならウチが山文プルトを語り継ぐ」
「ふむ……1人の意見では情報に偏りが生まれそうですな。その語り部役、真繰も一枚噛ませてもらいましょう」
「ネプさんまで? 流石にちょっと恥ずかしいのですが……」
「ええやろ? ツムリちゃんには許可したんやし」
「それはそうですけど……」
やんわりと抵抗しつつも、満更でもなさそうな表情。
そんな仲睦まじい光景を眺めていた外野が声をかける。
「……話はまとまったか? アルマへの報告も終わったしそろそろ帰りたいのだが」
「仲良し、いいね。蚊帳の外は、ちょっと寂しいけど」
「あ、すみません2人とも。送迎します」
「ああ。よろしく頼む」
会話に区切りをつけ、魔霧ティアのマネージャーでもある彼女は2人を連れて車を走らせた。
…………。
「ティア。今日は随分ボロボロだったな。あの歌はなんだ?」
静かな車内、いつも通りの不遜な言い口。
問いの内容も相まって、説教じみた空気になる。
「……急に師匠ヅラ、するね」
「茶化しても無駄だ。最近は特に感じるよ……貴殿の歌には焦りが見える」
「……むぅ。なんで、わかるの?」
「師匠だからな」
「うん……ホントに師匠みたい。今は」
言い逃れも許してもらえず、鋭い指摘に顔を歪める。
観念したティアはポツリポツリと話し始めた。
「……最近、歌う機会、たくさんもらえる。オリジナル曲と、天泣地踏のおかげ」
己の活動環境の変化、その原因。
そして、変化によってもたらされた影響。
「毎日喋って、歌って、何回も収録し直して。VTuverって……たくさん喉、使うね」
「ああ……ん? 喉ってまさか?」
「喉、元々強くない。最近、喘息の周期も、早くなってきて……」
段々と話すペースがゆっくりになるティア。
それだけ言いにくいことなのか、カチュアは彼女が何を言いたいのか、途中で察してしまった。
「たぶん、ティアが一番最初に、辞める」
その一言に、車内はさらに静まる。
辞めると言っても自分の意志ではなく身体事情によるもの。
だからこそ、引き止める余地すらない。
「プルト。マネージャーとしての見解は?」
「……病院にも付き添ってます。タレント寿命が短いことは前から聞いていました」
驚く様子もなく、淡々と答える魔霧ティアのマネージャー。
しかしそれは無感情というわけではなく……。
「それでも私は……最後まで応援するだけです。魔霧ティアのマネージャーとして、ファン第一号として」
「そうか……貴殿らが納得しているのならそれで良い」
強く想っているからこそ、覚悟もできていると。
そう感じたカチュアはそれ以上何も言わなかった。
「マネージャーは、ティアの歌、どっちか分かった?」
「……ノーコメントで」
「推しの声なら、分かるはず?」
「今聞くのはずるいでしょう……後出しで分かったと言い張っても嘘っぽくなるじゃないですか」
「うん。ちょっと意地悪、してみた。ごめんね」
「まったく……」
ティアが珍しく冗談を言う。
彼女なりに重い空気を和ませようと思ったのかもしれない。
「……辞めるまでに、ツムリといっぱい仲良くしたい。辞めた後も、友達で居たい、から」
「ああ。悔いのないようにすると良い」
ツムリとの関係維持にこだわっていた理由を知り、後押しする。
「うん。レプリカのティアも、辞めた後に思い出して貰えるの、良いなって思ってた。……今日まで」
しかし当のティアは既に考えを改めているらしく……。
「話してみて、あの子もティアなんだって、思って。そしたら……ずっとツムリの側に居るの、ずるいなって」
嫉妬。
自分を元に生まれた、友達の別人格に対して。
なんとも言い難い歪な三角関係。
「勝てば、居なくなる。だよね?」
「……そうらしいな」
「ツムリは……悲しむと思う。でもその分、ティアが一緒に居ればいい。魔霧ティアが終わっても、友達で居られるって。マネージャー見てて、分かった」
「……はい。私もそう思います」
変えようのない運命に対し、前向きに生きようと生きる少女。
大人達は優しく同意することしかできない。
「だから今は、ツムリの一番になれるように――――頑張る」
新たな決意を胸に、ティアはレプリカへの敵対を宣言する。




