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レプリカのアイドル~声真似系VTuberが天下をとる話~  作者: 独身ラルゴ
第五章 ハイ信者

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第143話 アルマ達の情報共有

「すみませんー。失敗しちゃいましたー」

「あらら。エル姉さんのやらかしは珍しいね?」


 異迷ツムリとの食事会の翌日。

 ダークら4人はアルマへの報告のため通話していた。


「エル姉なんであんなこと言っちゃうかなー。仲良くなろって集まったのに最後突き放しちゃってたじゃんっ」

「ごめんなさい〜……でもー。実際目の前でキャラ変わり続けるのって想像以上にカオスというかー……頭おかしくなりそうでしたねー」

「う、うーん……それはわかるっ……!」

「それにー。エル達よりツムリちゃんの方が拒絶してませんでしたー? 仲良くしようとしても壁を感じるというかー」

「ワシらのことが信用できなくなってるのかのう。ずっと共に居られる別人格と比べて」

「そうなんスかね……やっぱり」


 実際に話したからこそ伝わる空気感。

 それは4人同様に感じたという。


「でも……自分はもうちょっと頑張ってみたいっス。すぐに信用してもらえるなんて初めから思ってないっスから!」

「言葉より行動で、じゃな。こういうのは時間をかけることに意味が生まれるものじゃ。じっくりコトコト煮詰めていくとするかのう」

「はいー。ウイルスのようにじわじわ侵食していきましょうー。バックドアは多いに越したことありませんからー」

「言葉選び怖いよエル姉。まだちょっと病んでる?」


 1度の挑戦で挫けることなく次を考える。

 それを見たアルマは安堵し、本人たちの意志に任せることにした。


「おっけー報告ありがとう!」

「他メンバーと予定バッティングしないよう調整しとくヨ」

「ありがとっス! センカさん!」


 アルマが属するチームの4期生向出センカ。

 他3チームの調整役を担ってくれている。


「あっ最後に1個だけ! エル姉さんには言ったけど……ムルちゃはまだツムリちゃんに会わせない方がいいかも」

「え? どうしてっスか?」

「なんて説明しようかな……そだ。前の『レプリカの歌枠』で出てこなかった人、2人居たんだけど誰か分かる? はいロカちん!」」

「貴女、困ったらワタクシに答えさせますわよね……導化師アルマと紅月ムルシェ、ですわね」


 突然クイズ形式で話を進め始めるアルマ。

 そして次の問を別の人に託す。

 

「だねー。じゃあどうして出さなかったと思う? 今度はサイさん!」

「ウーン……やっぱり休止中だからデスかね?」

「それならもう1人気にならない? 山文プルト。引退した人は出てきたのに休止中の人は出でこなかったんだよね」

「確かに妙ですわね」

「ここからは私の予想だけど……解像度が低かったんじゃないかな。導化師を辞めたアルマ、自ら休止の道を選んだムルちゃ。その考えが理解できなくて、昔のままアップデートできてない」


 単なる予想、されど元導化師の言葉。

 アルマの言葉を疑う者はその場に誰一人として居なかった。


「要はにわか晒すのが怖かったんだよ。歌みたMVと違って歌枠はトークも必要だからさ。……アルマについては別の理由もありそうだけどね」

「じゃー今ムルちゃ会わせないのは、最新情報与えてコピーされちゃうかもしれないからってこと?」

「おっニオち大せいかーい♪ あの子が理解できない存在はキーカードになるかもしれないからね。ここぞって時の切り札に残したいんだ」


 理解の早いニオの質問に明るく答え、皆も納得する。


「ご忠告承りましたー。その『ここぞ』ってタイミングもムルちゃと相談してみますねー」

「ありがとねー。何か思いついたらいつでも相談待ってまーす♪」


 エルの返事を最後に、久茂ダークのチームは通話から退出した。

 アルマも通話を終了させ、現実に集まった3人に向き直る。


「さてさて。第一陣が終わったところで次の予定だね」

「仲良くなって別の道へ誘導する作戦、ダークさん達が最も平和的な糸口ですが……どうしても時間がかかりそうですわね」

「シューコのチームはバチバチにやり合うデショウし、最悪大きな溝ができそうデスから最後にするとシテ……」

「じゃあ次はティアのチームだナ。声かけとくカ」

「お願いしまーす」


 センカ率いるチーム、アルマ、ロカ、サイコが話し合う。

 ツムリと直接やり取りする他3チームの調整について。


「ティアちゃんの目標は……現状維持しつつ叩かれないようにする、かぁ」

「一番現実味がありませんわね……」

「それもカチュアの作戦デスし。正直かなり不安デスね」

「あ、カチュたんなら逐一フォローしてるから大丈夫だよ。なんならウラのんのことお願いしたのも私だし」

「そうなのデスか?」


 またアルマが裏で糸を引いているような発言をする。

 最早慣れきった面々は特に言及せず彼女の話を聞く。


「メンバーの中でも今のツムりんに一番不満持ってるのってウラのんだからさ。不満伝えるのも今のツムりんにとっては大事な役目なんだけど、正しく伝えないとただの敵対行動になっちゃうからね」

「なるほど……最も不安定ですが、上手くいけばツムリの意識を大きく変えられる。博打のような役目ですわね」

「……そのチームの手綱握るの、ホントにカチュアで大丈夫なんデスか?」

「う、うーん……大丈夫、だと、思うよ? たぶん?」

「最後の最後で不安にさせるのやめてくださいます?」


 3人の同期、1期生カチュア・ロマノフ。

 彼女の性格を理解した上で口を濁す。


「まーまー。心配しても仕方ないしここは各々に任せて、今は私達にできることをしよっか♪ それではセンカ隊長。我々の目標を教えて下さい!」

「ウム。よかロウ」

「緊張感が足りませんわね……」

「マアマア。楽しくて良いじゃないデスか」


 マイペースに話しているように見せるアルマとセンカ。

 しかし脱線することなく話は進行する、互いに相性の良さを実感していた。


「アルちゃん先輩と相談して決めた方針だヨ。ひとまず、ブイアクトの信用回復は結局ツムリをどうにかしないとイタチごっこダ。今は悪化を防ぐための裏方仕事を2つやるヨ。1つは他3チームのフォロー、現在進行系でやってることだナ」

「ええ。3チームとも方向性が違いすぎて衝突すると大惨事ですから、仕方ありませんわね」

「そんでもう1つは不穏分子の対策ダ」

「不穏分子、デスか?」

「アルちゃん先輩。説明ヨロ」

「はーい。ロカちんには前話したんだけど、"ワンダーランド"って会員制サイトがあってね? ――――」


 流れるように入る説明。

 以前ロカに話した、有名人のスキャンダルなどを追う裏掲示板のようなサイト。

 その場で一人知らなかったサイコが反応する。


「ナルホド……なかなか厄介そうな方々デスね」

「アンチスレなら他にもいくらでもあるけどね。特にそのサイトの動きが最近不味そうでねぇ……」

「何かありましたの?」

「いやね……なんかツムりんのアイドル時代の情報とかリークされてて」

「それは……」


 アルマの話から事の重大さを理解し始める。

 それこそ山文プルトの二の舞、そうなれば説得どころの話ではない。


「もちろん一人が言ってるだけで真偽不確かって感じなんだけど、情報の裏取りとか動き始めちゃってるみたいで」

「表に出る前に対処しないと、今ツムリのためにやってることも全部無駄になるってわけダナ」

「一旦発信元の開示とかはグレイ経由で事務所にお願いしといたから。判明するまでは待ちかな」

「ああ、灰羽元社長……では彼女の報告待ちですのね」


 話の全容が見え、ようやく今後の動きを理解し始める。


「裁判とか悠長なこと言ってたら間に合わないかもしれないから、最悪自分達でお話しに行く必要があるかも?」

「話なんて聞いてもらえマスかね? そんな厄介集団に」

「んー……私の予想通りならね」


 あくまで予想と前置きする。

 しかし現状、アルマの予想以上に信頼できる情報はない。

 そんな彼女の言葉に耳を傾ける。


「マイナーアイドルの頃のことリークする人なんてさ、事務所の関係者くらいしか居ないんじゃないかな?」





◇




 とあるアイドル事務所。

 そこに所属するプロデューサーの男は、一人の女性を来客として迎えていた。


「わざわざ呼び出して昔話に花を咲かせよう、という感じでもないのだろう。電話じゃ話しにくいことかな」

「ええ。こういうことは顔を合わせて話すべきかと思いまして」


 間宵解斗と、彼の事務所に招かれた灰羽メイ。

 ずっと男に避けられていたこともあって、直接会うのは随分久々のことだった。

 しかし明るい話でないことは理解している。


「アタシを恨んでいる。そうだね?」

「……否定はしません」


 男は感情を乱すことなく、ただ静かに頷く。

 その返答に灰羽は重苦しい表情を浮かべ、頭を下げた。


「本当に申し訳なく思っている。アタシのワガママで……君の妹を狂わせてしまった」

「……全ての責任が貴女にあるとは思ってません。私も厄介事に巻き込んでしまった自覚はある」


 憤ることもせず、ただ淡々と想いを述べる。

 既に反省の意を示している彼女にそれは必要ないと思ったから。


「それでも……灰羽さん。償いの気持ちはありますか?」


 ただし、反省していれば良いと言うものでもない。

 許すかどうかは返答次第、そんな意図を匂わせる。


「ああ。結果的に恩を仇で返してしまった……君が望むならなんだってしよう」


 灰羽ならそう答えてくれると思っていた。

 彼女は自分に恩義を感じている。罪悪を感じている。

 私は……その感情を利用する。


「では一つ、ご協力いただきたいことがあります」


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