第140話 4期生の衝突
「はぁいみなさんこんばんわぁ。今話題沸騰……しすぎて空焚き炎上中の異迷ツムリですぅ」
《おっそうだな()》
《うーんこのブラックジョーク焦げ臭すぎる……》
《よく平気な顔して配信できるよね》
「コメントも中々の荒れ具合ですねぇ。文句言いながらも見に来るのは野次馬根性でしょうかぁ?」
《この煽りカタツムリw火に油注ぎ始めたぞww》
《あれ? 今日はコメント読まれる日?》
《やーい特級呪物ー》
《なんで辞めないの?》
「その程度の誹謗中傷じゃ効きませんねぇ! あ、ライン越えの発言は容赦なく開示請求する所存ですのでお気をつけてぇ」
《うおw最強カード切ってきたw》
《でも正しい対応ではあるwたくましくなったなぁ》
《クソ雑魚メンタルだった頃が懐かしいぜ……》
「お喋りはこのくらいにしておきましょうかぁ。今日は異迷ツムリchの歌枠なんですがぁ。私の出番はここまでですぅ。ではバトンタッチしますねぇ」
《チャンネル主が一曲も歌わない歌枠マ?》
《バトンタッチって言っても人が変わるわけじゃないしな……》
「"歌と言えば? そう。カチュアだな"」
《うーん妥当ではある》
《本物……じゃないんだよな?》
「"本物か偽物か、そんなことは些末な問題だ。少なくともここにいるカチュア・ロマノフは唯一人。そして……歌声は嘘をつかない"」
《うわ言いそうすぎるw》
《偽物でも歌上手いのは本当っぽいし》
「"あ、そういえばその偽物という総称。いい加減呼びにくいだろうと思って勝手に俗称をつけさせてもらった。今後我々のことは……『レプリカ』と。カチュア個人であればカチュア・ロマノフ/レプリカとでも呼んでくれ給え。……一応言っておくが、提案者はツララ/レプリカだ"」
《うん。ツラたんはそういうことする》
《よりによって社名かよ……皮肉エっグい》
「それでは我々レプリカによる歌枠、ここに開幕を宣言する。カチュアの歌、心して聞け。――――ゆくぞ!!」
◇
4期生は定期的に集合している。
ただし一人を除いて。
目的はその一人、異迷ツムリに関する作戦会議。
「見てて苦しかったっスね……かなり」
「あんなコメントお通夜な歌枠見たことないわよ」
話題は先日の異迷ツムリchの配信について。
『レプリカの歌枠』は大きな反響を産んだ。
異迷ツムリの内に存在する『レプリカ』達、それらがリアルタイムでトークして歌って、視聴者たちはその存在を再認識した。
「でも後半の方、楽しんでるやつ結構多かったナ。半分くらいアンチみたいな悪ノリだケド」
「ちょこっとずつ、慣れてきてる人いる。そのうち、これが普通になる、のかな?」
多種多様な個性の歌声は人々を惑わした。
間違った行いと理解していても魅了されてしまう、称賛に値する能力。
いつか人々の否定を、肯定が上回ってしまう日が来るのか……。
「普通にして良いわけないでしょ。そうなる前に……」
「そうっスよ! 早くツムリさんのこと……」
手遅れになる前にと意気込んだシューコとダークは同時に声を上げる。
「叩き潰してやらないと」
「助けてあげないと!!」
「「ん?」」
正反対の意見にお互い見合う。
「ちょ、シューコさん。叩き潰すなんて物騒な……」
「いや本気だけど? いい加減お灸据えてやらないとね。それに助けるってどうやって?」
「それは……ちゃんと本人に話を聞いてみて解決策を一緒に……」
「自分偽ってたやつに話聞いてなんになるの? また嘘つかれて終わりじゃない?」
質問攻めにタジタジになるダーク。
自分を偽るというのは異迷ツムリの中身、間宵紬が嘘の存在だったこと。
それを知った面々は少なからず不信感を持っていた。
「少なくともアイツがやろうとしてることが本音なら、それが間違ってんだから否定して目ぇ覚まさせるしかないじゃない」
「でも……その間違ってるって言うのは自分達がそう思ってるだけじゃないっスか!」
「は? アンタ、アイツの肩持つ気? そもそもこの中ならアンタこそ一番怒るべきじゃないの? ライブのステージ奪われてる被害者でしょ」
「あ、あれは……ツムリさんは助けるつもりだったと思うし……」
「善意の押し付けって一番厄介よね」
「シューコさん!!」
段々とヒートアップしていく二人。
それを目の前で聞いていたティアが割り込む。
「二人とも、喧嘩は、よくない……よ?」
「ちょっと黙ってて。異迷ツムリの前にコイツ分からせないとダメみたいだから」
「ティアさんすみません……ここは譲れないっス」
「あう……」
止まらない二人に気圧されるティア。
シューコとダークの論争は熱を上げて加速する。
「なんでそんな聞き分け悪いんスか!」
「あんたが聞き分け良すぎんのよ! 許したところでアイツは周りに迷惑掛け続けるに決まってる! ここで一回絞めとくべきなのよ!」
「そんなことしたら折れちゃうかもしんないじゃないっスか! ただでさえ追い詰められてるのに!」
元々一人に対する険悪な空気が4期生全体に広がる。
最早誰にも止められないのか、そう思われたとき、この場に居るはずのない存在の声が届く。
「はいストーーーップ!」
「え? アルマさん!?」
「え!? あ、通話で……」
声の方を見ると、センカが携帯端末のビデオ通話画面を向けていた。
画面に映っているのは四条ルナ、本物の『アルマ』だった。
「お前ラ熱くなりすぎダ。一旦冷静に話し合おうゼ」
「センカちゃんにヘルプ貰ってね。とりあえず第三者の意見、言わせてもらってもいいかな?」
センカの機転で呼ばれた人物、二人の熱を冷ますのには効果的だった。
改めてアルマは二人の考えに言及する。
「ダークくん。シューコちゃんは優しくするだけが助けることじゃないって言いたいんだよ。このままツムりんが無自覚に人を傷つけたら後悔する種が増えちゃうから。それは正してあげないと」
「はいっス……」
「でも今優しくしてあげないと潰れちゃうかもって言うのもその通りだね」
ダークの考えに寄り添った言い方でシューコの考えを説明する。
元々聞き分けの良いダークは素直に引き下がってくれた。
対して気難しい性格のシューコは……。
「シューコちゃんも、言うことはちょっと過激かな。でもこれ以上悪い道に進まないように止めてあげようって、シューコちゃんなりに助けようとしてくれてるんだよね?」
「……別に、シューコは同期がこれ以上他人様に迷惑かけるの見てらんなかっただけなんで」
最推しの手前、牙は抜けているようだが、まだ納得はしてくれていない様子。
「しっかりしてるなぁ……ごめんね。私が助けてあげてって言ったから、色々背負っちゃったかな?」
「そんな!? 確かに力になりたいとは思ってますけど……そんなアルマさんのせいみたいに」
「シューコちゃんもさ。一人で色々考えてくれるけど、それじゃツムりんと一緒じゃないかな? もっとみんなに相談して、みんなの力を借りても良いんだよ」
「……はい」
「「おおー……」」
両者を沈黙させることに成功、それを見ていたティアとセンカは感心の声を上げる。
しかし完全に和解したわけではなく、わだかまりは残っている。
そこでアルマはさらに助け舟を出した。
「ツムりんには二人の優しさも厳しさもどっちも必要だと思うよ。だからね、役割分担しよう」
「役割分担っスか?」
「そ。無理に意見合わせてもツムりんは説得できない。なら同じ意見の人達で集まった方が絶対良いからね。ということで……」
いつの間にかその場を完全に仕切っていたアルマ。
その場での解決は難しいと判断して次の提案をする。
「改めて話し合おっか。先輩たちも交えてね♪」




