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ゲームに召喚されたけど、魔王弱過ぎて平和ですね  作者: 迷子猫
平和と日常

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39 体調を崩した

 エリスさんがお酒に強く、マレンとアンがお酒に弱いことが判明した翌日。 俺はすごい倦怠感に襲われていた。

 体が熱く、頭痛までくる、起き上がるのでさえ地獄のように感じる。

 これら言わずもがな――。


 "風邪だ……"。


 風邪なんて本当に久しぶりだな、中学生の頃になったぶりぐらいだ。 まぁ実際は引きこもりで外に出なかったおかげだけど。


 そして俺は時計を見るともう少しで、メイドの誰かが呼びに来る時間だった。この際誰でも良い、早く風邪だと伝えてあまり近付かないように言わないと。


「ゲホ……! くそ、風邪ってこんなに辛かったか?」


 俺は久しぶりの風邪に苦しみながら待っていると、扉が開いた。


「ソウマさ〜ん、朝食の時間です、よ?」

「あぁ、アズール。ちょっと風邪引いちゃったんだ。 悪いんだけど、他の皆に近付かないように伝えてくれない?」

「なる、ほど……分かりました。あとでお粥と水枕でもお持ちしますね」

「うん、ありがとう」


 アズールとの短い会話を終え、食卓に戻る背中を見送った数分後。食卓からなにやら慌ただしい音が鳴り始めた。

 そして、その音は俺の部屋の前まで続き、俺の部屋の扉がバンっと開かれ、そこから一つの影飛び出す。

 その人物は――。


「ソウマさん!? だ、大丈夫ですか!?」

「エ、エリスさん?」

「か、風邪を引いてしまったのですよね。どうしましょう、どうしましょう……とりあえずお医者様、いえ早く栄養なあるご飯を……」

「エリスさん、落ち着い……」


 俺が興奮しているエリスさんをどうにか落ち着かせようとするが俺の言葉を遮り、エリスさんは言葉を続ける。


「ま、まずお熱を測って……」

「待てエリス」

「え、マレンさん?」

「そう、お前だけが焦って何か言っても分からんだろ」

「た、確かにそうですね、すみません……」

「まずは熱を測ろう」

「いや、マレン?」

「ん? どうした?」

「ゲホ……! お前も何か震えてね?」

「!? う、うるさい!!」


 突然後ろから現れたマレンがエリスさんの肩を掴んで説得した。 なんというか、この光景は俺が召喚された時みたいだ。

 だが、そんなことを言っているマレン心配しているのか肩が小刻み震えている。


「ローホ、体温計を」

「かしこもりました、マレン様!」

「あっ、自分では行かないんだな」

「場所を知らないからな」

「あぁ、なるほど……ゲホ……!」


 自分では取りに行かないところがマレンらしい。そんなマレンに呆れていると、ローホから体温計が届いた。


「どうぞ、ソウマさん」

「ゲホ……! ありがとう」


 見た目は一緒なんだな……。


 ローホから貰った体温計は俺の世界と一緒の見た目をしている、おそらく性能も構造も同じなんだろう。

 そして俺は体温計のボタンを押し、脇に挟む。 数秒後にピピピと体温計が鳴ったので脇から取り出してから体温を見る。


「三十七度八、まぁ風邪だからこれぐらいだよな……ゲホ……!」


 俺が熱を二人に伝えると反応が違う。エリスさんは……。


「た、高いですね、早く栄養がある物を……」


 そしてマレンは……。


「三十七度八、高いのか?」

「エリス様、高いですよ」

「そうなのか?」

「ゲホ……! 風邪引いたことないのか?」

「いや、掛かったことないしな……」

「お前本当に人間か!?」


 マレンの口から出たのは自分が今まで一度も風邪を引いたことのないという発言。


 じゃあなんでさっき震えてたんだよ……。


「ソウマさん、すぐに栄養のある物を作って来ますからね」

「は、はい……ありがとうございます」

「行くぞ、ローホ」

「はい、マレン様」

「……心配掛けるんじゃない」


 そんな誰かの小さな声が聞こえた、気がする……。



       ☆☆☆☆☆☆☆☆



 エリスさんからお粥と水枕を貰った一時間後。 俺の部屋の扉は開かれ、そこには影が複数あった。


「ソウマさん」

「大丈夫」

「ですか?」

「何か」

「いりますか?」

「久しぶりに見たよ、そのコンビネーション。ゲホ……! でも大丈夫だよ」


 現れたのはメイド五人で約半年ぶりのコンビネーションを見せてくれた。

 そんな五人に苦笑いをしながらも俺は大丈夫と応え、風邪が移るといけないから出てと言い、メイド五人もそれに軽く頷いて部屋を出た。

 さらに一時間後また扉が開き、今度は別の影が見えた。


「ご主人様大丈夫ですかー?」

「あぁ、アンか……ゲホ……! 良くはなってないけど、もう慣れたよ」

「それはよかった、何かいるものはありせんか?」

「いや、大丈夫だよ。それより……」

「風邪が移るから近付かない方がいいと?」

「あ、あぁそうだよ」


 俺が言おうとした台詞をアンに先に言われ、呆れつつも肯定する。


「大丈夫ですよ、鬼には病気は移りません」

「そ、そう? ならいっか……」

「あと、多分マレンも移らないですよ」

「え、そうなの?ゲホ……!」

「はい、マレンは多分人間の最高峰みたいなものなので」

「あぁ、なんというかもう分かったよ……」


 どうやらアンから見たマレンは人間の最高傑作みたいなものらしく、風邪や病気にはならないという。

 先ほど、マレンが風邪を引いたことがないと言っていたのも納得がいく。


「でも、長居してはご主人様も休まらないでしょう。私がここらで退室しますねー」

「あぁ、ありがとう。ゲホ……!」

「はい、あぁ……そういえば」

「ん? どうした?」

「これ、どうぞ!!」

「え、これ何!?」


 珍しくアンは俺の体を気遣い、退室しようとした瞬間、アンは何かを思い出したかのように扉の後ろからとんでもない量の肉を取り出し、俺の目の前に置いた。


「肉を食べたら、大体は治ります!」

「どういう理論!?」

「さぁさぁ、って……え?」

「え?」


 アンの言葉が突然止まり、何事かと思った瞬間、アンが壊れたブリキのようにガタガタと後ろを向く。

 そこには異様なオーラを放つエリスさんが立っていた。


「アンヘルさん? ソウマさんのお見舞いなら許しますが、冷蔵庫の中のお肉を全て持って行くのはどうなんですか?」

「エ、エリス!?」

「さぁ、行きましょう」

「ど、どこに……?」

「もちろん、私の書斎です」

「助けてご主人様ー!!」

「……」 


 完全にアンの自業自得なので俺は何も手を貸さない。

 そしてエリスさんに連れて行かれるアンを見送った後、それと交代するかのように今度はマレンが入って来た。


「ソウマ、大丈夫か?」

「騒がしかったけど、大丈夫だよ。ゲホ……!」

「薬を持ってきたんだ、飲むか?」

「飲むけど、大丈夫のやつ?」

「当たり前だ、この前行ってきたリンダーという奴から買ってきたんだぞ」

「あぁ、リンダーのところで……」


 海外とかでも怪しい薬とかがあるので、この世界のはどうなんだろうと考えていたが、マレンはリンダーの店で買ったらしく俺もそれなら安心できる。

 そして俺はマレンから薬を受け取り、水で流し込む。


「……苦」

「薬というのはそういうものじゃないか?」

「まぁ、そうだね」


 なんというか、本当に苦い。まさかだけどリンダーのだからめっちゃ効く薬とかじゃないよね?

 すると突然、俺の体は光だし、徐々に頭痛や咳、喉も痛みが消えた。

 そして光は消えた。


「なぁ、マレン」

「ん?」

「何貰ってきたの?」

「"瞬間絶対治る飲み薬"ていう薬だって言ってたぞ」

「……」


 今度リンダーに感謝を伝えた方がいいのか、怒ったらいいのか分からなくなってきた。 まぁ感謝を伝えたでいいか……。


 その後も一時間ごとに誰かが入って来て、お見舞いしてくれた。


---


「んーあまり、やっぱり変なちょっかい程度じゃ周りがどうにかしちゃうよね」


 その日の夜、謎の少女がエリスの屋敷を遠くから見つめていた。


「じゃあ今度はあれにしようか、ちょっと準備大変だけど」


 それだけを呟き、少女は闇の中に消えた。

最近あまり時間が取れないことが多く、不定期になっています。すみません……。


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