40 水着選び
一晩寝た翌朝、俺の風邪は完全に治っていた。
俺が食卓に向かっているとなにやら食卓が騒がしい。
「ソウマさん、もう大丈夫ですか?」
「はい、もう大丈夫になりました」
「ならよかったです」
「それより、これは……?」
「行くぞ、海に!!」
エリスさんに心配され、大丈夫になったと答えていると隣で「海」と騒いでいるマレンが目に入る。
そんなマレンに俺は問いをかける。
「海ってどういうこと?」
「今は夏だろ、だから行くしかない!」
「夏ね……」
確かにちょっと前から暑くなってきており、夏になったと思ってきている。だが、夏だからといってわざわざ海に行く必要もないと俺は思っている。
海なんて行ったところで体がベタベタになり、帰る時にはヘトヘトだ。そんなになるくらいなら行かない方がマジだ。 なんか、陰キャみたいな発想してないか、俺?
くだらない発想をしていると横からエリスさんが口を挟む。
「マレンさん、海に行くって言っても水着はどうするんですか?」
「水着ぐらいあるぞ?」
「いや、その水着がいつ買ったか覚えてるんですか?」
「五年ぐらい前か?」
「当時十五歳でしょうが貴女」
「まず何人で行くんだ?」
「もちろん全員だ!」
何人で行くのかとマレンに問うと全員と応え、俺はここである疑問点が頭に浮かぶ。
海に行くのは俺は良い、だが水着を俺は持ってない。おそらくアンもだ、メイド達は知らないが……。
そんな俺の疑問を読み取ったのか、エリスさんが代わりにマレンに問いただす。
「その前にマレンさん、皆さんの水着はどうするんですか?」
「そういえばそうだな……、では買いに行くぞ!」
「まずはマレンさんの持っている水着が入るかも確認が必要ですよ」
「大丈夫だ、もう着ておる」
「え?」
すると急にマレンはいつも着ていたマントを脱ぎ捨て、下に着ていた水着を露わにした。
だがその姿に俺達は言葉を失う他なかった。
「マ、マレン……本当にそれで?」
「あぁ!」
「絶対やめておいたほうがいいよ……」
「ん、なぜだ?」
「なぜだとかじゃない、絶対やめて」
今、マレンが着ているのは確かに水着……、だが先ほど言った通り、五年前に買ったものなのだろう。
――水着はギチギチと音を立てながら今にもはち切れんといわんばかりにパツパツである。
マレンは本当にそんな水着で海に行こうとしているのだろうか、まぁ行ったらとりあえず水着が切れてお胸が露わに……いや、いかんいかん。変なことを考えてはいけない。
「とりあえず買いに行こう」
「あるのにか?」
「ソウマさんと同意見です」
「マレン様、お願いですから買いに行きましょう」
だが、こんな中一人、空気も読まずに言葉を発する者が一人。
「いいんじゃない? 動きやすそう」
「たまに良いこと言うな、鬼娘」
「でしょー?」
「お前は入ってくるな!!」
「あいて!?」
とんでも発言をするアンをとりあえず引っ叩き、アン以外の人物の解釈一致で水着を買いに行くことが確定した。
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俺達はマレンを連れ、水着を買いに来た。人数は……俺含め、九人で来ている。
多いな。 まぁ、たまにはこういうのもいいか、これも思い出作りだな。
「そういえばソウマさんも水着買うんですか?」
「えぇ、せっかくですし買ってみようかと」
「……なるほど」
俺もせっかくなのでついでに水着を買うことにことをエリスさんに話すと、エリスさんはなぜか一瞬だけ言葉が詰まったかのように話した。
俺は疑問に思い、問いをかける。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、水着を買うってことはソウマさんもお店に入るんですよね……?」
「えぇ、そうですよ」
「って、ことは……その……」
エリスさんの問いに俺が応えるとエリスさんは突然顔を真っ赤にし、顔を振り始める。 一体どうしたのだろうか。
そんなことを考えていたが、すぐに答えが出た。
「ソウマ、私の水着見てくれるか?」
「……!?」
「あぁ、いいぞ」
俺は隣でさらに顔を真っ赤にしたエリスさんを見て分かった。
なるほど、エリスさんは水着姿を見られたくないのか……。けど、正直エリスさんの水着は気になる……。
そんなワクワクとドキドキを兼ね備えながらエリスさんにとっては地獄であるだろう水着屋に着いた。
「着いた!」
「ご主人様、ちゃんと私の見てくださいよ?」
「わかったって」
「どれにしましょうか」
「ルプラ、これ似合うんじゃない?」
「確かに」
「ソウマさんはどれが好きなんでしょうか」
「私これにする」
「……」
カオス……、という言葉が頭をよぎる。こんな人数で店に来るのは人生初だ。
だが、エリスさんだけは体が固まっている。
「む、無理ですよ……ソウマさんに見せるなんて……」
いや別に……嫌なら見せなくても良いんだけどな……。
そんな様子のエリスさんを見かけたマレンは口元がニヤリと笑みを浮かべると、奥からから一つ水着を取り出してエリスさんの背後に回る。
「エリス、これはどうだ?」
「マ、マレンさん!? い、いえ、私は……」
「ソウマも気になるだろう?」
「あっ、あぁ……確かに気になるけど……」
「ソウマさん!?」
俺の一言が決め手となったらしく、エリスさんの顔からは色が消えて絶望を超えた先の顔をしている。
その後、俺以外は水着を見つけたらしく全員更衣室へと入る。 ちなみにエリスさんはマレンの水着を強制的に着ることになり、逃げられないよう、マレンと一緒の更衣室に入った。
なんかマレンはビキニとか選びそう……。
「ちょっとマレンさん!? どこが触ってるんですか、貴女は!!」
「ちょっとぐら良いだろう?」
「全然良くないです!!」
何か叫び声のようなものが聞こえたが、俺の気のせいだろう。
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数分が経ち、どうやら皆準備ができたらしい。
まず最初に出てきたのは――。
「どうですか、ご主人様!」
「おぉ……すげぇ似合ってる……」
最初に出てきたのはアン。
「似合ってるよ、アンらしい水着を選んだね」
アンが選んだのはシンプルな水着。決してビキニという訳ではなく、本当にシンプルでどこにでも売ってそうな水着。 なのに似合っている、本当に似合うものを着たときはヤバそう。
そして次に出てきたのは――。
「ソウマさん、どうですか?」
出てきたのはメイド達の長女、ローホ。
「ローホもなんというか、本当にすごいね、結構攻めてる……」
「ちなみに……」
「「「「全員これです!」」」」
「……は?」
ローホが着ていたのは布部分が少なく凄いピチピチだが、紐部分が決してキツくもない。グラビアアイドルと言われても不思議ではない。
これはとても予想外な水着だったが、似合ってるのでありだと思う。
次はマレンかエリスさんのどちらかだ。
するとカーテンがバッと開けられ、一つの影が姿を現す。
「さぁ、どうだソウマ?」
「うん、なんというか予想通りだよ……」
「ん、そうか……」
先に出てきたのはマレンであり、選んだ水着は案の定のビキニ。だが、その姿は想像以上に似合っており、海で通り過ぎると思わず振り返るほどだ。
そして――。
「諦めたらどうですか、エリスさん」
「うぅ……」
触れてはいなかったが、マレンの登場からチラチラと後ろに見えるのは小さく蹲っているエリスさん。
そして遂に観念したのか蹲っていたエリスさんは立ち上がって更衣室から出てくる。
「お、おぉ……」
「ど、どうですか?」
「すごい似合ってますよ、本当に……」
言葉にするのは下手だが、これは本当にすごい。
おそらくマレンが選んだであろう水着はパーカーのような物で体の漏出は一切ない。 これはマレンのセンスの良さに拍手を贈りたい。
そして下の水着もミニスカートのようなもので漏出しているのは足のみ。
パーカーを被ってる隙間から綺麗な銀髪がはみ出ているのはなんとも言えないすごさがある。
その後、なんやかんやあったが、無事水着は選べ、帰宅となった。
「無事全員選べたな」
「そうだねー」
「わ、私は本当にあれで良いんでしょうか?」
「すごい似合ってましたよ?」
「ほ、本当ですか?」
「えぇ、本当ですよ」
頬を赤くしているエリスさんを横目に俺は歩いていると、一つ、あることを思い出して立ち止まる。
「どうしました?」
「ソウマ、どうした?」
「ご主人様、何かありました?」
「……」
「「「「「ソウマさん?」」」」」
「俺、水着買うの忘れてた……」
「「「「「「「「あ……」」」」」」」」




