35 苦労人とお出かけ④
俺は食後という名の"筋トレ"を終え、店を後にした。 日も暮れ始め、店舗の明かりが目立つ。
そして俺はここで顎に手を当てて、あることを考える。
俺、ここまでエリスさんにリードされてばかりじゃね?
思い返すと予約されたカフェ……ジムに連れてかれる……。全てエリスさんが用意してくれたステージだ。
……どれも俺は何もしてない。やはり俺も男ではなく漢になりたいお年頃、ここは一つ俺がリードを取ろう。
「エリスさん」
「はい、どうしましたか?」
「まだ夕方ですが、食事はどうしましょうか?」
「そうですね、実は予約していたお店がありまして……」
「……」
「えっと……どうかしましたか?」
「い、いえ……」
だめだ、エリスさんに勝てる気がしない……、全てに対する準備が良すぎるよ……。
俺はどうするか考えていると俺は召喚される前によく読んでいたラノベを思い出す。
そのラノベの主人公はよく公園デートをしてた気がする、理由が幼馴染との思い出……。
ま、まぁエリスさんとは公園なんて行ったことないけど公園はロマンチックだよな?夕食後に誘おうか……。 その勇気があればな!!
「夕食まで少し時間があるので、それまでどうしますか?」
「そうですね、もう色々と身体が限界なんですが……」
「そ、そうですよね、動けませんよね……」
エリスさんはハッと思い出したかのように俺の顔を見た後、顔を茹でタコのように真っ赤にしながら顔をブンブン振る。
その様子を見て可愛いという言葉が頭に浮かんだが、思い出してみるとその行動の意味が分かる。
何故なら、エリスさんは最初は八十キロをアップと言っていたが、その言葉は本当らしく最終的に二百キロで終了していた。おそらく俺より重いのを持ち上げたことを考えたのだろう。
「あっ、やば……」
「ソウマさん!?」
俺は知らないうちに身体の限界を迎えていたみたいで、いきなり足がすくんで力が入らず、情ながらもエリスさんに支えられながらベンチに座らされる。
そしてエリスさんは腰を折って俺に話し掛ける。
「だ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫……って、言うほど余裕はないですね……」
いけると思ったんだけどな……。
「少し休憩しましょうか」
「は、はい……すみません、面目ない……」
本当に情けない所を見せた俺は顔に熱がこもっていくのを感じながら、どうにか逸らそうと口を開く。
その瞬間――。
「ふぅ、あのジムはやはりいいな」
「そうだねー今度行こ!」
「あぁ、そうだな!」
「よし、じゃあご主人様達を探し……」
「あっ……」
「「え?」」
聞き覚えのある声が聞こえ、そちらに目を向けるとそこには、ここに居るはずもないマレンとアンが居た。 俺達がいたジムに居たのか、若干汗をかいている様子が伺える。
その姿に俺とエリスさんは言葉よりも先に呆気に取られる。
「「……」」
「えっと、マレン!帰る?」
「そ、そうだな!」
「ちょっと待ってよお前ら」
あっさり、姿を消そうとしている二人に俺は後ろから声を掛けて制止する。 コイツらが居るということはつまりは尾行していたというのに間違いないだろう。なら、ここで黙って帰すわけにはいかない。
俺は黙って二人の頭を掴む。
「ご、ご主人様?」
「ソ、ソウマ?」
「……」
「目が怖いんですけど……」
「お、落ち着けソウマ、私は……」
「遺言はそれでいいか?」
「え、ちょっ!?」
「ま、待ってくれソウマ!?」
「問答無用!!」
「すごいですソウマさん……、ジムの時より力がありそうです」
「……」
俺はエリスさんの言葉に少し戸惑いながらも二人を引きずりながら今の場所を離れる。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「「すみまぜん、でした……」」
俺は数十分ほど、二人を説教した後にエリスさんの元に戻り、合流する。
「ソ、ソウマさん? 何をしたんですか?」
「特に何もしてないですよ」
「そ、そうですか?」
「本当ですよ」
「では、あれは……?」
エリスさんが指差す方には現在、エリスとアンが土下座に近い体勢になりながら半泣きの状態で謝罪をし続けている。 俺はそこまで酷いことをした覚えはないのだが……。
ただ――。
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「マレンさん、アンヘルさん?」
「「は、はい……」」
「なんでことを?」
「鬼娘が……」
「うぅ……」
「へぇー?」
俺の今の表情がよほど怖いのか俺が謎に敬語が怖いのか、二人はまるで子供がオバケを見たかのように怯えていた。
だが、その様子を見た俺は何を思ったのかさらにたたみかける。
「つまりはアンヘルが悪いと?」
「そ、そうだ!」
「……」
「アンヘル、何か反論ある?」
「な、ないです……」
「じゃあアンヘルだけを叱ればいいのかな?」
「あ、あぁ……」
俺の言葉を聞いてマレンは安心したようで、ここから一刻も速く立ち去ろうと立ち上がるがもちろん俺はその行動に気に入らないため、ある一言で動きを止める。
「だけど、それを断らなかったマレンも悪いよね?」
「……え?」
「アンヘルが悪いのはもちろんだけど、マレンも悪い……」
「……」
その言葉を聞いた瞬間、マレンは滝のようにダラダラと冷や汗をかき始め、俺はそんなマレンに笑顔で説教を続ける。
二人はその笑顔が怖いのか、筋トレとは違う汗が増していた。
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「で、ではそろそろいい時間なので、行きましょうか?」
「そうですね、俺も少しお腹が空きました」
苦笑いのエリスさんを横目に、俺はエリスさんが指定するお店に向かう。
しばらく経ち、着いた俺達。
俺はそのお店を見て、戸惑いを隠せない。
「あ、あの……ここで本当に合っていますか?」
「えぇ、合ってますよ?」
「どう見ても居酒屋にしか見えないんですが……」
「見た目はそうですが、しっかりしているお店ですよ」
「そ、そうなんですか?」
俺はエリスさんの言葉に若干疑いつつも、居酒屋風のお店に入店する。
中は思ったより居酒屋ではなく、エリスさんの言う通りにしっかりしてそうな店だ。遠くで客の注文を聞いている店員を見ても特に居酒屋感はない。
すると奥から俺が見ていた店員とは違う店員が出てきた。
「エリス様ですよね、予約は承りました」
「ありがとうございます、相変わらず早いですね」
「それが私のお店のコンセプトですから」
俺は二人が会話をしているのを横目に店員の首からぶら下げてあった名札が目に入る。
店長……。 そんな人がわざわざ迎え入れてくれたのか、エリスさんってなんかそういう信用ヤバいな……。
俺はエリスさんの凄さに感心していると、店長に席に通され、食事が開始した。




