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ゲームに召喚されたけど、魔王弱過ぎて平和ですね  作者: 迷子猫
平和と日常

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33/43

30 スマホが恋しい

 リンダーのお泊りから翌日、帰ってきた俺。

 あの本に載っていたアンを読んでしまい、自分でもアンを見たら動揺するかとも思ったが、全然そんなことはなかった。

 なぜ、あんなにも気持ち悪くなり、嫌悪感に染まったのか今でも分からない。 だが、もう過ぎたことを気にしても仕方ないので今思っていることを心の中で叫ぼう。


 流石にスマホが恋しい!!


 エリスさんから魔法具(オブヘート)を貰ったときに思ったこと、こんなに便利な物があるならスマホに似た物もあるんじゃないだろうかと……。

 俺は善は急げの気持ちで、エリスさんの書斎室に向かい、扉をノックする。


「? どうぞ?」


 エリスさんは少し不思議そうな声がしたが、俺は承諾を貰ったので書斎室に入る。


「すみません、一つ気になることが……」


 俺はとりあえず、スマホの軽い説明をし、それに似た魔法具(オブヘート)がないかと聞く。


 俺が話し終えるとエリスさんの顎に手を当て、少し経った後、小さく首を横に振った。


「すみません、そういった魔法具(オブヘート)は聞いたことないですね」

「そうですか……」

「ですが、ソウマさんの世界にはそんな便利な物があったんですね」

「はい、本当に便利な物で」

「それはソウマさんの気持ちも分かりますね、私もそんな物があれば隙間時間に使っているかもしれません」


 エリスさんはスマホに興味を示し、次々にスマホのことを俺に聞いてきた。

 俺はそんなエリスさんの意外な一面に驚きながらも俺は自分が知ってる限りのことをエリスさんに教える。


 ある程度教えた後、エリスさんの目は星になっており、まるで初めておもちゃを見た子供の様にキラキラしている。


「あっと、すみません。つい、熱くなってしまいました」

「い、いえ大丈夫ですよ」


 エリスさんってこういうの気になるんだな……。


 その時、書斎室の扉がバンっと力強く開かれた。


「ソウマ! 昨日はなんで泊まってきた!」


 扉を開けたのはマレン。 なにやら怒っているらしく、原因は俺のお泊りのようだ。

 そしてマレンはズカズカと俺の方に近付く。


「ご、ごめん。 けど、あの雨じゃ帰れないって」

「なら、私が迎えに行く!」

「いや、マレンも雨は嫌でしょ?」

「雨を防ぐ魔法なんて、いくらでもあるわ!」

「なんで魔法はこんな便利なのこの世界!?」


 マレンはなんというか、良い魔法もあれば意味不明な魔法も持っている。


 こんなに魔法が便利なら魔法具(オブヘート)も、もうちょっと良い物になると思うんだけどな……。


 そう思った俺である。



       ☆☆☆☆☆☆☆☆



 どうにかしてスマホを使いたい俺はどうしようかと考えているが、何も思いつかない。 もちろん、俺がそこまで頭が良くないのもあるが、それ以前の問題がある。

 それは――。


「ソウマ、今日は昨日黙って泊まった罰として、私と居れよ?」

「あ、あぁ……」

「それでいい」


 マレンが俺のそばから一切離れようしない。かれこれ一時間これだ。

 調べようとしたり、考えようとしても全部マレンが邪魔をしてくる。 いや、逆にこれを利用したら……。


「なぁマレン」

「ん? どうした?」

「マレンの魔法って、どこまでいけるんだ?」

「そうだな……物生成ぐらいまでは全然いけるぞ。内部の機械?のとこまでも、私はあまり分からないが……」

「それだ!!」

「うぉ……急にどうした、ソウマ」

「マレン! お前の力を貸してくれ!お前が必要だ!」

「あ、あぁ……私がなれるならなるが……」


 顔を少し赤くするマレン。


 俺はマレンの発言に興奮し、咄嗟にマレンの手を握り、告白に近いとも言える台詞を言ってしまったが今の俺にそんな考えなどはない。

 それにしても、マレンの魔法を幅広さには驚きを隠せない。まさか機械の場合までやってくれるとは……。


「そうこうしてはいられない!早速、取り組むぞ!」

「お、お〜?」



       ☆☆☆☆☆☆☆☆



 取り組み始めて一日目、まずは設計図を書かないと思い、書き始める。

 普通の人ならまず、設計図すら書けないだろう。だが、この黒井蒼真は違う。

 昔、機械いじりが趣味でスマホまで中身も見て壊したという実績があるため、少しだけ構造は頭の中に入っていた。


「ソウマ、これは?」


 不思議そうな顔をして、横から設計図を覗いてくるマレン。


「設計図だよ。 これから作るのは俺の世界にあったものだから」

「ソウマの世界にあった物……なるほど、それは興味深い」

「でしょ?」


 その後も俺は順調に設計図は進み、成功目前だと思っていた、だがここで問題が起きた。

 シンプルかつ、当たり前の問題。


「マレン違うって」

「こ、こうか?」

「それも違う……」

「あぁもう! どうすればいいんだよ!!」


 設計図は進んだ。だけど、その設計図を読めないマレン。

 正直ここまで頭になかった。

 確かにマレンの魔法技術はすごい、だけど設計図を読めていない……。 誰か設計図も読めて、マレン並みの魔法技術を持ってる人はいないのか?

 ここで俺はある一人の顔が思い浮かんだ。


「リンダー……」

「リンダー? 誰?」

「あっ……」

「ソウマ、詳しく聞かせろ」

「ちょっと待って!? マレン!?」

「昨日、誰と出会った?」


 俺はおそらくダメな地雷を踏んだのだろう、頭に思い浮かんだリンダーの名前をうっかり呟いてしまい、それは横にいるマレンは当然聞いており、マレンの顔からは表情が消えた。

 そして流れるようにマレンは俺の胸ぐらを掴み、持ち上げる。


「ちょっ……マレ……ン」

「リンダーって誰? 話して」

「ま……話……せ、ない」


 離せおい、息ができないだろうが。 あっ、マジでやばい……。 意識が……。


 俺は恐ろしいマレンの顔を見ながら意識を手放した。 ぶっちゃけ、こっちの方が安全なのかもしれない。




「ソウマさん!? ソウマさん!!」

「うぇ……?」

「よかったです、意識が戻って……」

「何が……」

「マレンさん!嫉妬する気持ちは分かりますが、ソウマさんを気絶させたらダメじゃないですか!」

「はい……」

「うぉ……珍しい……」


 マレンはエリスさんに対して正座でシュンとなっている。


「いいですか?マレンさん……」


 次々に説教を続けていくエリスさんの背中はいつもより大きく見える、これは本当に見直す。

 だけど、ついこぼしてしまった俺も悪い。


「エリスさん、今回は俺も悪いので良いですよ」

「え? そうですか?」

「はい、今回のことはお互い水に流すってことで」

「で、でも……はぁ、ソウマさんも甘いんですから。注意でもしないとまた気絶しますよ?」

「まぁ、その時はその時です」

「ですって、マレンさん。今後は気を付けてください」

「あ、あぁ……」


 だが、こうしても問題がある。スマホが作れない……。

 本当にもう、リンダーに頼ることしかない。 


「マレン、リンダーの所に行きたいんだ」

「む……はぁ、仕方ない。 どこだ?」


 マレンは一瞬、険しい顔をしたが、俺の顔を見た瞬間、はぁっと長い溜息をした後、諦めたかのように出掛ける準備を始めた。


「ありがとう、マレン!」

「あぅ……」


 マレンはまた顔を赤くした。



       ☆☆☆☆☆☆☆☆



 マレンのおかげで街まで三十分以上掛かった時間が数分にまで短縮した。マレンの飛行はすごいものだなと改めて実感した。

 そして降りた俺達はリンダーの店まで案内する。 昨日は忘れてただけで店が閉まっていたらどうしようと考えていたが幸い、今日は休みではなかった。

 店の前まで着き、俺は中に入る。


「リンダー!」

「え? ソウマさん?いらっしゃいませ、昨日ぶりですね……って、そのお隣の方は?」


 店に入るとリンダーは驚いた顔をしつつも、店員らしく、「いらっしゃいませ」っと言ってくれた。 そして、リンダーの目線は俺の隣にいき、マレンが誰かと問いかけてきた。


「あぁ、コイツはマレン・ガーデン」

「マレンと呼べ」

「あの、ソウマさん?」

「どうしたの?リンダー」

「この人、めちゃくちゃ敵対の目してるんですけど……」

「それはまぁ、気にしないで」

「無理です……」


 マレンは昨日の俺を泊まらせてくれたリンダーを見つけた瞬間から敵意満々で見ている。

 ま、まぁ……そのうち、それは直ると思うので俺は早速本題に入る。


「ごめんリンダー早速、本題に入るんだけど」

「この状況でですか!?」

「設計図はできたんだけど、マレンが読めなくて……」

「話聞いてください!!」


 このままだと話が進まないと思い、騒いでいるリンダーを一旦置いて無理矢理進める。

 だがリンダーも流石、店員と言うべきか騒ぎながらも設計図に目を通していた。


「……」

「あ、あの……マレン、さん?」

「なんだ?」

「その……後ろに居られると怖いんですが……」

「あまり気にするな」

「……無理ですよ」


 正直、俺の問題ではないので俺はソファでくつろいでいる。


 そして数分後、リンダーは後ろにいるマレンに怯えながら設計図を持って近付き、口を開く。


「これ、できますよ」

「え?本当に?」

「えぇ、設計図が分かりやすかったのと単純な魔法ですから。 約三日ぐらいで、できますかね」

「ありがとうリンダー!」


 俺は嬉しさのあまり、リンダーの両手を握って飛び跳ねてしまった。

 するとリンダーは何かを言いにくそうな顔をしながら口を開く。


「あ、あのソウマさん? 私は嬉しいんですけど、後ろが……」

「え?」

「……」


 俺は後ろから不穏な影を感じ、壊れたブリキのように振り向くと、とても笑顔なマレンがたっていた。 笑顔、笑顔ではあるんだけどめちゃくちゃ怖い……。


「ソウマ? 私以外にそんなことするんだ」

「い、いやこれは……」

「リンダーと言ったか?今日はソウマのワガママに付き合ってくれてありがとうな。 いくぞ、ソウマ」

「は、はい……」

「ま、またのご来店をお待ちしています……」


 俺は怖い笑顔のマレンに引っ張られ、リンダーの店を後にした。

 その後は君達のご想像にお任せします……。

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