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ゲームに召喚されたけど、魔王弱過ぎて平和ですね  作者: 迷子猫
平和と日常

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29 なぜか泊まることに

 アンの昔を読んだ俺は気分が悪くなり、帰ろうとした瞬間、大雨が振り始めた。


「どうするか……」

「あのーお客様?」

「え?」

「よろしければ、今日は泊まっていきますか?」


 どういうこと?そんな言葉が俺の頭の中で埋もれる。 泊まりなんて単語は小学生ぶりに聞いたな、実際は横で聞いていだだけだが。

 そんな人生初とも言えるお泊りの誘いを出会ったばかりの女性に言われたことに俺は気持ちが高まってしまう。


「えっと、リンダーはいいの?」

「えぇもちろん、あいにく部屋は持て余しているので」

「ちょ、ちょっと待ってね? 許可もらうから」

「わかりました」


 その後リンダーは空気を読んでくれたのか、一度礼をした後、奥へと消えていった。

 その様子を見た俺はすぐさまエリスさんから貰った魔法具(オブヘート)を取り出し、連絡をする。


『あの、今日帰らずに泊まってもいいですか?』


 俺が連絡すると、すぐに返信がきた。


『すごい雨ですからね、この中で帰っても体調を崩すだけだと思うので良いですよ。 明日、待ってますよ』


 文章からもエリスさんの優しさを感じ取れ、俺は微笑みながら『はい、わかりました』っと返し、魔法具(オブヘート)をポケットにしまった。


 無事に許可が下りたことを奥の部屋にいるリンダーに伝え、本当に泊まることとなった。

 それからの対応はすごいものでリンダーは食事、お風呂やらすべてを用意してくれた。

 あっという間に夜になり、リンダーに用意された部屋で俺は横になっていた。


「それにしても雨、止まないな……」


 俺の世界でいう梅雨みたいなものだろうか、俺が出ようとした瞬間からずっと雨は止まずに降り続けている。

 そんなことを考えていると窓から一つの光が光った後、ゴロロ!ともの凄い轟音が鳴り響いた。


「……雷」


 そういえばこの世界に来てから雷一回も見てないな……。


 そんなくだらないことを俺が考えていると隣から床に何がドン!と、落ちる音と共にドタバタと部屋の中で暴れる音が聞こえ始める。 俺は何事かと思い、体を起こす。

 どんどんとそのドタバタ音は俺の部屋へと近づいており、俺は扉を見ているとバン!と大きな音を立てて扉が吹き飛んだ。 え? 扉が……?


「お客様! 助けてください!」

「え、ちょっリンダー!? 待って待って速い速いぶへ!?」


 扉を吹き飛ばした張本人もとい、リンダーが目には見えないほどの速度で俺の体へと突進をかましてきた。 当然、その突進に俺が耐えられるわけもなく、強制的に俺は壁に刺さる。

 そして、雷がまたゴロロ!っと鳴った。


「た、助けてください!!」


 その雷が合図なのかといわんばかりにリンダーはまた俺の体に己の体を擦り寄せる。 俺の胸にはリンダーがスリスリしている。

 普通なら微笑ましい光景や羨ましい光景だと思うが、そうはいかない。


「ちょっと待って!? 痛い痛い痛い!?熱い熱い熱い!?」

「お客様お客様お客様お客様ー!!」

「待って!? なんか火が見えるんだけど!?」


 現在、高速で俺の胸に頭を擦り付けているリンダー。その速さは異常を超えるとも言える速度で、火も少し見える。 ていうか、よく服保ってるな。


 そんなこと考えてる場合じゃねぇ! 早くリンダーを止めないと。


「落ち着いてリンダー!」

「無理です無理です無理です!!」


 そんな状態が数十分続いたのだった。



       ☆☆☆☆☆☆☆☆



「うぅ……すみません……」

「い、いや大丈夫だよ? 大丈夫だけど……」

「すみません、お客様の服が……」


 雷が通り過ぎたことで、いつものリンダーに戻ったわけだが、その犠牲として俺の服が消えた。

 高速で頭を擦り付けられたせいで俺の服は焦げ燃えた。 あんなに擦り付けてたのにリンダーの髪は無事なんだな……。

 俺は自分の服よりもリンダーの髪の耐久性に驚いていると、リンダーは部屋のタンスを開け、ある一つの服を取り出した。


「こ、これ代わりになるかはわかりませんが……」

「あ、ありがとう?」

「本当にすみませんでした……」


 リンダーはそう言い終わった後、すごいスピードで俺の部屋から消えた。


 服はありがたい、ありがたいんだけど……。


 リンダーがくれた服は赤や青が入っているなんとも奇抜なデザインの服。とても人前では着れない服。


 これで帰るの?俺。



       ☆☆☆☆☆☆☆☆



 朝になり、窓から出てくる朝日で俺は目を覚ました。


「朝か……」


 俺は少々寝不足で重い体を起こし、部屋から出る。 もちろん、昨日リンダーから貰った服を着て。


「あっ、おはようございますお客様」

「おはよう、リンダー」

「ふふ、その服お似合いですよ」

「そ、そう? ありがとう」


 この服が似合ってる? まあリンダーが似合ってるって言うんなら、本当に似合ってるのかもしれないが……。

 そして俺はとりあえず、出された朝食を口に含む。


「リンダーって、料理上手いな」

「結構自慢ですからね〜」

「本当に美味しい」

「そういえば……お客様!」

「ん? どうしたの?」

「お名前を伺っても?」

「……え?」


 一瞬フリーズしてしまった。 名前……教えてなかったか?

 俺はすぐさま昨日の記憶を掘り返す。


 まずこの店に入って……リンダーが名乗って……俺があのドリンク飲んで、リンダーが暴れた……それからあの本を読んで……雨が降って……ここに泊まった……。

 あれ?本当に俺、名乗ってないな……。 ふふ、では良かろう。俺のとっておきの自己紹介を。


「そういえば名乗ってなかったね」

「はい!」

「俺の名は黒井蒼真!引きこもりだ! よろしく!」


 俺の自己紹介を聞いてフリーズするリンダー。 そんなに俺の自己紹介が効いたか?

 そんな静寂を突き破るリンダー。


「あの……ヒキコモリ?って、なんですか?」

「なんでこの世界の住人は全員皆、引きこもりを知らないの!?」


 俺はこの世界に引きこもりという概念がないということに気づいたのであった。

※補足

普通の蒼真ならアンヘルの昔を見たところで、驚きはするものの吐くまでは至りません。

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