27 不思議な奴と出会った
これはどういう状況だ?
「あ、あの……」
「……」
俺は先ほど手に取った"これで絶対モテモテドリンク"をお会計しようと店員を呼んだんだが、現在その店員が目を見開いてフリーズしている。 俺は目の前で手を振るが反応を示さない。
石みたい……。
「あ、あれ? ……」
そして、しばらく経ち、戻ってきた店員は俺を見て再び固まる。
俺は意味が分からず、限界まで待つこととする。むしろここまで来ると、どこが限界なのか気になってしまう。
あれからどれぐらい経ったのだろう、三十分ぐらい経った後。
「あ、あれ? す、すみません……」
「い、いえ、自分は良いんですが……」
「男性を見ると固まってしまうんですよね……」
「どんな症状ですか?それ」
「自分でも、あまり分からないんですよね」
どうやら店員は男が苦手なのか、恥ずかしがり屋なのか分からないが、俺の方を見ながらモジモジと説明する姿は思わずドキッとしてしまう。
すると俺はある違和感に気付く、先ほど店員はピンク髪だったはずの髪がいつの間にか赤と白が左右に分かれた髪になっていた。 どういうこと?
俺は気になり、店員に問いかける。
「あの……その、髪って……」
「あっ、これですか? もしかして、私最初ピンクでした?」
「えっと、はい……」
「では、私は緊張していたのだと思います。今日は閉めていたのに何故かお客様がいたので……」
「それはすみません……」
「い、いえいえ!? 別に謝らなくて良いんですよ!鍵を閉めてなかった私の責任ですし」
俺が咄嗟に謝ると、店員は自分の失態だと言って謝ってくれた。優しい人だなーと思いながら慌てる様子を見て、俺は可愛く思ってしまう。
なんというか、エリスさんに慌てん坊を付け加えたみたいな人だな。
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「ハッ……クシュン!」
「風邪か?」
「ですかね、最近治したばかりなんですが……」
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そして、どうやらお店側の失態として特別にお店を俺だけのために開くと言ってくれた店員。 その対応に俺は感激し、もっと店員と話したくなってきた。
「ありがとうございます! お名前を伺ってもいいですか?」
「えぇもちろん、私の名前は"リンダー・ラオ"と言います」
「では、リンダーさんとお呼びしますね」
「いえいえ、お客様と店員のご関係なんですから敬語や敬称などいりません」
「では……いや、リンダーって呼ぶよ」
「ふふふ、はい!」
リンダーは優しい笑みを浮かべながら元気よく返事をした。 なんとなくこの人とは気が合う気がする。
その後俺は例のドリンクを買い、他にもおすすめがないかとリンダーに聞き、色んな商品を見ていた。 商品を見ていると流石と言うべきか、先ほど見ていた商品より面白い商品名をしている物ばかり。その一つ一つを丁寧に教えてくれるリンダー。
マレンには是非ともリンダーの爪の垢を煎じて飲んでほしいものだ。
そんな真面目で丁寧なリンダーを見て、俺は良からぬことを思ってしまった。
――もしここで、これで絶対モテモテドリンクを飲んだらどうなるのかと……。
いや、もちろん俺はそんな効果がないと分かってる。だけど、本当に効果があるのか試すのも大事だ、実際ここには女性のリンダーもいるんだし。 よし、ここは善は急げだ。早速試してみよう。
「――ゴクン……」
「ちょっとお客様何してるんですか!?」
「やっぱり試しって大事じゃないですか」
「そ、そんなことしたら、私……」
リンダーの言葉が途中で途切れ、俺のことをボーっと見つめている。そしてリンダーは口から涎が垂れ始める。
なにこれ、怖いんだけど……。
涎が垂れたまま、リンダーはニチャっと不気味な笑みを浮かべている。先ほどの優しい雰囲気などはどこに消えたのか、どんどんと俺の元に近付いてくるリンダー。
俺はそんなリンダーに怯えながら話し掛ける。
「リ、リンダー?」
「……」
「き、聞いてる?」
「あはは……"見つけた"」
「ッ!?」
全身の毛が逆立つような声が聞こえ、後ずさる俺。だが、壁に当たり、追い詰められる状況になる。 それを逃さないと、どんどん詰められる。
最終的にはリンダーは俺にハグをし、絶対に離さないといわんばかりのパワーで抱きしめられる。
ヤバい……リンダーも見かけによらず力やべぇ!? マジでヤバい!!身体からミシミシ鳴ってるんだけど、絶対身体から鳴ったらだめな音だよね、これ!?
「温かい……今日は泊まってくださいよ」
「そ、そんないきなり……」
「なら一生でいいので……」
「なんでもっと上になるの!?」
「えへへ……」
「子供の名前はどうしましょうか……」
「まだ付き合ってすらないよね!?」
こ、この商品、もしかしてモテモテはモテモテでも相手がヤンデレになるのか? えっと、どれどれ……。
俺は慌ててビンの裏の説明表を見ると、そこには――。
『この商品は絶対にモテモテになります。効果は三時間!存分に味わってください! ですが、女性側はヤンデレまたはメンヘラになるのでご注意を! そして前提として、女性側が多少の好意がない限り、効果はありません』
さ、三時間!? 三時間この状況が続くの!?
俺はある覚悟を決め、リンダーと向き合うことにした。
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結論から言おう。 俺は諦めた。 無理なんだ、マレンに近い力を持つリンダーに抵抗すればするほど状況が悪化するから……。
だけど幸いなのが、このリンダーはヤンデレなだけで一線を越えようとしない。
だけど現在は――。
「お客様ー」
「……」
「もっと近くにー」
甘えん坊になっているリンダー。なんというか、ブランコみたいな気がする。 これはこれで新しいリンダーみたいで可愛い。
「お客様ー膝枕ー」
「えっと、うん。 分かった……」
「やったー」
俺はリンダーの要望に困惑しながらも、それぐらいなら良いかと思って承諾するとリンダーはすぐさま、俺の膝に頭を置き、くつろぎ始める。 その様子は大変可愛らしい。
そしてそれから数分が経ち、リンダーを見ているとなにやら様子がおかしい。
「え……これ、どういう状況で……」
「あっ、もしかして……」
「お、お客様……? もしかしなくても私……」
「はい、ご想像通りです」
「す、すみません! な、なんで私……あ、あぁぁぁ! きゅ〜……」
「リンダー!?」
効果が切れたリンダーは徐々に今の状況を知り、顔が茹でタコのように真っ赤になった後、声にもならない叫びをあけなから気を失った。
本当に不思議な奴と出会ってしまった。
現状の最強ランキング↓
1位謎の子供
2位マレン・ガーデン
3位アンヘル・アイレ
※同率4位リンダー・ラオ
※同率4位マイ・コルト
5位エリス・ルガニア
最下位黒井蒼真




